■ドラマ『高校入試』(全13回 2012年10月6日〜12月29日OA)
原作:湊かなえ 主題歌:♪青い春/back number
出演:
【学校関係者】
長澤まさみ :春山杏子(英語、帰国子女)
南沢奈央 :滝本みどり(音楽、菫ヶ丘女子高校出身。相田と付き合っている)
中尾明慶 :相田清孝(体育、在学生の石川衣里奈、滝本みどりと付き合っている)
徳山秀典 :小西俊也(英語、清煌学院高校出身)
阪田マサノブ:水野文昭 (社会、一高出身)
羽場裕一 :松島崇史 (英語、一高出身。村井の恩師)
篠田光亮 :村井祐志(数学、県立橘第三高校出身。松島の元生徒)
高橋ひとみ :坂本多恵子 (英語教科主任、一高出身)
小松利昌 :宮下輝明(美術、一高出身)
斉木しげる :荻野正夫(情報処理担当、一高出身)
清水一彰 :上条勝 (教頭)
山本圭 :的場一郎 (校長)
【受験生・父兄ほか】
山崎紘菜:石川衣里奈 (杏子が受け持つ2年B組の女子生徒、相田と付き合っている)
入江雅人:沢村幸造 (同窓会会長。親子代々一高の卒業生。翔太の父)
清水尋也:沢村翔太 (受験生。兄も一高卒業生。松島良隆をイジメている)
荒木宏文:沢村哲也 (翔太の兄。一高卒業生だがフリーター)
高杉真宙:松島良隆 (受験生。松島崇史の息子。沢村翔太にイジメられている)
生田智子:芝田昌子 (麻美の母親。夫は県会議員)
美山加恋:芝田麻美 (受験生。ケータイ依存症)
【その他関係者】
倉貫匡弘:徳原優介 (旅行会社「大洋ツーリスト」社員。杏子の元同僚。)
姜暢雄 :寺島俊章(杏子の元恋人)
中村倫也:田辺光一 (事件の5年前に一高を受け、自己採点では合格ライン上だったが落ちて、引きこもる)
柾木玲弥:田辺淳一 (受験生。光一の弟)
ほか
「高校入試なんて、ぶっつぶしてやる。」
さすが、湊かなえさん。見始めたら止まらない!
毎作、教育、子育て、社会システムを鋭く糾弾しつつも、一流のミステリーでもあるってところがスゴイ。
受験生同士ですでに競争、牽制し合って、弱い者を排除しようとするって、一体、子どもたちはどうなっちゃったんだろう
そんな風に育てた親のせいか? 社会全体の風潮のせいか?
相変わらず、湊かなえさんの切り口は鋭いなあ。
今学生の子どもたちと、その親みんなにも、この見事な歪みっぷりを見て欲しい。
試験会場の徹底ぶりも凄まじい。まるで囚人を閉じ込めた牢獄みたいだ。
でも、どんなにルールを細かく、厳しくしても“ヒューマンエラー”を100%なくすことは不可能で、それを責めるのは酷だ。
ケータイを回収したって、今どき何個も持っているコもいるだろうし。
私も気持ち的には「ぶっつぶせ」側だな。
生まれた瞬間から無意味な教育競争に巻き込まれて必死に走り続け、
つねにギリギリの精神状態で綱渡りをしている子どもたちの姿が浮かび上がる
大人の作り上げた「お受験」「高学歴主義」等に名を変えた金儲けのシステムやルールに
子どもたち自身が反発の声を上げなきゃなにも変わらないのかもしれない。
いつかの大学紛争みたいな暴力行使じゃ、それはそれで問題だけど。
でも実際、なにかを変革するには、大きな勇気、行動力、“責任を背負う”必要性が
伴うものだということを言いたかったのではないだろうか。
観ていると、なんだかんだゆって、この学校の教師って、自分の言いたい事は正直にゆって、
互いを非難し合っても、事件に対応しようという思いで結束し合って、その後もけっこううまくやっていけそうじゃない?
その後の気まずさを考えたら、わたしなら、皆の面前であんなに自分を曝け出したり、人を非難したりできない。
でも、そうゆう“腹を割った”自由な意見も言える職場のほうが、結果的に仕事の効率も上がるし、いやすい環境なんだと思う。
こうゆう、自分の感情も含めて意見が言える人になりたいなあ!
私は、後でゆっくり考えて、考えて、文章として書くことはできても、
こうした毎日顔を付き合わせる密な人間関係で、リラックスできないから、彼らみたいな人が羨ましい。
人がゆったひと言ひと言に左右されやすく、中傷にはすぐ自分を責めて傷ついてしまうし
【あらすじ(ネタバレ注意)】
第1話
帰国子女の英語教師・春山杏子が赴任したばかりの「一高」は、地元ではNo.1のステイタスを持っている
一高に合格したら勉強机を捨てる「粗大ゴミ事件」伝説などあり、
有名私立高校や、東大よりも一高さえ出れば、あとはどんな人生を歩もうが関係ないとでも言うような
一高OBの教師らの発言、結束力に疑問を持つ杏子。
その一高の入学試験が迫る中、中学の裏サイト的SNSでは「名無しの権兵衛」から
「高校入試なんて、ぶっつぶせ!」という強いメッセージが書き込まれ、エスカレートしてゆく。
英語教師・松島の息子・良隆も一高の受験生のため、誤解を招かぬよう、今年は試験当日は職員室で待機する予定で、
その他の教師は、3人1組となって1つの教室を担当し、机の落書きを消したり、掃除をして緊迫の中で準備を進める。
以前、採点を間違えた英語教科主任・坂本は、減給処分を受けたことを、美術教師・宮下らに注意されおもしろくない
音楽教師・滝本みどりは、試験が終わったらすぐ高級リゾートホテルで彼氏と宿泊デートするつもりで、
以前「大洋ツーリスト」に勤めていた杏子に、なかなか手に入らないゴールドカードを頼む
彼女は、同じ一高の教師である体育教師・相田清孝と付き合っている。
だが、相田は、あるきっかけがもとで在学生・石川衣里奈と周囲に秘密で付き合っている。
第2話
それぞれ掃除の際、教室に入ると「高校入試なんて、ぶっつぶせ!」と書かれた張り紙を発見して驚愕する。
掃除大臣として有名な相田は「杏子LOVE」というメモをA組の黒板の上から見つける。
B組も探してみたら、坂本のケータイが見つかった。
石川衣里奈は、以前、坂本からケータイを取り上げられたことで恨んだ犯行では?という説が出る。
水野が代表して校長らに伝えると、「入試が終わるまで問題は伏せたまま保留。その代わり何か起きたら校長が責任をとる」と言い渡される。
滝本みどりは、芸能人ですらカードがないと入れない高級ホテルのゴールドカードを紛失して焦りまくる
第3話
以前、石川衣里奈のケータイが廊下で鳴ったために、他の生徒が集中できなかったという問題が起きたことを踏まえ、
今年から試験教室内であらかじめ全生徒のケータイを回収し、終日使用禁止とし、破った者は失格とみなすルールを張り出す。
ついに試験が始まり、最初は「国語」。同時にネットの掲示板では、まるで実況中継のように問題や状況が書き込まれてゆき話題となる。
保護者は休憩所に待機。前回、心配と退屈でたまらなかった母親が韓流ドラマのDVDを持ち込み、
皆で観ることにすると、夢中になってランチも忘れてみいってしまう
2時限目は「数学」、3時限目は「社会」。杏子は、自分が担当する教室の受験生の1人・田辺淳一から
「今年の桜はいつ咲きますか?」と聞かれる。
滝本みどりは、リゾートカードと、社会科問題の「応仁の乱」で検索して、実況中継で試験の問題まで書き込まれているサイトを見つける。
第4話
4時限目は「理科」。「この実験問題は危険だから文部科学省で禁止したため分かりません」と訴える生徒に、
「条件はみな同じ。座学でも分かる程度だ」と言う水野。
それぞれの教室でも、問題の難しさに泣きだす生徒など、似たような状況があることに気づかない教師たち。
宮下は「教師の人事は各校の校長同士がトレードする。一高の校長ともなれば他とは別格だ」と話す。
校長の天下りの話もして、郷土資料館館長や、公民館館長なんて職につけるんだ/驚
宮下「その点、新任教師は最初の赴任先に最低4年はいなければならない規則があるから、思い切ったことが言える」
大洋ツーリストの徳原優介は、杏子に頼まれて再発行したカードを持って、試験中は部外者立ち入り禁止の学校に入り、滝本みどりに渡す。
最後は「英語」。解答用紙が1枚足りないと気づいた杏子は、1枚予備を足す。
ケータイ依存症の芝田麻美は、ケータイ回収の際、「持っていません」と嘘をつき、ポケットに入れていたが、
母からかかってきて着メロが響きわたってバレてしまい、失格・退室と言われ過呼吸を起こして保健室に運ばれる。
その騒ぎの間、苦戦していた沢村翔太がカンニングするのを見た松島良隆は「告発文」を答案用紙に書いた。
杏子が芝田麻美を送ったので、教室には教師が2人となり、回収した生徒のケータイを水野が取りに行く間、
村井が1人で答案用紙を回収。1枚足りないと気づき、先ほどの芝田麻美の分だと思って教師机の中の1枚を足す。
第5話
石川衣里奈は、試験中に相田に会い、彼がみどりと付き合っていることを知り「許さない」という。
みどりは校内を走っていた石川衣里奈を見かける。在校生も立ち入り禁止。
芝田麻美が失格と聞いて激怒した母・昌子は、自分がケータイで応援メールを送ったのは、
保護者室に「携帯使用可」と書いてあったからだと猛反論した。
麻美は「黒板の貼り紙には失格とまでは書いていなかった」と証言し、
実際、確認すると、張り紙はB組のみ去年のものと判明。焦った校長は失格を取り消すとなだめてしまう。
しかし、SNSにはそのやりとりも全て書き込まれ、「県会議員の子どもが合格したら、皆で訴えよう」と炎上する。
やっと採点の段階となり、答案用紙を持った坂本は、それを手洗いの脇に置いて、トイレに入り、出たところで松島と会う。
採点する教室で、坂本と相田がぶつかって答案用紙がバラまかれた際、白紙が混ざっていることに気づいた相田は予備だと思って脇に置く。
宮下が告発文を発見。告発文を書いたのは松島先生の息子で、カンニングをしたのが「受験番号55」同窓会会長の息子であると分かって騒然となる。
そして再び宮下が「・・・答案用紙が1枚足りません」と報告する
白紙が1枚あったことを思い出した相田。それが抜けている「受験番号46」の田辺淳一か?白紙は学校側の回収ミスか!?
第6話
石川衣里奈の回想。去年の入試の際、試験中にケータイが鳴ってしまい、相田がとりなしてくれたが、
同級生2人に「親友が猛勉強したのに、あなたの着メロがストーカーのと同じで頭が真っ白になって落ちてしまった」と責めてイジメが始まる。
相田は落ち込む衣里奈を男子バレー部のマネージャーに誘ってくれたキッカケで、衣里奈は相田を好きになる。
採点は教師同士で3回まわしてチェックしてから、終わった順に校長室で2人1組でPCに合計点を入力してゆく。
採点の注意事項も細かい 答えが曖昧な教科はとくに難しいけど、「AかaでもOK」なんてところまで
「マークシートか、採点は他の業者に依頼するとかにして欲しいよ」って教師の悲鳴も分かる。
芝田麻美はカキコミに自分のことが書いてあり、「一高には合格しても行かない。
なぜママはいつも“大抵は”って決め付けて、わたしの意見を無視するの?!」と大喧嘩する(もっともだ
ときどき、杏子と元彼のフラッシュバックが入る。受験関連で失意にある彼氏をなぐさめると、
「世の中そうやって開き直ったもん勝ちなのか?」と問われる。
第7話
5年前、田辺光一が一高を受験した時の回想。自己採点した時点では合格ラインだったが、合格発表では落ちていた。
お祝いの準備をしていた母にそれを告げると「パパになんて報告すればいいのか?」と泣き崩れる。
光一は、自分の努力などを一切無視した言葉に傷つき「なんだよ、それ」と激怒する。
(なんだろう、この完全に縦割りで奴隷的な家族って・・・怖×∞
それを見ている兄思いの弟・淳一。
答案用紙が1枚紛失したことを校長らに報告すると、情報処理担当・荻野正夫は、1人1人に事実確認すると提案する。
皆、枚数は確認したが、受験番号までは把握せずにいたことを誤魔化す。
白紙は「受験番号46」の田辺淳一か?彼の他の教科は100点を含め高得点ばかりで、内申書も英語は得意と書かれてあり困惑する上司ら。
他の教師が解散後、関係者は残って、校内中を回って紛失した解答用紙を探すが見つからない。
そこにまた同窓会会長・沢村幸造が現れ、外の窓に解答用紙が貼られているのを見つけたといって騒ぐ
でもそれは紛失した46番ではなく、55番の沢村翔太だったからまた混乱する。55番が2枚あるのはなぜか???
第8話
議員の妻・芝田昌子までまた乗り込んできて、2人はカキコミを知って愕然とする。
2人の乱入も書かれていたため、情報が漏れないため水野とともに視聴覚室で議論となる。
教頭・上条勝は、また神経性の腹痛に襲われ、55番の解答用紙と、採点一覧表画面を出したままトイレに行く。
(だから人的ミスを完全になくすなんてムリだって。人数が多ければ多いほど
第9話
「55と書き入れたのは沢村さんではないか?」説が出る。息子の成績が思わしくないのと、
会長自身は英語が得意で、ひと目見て回答が高得点と分かり、受験番号が空欄だったら魔がさすのも分かるというもの。
「内通した教師がいるのでは?」説も浮上するが、水野は冷静に「サイトの管理人に閉鎖するよう警告します。
受け入れられなかったら、個人を“いわれのない”誹謗中傷で名誉毀損したと訴える」案を出し、
芝田昌子はとても気に入り、来期の一高在留の口約束までする。
坂本らは「少子化によって学校も統廃合で少なくなり、教師のキャリアアップも難しくなった」現状をもらす。
サイトに「関与してるのはM先生だ」というカキコミを見て、松島、みどり、村井らが疑われる。
村井は三高出身で、以前「一高の採点に不向きでは?」とクレームを受けているし、
みどりは、一高を受けて落ち、一高に赴任した当初は喜んだが、音楽の授業が他の教科の自習時間にされていることを愚痴っていた。
教師が集められ会議となり、まずサイトに警告文を書き込む。
沢村哲也、沢村翔太、松島良隆らも自宅でサイトの存在に気づき、成り行きを見守る。
第10話
芝田麻美の回想。中学の友だちグループが一緒に遊びにいった話を聞いて、「私も行きたかったな」というと、
「ケータイ持ってないから」という理由だったから、麻美は母にケータイを買ってもらったが結局メールは来ず心に深い傷を負う。
だが、友だちの一人から今回の事件で励ましのメールをもらい、泣いて喜び、やはり一高を受けるよう考え直すが、
その直後、麻美に関する中傷カキコミが続き、再び心を閉ざす。(“ハブる”っていうの?
第11話
村井は、自分が高成績であったにも関わらず、父がリストラになった経済的理由で一高に行けなかった屈辱を吐露する。
サイトを進行してきた一人・田辺淳一が既に有名校・清煌学院に合格しているということがバレて、サイトは冷める。
「高見の見物だったのかよ。萎える」
校長はサイトを見ながらボヤく。
「俺たちの若い頃は体を使って、リスクを冒して闘って、自分たちの要求を勝ち取ってきたんだ。
時代の流れは仕方ない。でも、今の若者たちは名乗りもせず主義主張をこんなところに書き込んで、
何かを変えられると本気で思っているのかねぇ」
一理あるけど、主張を押さえ込み、無力にしてしまったのは大人じゃないのか?
昔は薄給の公務員より、サラリーマンのほうが見合いの条件が上とみなされたって話にも疑問。
第12話
校長「人間は元々、能力に差があることを誰もが認めなきゃならんのだ。
その中でその者なりに努力をすればいい。そして、その努力に対しては、
なんらかの形で認められたり、称賛されるべきだとも思う。
だが、それは学力を判定する場に持ち込むものではない」
荻野「では、どこで?」
校長「親が家で褒めてやればいい。自分で自分を称えてみればいい。
昔は皆そうだったじゃないか。徒競走を皆でお手てつないで走らなくても、
ビリでも思いっきり走ったら、オレのお袋は最後まで諦めずによく頑張ったねって褒めてくれたもんだよ」
杏子の回想。
大洋ツーリストに入り、修学旅行で高校担任の寺島俊章と知り合って付き合い出す。杏子に教師になることを勧めたのも寺島。
「あいつら体はデカいけど、まだまだ子どもなんです。
一方的に処分するんじゃなくて、どうしてダメなのかちゃんと理由を説明しないと理解しない」
だが、あることが原因で心を病み、飲酒し道路に飛び出し交通事故で亡くなった。
杏子はその本当の理由が知りたくて教師になり、実際に一高で教師となり疑問を持ち始めた。
一高に受かった生徒たちは、それをそれほど誇りを持っていないこと、
OBだということにこだわって地元に残る人たちは、一高出身を自慢し、他人を見下した態度をとっているなど。
坂本「昔、努力したことを今の励みにしてどこが悪いの? それじゃあ、若いうちに努力しなくてもいいの?
コツコツと堅実に生きてきたきた人たちよりも、死ぬ前にパッと一花咲かせた人たちのほうが偉いってゆうの?」
杏子「いいえ、ずっとそこに留まっていればいいと思います。その価値観を他人に押し付けなければ、
誰にも迷惑はかけないだろうし、幸せだとは思いますから」
「先ほどの村井先生の話にも考えさせられました。教師の判断が1人の生徒の未来を左右することもあるのだと」
村井「挫折を知らない人には分からないんですよ。帰国子女の春山先生には分からないですよ。
自分だって過去の肩書きに頼っているじゃないですか」
杏子「過去の肩書き。そうゆうことか。もういい加減気づいたら? 過去に留まり続けていることに」
村井は、他人のせいばかりにして、冷静な自己反省などが欠けていたことに気づく。
最終話
杏子「問題定義をすれば帰国子女だからとあしらわれる、小さな問題はなかったことにされる、
よほど大きな事件が起きないと学校は真剣に動かない。正体を現わさない。
そもそも、なぜ採点ミスが4ヶ月も経ってから見つかったのか?」
他の教師に田辺光一の創ったドキュメンタリー動画を見せる。
自己採点との食い違いを確認するため「開示請求」を求めて知ったのは、
解答はほぼ合っていたのに、受験番号を書き忘れたために0点になった、自分のミスだった。
「でも、これは0点にされるようなことなのだろうか?
他の生徒に聞いたら、番号を確認するよう最後に声をかけた担当もいた。
最後に確認して、抜けている者に書かせた担当もいた。そういう担当に当たらなかった自分の運が悪かっただけなのか?」
「学校側は試験監督ごとに対処法が異なるといった不公平なことがないよう問題点を話し合い、解決策を統一してもらいたい。
学校側にとっては1年に1度の行事と同じようなものなのかもしれないが、受験生は人生を賭けて挑んでいるのだから」
(それより、高校受験で人生が決まるなんて仕組みがおかしいんじゃないか?
このドキュメンタリー動画は賞をとり、その後開示請求が広く認知されて増え、採点ミスをした坂本らの減給処分につながった。
告発としては成功したが、賛辞するカキコミが次第にある人物により理詰めで否定され、あとは延々と中傷の嵐となる。
それがキッカケで光一は高校中退して引きこもり、母は家出、父はほとんど帰らなくなった。
そんな中傷で傷つくほうがおかしいという坂本に、村井は
「自分のことじゃないからそんなことが言えるんです。たとえ無記名でも悪意の塊である言葉は
ココロを破壊する恐ろしい力を持っているんです。放った本人には分からない。他人にも分からない。
言葉を受けた本人だけが、息も出来なくなるような苦しみを受けるんです」
杏子「失う覚悟のない者は、責任すら取らせてもらえない。
その代わり、身代わりになった人の思いを背負わなければならない。
何かを変えようという気持ちを持つことは大切です。でも、やり方は考えないといけない。
“責任を負う”という覚悟を持って」
入学した生徒への杏子の最初の言葉。
「私は、高校とは社会に出る準備期間だと思っています。
だから、みんな、やりたいことに思い切りぶつかってください。
時には砕け、傷つき、涙を流すことがあるかもしれません
だけど、私はそれらを全力で受け止めます。それが私の役目だから
どんなことにも恐れず、真っ直ぐ前を向いていきましょう」
原作:湊かなえ 主題歌:♪青い春/back number
出演:
【学校関係者】
長澤まさみ :春山杏子(英語、帰国子女)
南沢奈央 :滝本みどり(音楽、菫ヶ丘女子高校出身。相田と付き合っている)
中尾明慶 :相田清孝(体育、在学生の石川衣里奈、滝本みどりと付き合っている)
徳山秀典 :小西俊也(英語、清煌学院高校出身)
阪田マサノブ:水野文昭 (社会、一高出身)
羽場裕一 :松島崇史 (英語、一高出身。村井の恩師)
篠田光亮 :村井祐志(数学、県立橘第三高校出身。松島の元生徒)
高橋ひとみ :坂本多恵子 (英語教科主任、一高出身)
小松利昌 :宮下輝明(美術、一高出身)
斉木しげる :荻野正夫(情報処理担当、一高出身)
清水一彰 :上条勝 (教頭)
山本圭 :的場一郎 (校長)
【受験生・父兄ほか】
山崎紘菜:石川衣里奈 (杏子が受け持つ2年B組の女子生徒、相田と付き合っている)
入江雅人:沢村幸造 (同窓会会長。親子代々一高の卒業生。翔太の父)
清水尋也:沢村翔太 (受験生。兄も一高卒業生。松島良隆をイジメている)
荒木宏文:沢村哲也 (翔太の兄。一高卒業生だがフリーター)
高杉真宙:松島良隆 (受験生。松島崇史の息子。沢村翔太にイジメられている)
生田智子:芝田昌子 (麻美の母親。夫は県会議員)
美山加恋:芝田麻美 (受験生。ケータイ依存症)
【その他関係者】
倉貫匡弘:徳原優介 (旅行会社「大洋ツーリスト」社員。杏子の元同僚。)
姜暢雄 :寺島俊章(杏子の元恋人)
中村倫也:田辺光一 (事件の5年前に一高を受け、自己採点では合格ライン上だったが落ちて、引きこもる)
柾木玲弥:田辺淳一 (受験生。光一の弟)
ほか
「高校入試なんて、ぶっつぶしてやる。」
さすが、湊かなえさん。見始めたら止まらない!
毎作、教育、子育て、社会システムを鋭く糾弾しつつも、一流のミステリーでもあるってところがスゴイ。
受験生同士ですでに競争、牽制し合って、弱い者を排除しようとするって、一体、子どもたちはどうなっちゃったんだろう
そんな風に育てた親のせいか? 社会全体の風潮のせいか?
相変わらず、湊かなえさんの切り口は鋭いなあ。
今学生の子どもたちと、その親みんなにも、この見事な歪みっぷりを見て欲しい。
試験会場の徹底ぶりも凄まじい。まるで囚人を閉じ込めた牢獄みたいだ。
でも、どんなにルールを細かく、厳しくしても“ヒューマンエラー”を100%なくすことは不可能で、それを責めるのは酷だ。
ケータイを回収したって、今どき何個も持っているコもいるだろうし。
私も気持ち的には「ぶっつぶせ」側だな。
生まれた瞬間から無意味な教育競争に巻き込まれて必死に走り続け、
つねにギリギリの精神状態で綱渡りをしている子どもたちの姿が浮かび上がる
大人の作り上げた「お受験」「高学歴主義」等に名を変えた金儲けのシステムやルールに
子どもたち自身が反発の声を上げなきゃなにも変わらないのかもしれない。
いつかの大学紛争みたいな暴力行使じゃ、それはそれで問題だけど。
でも実際、なにかを変革するには、大きな勇気、行動力、“責任を背負う”必要性が
伴うものだということを言いたかったのではないだろうか。
観ていると、なんだかんだゆって、この学校の教師って、自分の言いたい事は正直にゆって、
互いを非難し合っても、事件に対応しようという思いで結束し合って、その後もけっこううまくやっていけそうじゃない?
その後の気まずさを考えたら、わたしなら、皆の面前であんなに自分を曝け出したり、人を非難したりできない。
でも、そうゆう“腹を割った”自由な意見も言える職場のほうが、結果的に仕事の効率も上がるし、いやすい環境なんだと思う。
こうゆう、自分の感情も含めて意見が言える人になりたいなあ!
私は、後でゆっくり考えて、考えて、文章として書くことはできても、
こうした毎日顔を付き合わせる密な人間関係で、リラックスできないから、彼らみたいな人が羨ましい。
人がゆったひと言ひと言に左右されやすく、中傷にはすぐ自分を責めて傷ついてしまうし
【あらすじ(ネタバレ注意)】
第1話
帰国子女の英語教師・春山杏子が赴任したばかりの「一高」は、地元ではNo.1のステイタスを持っている
一高に合格したら勉強机を捨てる「粗大ゴミ事件」伝説などあり、
有名私立高校や、東大よりも一高さえ出れば、あとはどんな人生を歩もうが関係ないとでも言うような
一高OBの教師らの発言、結束力に疑問を持つ杏子。
その一高の入学試験が迫る中、中学の裏サイト的SNSでは「名無しの権兵衛」から
「高校入試なんて、ぶっつぶせ!」という強いメッセージが書き込まれ、エスカレートしてゆく。
英語教師・松島の息子・良隆も一高の受験生のため、誤解を招かぬよう、今年は試験当日は職員室で待機する予定で、
その他の教師は、3人1組となって1つの教室を担当し、机の落書きを消したり、掃除をして緊迫の中で準備を進める。
以前、採点を間違えた英語教科主任・坂本は、減給処分を受けたことを、美術教師・宮下らに注意されおもしろくない
音楽教師・滝本みどりは、試験が終わったらすぐ高級リゾートホテルで彼氏と宿泊デートするつもりで、
以前「大洋ツーリスト」に勤めていた杏子に、なかなか手に入らないゴールドカードを頼む
彼女は、同じ一高の教師である体育教師・相田清孝と付き合っている。
だが、相田は、あるきっかけがもとで在学生・石川衣里奈と周囲に秘密で付き合っている。
第2話
それぞれ掃除の際、教室に入ると「高校入試なんて、ぶっつぶせ!」と書かれた張り紙を発見して驚愕する。
掃除大臣として有名な相田は「杏子LOVE」というメモをA組の黒板の上から見つける。
B組も探してみたら、坂本のケータイが見つかった。
石川衣里奈は、以前、坂本からケータイを取り上げられたことで恨んだ犯行では?という説が出る。
水野が代表して校長らに伝えると、「入試が終わるまで問題は伏せたまま保留。その代わり何か起きたら校長が責任をとる」と言い渡される。
滝本みどりは、芸能人ですらカードがないと入れない高級ホテルのゴールドカードを紛失して焦りまくる
第3話
以前、石川衣里奈のケータイが廊下で鳴ったために、他の生徒が集中できなかったという問題が起きたことを踏まえ、
今年から試験教室内であらかじめ全生徒のケータイを回収し、終日使用禁止とし、破った者は失格とみなすルールを張り出す。
ついに試験が始まり、最初は「国語」。同時にネットの掲示板では、まるで実況中継のように問題や状況が書き込まれてゆき話題となる。
保護者は休憩所に待機。前回、心配と退屈でたまらなかった母親が韓流ドラマのDVDを持ち込み、
皆で観ることにすると、夢中になってランチも忘れてみいってしまう
2時限目は「数学」、3時限目は「社会」。杏子は、自分が担当する教室の受験生の1人・田辺淳一から
「今年の桜はいつ咲きますか?」と聞かれる。
滝本みどりは、リゾートカードと、社会科問題の「応仁の乱」で検索して、実況中継で試験の問題まで書き込まれているサイトを見つける。
第4話
4時限目は「理科」。「この実験問題は危険だから文部科学省で禁止したため分かりません」と訴える生徒に、
「条件はみな同じ。座学でも分かる程度だ」と言う水野。
それぞれの教室でも、問題の難しさに泣きだす生徒など、似たような状況があることに気づかない教師たち。
宮下は「教師の人事は各校の校長同士がトレードする。一高の校長ともなれば他とは別格だ」と話す。
校長の天下りの話もして、郷土資料館館長や、公民館館長なんて職につけるんだ/驚
宮下「その点、新任教師は最初の赴任先に最低4年はいなければならない規則があるから、思い切ったことが言える」
大洋ツーリストの徳原優介は、杏子に頼まれて再発行したカードを持って、試験中は部外者立ち入り禁止の学校に入り、滝本みどりに渡す。
最後は「英語」。解答用紙が1枚足りないと気づいた杏子は、1枚予備を足す。
ケータイ依存症の芝田麻美は、ケータイ回収の際、「持っていません」と嘘をつき、ポケットに入れていたが、
母からかかってきて着メロが響きわたってバレてしまい、失格・退室と言われ過呼吸を起こして保健室に運ばれる。
その騒ぎの間、苦戦していた沢村翔太がカンニングするのを見た松島良隆は「告発文」を答案用紙に書いた。
杏子が芝田麻美を送ったので、教室には教師が2人となり、回収した生徒のケータイを水野が取りに行く間、
村井が1人で答案用紙を回収。1枚足りないと気づき、先ほどの芝田麻美の分だと思って教師机の中の1枚を足す。
第5話
石川衣里奈は、試験中に相田に会い、彼がみどりと付き合っていることを知り「許さない」という。
みどりは校内を走っていた石川衣里奈を見かける。在校生も立ち入り禁止。
芝田麻美が失格と聞いて激怒した母・昌子は、自分がケータイで応援メールを送ったのは、
保護者室に「携帯使用可」と書いてあったからだと猛反論した。
麻美は「黒板の貼り紙には失格とまでは書いていなかった」と証言し、
実際、確認すると、張り紙はB組のみ去年のものと判明。焦った校長は失格を取り消すとなだめてしまう。
しかし、SNSにはそのやりとりも全て書き込まれ、「県会議員の子どもが合格したら、皆で訴えよう」と炎上する。
やっと採点の段階となり、答案用紙を持った坂本は、それを手洗いの脇に置いて、トイレに入り、出たところで松島と会う。
採点する教室で、坂本と相田がぶつかって答案用紙がバラまかれた際、白紙が混ざっていることに気づいた相田は予備だと思って脇に置く。
宮下が告発文を発見。告発文を書いたのは松島先生の息子で、カンニングをしたのが「受験番号55」同窓会会長の息子であると分かって騒然となる。
そして再び宮下が「・・・答案用紙が1枚足りません」と報告する
白紙が1枚あったことを思い出した相田。それが抜けている「受験番号46」の田辺淳一か?白紙は学校側の回収ミスか!?
第6話
石川衣里奈の回想。去年の入試の際、試験中にケータイが鳴ってしまい、相田がとりなしてくれたが、
同級生2人に「親友が猛勉強したのに、あなたの着メロがストーカーのと同じで頭が真っ白になって落ちてしまった」と責めてイジメが始まる。
相田は落ち込む衣里奈を男子バレー部のマネージャーに誘ってくれたキッカケで、衣里奈は相田を好きになる。
採点は教師同士で3回まわしてチェックしてから、終わった順に校長室で2人1組でPCに合計点を入力してゆく。
採点の注意事項も細かい 答えが曖昧な教科はとくに難しいけど、「AかaでもOK」なんてところまで
「マークシートか、採点は他の業者に依頼するとかにして欲しいよ」って教師の悲鳴も分かる。
芝田麻美はカキコミに自分のことが書いてあり、「一高には合格しても行かない。
なぜママはいつも“大抵は”って決め付けて、わたしの意見を無視するの?!」と大喧嘩する(もっともだ
ときどき、杏子と元彼のフラッシュバックが入る。受験関連で失意にある彼氏をなぐさめると、
「世の中そうやって開き直ったもん勝ちなのか?」と問われる。
第7話
5年前、田辺光一が一高を受験した時の回想。自己採点した時点では合格ラインだったが、合格発表では落ちていた。
お祝いの準備をしていた母にそれを告げると「パパになんて報告すればいいのか?」と泣き崩れる。
光一は、自分の努力などを一切無視した言葉に傷つき「なんだよ、それ」と激怒する。
(なんだろう、この完全に縦割りで奴隷的な家族って・・・怖×∞
それを見ている兄思いの弟・淳一。
答案用紙が1枚紛失したことを校長らに報告すると、情報処理担当・荻野正夫は、1人1人に事実確認すると提案する。
皆、枚数は確認したが、受験番号までは把握せずにいたことを誤魔化す。
白紙は「受験番号46」の田辺淳一か?彼の他の教科は100点を含め高得点ばかりで、内申書も英語は得意と書かれてあり困惑する上司ら。
他の教師が解散後、関係者は残って、校内中を回って紛失した解答用紙を探すが見つからない。
そこにまた同窓会会長・沢村幸造が現れ、外の窓に解答用紙が貼られているのを見つけたといって騒ぐ
でもそれは紛失した46番ではなく、55番の沢村翔太だったからまた混乱する。55番が2枚あるのはなぜか???
第8話
議員の妻・芝田昌子までまた乗り込んできて、2人はカキコミを知って愕然とする。
2人の乱入も書かれていたため、情報が漏れないため水野とともに視聴覚室で議論となる。
教頭・上条勝は、また神経性の腹痛に襲われ、55番の解答用紙と、採点一覧表画面を出したままトイレに行く。
(だから人的ミスを完全になくすなんてムリだって。人数が多ければ多いほど
第9話
「55と書き入れたのは沢村さんではないか?」説が出る。息子の成績が思わしくないのと、
会長自身は英語が得意で、ひと目見て回答が高得点と分かり、受験番号が空欄だったら魔がさすのも分かるというもの。
「内通した教師がいるのでは?」説も浮上するが、水野は冷静に「サイトの管理人に閉鎖するよう警告します。
受け入れられなかったら、個人を“いわれのない”誹謗中傷で名誉毀損したと訴える」案を出し、
芝田昌子はとても気に入り、来期の一高在留の口約束までする。
坂本らは「少子化によって学校も統廃合で少なくなり、教師のキャリアアップも難しくなった」現状をもらす。
サイトに「関与してるのはM先生だ」というカキコミを見て、松島、みどり、村井らが疑われる。
村井は三高出身で、以前「一高の採点に不向きでは?」とクレームを受けているし、
みどりは、一高を受けて落ち、一高に赴任した当初は喜んだが、音楽の授業が他の教科の自習時間にされていることを愚痴っていた。
教師が集められ会議となり、まずサイトに警告文を書き込む。
沢村哲也、沢村翔太、松島良隆らも自宅でサイトの存在に気づき、成り行きを見守る。
第10話
芝田麻美の回想。中学の友だちグループが一緒に遊びにいった話を聞いて、「私も行きたかったな」というと、
「ケータイ持ってないから」という理由だったから、麻美は母にケータイを買ってもらったが結局メールは来ず心に深い傷を負う。
だが、友だちの一人から今回の事件で励ましのメールをもらい、泣いて喜び、やはり一高を受けるよう考え直すが、
その直後、麻美に関する中傷カキコミが続き、再び心を閉ざす。(“ハブる”っていうの?
第11話
村井は、自分が高成績であったにも関わらず、父がリストラになった経済的理由で一高に行けなかった屈辱を吐露する。
サイトを進行してきた一人・田辺淳一が既に有名校・清煌学院に合格しているということがバレて、サイトは冷める。
「高見の見物だったのかよ。萎える」
校長はサイトを見ながらボヤく。
「俺たちの若い頃は体を使って、リスクを冒して闘って、自分たちの要求を勝ち取ってきたんだ。
時代の流れは仕方ない。でも、今の若者たちは名乗りもせず主義主張をこんなところに書き込んで、
何かを変えられると本気で思っているのかねぇ」
一理あるけど、主張を押さえ込み、無力にしてしまったのは大人じゃないのか?
昔は薄給の公務員より、サラリーマンのほうが見合いの条件が上とみなされたって話にも疑問。
第12話
校長「人間は元々、能力に差があることを誰もが認めなきゃならんのだ。
その中でその者なりに努力をすればいい。そして、その努力に対しては、
なんらかの形で認められたり、称賛されるべきだとも思う。
だが、それは学力を判定する場に持ち込むものではない」
荻野「では、どこで?」
校長「親が家で褒めてやればいい。自分で自分を称えてみればいい。
昔は皆そうだったじゃないか。徒競走を皆でお手てつないで走らなくても、
ビリでも思いっきり走ったら、オレのお袋は最後まで諦めずによく頑張ったねって褒めてくれたもんだよ」
杏子の回想。
大洋ツーリストに入り、修学旅行で高校担任の寺島俊章と知り合って付き合い出す。杏子に教師になることを勧めたのも寺島。
「あいつら体はデカいけど、まだまだ子どもなんです。
一方的に処分するんじゃなくて、どうしてダメなのかちゃんと理由を説明しないと理解しない」
だが、あることが原因で心を病み、飲酒し道路に飛び出し交通事故で亡くなった。
杏子はその本当の理由が知りたくて教師になり、実際に一高で教師となり疑問を持ち始めた。
一高に受かった生徒たちは、それをそれほど誇りを持っていないこと、
OBだということにこだわって地元に残る人たちは、一高出身を自慢し、他人を見下した態度をとっているなど。
坂本「昔、努力したことを今の励みにしてどこが悪いの? それじゃあ、若いうちに努力しなくてもいいの?
コツコツと堅実に生きてきたきた人たちよりも、死ぬ前にパッと一花咲かせた人たちのほうが偉いってゆうの?」
杏子「いいえ、ずっとそこに留まっていればいいと思います。その価値観を他人に押し付けなければ、
誰にも迷惑はかけないだろうし、幸せだとは思いますから」
「先ほどの村井先生の話にも考えさせられました。教師の判断が1人の生徒の未来を左右することもあるのだと」
村井「挫折を知らない人には分からないんですよ。帰国子女の春山先生には分からないですよ。
自分だって過去の肩書きに頼っているじゃないですか」
杏子「過去の肩書き。そうゆうことか。もういい加減気づいたら? 過去に留まり続けていることに」
村井は、他人のせいばかりにして、冷静な自己反省などが欠けていたことに気づく。
最終話
杏子「問題定義をすれば帰国子女だからとあしらわれる、小さな問題はなかったことにされる、
よほど大きな事件が起きないと学校は真剣に動かない。正体を現わさない。
そもそも、なぜ採点ミスが4ヶ月も経ってから見つかったのか?」
他の教師に田辺光一の創ったドキュメンタリー動画を見せる。
自己採点との食い違いを確認するため「開示請求」を求めて知ったのは、
解答はほぼ合っていたのに、受験番号を書き忘れたために0点になった、自分のミスだった。
「でも、これは0点にされるようなことなのだろうか?
他の生徒に聞いたら、番号を確認するよう最後に声をかけた担当もいた。
最後に確認して、抜けている者に書かせた担当もいた。そういう担当に当たらなかった自分の運が悪かっただけなのか?」
「学校側は試験監督ごとに対処法が異なるといった不公平なことがないよう問題点を話し合い、解決策を統一してもらいたい。
学校側にとっては1年に1度の行事と同じようなものなのかもしれないが、受験生は人生を賭けて挑んでいるのだから」
(それより、高校受験で人生が決まるなんて仕組みがおかしいんじゃないか?
このドキュメンタリー動画は賞をとり、その後開示請求が広く認知されて増え、採点ミスをした坂本らの減給処分につながった。
告発としては成功したが、賛辞するカキコミが次第にある人物により理詰めで否定され、あとは延々と中傷の嵐となる。
それがキッカケで光一は高校中退して引きこもり、母は家出、父はほとんど帰らなくなった。
そんな中傷で傷つくほうがおかしいという坂本に、村井は
「自分のことじゃないからそんなことが言えるんです。たとえ無記名でも悪意の塊である言葉は
ココロを破壊する恐ろしい力を持っているんです。放った本人には分からない。他人にも分からない。
言葉を受けた本人だけが、息も出来なくなるような苦しみを受けるんです」
杏子「失う覚悟のない者は、責任すら取らせてもらえない。
その代わり、身代わりになった人の思いを背負わなければならない。
何かを変えようという気持ちを持つことは大切です。でも、やり方は考えないといけない。
“責任を負う”という覚悟を持って」
入学した生徒への杏子の最初の言葉。
「私は、高校とは社会に出る準備期間だと思っています。
だから、みんな、やりたいことに思い切りぶつかってください。
時には砕け、傷つき、涙を流すことがあるかもしれません
だけど、私はそれらを全力で受け止めます。それが私の役目だから
どんなことにも恐れず、真っ直ぐ前を向いていきましょう」