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『南極がこわれる』(ポプラ社)

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『南極がこわれる』(ポプラ社)
藤原幸一/写真・文

【内容抜粋メモ】

●序文にかえて/高円宮妃 久子殿下

Niche:ニッチ。生態的地位。

ヒトは狩猟を始めたことで、計画性、組織力、コミュニケーションをとるための言語を獲得した。
→群れが渡るのについていく「遊牧民」が現れた。
→住まいを定着させ、食べ物を栽培する。これが文明の始まりだと言われる。
これは素晴らしいことであると同時に「環境破壊の出発点」でもあった。

置かれた環境に身体を適応させて、そこだけで生息することをしなかったのはヒトだけ。
代わりに火、道具を作って、家畜を飼い慣らした。

すべての動物にとって最大の脅威は、生息地域が侵されることです。

もし私たち一人ひとりが、もうちょっと危機感をもつことができれば、
便利さや、快適さ、利益について、ほんの少しでも欲深さを減らすことができるなら、
生態系のバランスは保てるかもしれません。



 

世界に18種類いるペンギン。
そのコロニーのすぐ横には、基地がある。全部で100箇所ほど。
夏でも土が顔を出す面積は、南極のわずか3〜4%のみ。
そこで、ヒトとペンギンが場所を取り合っている。



ヒナを狙う天敵は、カモメ、チドリ、親鳥もアザラシなどに狙われる。
海にエサが豊富な年だけ2羽のヒナが育つことができる。



「氷河の号泣」
氷河にたくさんの縦筋が入り、融けた水が内部から滝となって噴き出す。


 
温暖化により永久凍土が融け、水の力で脆くなった部分に亀裂が入って崩落した。
産まれて間もないヒナが崖下に転落して凍え死んでしまっていた。

1998年頃から、夏の最高気温が15℃に達した。
これは過去30年にはなかった信じられないほどの高温だ。
基地には雨が降って雨漏りするようになった



雨を経験したことのない幼鳥の羽毛につめたい雨が浸み込み、寒さで凍え死んでいた。


以前はいなかった鳥が飛来し、新種の種、病原菌なども運んでくる。
それらは南極の生態系を変化させ、ペンギンたちを病死させる。



ゴミの道を通らなければ、繁殖地に戻れないペンギンたち


こっちを見ても、あっちを向いてのワイヤーの塊。
無理に登れば怪我をしてしまう。



●基地からでる大量のゴミの山
半世紀以上にわたり世界各国の南極基地がゴミを捨て続けてきた。

 
剥き出しのアスベスト。電池、ドラム缶から漏れる有害な液体が地面を汚している。


エスペランサ基地は、隊員が家族といっしょに暮らしている。
ゴミ処理場が併設され、分別処理されている。

木箱で約300箱/年の生活ゴミが出る。
年に一度アルゼンチンに送り返しているが、過去のゴミまで持ち帰るには手段も予算もない。

昭和基地でも1957年の第一次隊からたまったゴミ340トンの処理に困っている。
閉鎖基地はそれそのものが巨大なゴミと化している。



1915年に浅瀬に座礁したノルウェーの捕鯨船。

南極捕鯨の「史跡」に認定され、撤去する必要がなくなった。
これは「史跡という名を借りた永久投棄」


 


南極は地球最後の「楽園」でした。それは、そこにヒトがいなかったからでした。

地球上の国々が、それぞれの事情を超えて、力に応じた知恵と力を出せるはずです。

「南極からはじめよう」



追。
ゴミ山は基地の隊員たちによって、少しずつ撤去作業が始まっている。


ジェンツーペンギンの大あくび。温暖化であくびをする回数も増えた。


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