■『不思議の国のアリス』(新書館)
ルイス・キャロル/作 高橋康也・迪/訳 アーサー・ラッカム/挿画
改訂版の表紙
※「読書感想メモリスト1」の【児童文学】に追加します
感想メモをまとめている時、自分が一番好きな本のメモがノートにない謎に気づいた 英米文学も同じく
そこで、アーサー・ラッカム挿画の本書を借りてみた
アリスの挿絵といえば、ジョン・テニエルが一番好きだけれども
遅ればせながら知ったエドマンド・デュラックのテイストに似ていて、こちらも素晴らしい
●エドマンド・デュラック
『テンペスト』(新書館) デュラック/絵
●アーサー・ラッカム(ウィキ参照
●ジョン・テニエル
ルイス・キャロルは彼の絵を気に入らなかったんだっけな
彼自身が描いた絵も、ゆるいながら味がある 誰より思い入れが違うし
不思議の国のアリスの挿絵(ウィキ参照
*
本書に出てくるたくさんの動物の中でもっとも注目したいのは絶滅してしまった鳥の「ドードー」
『ドードーを知っていますか』(ベネッセ)
今生きているゾウやライオンも、数十年後には、本や写真の中でしか見られなくなるかもしれない
なんてことにならないように、今すぐ本気で出来ることをしなければならない
世界の象牙の95%…最悪の“象虐待国家”日本
“研究を口実にした捕鯨と残酷なイルカ虐殺で悪名高い日本が、
今度は象密猟の結果である象牙取引の仲介基地の役割を果しているとし、国際環境団体から後ろ指を差されている。
世界自然基金(WWF)は先週、全世界的な野生動植物取引監視ネットワークであるトラフィック(TRAFFIC)が作成した
「象牙の塔:日本の象牙取引と国内市場に対する評価」報告書を公開し、
日本を「世界最大の象牙市場の一つで、活発な象牙加工産業の故郷であり、
個人所蔵の形態で相当な規模の未加工象牙を備蓄している国」と規定した。
このように日本が象牙不法取引の橋渡しとなっているのは、象牙取引に対する規制が不備なためということが環境団体の指摘だ。
伝統的に象牙や象牙製品を好む中国もすでに昨年、2018年から象牙取引を中断すると発表した。
これに伴い、世界自然基金のホームページには、中国で象牙取引禁止が始まる
来年1月1日0時までの残った時間を表示する時計まで掲げてカウントダウンしている。
だが、日本は象牙市場を閉鎖しろとの国際環境団体の要求を拒否し続けてきた。
世界自然基金-香港の保全理事であるキャビン・エドワーズは、自然基金のホームページに掲示された発表資料で
「中国が今年末に合法的象牙取引を禁止するのを機に、日本や他の国々も後に従わなければならない。
毎日平均55頭の象が密猟されていて、象牙市場を開いておくことはできない」と話した。”
*
本書のストーリーは誰もがなんとなく知っているだろうけれども、メモをざっくりまとめみた
とはいえ、数十年ぶりに読んでもやっぱり面白い!!
実在する3姉妹に聞かせた話だけに、面白くないはずがないし
ルイスの複雑怪奇で天才的な言葉の組み合わせは、日本語翻訳で表すのは難しいだろう
▼あらすじ(ネタバレ注意
献詩 ―アリス・リデルへ ルイス・キャロル
ときまさに 黄金の 昼さがり
水の面ゆく 舟足は のたりのたりと
オール持つ 頼りなげな
四本の 小さな手
加うるに 水先を 案内する
手が二本 これも幼く
ああ むごい 三人組!
うとうとと ひそやかに 陽をあびて
まどろんで いたいのに
お話を せよとの仰せ
無理難題 ごめんこうむる
だがしかし いかんせん 多勢に無勢
・・・
ああ アリス! いまきみに
献げよう たわむれの この物語
幼年の 夢が織りなす
思い出の 神秘の模様
はるかなる 国を旅せる 巡礼の
しおれたる 花の冠
高橋廉也・高橋迪訳
第1章 ウサギ穴にドスン
アリスは、姉と土手に座っていたが、退屈してきた
その時、シロウサギがそばを通った
「おくれてしまう!」と言いながら、時計を取り出しているのを見て
好奇心から、考えもなしに、後を追い、深い井戸を落ちていく
とってもゆっくり落ちていくから、いつものクセで1人2役でつぶやく
「ダイナ(アリスの家の猫) お前がここに一緒にいてくれたらいいのに!」
ドスンと落ちたらウサギは見えず、細長い、天井の低い広間
ドアにはすべて鍵がかかっていて、テーブルの上に鍵が乗っている
カーテン裏に40cmほどの小さいドアに鍵はピッタリ
その向うには素晴らしい花園が見える
あすこに行けたならどんなにステキだろう!
次に小さな瓶を見つけて「ワタシヲノメ」と書いてある
飲むと30cmほどに体が縮まり、ドアから出られるサイズ
でも、テーブルに鍵を置き忘れた!
すると、小さなガラスの箱にケーキがあり「ワタシヲタベヨ」とある
第2章 涙の池
今度は背が伸びすぎて、自分の足が見えない
悲しくて何ガロンもの涙を流したので、10cmあまりの水たまりができた
ウサギの落とした扇を振ると縮みはじめる体
でも、また鍵はテーブルの上!
アリスは自分の涙で溺れそうになる
そこにハツカネズミが泳いでくる
「岸へ上がろう そしたら、なぜわしがネコやイヌを嫌うか分かるだろう」
第3章 めためた競争と長い尾はなし
体を乾燥させるにはどうすればいいか話し合ういろんな動物たち
ドードー:体を乾かす一番よい方法は、めためた競争だろう
みんな勝手に走り出し、勝手に止まる いつ競争が始まったか終わったか分からない
ドードー:全員優勝 全員が賞品をもらう
アリスが賞品を渡すことになり、ポケットからボンボンを出してみんなにあげる
アリスは、大好きなダイナの話をする
アリス:
鳥を追いかけるところを見せてあげたいわ!
小さい鳥を見つけると、あっという間に食べちゃうの!
一同はあきらかに動揺して、たちまち皆理由をつけてその場を去ってしまう
第4章 ウサギ 小さいビルを送る
シロウサギが落とした扇と手袋を探しに戻ってくる アリスが話しかけると
シロウサギ:おお、メアリー・アン、すぐ家に行って扇と手袋を持ってきなさい!
アリスは驚きのあまり、指さされたほうにある小さな家に入る
そこでまた小さな瓶に「ワタシヲノメ」とあり、飲むとまた背が伸びて
部屋いっぱいにつかえてしまう
窓から腕が出ているのを見て、外で大騒ぎになっているのが聞こえてくる
いつも運の悪いビルは、煙突から入らされて、アリスに蹴られ、垣根まで飛ばされる
家の中に小石が投げ込まれてお菓子に変わり、それを食べると体は縮む
その場を逃げて、深い森に着くと、ばかデカい子イヌに追いかけられる
棒きれを投げると追いかけて行く
「それにしても、かわいい子イヌだったこと!」
近くに大きなキノコが生えているのに気づく
その上では青虫が水ギセルを吸っていた
第5章 青虫の忠告
青虫:おまえは何者だ?
アリス:今のところ、よく分からないんです 何回も自分がかわっちゃったみたいなの
青虫はアリスに「ウィリアム父っつぁん」を暗唱させると、まったくナンセンスな文章になってしまう
ちょうどいいサイズになるにはどうしたらいいか聞くと
青虫:キノコの一方はおまえを大きくし、もう一方は小さくする
と言って行ってしまう
キノコは完全に丸いので
アリス:さて、どっちがどっちかしら?
一方を食べると、首が伸びて、ハトに卵を狙うヘビと間違えられる
ハト:一体どういうつもりなの! 私、この3週間も一睡もしてないのよ!
縮んだり、伸びたりしながら、アリスはやっともとの身長になることに成功
1mくらいの家を見つけて、キノコをかじり、30cmくらいになる
第6章 ブタと胡椒
サカナ従僕は、玄関を叩くと、カエル従僕に封筒を手渡した
サカナ従僕:公爵夫人宛でございます 女王様からクロッケーへのご招待でございます
アリスは家に入りたいが、中はえらい騒ぎだから誰も聞こえやしないというカエル従僕
中は空気に胡椒がまざって、みんなクシャミをしている
クシャミをしていないのは、料理番と、耳から耳までニヤニヤ笑いの大きなネコだけ
アリス:なぜあなたのネコはニヤニヤ笑うんですか?
公爵夫人:あれはチェシャーネコなのだ
※チェシャー地方の名産はチェシャーチーズ
写真を撮る時に「チーズ」というと笑顔になる
キャロルはポートレート撮影が好きだった
料理番はひっきりなしに手に届くものを公爵夫人や赤ちゃんめがけて投げつけるので
赤ちゃんは泣きっぱなし
アリスが心配すると
公爵夫人:
もしだれもが自分のやっていることが分かっていて、人のことに口出ししなければ
世の中は今よりずっと速くなめらかにまわることじゃろうよ
子守りをしたければやらせてあげよう
公爵夫人は赤ちゃんをアリスに投げてよこした
赤ちゃんは返事のかわりにブーブーいう
どうしたんだろうと覗いてみると、もう間違いなくブタ以外の何物でもなく
これ以上抱いていても無意味だと思い、下におろすと、森の中へ駆けていく
チェシャネコにどこに行きたいかも分からないと言うと
チェシャネコ:
こっちの方角には帽子屋が住んでいる
あっちの方角には三月ウサギが住んでいる
好きなほうを訪ねるがいい どっちも気が狂ってるぜ
ここじゃみんな気が狂ってるんだ 私もあんたも
あんたは今日、女王様といっしょにクロッケーをやるのかい? そこで会おうぜ
そういうと消えてしまう
何度も消えたり、現れたりするので
アリス:あまりいきなり現れたり消えたりしないで 私、目が回りそうだわ
チェシャネコは、こんどはゆっくり時間をかけて消えていったため
最後にニヤニヤ笑いだけがしばらく残った(ここ大好き
アリスは三月ウサギの家に行くことにする
第7章 気ちがいティー・パーティー
食卓では、三月ウサギと帽子屋がお茶を飲んでいて、ネムリネズミが間に挟まっている
帽子屋:大鴉とかけて、書物机と解く、その心は?
アリス:やっと面白くなってきそうだわ!
答えは分からず、帽子屋に聞いても分からないと言う
アリス:答えのないなぞなぞをやって時間を潰すより、もっとましな時間の使い方がありそうなものね
帽子屋:わしみたいに時間のことをよく知っとったら、潰すなどとは言わない 時間は生きものなんじゃから
帽子屋は、ハートの女王の催した大音楽会で歌わなきゃならなかった話をする
帽子屋:
第一節を歌い終わるか終わらないうちに、女王がこうわめいた “こやつの首をちょん切れ!”
それから、時間のやつは、いつも6時ってわけじゃ
いつもお茶の時間だから、茶碗を洗うひまもありゃせん
ある程度時間がたつと席を隣りにかえなければならない
ネムリネズミに話をさせると、エルシー、レイシー、ティリーの3姉妹の話をはじめる
※リデル家の3姉妹の名前にかけている
退屈でナンセンスな話に飽きて、アリスが席を立っても誰も何も言わない
アリス:あんなにばかばしいパーティーに出たの、生まれて初めてだわ
森の木の中にドアを見つけ、それは最初の広間で、
アリスはようやく花畑と噴水のある美しい庭に到達する
第8章 女王のクロッケー場
庭の入り口に白いバラが生えていて、3人の庭師が慌てて赤く塗っている
庭師は数字が書いてあるトランプで、なぜそんなことをするのか尋ねると
赤いバラのはずだったが、間違えて白いのを植えて、女王様に見つかったら首をはねられるから
そこにハートの女王様が、王様、兵隊らとともにやって来る
その中にシロウサギがいて驚くアリス
女王様:この者はだれじゃ?
アリス:アリスと申します、陛下
女王様:その者たちはだれじゃ?
アリス:分かるわけがないでしょ、私は関係ないんですもの
女王様:あれの首をはねよ!
アリス:ナンセンス!
庭師に首をはねろと言うと、アリスに助けを求めに来て、彼らを花瓶の中に隠す
女王様:おまえ、クロッケーができるか?
アリス:はい
女王様:では、ついてくるんじゃ
シロウサギ:公爵夫人は死刑の宣告を受けたんだ 女王様の耳を一発殴っちまったから
クロッケーはこれまで見たこともない奇妙なもの
ボールは生きたハリネズミ、木槌は生きたフラミンゴ、
アーチは兵隊2人がつくっている
みんなてんでに動き回るから、こんなに難しいゲームは初めてだと思うアリス
そこにチェシャネコが現れてホッとする
チェシャネコ:女王様のこと、どう思う?
アリス:どうって、もう全然・・・(言いかけて、後ろにいることに気づいて)お勝ちになるにきまっているわ
女王はチェシャネコの首もはねよと命令するが、
そもそも首から上しかないものを
どうはねるか途方に暮れる死刑執行人
アリス:このネコは公爵夫人のものです 夫人にお尋ねになるべきだと思います
公爵夫人が連れて来られた頃には、チェシャネコは消えていた
第9章 ウミガメモドキのお話
公爵夫人があまりに機嫌よくアリスに話しかけ、近すぎて戸惑う
話すたびに「教訓」をもちだしてうんざりするアリス
その間も女王は始終「首をはねろ」というため、競技者は全員警察に留置されてしまった
王様:お前たちはみな無罪放免じゃ というのを聞いて安心するアリス
女王:おまえ、ウミガメモドキを見たことがあるかい? 自分の生い立ちを話させよう
2人は、眠りこんでいるグリフォンのところへやって来て
女王はウミガメモドキの物語を聞かせるよう命じて去る
グリフォン:
けっさくだよな みんなあの人の幻想なんだ ほんとうはだれも処刑なんかしやしないのさ
ウミガメモドキの悲しみもみんなあいつの空想なんだよ
ウミガメモドキ:お話ししよう 私は本物のウミガメだった
長い沈黙がつづき、ひっきりなしにすすり泣くため、なかなか話が始まらず
口を出さない約束だったが、アリスは次々質問する
勉強した科目に「古代の溺死」「現代の溺死」とかあって可笑しいw
第10章 エビのカドリーユ
エビの話になって「一度食べたことが・・・」と言いかけてやめる
ウミガメモドキ:エビのカドリーユがどんなに楽しいものか見当がつくまいな!
海辺でエビと組んで踊り、空中に投げ飛ばすダンスを大真面目に踊り出す2人
ウミガメモドキ:タラはもちろん見たことあるよね?
アリス:ええ、体中にパン粉がまぶしてあるでしょう?
(こうして、度々、アリスの猫が小動物を食べたり、
動物たちと話している途中で、食べたことがあると言って震え上がらせたりするシーンは身に詰まされる
グリフォン:さあ、今度は君の冒険談を聞かせてくれよ
アリスの奇想天外な話が信じられず、また暗唱をさせるが、今度もナンセンスな歌になってしまう
ウミガメモドキは、『ウミガメスープ』の歌を涙にむせびながら始める
「裁判開始!」という声が遠くから聞こえて、グリフォンに「おいで!」と捕まれて走り出す
第11章 だれがパイをぬすんだか?
ハートの女王と王様が玉座につき、大群衆が集まっていた
法廷の真ん中のテーブルの上にパイを並べた大皿があり
ハートのジャックがパイを盗んだ罪に問われて鎖で縛られて立っている
裁判を初めて見るアリスは興奮する
第一の証人は帽子屋だが、女王を前にしどろもどろ
帽子を盗んだと言われて「これは売り物で、自分用のは持っておりません」(そうなんだ
アリスは突然大きくなりだしたことに気づいて慌てるが内緒にしている
次の証人は料理番で、「証言なんてまっぴらだ」という強い態度で周りはたじたじ
次の証人は、なんとアリス!
第12章 アリスの証言
自分は何も知らないと話していると
王様:身長1マイル以上の者は全員法廷から退去すべし
アリス:私は1マイルもありません!
シロウサギは詩の証拠品を提出し、朗読すると、これまた意味不明
王様:これは重要な証拠じゃな では、このへんで陪審員に・・・
アリス:今の詩は完全にナンセンス 意味なんてこれっぽっちもないわ
パイは皿に戻っていると言うと、女王はまた「このチビの首をちょん切れ!」と命令
アリスはもう本来の大きさに戻っていて
アリス:あなたたちみんな、ただのカードじゃないの!
その途端、トランプのカードは空に舞い上がり、アリスの上にふりかかってきて
気づくと土手の上で、姉の膝に頭をのせて眠っていた
(『ラビリンス』のヒロインみたい
Labyrinth (1986) You have no power over me
(こうしてファンタジーから醒めると同時に、少女は大人に成長していくんだ
おかしな夢を姉に話すと
姉:たしかにおかしな夢ね でも、もうお茶の時間よ
姉は、その後も、アリスや、そのおかしな夢のことを考え
やがて自分なりの夢を見はじめて、自分もなかばふしぎの国にいる気分になるが
同時に、目を開ければ、すべて退屈な現実にかわることを彼女は知っていた
ティーパーティーの茶碗の音は、ヒツジのベル
女王のかな切り声は、羊飼いの少年の声
そのほかの音もすべて慌しい農家の物音
アリスがやがて成長したら、どんな大人になるだろうか
子どもの頃の無邪気で愛にあふれた心を持ちつづけていくだろうか
きっと、アリスは子どもに囲まれて、たぶん昔の不思議の国の夢物語も聞かせるだろう
その子どもたちの目は好奇心に輝いている
アリス自身も素朴な喜びに打ち震えている
なぜなら、子ども時代、あの幸せな夏の日々を、いきいきと思い出すからなのだ
【訳者・高橋廉也あとがき 内容抜粋メモ】
ルイス・キャロルの本名は、チャールズ・ラトウィッジ・ドジソンだが
それが気に入らなかったのか、ペンネームを使った
このルイス・キャロルの名前には、偶然かアリスの綴りが含まれている
キャロルが可愛がった女の子は、アリス・リデル
キャロルが教師をしていたオクスフォード大学の学寮長リデル博士の次女
キャロルは一生独身で、人付き合いが苦手で、とくに大人の女性は苦手
彼は多くの少女と友だちになり、彼が考案したゲームは魅力的で
ポートレートの撮影も、当時は珍しい経験だった
とくに人気だったのは、彼の即興のお話
キャロルは吃音があったが、少女たちの前では出なかったそう
リデル家の3姉妹とは、同じキャンパスに住んでいて、とくに仲良しだった
1862年7月4日 キャロルと友人は、3姉妹とテムズ川支流を舟で下るピクニックに出かけた
そこでせがまれるままに聞かせた話が本書のもとになった
この時、長女ロリーナは13歳、アリスは10歳、イーディスは8歳 キャロルは30歳
アリスは、ちょうど自我が目覚める、理屈が分かりかける年頃
幼年期は過ぎたが、思春期にはなっていない
「常識(コモンセンス)」が身に付き始めたけれど、まだそれで固まってはいない
夢の国でナンセンスなキャラクターや出来事に出くわして、驚いたり、面白がったり
怒ったり、不安を感じたり、さまざまな冒険をする
どんな年齢の読者も、この物語を読めばイキイキとしてくる
童話にありがちな「教訓」などはここにはない代わりに
常識の枠が揺さぶられる時の解放感と、不安感がある
<挿絵について>
よく知られるのはジョン・テニエルの漫画風の挿絵だが
アーサー・ラッカムの叙情的、幻想味あふれる挿絵で翻訳したいという
私たちの長年の望みがやっと実現した
私事だが、訳稿を清書する時、妻・迪が病を得て入院した
息子と娘に看病を兼ねて手伝ってもらった
癌研附属病院頭頸科の皆さんに感謝するとともに
消灯後ひそかに迪とともに清書の一部をやったことを白状し、お詫びします
<新書館の図書の紹介>
『子供部屋のアリス』
ルイス・キャロル ジョン・テニエル/絵 高橋康也・迪/訳
『不思議の国のアリス』出版後20年目にキャロルがもっと小さな子どものために書き直したアリスの妹版ストーリー
荒俣宏さんが『アンデルセン童話集』などを翻訳していると知ってビックリ 幅広いなあ!
ルイス・キャロル/作 高橋康也・迪/訳 アーサー・ラッカム/挿画
改訂版の表紙
※「読書感想メモリスト1」の【児童文学】に追加します
感想メモをまとめている時、自分が一番好きな本のメモがノートにない謎に気づいた 英米文学も同じく
そこで、アーサー・ラッカム挿画の本書を借りてみた
アリスの挿絵といえば、ジョン・テニエルが一番好きだけれども
遅ればせながら知ったエドマンド・デュラックのテイストに似ていて、こちらも素晴らしい
●エドマンド・デュラック
『テンペスト』(新書館) デュラック/絵
●アーサー・ラッカム(ウィキ参照
●ジョン・テニエル
ルイス・キャロルは彼の絵を気に入らなかったんだっけな
彼自身が描いた絵も、ゆるいながら味がある 誰より思い入れが違うし
不思議の国のアリスの挿絵(ウィキ参照
*
本書に出てくるたくさんの動物の中でもっとも注目したいのは絶滅してしまった鳥の「ドードー」
『ドードーを知っていますか』(ベネッセ)
今生きているゾウやライオンも、数十年後には、本や写真の中でしか見られなくなるかもしれない
なんてことにならないように、今すぐ本気で出来ることをしなければならない
世界の象牙の95%…最悪の“象虐待国家”日本
“研究を口実にした捕鯨と残酷なイルカ虐殺で悪名高い日本が、
今度は象密猟の結果である象牙取引の仲介基地の役割を果しているとし、国際環境団体から後ろ指を差されている。
世界自然基金(WWF)は先週、全世界的な野生動植物取引監視ネットワークであるトラフィック(TRAFFIC)が作成した
「象牙の塔:日本の象牙取引と国内市場に対する評価」報告書を公開し、
日本を「世界最大の象牙市場の一つで、活発な象牙加工産業の故郷であり、
個人所蔵の形態で相当な規模の未加工象牙を備蓄している国」と規定した。
このように日本が象牙不法取引の橋渡しとなっているのは、象牙取引に対する規制が不備なためということが環境団体の指摘だ。
伝統的に象牙や象牙製品を好む中国もすでに昨年、2018年から象牙取引を中断すると発表した。
これに伴い、世界自然基金のホームページには、中国で象牙取引禁止が始まる
来年1月1日0時までの残った時間を表示する時計まで掲げてカウントダウンしている。
だが、日本は象牙市場を閉鎖しろとの国際環境団体の要求を拒否し続けてきた。
世界自然基金-香港の保全理事であるキャビン・エドワーズは、自然基金のホームページに掲示された発表資料で
「中国が今年末に合法的象牙取引を禁止するのを機に、日本や他の国々も後に従わなければならない。
毎日平均55頭の象が密猟されていて、象牙市場を開いておくことはできない」と話した。”
*
本書のストーリーは誰もがなんとなく知っているだろうけれども、メモをざっくりまとめみた
とはいえ、数十年ぶりに読んでもやっぱり面白い!!
実在する3姉妹に聞かせた話だけに、面白くないはずがないし
ルイスの複雑怪奇で天才的な言葉の組み合わせは、日本語翻訳で表すのは難しいだろう
▼あらすじ(ネタバレ注意
献詩 ―アリス・リデルへ ルイス・キャロル
ときまさに 黄金の 昼さがり
水の面ゆく 舟足は のたりのたりと
オール持つ 頼りなげな
四本の 小さな手
加うるに 水先を 案内する
手が二本 これも幼く
ああ むごい 三人組!
うとうとと ひそやかに 陽をあびて
まどろんで いたいのに
お話を せよとの仰せ
無理難題 ごめんこうむる
だがしかし いかんせん 多勢に無勢
・・・
ああ アリス! いまきみに
献げよう たわむれの この物語
幼年の 夢が織りなす
思い出の 神秘の模様
はるかなる 国を旅せる 巡礼の
しおれたる 花の冠
高橋廉也・高橋迪訳
第1章 ウサギ穴にドスン
アリスは、姉と土手に座っていたが、退屈してきた
その時、シロウサギがそばを通った
「おくれてしまう!」と言いながら、時計を取り出しているのを見て
好奇心から、考えもなしに、後を追い、深い井戸を落ちていく
とってもゆっくり落ちていくから、いつものクセで1人2役でつぶやく
「ダイナ(アリスの家の猫) お前がここに一緒にいてくれたらいいのに!」
ドスンと落ちたらウサギは見えず、細長い、天井の低い広間
ドアにはすべて鍵がかかっていて、テーブルの上に鍵が乗っている
カーテン裏に40cmほどの小さいドアに鍵はピッタリ
その向うには素晴らしい花園が見える
あすこに行けたならどんなにステキだろう!
次に小さな瓶を見つけて「ワタシヲノメ」と書いてある
飲むと30cmほどに体が縮まり、ドアから出られるサイズ
でも、テーブルに鍵を置き忘れた!
すると、小さなガラスの箱にケーキがあり「ワタシヲタベヨ」とある
第2章 涙の池
今度は背が伸びすぎて、自分の足が見えない
悲しくて何ガロンもの涙を流したので、10cmあまりの水たまりができた
ウサギの落とした扇を振ると縮みはじめる体
でも、また鍵はテーブルの上!
アリスは自分の涙で溺れそうになる
そこにハツカネズミが泳いでくる
「岸へ上がろう そしたら、なぜわしがネコやイヌを嫌うか分かるだろう」
第3章 めためた競争と長い尾はなし
体を乾燥させるにはどうすればいいか話し合ういろんな動物たち
ドードー:体を乾かす一番よい方法は、めためた競争だろう
みんな勝手に走り出し、勝手に止まる いつ競争が始まったか終わったか分からない
ドードー:全員優勝 全員が賞品をもらう
アリスが賞品を渡すことになり、ポケットからボンボンを出してみんなにあげる
アリスは、大好きなダイナの話をする
アリス:
鳥を追いかけるところを見せてあげたいわ!
小さい鳥を見つけると、あっという間に食べちゃうの!
一同はあきらかに動揺して、たちまち皆理由をつけてその場を去ってしまう
第4章 ウサギ 小さいビルを送る
シロウサギが落とした扇と手袋を探しに戻ってくる アリスが話しかけると
シロウサギ:おお、メアリー・アン、すぐ家に行って扇と手袋を持ってきなさい!
アリスは驚きのあまり、指さされたほうにある小さな家に入る
そこでまた小さな瓶に「ワタシヲノメ」とあり、飲むとまた背が伸びて
部屋いっぱいにつかえてしまう
窓から腕が出ているのを見て、外で大騒ぎになっているのが聞こえてくる
いつも運の悪いビルは、煙突から入らされて、アリスに蹴られ、垣根まで飛ばされる
家の中に小石が投げ込まれてお菓子に変わり、それを食べると体は縮む
その場を逃げて、深い森に着くと、ばかデカい子イヌに追いかけられる
棒きれを投げると追いかけて行く
「それにしても、かわいい子イヌだったこと!」
近くに大きなキノコが生えているのに気づく
その上では青虫が水ギセルを吸っていた
第5章 青虫の忠告
青虫:おまえは何者だ?
アリス:今のところ、よく分からないんです 何回も自分がかわっちゃったみたいなの
青虫はアリスに「ウィリアム父っつぁん」を暗唱させると、まったくナンセンスな文章になってしまう
ちょうどいいサイズになるにはどうしたらいいか聞くと
青虫:キノコの一方はおまえを大きくし、もう一方は小さくする
と言って行ってしまう
キノコは完全に丸いので
アリス:さて、どっちがどっちかしら?
一方を食べると、首が伸びて、ハトに卵を狙うヘビと間違えられる
ハト:一体どういうつもりなの! 私、この3週間も一睡もしてないのよ!
縮んだり、伸びたりしながら、アリスはやっともとの身長になることに成功
1mくらいの家を見つけて、キノコをかじり、30cmくらいになる
第6章 ブタと胡椒
サカナ従僕は、玄関を叩くと、カエル従僕に封筒を手渡した
サカナ従僕:公爵夫人宛でございます 女王様からクロッケーへのご招待でございます
アリスは家に入りたいが、中はえらい騒ぎだから誰も聞こえやしないというカエル従僕
中は空気に胡椒がまざって、みんなクシャミをしている
クシャミをしていないのは、料理番と、耳から耳までニヤニヤ笑いの大きなネコだけ
アリス:なぜあなたのネコはニヤニヤ笑うんですか?
公爵夫人:あれはチェシャーネコなのだ
※チェシャー地方の名産はチェシャーチーズ
写真を撮る時に「チーズ」というと笑顔になる
キャロルはポートレート撮影が好きだった
料理番はひっきりなしに手に届くものを公爵夫人や赤ちゃんめがけて投げつけるので
赤ちゃんは泣きっぱなし
アリスが心配すると
公爵夫人:
もしだれもが自分のやっていることが分かっていて、人のことに口出ししなければ
世の中は今よりずっと速くなめらかにまわることじゃろうよ
子守りをしたければやらせてあげよう
公爵夫人は赤ちゃんをアリスに投げてよこした
赤ちゃんは返事のかわりにブーブーいう
どうしたんだろうと覗いてみると、もう間違いなくブタ以外の何物でもなく
これ以上抱いていても無意味だと思い、下におろすと、森の中へ駆けていく
チェシャネコにどこに行きたいかも分からないと言うと
チェシャネコ:
こっちの方角には帽子屋が住んでいる
あっちの方角には三月ウサギが住んでいる
好きなほうを訪ねるがいい どっちも気が狂ってるぜ
ここじゃみんな気が狂ってるんだ 私もあんたも
あんたは今日、女王様といっしょにクロッケーをやるのかい? そこで会おうぜ
そういうと消えてしまう
何度も消えたり、現れたりするので
アリス:あまりいきなり現れたり消えたりしないで 私、目が回りそうだわ
チェシャネコは、こんどはゆっくり時間をかけて消えていったため
最後にニヤニヤ笑いだけがしばらく残った(ここ大好き
アリスは三月ウサギの家に行くことにする
第7章 気ちがいティー・パーティー
食卓では、三月ウサギと帽子屋がお茶を飲んでいて、ネムリネズミが間に挟まっている
帽子屋:大鴉とかけて、書物机と解く、その心は?
アリス:やっと面白くなってきそうだわ!
答えは分からず、帽子屋に聞いても分からないと言う
アリス:答えのないなぞなぞをやって時間を潰すより、もっとましな時間の使い方がありそうなものね
帽子屋:わしみたいに時間のことをよく知っとったら、潰すなどとは言わない 時間は生きものなんじゃから
帽子屋は、ハートの女王の催した大音楽会で歌わなきゃならなかった話をする
帽子屋:
第一節を歌い終わるか終わらないうちに、女王がこうわめいた “こやつの首をちょん切れ!”
それから、時間のやつは、いつも6時ってわけじゃ
いつもお茶の時間だから、茶碗を洗うひまもありゃせん
ある程度時間がたつと席を隣りにかえなければならない
ネムリネズミに話をさせると、エルシー、レイシー、ティリーの3姉妹の話をはじめる
※リデル家の3姉妹の名前にかけている
退屈でナンセンスな話に飽きて、アリスが席を立っても誰も何も言わない
アリス:あんなにばかばしいパーティーに出たの、生まれて初めてだわ
森の木の中にドアを見つけ、それは最初の広間で、
アリスはようやく花畑と噴水のある美しい庭に到達する
第8章 女王のクロッケー場
庭の入り口に白いバラが生えていて、3人の庭師が慌てて赤く塗っている
庭師は数字が書いてあるトランプで、なぜそんなことをするのか尋ねると
赤いバラのはずだったが、間違えて白いのを植えて、女王様に見つかったら首をはねられるから
そこにハートの女王様が、王様、兵隊らとともにやって来る
その中にシロウサギがいて驚くアリス
女王様:この者はだれじゃ?
アリス:アリスと申します、陛下
女王様:その者たちはだれじゃ?
アリス:分かるわけがないでしょ、私は関係ないんですもの
女王様:あれの首をはねよ!
アリス:ナンセンス!
庭師に首をはねろと言うと、アリスに助けを求めに来て、彼らを花瓶の中に隠す
女王様:おまえ、クロッケーができるか?
アリス:はい
女王様:では、ついてくるんじゃ
シロウサギ:公爵夫人は死刑の宣告を受けたんだ 女王様の耳を一発殴っちまったから
クロッケーはこれまで見たこともない奇妙なもの
ボールは生きたハリネズミ、木槌は生きたフラミンゴ、
アーチは兵隊2人がつくっている
みんなてんでに動き回るから、こんなに難しいゲームは初めてだと思うアリス
そこにチェシャネコが現れてホッとする
チェシャネコ:女王様のこと、どう思う?
アリス:どうって、もう全然・・・(言いかけて、後ろにいることに気づいて)お勝ちになるにきまっているわ
女王はチェシャネコの首もはねよと命令するが、
そもそも首から上しかないものを
どうはねるか途方に暮れる死刑執行人
アリス:このネコは公爵夫人のものです 夫人にお尋ねになるべきだと思います
公爵夫人が連れて来られた頃には、チェシャネコは消えていた
第9章 ウミガメモドキのお話
公爵夫人があまりに機嫌よくアリスに話しかけ、近すぎて戸惑う
話すたびに「教訓」をもちだしてうんざりするアリス
その間も女王は始終「首をはねろ」というため、競技者は全員警察に留置されてしまった
王様:お前たちはみな無罪放免じゃ というのを聞いて安心するアリス
女王:おまえ、ウミガメモドキを見たことがあるかい? 自分の生い立ちを話させよう
2人は、眠りこんでいるグリフォンのところへやって来て
女王はウミガメモドキの物語を聞かせるよう命じて去る
グリフォン:
けっさくだよな みんなあの人の幻想なんだ ほんとうはだれも処刑なんかしやしないのさ
ウミガメモドキの悲しみもみんなあいつの空想なんだよ
ウミガメモドキ:お話ししよう 私は本物のウミガメだった
長い沈黙がつづき、ひっきりなしにすすり泣くため、なかなか話が始まらず
口を出さない約束だったが、アリスは次々質問する
勉強した科目に「古代の溺死」「現代の溺死」とかあって可笑しいw
第10章 エビのカドリーユ
エビの話になって「一度食べたことが・・・」と言いかけてやめる
ウミガメモドキ:エビのカドリーユがどんなに楽しいものか見当がつくまいな!
海辺でエビと組んで踊り、空中に投げ飛ばすダンスを大真面目に踊り出す2人
ウミガメモドキ:タラはもちろん見たことあるよね?
アリス:ええ、体中にパン粉がまぶしてあるでしょう?
(こうして、度々、アリスの猫が小動物を食べたり、
動物たちと話している途中で、食べたことがあると言って震え上がらせたりするシーンは身に詰まされる
グリフォン:さあ、今度は君の冒険談を聞かせてくれよ
アリスの奇想天外な話が信じられず、また暗唱をさせるが、今度もナンセンスな歌になってしまう
ウミガメモドキは、『ウミガメスープ』の歌を涙にむせびながら始める
「裁判開始!」という声が遠くから聞こえて、グリフォンに「おいで!」と捕まれて走り出す
第11章 だれがパイをぬすんだか?
ハートの女王と王様が玉座につき、大群衆が集まっていた
法廷の真ん中のテーブルの上にパイを並べた大皿があり
ハートのジャックがパイを盗んだ罪に問われて鎖で縛られて立っている
裁判を初めて見るアリスは興奮する
第一の証人は帽子屋だが、女王を前にしどろもどろ
帽子を盗んだと言われて「これは売り物で、自分用のは持っておりません」(そうなんだ
アリスは突然大きくなりだしたことに気づいて慌てるが内緒にしている
次の証人は料理番で、「証言なんてまっぴらだ」という強い態度で周りはたじたじ
次の証人は、なんとアリス!
第12章 アリスの証言
自分は何も知らないと話していると
王様:身長1マイル以上の者は全員法廷から退去すべし
アリス:私は1マイルもありません!
シロウサギは詩の証拠品を提出し、朗読すると、これまた意味不明
王様:これは重要な証拠じゃな では、このへんで陪審員に・・・
アリス:今の詩は完全にナンセンス 意味なんてこれっぽっちもないわ
パイは皿に戻っていると言うと、女王はまた「このチビの首をちょん切れ!」と命令
アリスはもう本来の大きさに戻っていて
アリス:あなたたちみんな、ただのカードじゃないの!
その途端、トランプのカードは空に舞い上がり、アリスの上にふりかかってきて
気づくと土手の上で、姉の膝に頭をのせて眠っていた
(『ラビリンス』のヒロインみたい
Labyrinth (1986) You have no power over me
(こうしてファンタジーから醒めると同時に、少女は大人に成長していくんだ
おかしな夢を姉に話すと
姉:たしかにおかしな夢ね でも、もうお茶の時間よ
姉は、その後も、アリスや、そのおかしな夢のことを考え
やがて自分なりの夢を見はじめて、自分もなかばふしぎの国にいる気分になるが
同時に、目を開ければ、すべて退屈な現実にかわることを彼女は知っていた
ティーパーティーの茶碗の音は、ヒツジのベル
女王のかな切り声は、羊飼いの少年の声
そのほかの音もすべて慌しい農家の物音
アリスがやがて成長したら、どんな大人になるだろうか
子どもの頃の無邪気で愛にあふれた心を持ちつづけていくだろうか
きっと、アリスは子どもに囲まれて、たぶん昔の不思議の国の夢物語も聞かせるだろう
その子どもたちの目は好奇心に輝いている
アリス自身も素朴な喜びに打ち震えている
なぜなら、子ども時代、あの幸せな夏の日々を、いきいきと思い出すからなのだ
【訳者・高橋廉也あとがき 内容抜粋メモ】
ルイス・キャロルの本名は、チャールズ・ラトウィッジ・ドジソンだが
それが気に入らなかったのか、ペンネームを使った
このルイス・キャロルの名前には、偶然かアリスの綴りが含まれている
キャロルが可愛がった女の子は、アリス・リデル
キャロルが教師をしていたオクスフォード大学の学寮長リデル博士の次女
キャロルは一生独身で、人付き合いが苦手で、とくに大人の女性は苦手
彼は多くの少女と友だちになり、彼が考案したゲームは魅力的で
ポートレートの撮影も、当時は珍しい経験だった
とくに人気だったのは、彼の即興のお話
キャロルは吃音があったが、少女たちの前では出なかったそう
リデル家の3姉妹とは、同じキャンパスに住んでいて、とくに仲良しだった
1862年7月4日 キャロルと友人は、3姉妹とテムズ川支流を舟で下るピクニックに出かけた
そこでせがまれるままに聞かせた話が本書のもとになった
この時、長女ロリーナは13歳、アリスは10歳、イーディスは8歳 キャロルは30歳
アリスは、ちょうど自我が目覚める、理屈が分かりかける年頃
幼年期は過ぎたが、思春期にはなっていない
「常識(コモンセンス)」が身に付き始めたけれど、まだそれで固まってはいない
夢の国でナンセンスなキャラクターや出来事に出くわして、驚いたり、面白がったり
怒ったり、不安を感じたり、さまざまな冒険をする
どんな年齢の読者も、この物語を読めばイキイキとしてくる
童話にありがちな「教訓」などはここにはない代わりに
常識の枠が揺さぶられる時の解放感と、不安感がある
<挿絵について>
よく知られるのはジョン・テニエルの漫画風の挿絵だが
アーサー・ラッカムの叙情的、幻想味あふれる挿絵で翻訳したいという
私たちの長年の望みがやっと実現した
私事だが、訳稿を清書する時、妻・迪が病を得て入院した
息子と娘に看病を兼ねて手伝ってもらった
癌研附属病院頭頸科の皆さんに感謝するとともに
消灯後ひそかに迪とともに清書の一部をやったことを白状し、お詫びします
<新書館の図書の紹介>
『子供部屋のアリス』
ルイス・キャロル ジョン・テニエル/絵 高橋康也・迪/訳
『不思議の国のアリス』出版後20年目にキャロルがもっと小さな子どものために書き直したアリスの妹版ストーリー
荒俣宏さんが『アンデルセン童話集』などを翻訳していると知ってビックリ 幅広いなあ!