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『エリカ奇跡のいのち』(講談社)

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『エリカ奇跡のいのち』(講談社)
ルース・バンダー・ジー/文 インノチェンティ/絵 柳田邦男/訳

あのユダヤ人大虐殺の時代に、生き延びた奇跡のいのちの物語り。


【内容抜粋メモ】
著者は、第二次世界大戦が終わって50周年になる1995年、ある女性と出会った。
著者が「エルサレムに行ってきた」と話すと、女性は興奮して、
「どんなに行きたかったか! でもお金がなくて行けませんでした」と言った。
エリカと名乗るその女性は、大戦下で起きた奇跡について話してくれた。


1933年〜終戦の1945年までの12年間に、600万人ものユダヤ人が殺された。
銃殺され、飢え死にし、コンクリートの部屋で焼き殺され、毒ガスで殺された。

私が1944年に生まれたことはたしかです。
でも、誕生日がいつかは分かりません。
生まれた時につけられた名前も分かりません。
生まれたのが、どこの町なのかも分かりません。
きょうだいがいるのかどうかも分かりません。

私の家族は、ドイツ南部のダッハウにあるユダヤ人強制収容所に入れられるところで、私は生まれて2〜3ヵ月の赤ちゃんでした。




私はよく想像するのです。
家も、財産もすべて奪われ、家から無理矢理追い出され、ユダヤ人だけを集めた地区に住むよう命令された時、
父母の気持ちはどんなだったろうかと。

やがて、その地区からも出るよう命令され、
ほかの何百人ものユダヤ人たちとともに駅に集められ、
牛を運ぶ貨車に押し込められ、立ったままぎゅうぎゅうづめで動くこともできなかったことでしょう。
(この時点でもう絶対ムリだ・・・



お母さまは、私を暖かい毛布でくるみ、列車がある村を通る時にスピードを落としたので、
貨車の天井近くにある小さな窓から、私を外に放り投げたのです。



近くにいた人が拾い上げて、ある女性の家に連れて行ってくれました。
ユダヤ人の子どもを預かるなんて、その当時は命に関わることでしたが、
その女性は危険を冒して、私を引き取ってくれました。


私は21歳で結婚し、3人の子どもが生まれ、孫もいます。

私と同じ民族の人たちは空の星の数だけいると、昔から言われてきました。
それらの600万個が、流れ星となって消えました。





【訳者のことば抜粋メモ】

「お母さまは、自分は“死”に向かいながら、私を“生”に向かって投げたのです」


今、日本は経済的に豊かで、平和を満喫しているはずなのに、幼児虐待、子どもの自殺、凶悪な少年事件が続発している。
ヒトのココロや生命観が大きく歪んでしまったといわざるをえない。

そんな中、本書は、命を尊ぶこと、生きることの根源的な問いかけを突きつけている。
子どもも、大人もいっしょになって読み、いっしょに考える本だ。


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