Quantcast
Channel: メランコリア
Viewing all articles
Browse latest Browse all 8633

『ユニバーサルデザインってなに?』(あかね書房)

$
0
0
ユニバーサルデザイン1 みんなのくらしを便利に『ユニバーサルデザインってなに?』(あかね書房)
東京大学先端科学技術研究センターバリアフリープロジェクト/監修 成松一郎/文

なんとなく聞きかじったことのある言葉だけど、なるほど、こうして見ると、
普段何気なく利用しているものがユニバーサルデザイン(UD)なんだなってことが分かった。
と同時に、さまざまな立場の人に、より暮らしやすい世の中にするためにはどうしたらいいか、
その立場にたって考えることが必要だとわかる1冊。


【内容抜粋メモ】

●ユニバーサルデザインとは?
アメリカの大学教授ロナルド・メイスさんは障害を持ち、車イスの人だけでなく、
どんな障害、年齢、性別、国籍の人にも使いやすいデザインを考えることを提案した。

ユニバーサルデザインの7原則(1997年に発表
1.だれもが公平に利用できる。
2.使うときの自由度が高い。
3.使い方がカンタン。
4.必要な情報がすぐにわかる→ピクトグラム(絵文字)や多言語表示の看板
5.誤作動や危険を防ぐ。
6.体への負担が少ない。
7.使うための充分な広さがある。


**************************生活の中のユニバーサルデザイン

【視覚障害】

●色弱
日本では男性が1/20人、女性1/500人、全体では300万人いる。

 
特定の色の組み合わせが分かりにくい/色の名前が文字で表示されている

●弱視
メガネ等で矯正しても視力が低い状態。視野が狭い、暗いと見えにくい、色が分かりにくいなど。
例:「単眼鏡」「拡大教科書」


手触りでジュースや牛乳などを区別できるように「切り欠き」がついているパック

●病院
名前が呼ばれると振動したり、メッセージが表示される「小型受信機」をわたす病院もある。

●トイレ


●盲導犬
全国で盲導犬を希望している視覚障害者は約7800人いるのに対し、
活躍している盲導犬の数は957頭(2005年)とまだまだ少ないのが現状。



【聴覚障害】

・手話(テレビ電話機能付き携帯電話を使って、手話で会話ができる
・指文字=五十音を指の形で表す。手話と併用して使われることが多い。
・口話=相手の唇の動きなどで理解し、自分も声に出して意思を伝えること。
・筆談=バスやタクシーに「磁気ボード式の簡易筆談器」があれば便利。


 
耳あな型補聴器/耳かけ型補聴器

小さな音はよく聞こえ、大きな音は自動的に抑える機能のあるものもある。
ボリュームがリモコンで調整できる補聴器も出てきた。
早口で話されると聞き取りにくいため、ゆっくり、はっきり話すことが大切。


字幕放送対応のテレビ

アニメはとくに、口の動きに変化がないのでまったく分からない。
字幕のついたアニメや邦画、音声解説がついた映画はまだほとんどない。

音声で知らせてくれる体温計・体重計。

●読書
・点字、拡大文字、音声に変える。
・「対面朗読サービス」を利用する。



【盲ろう】
見えない、聞こえない障害。日本には推計1万数千人いるとされる。


  

指点字/触手話/手書き文字



【知的障害、自閉症】
 
自分で選んで決めたり、それを言葉で伝えることが難しいため、
キーボードで押した文字を読み上げるコミュニケーション機器がある。

「自閉症」=人とのコミュニケーションや、自分の状況を理解するのが苦手。


「何分まで○○をする」というのが理解しにくいため、「クォーター・アワー・ウォッチ」が便利。
シンボルでこれからやることを示し、時間の経過が目で見てわかる。



【読み書き障害(ディスレクシア)】
「LD(学習障害)」のひとつ。音で聞くと理解できるが、文字を読んだり、書いたりが難しい。
→ボランティアの人が本の内容を吹き込んだテープを繰り返し聞く。

【ADHD(注意欠陥多動性障害)】
ひとつのことに注意を集中するのが難しい。

【アスペルガー症候群】
自閉症の一種。


発泡スチロールをこする音を聞いた時、「いやな音」を抑える力がはたらくAさんに比べ、
いやな音を抑える力が弱く、血流が増えて、逆に強く反応しているBさん。
この実験から、不快な音だけを除ける音響フィルターのようなものを考えている。

(すごい 騒音のない世界って夢のよう・・・てか、私の脳はBさんと同じ仕組みでは驚×∞



【車いす使用者】

美術館・博物館:混雑している時は、鑑賞しにくい。
スーパーの狭い通路が通れない。高い棚の商品がとりにくい。



スタンディング機能のついた車いす


床ずれができにくいエアマットレス、低反発マットレス

「低床バス」
乗降口の床が低いので、足腰の弱いお年寄り、子どももラクに乗り降りできる。


オストメイトが排泄物を捨てたり、パウチを洗う流しがついているトイレもある。

「オストメイト」=人工肛門、人工膀胱をつけた人。腹部につくった排泄口につけたパウチにためる。


●マーク、シンボル


左利きの人は、右利き用にできている缶切りや包丁が使いづらい。


**************************これからのユニバーサルデザイン

「シーン検証」
さまざまな年齢、体の状況の人にモニターとして登録してもらい、生活のいろいろな場面を検証する。
日常生活には、本人も自覚していない動作がたくさんある。
そうした無意識の動作に気づいて、製品づくりのヒントにすることが目的。




●外見と障害、外見と偏見
外見では障害のあることが分からない人たちもたくさんいる。

「内部障害」
内臓疾患、HIVなど免疫機能障害のこと。
長時間立っているのが難しいため、電車の優先席に座っていると「なぜお年寄りに席を譲らないのか」という目で見られる。

「ユニークフェイス」
1999年、結成された団体。「固有の顔」の意。
代表の石井さんには、生まれつき顔半分に大きなアザがあったため、自分に自信が持てず、
学校でいじめにあったり、就職や結婚で差別された経験をした。
機能障害をともなわない外見の問題は、理解されにくい。

アザや傷に視線を感じることが多いため、目を見て話してくれる人に信頼感を持つ。
ぜひ、目を見て話してほしいと呼びかけている。



【関連用語】

●自助具
生活動作に困難のある人が、できるだけ自立してできるよう工夫した道具。
愛知県に住む加藤源重さんは、56歳の時、機械の事故で右手の指を失ってしまい、
「日本の自助具は、世界から30年遅れている」という記事を読み、自分で作ることを考えた。
現在、仲間とともに「福祉工房あいち」でオーダーメイドの用具づくりをしている。

嚥下障害=食べ物を飲み込むのが大変な人。

白杖=視覚障害者が使う白い杖。


「大切なのは、相手の立場を自分に置き換えてみること。それは、いつか自分自身を助けることにもなる」

「本当に辛いのは、見えないことや聞こえないことそのものではなく、他者との心の交流が消えてしまうこと。
 コミュニケーションが不足すれば、心は窒息してしまう」

「多くの差別は、対話の不足から生じる」




【関連団体】

●東京大学先端科学技術研究センター バリアフリープロジェクト
・物理的バリアフリー
・制度面のバリアフリー
・文化、情報面のバリアフリー
・心のバリアフリー=「可哀相」「気の毒」と勝手に同情される。

電子投票機=政策を決定する過程に、どう障害者が参画すればよいかについても提言している。

さまざまな人が実際使ってみて、検証を重ねることが大切。
・製品や建物の利用者
・メーカー
・施設の管理者
・子どもたち
・障害や不便さのある人たちの団体
・バリアフリーに取り組む技術者
・研究者
・行政

「バリアフリー」は不便さの原因となるバリア(壁)を取り除くこと。
ユニバーサルデザインとバリアフリーは、お互いに補い合う関係にある。



【関連本】

「ゆうことカリンのバリアフリー・コミュニケーション」
「怠けてなんかない! ディスレクシア 読む・書く・記憶するのが困難なLDの子どもたち」
「五体不満足」乙武洋匡 「障害は不便です。だけど、不幸ではありません」
「どんぐりの家」山本おさむ
「自閉っ子、こううい風にできてます!」花風社 アスペルガー症候群
「博士の愛した数式」
「三河の円陣」加藤源重


Viewing all articles
Browse latest Browse all 8633

Trending Articles