■いのちのえほん『わたしの病院、犬がくるの』(岩崎書店)
大塚敦子/写真・文
【大塚敦子のほかの著作】
『いつか帰りたいぼくのふるさと 福島第一原発20キロ圏内から来たねこ』(小学館)
【内容抜粋メモ】
難しい血液の病気で、長期間、病院にいなければならない子どもたち。
腰の隙間からクスリを入れて、悪い細胞をやっつける。クスリが嫌いで泣いちゃうこともある。
チィちゃんは「骨髄移植」のためにクリーンルームに26日間も入って頑張った。
そんな子どもたちの楽しみは、わんこが来る日
プレイルームは、みんなの一番好きな場所。この犬たちは、ふつうのウチの飼い犬なんだって。
外には出られないけど、犬とお散歩/病院には学校もあって、先生がベッドまで教えに来てくれる
レストランを開いたり、花だんでは、野菜も育てている
リハビリも頑張る
セイラのお別れ会にも、チロマは来てくれた
「また、きてね」
******************************小児病棟の大事な仕事
「病院の子ども憲章」(1988)
子どもを一人の人間、ココロ+カラダ+スピリットの存在として認識しながら面倒をみること。
入院がトラウマになるのではなく、とてもいい経験になるようにすることが重要。
病気って? 健康って?
体のどこかが具合悪いだけでなく、それがココロに反応したり、ココロの反応がスピリットに影響しながら、
いろいろ具合が悪くなるのが、病気のありようではないか(同意。
“健康とは、「自分の体のコントロールがきくという感覚(全能感)」があること”と、
『癒し人のわざ』キャッセル著に書かれている。
医学的な決定
医学的な決定とは、技術的と思われがちだが、実は、倫理・道徳的な決定が、日々、技術的決定の上で行われている、
非常に曖昧な科学なのです(未来には、その曖昧さも正しい科学でバランスがとれていると思うな
医学的な決定にしても、患者さん+親の人生観+医療者の人生観が結びついた決定が正しいと思われる。
医師と看護婦は、子どもに「痛いことをしている」という意識をきちんと持たなければならない。
野生動物ならば噛みつくが、ヒトの赤ちゃんはそうしない。
専門職のチームの重要性
病院にはさまざまな専門職の人たちが働いている。
それぞれの力が「トータルケア」のためにうまく回るようになるには、長い年月が必要になる。
・「トータルケア」の歴史
子どもの悪性腫瘍は治らないと言われてきたが、白血病を治した1947年以降がきっかけ。
化学療法、手術、放射線など考えうる方法をすべて使い、家族も含めたトータルケアの概念が生まれた。
「スピリットケア」
お子さんを亡くすのがほとんどだった1980年代に、ご家族へのアンケートで、本当に具合が悪くなった時に何が一番大切か?
という問いに対して「スピリチュアルなケアが必要だ」と言ったご家族が3組あった。
セラピー犬の意味
犬は、どんなことを言っても「そうですよね」と寄り添って聞いてくれるように思える。
だからこそ、死を前にした子どもにとって救いになる例もある。
トータルケアで培われた信頼関係があって、病院の面倒なルールをクリアしてセラピー犬を入れることができた。
******************************大塚敦子さんのあとがきメモ
本書の舞台、聖路加国際病院の小児病棟でセラピー犬の訪問活動が始まったのは2003年2月。
私は、日本とアメリカを半々に往復する生活をしていて、アメリカの病院ではセラピー犬はごく当たり前の存在。
聖路加でセラピー犬を受け入れたキッカケは、犬が大好きだったある女の子の死。
病棟に犬を連れてきてあげればよかった・・・というスタッフの思いが残った。
その後、渚沙ちゃんという犬が大好きなコの希望を叶えるために、具体的な検討がはじまった。
心配されたのは、感染症、アレルギー、犬が危害を与えないかなど。
JAHAと連携し、セラピー犬らは、腸内細菌検査、定期健診、ワクチン接種、毎回のシャンプー、ハミガキ、爪切りをしている。
ヒトも手洗い・うがいを徹底、アレルギーがある子どもは不参加とした。
犬の訪問は月に2回。
JAHAのセラピー犬認定を受けている犬たちは、基本的なしつけはもちろん、さまざまな項目で合格し、
なによりヒトが大好きで、訪問活動に喜んで参加している
アレルギーのある子どもが、どうしても犬に会いたいと食い下がり、ゴーグル&マスクを付けて参加を許可したら、
毎回参加して、一度もアレルギーは出なかった(ヒトのカラダってフシギ
「Resilience(回復する力)」
たとえ入院していても、子どもたちは日々成長と発達を続けている。
聖路加では、週1回「金曜会」を開いて子どもたちのケアに取り組んでいる。
医療スタッフ、ソーシャルワーカー、保育士、小児心理士、チャプレン、栄養士、訪問学級の先生らが参加し、
1人ひとりの「QOL(生活の質)」を高めるトータルな取り組み。
学校に行く、学ぶことも、子どもたちにとってとても大切なのだと、子どもたちの生き生きとした笑顔で実感させられた
私はフォトジャーナリストとして最初の6年間は、世界各地の紛争地を取材していた
その中で、「いのち」を考えるには「死」を避けて通ることはできないと思っている。
しかし、これまで子どもたちとの別れに向き合う勇気がなく、意識的に取材を避けてきた。
本書で、ようやく乗り越えられた気がした。
元気になった子どもも、亡くなってしまった子どもも、みんな懸命にいのちと向き合っていた。
どんな病気と闘っていても、日々の中で小さな喜びを見つけること。
私たちの生を豊かにしてくれるのは、そんなささやかなことの積み重ねだと思います。
JAHA(公益社団法人日本動物病院協会)
大塚敦子/写真・文
【大塚敦子のほかの著作】
『いつか帰りたいぼくのふるさと 福島第一原発20キロ圏内から来たねこ』(小学館)
【内容抜粋メモ】
難しい血液の病気で、長期間、病院にいなければならない子どもたち。
腰の隙間からクスリを入れて、悪い細胞をやっつける。クスリが嫌いで泣いちゃうこともある。
チィちゃんは「骨髄移植」のためにクリーンルームに26日間も入って頑張った。
そんな子どもたちの楽しみは、わんこが来る日
プレイルームは、みんなの一番好きな場所。この犬たちは、ふつうのウチの飼い犬なんだって。
外には出られないけど、犬とお散歩/病院には学校もあって、先生がベッドまで教えに来てくれる
レストランを開いたり、花だんでは、野菜も育てている
リハビリも頑張る
セイラのお別れ会にも、チロマは来てくれた
「また、きてね」
******************************小児病棟の大事な仕事
「病院の子ども憲章」(1988)
子どもを一人の人間、ココロ+カラダ+スピリットの存在として認識しながら面倒をみること。
入院がトラウマになるのではなく、とてもいい経験になるようにすることが重要。
病気って? 健康って?
体のどこかが具合悪いだけでなく、それがココロに反応したり、ココロの反応がスピリットに影響しながら、
いろいろ具合が悪くなるのが、病気のありようではないか(同意。
“健康とは、「自分の体のコントロールがきくという感覚(全能感)」があること”と、
『癒し人のわざ』キャッセル著に書かれている。
医学的な決定
医学的な決定とは、技術的と思われがちだが、実は、倫理・道徳的な決定が、日々、技術的決定の上で行われている、
非常に曖昧な科学なのです(未来には、その曖昧さも正しい科学でバランスがとれていると思うな
医学的な決定にしても、患者さん+親の人生観+医療者の人生観が結びついた決定が正しいと思われる。
医師と看護婦は、子どもに「痛いことをしている」という意識をきちんと持たなければならない。
野生動物ならば噛みつくが、ヒトの赤ちゃんはそうしない。
専門職のチームの重要性
病院にはさまざまな専門職の人たちが働いている。
それぞれの力が「トータルケア」のためにうまく回るようになるには、長い年月が必要になる。
・「トータルケア」の歴史
子どもの悪性腫瘍は治らないと言われてきたが、白血病を治した1947年以降がきっかけ。
化学療法、手術、放射線など考えうる方法をすべて使い、家族も含めたトータルケアの概念が生まれた。
「スピリットケア」
お子さんを亡くすのがほとんどだった1980年代に、ご家族へのアンケートで、本当に具合が悪くなった時に何が一番大切か?
という問いに対して「スピリチュアルなケアが必要だ」と言ったご家族が3組あった。
セラピー犬の意味
犬は、どんなことを言っても「そうですよね」と寄り添って聞いてくれるように思える。
だからこそ、死を前にした子どもにとって救いになる例もある。
トータルケアで培われた信頼関係があって、病院の面倒なルールをクリアしてセラピー犬を入れることができた。
******************************大塚敦子さんのあとがきメモ
本書の舞台、聖路加国際病院の小児病棟でセラピー犬の訪問活動が始まったのは2003年2月。
私は、日本とアメリカを半々に往復する生活をしていて、アメリカの病院ではセラピー犬はごく当たり前の存在。
聖路加でセラピー犬を受け入れたキッカケは、犬が大好きだったある女の子の死。
病棟に犬を連れてきてあげればよかった・・・というスタッフの思いが残った。
その後、渚沙ちゃんという犬が大好きなコの希望を叶えるために、具体的な検討がはじまった。
心配されたのは、感染症、アレルギー、犬が危害を与えないかなど。
JAHAと連携し、セラピー犬らは、腸内細菌検査、定期健診、ワクチン接種、毎回のシャンプー、ハミガキ、爪切りをしている。
ヒトも手洗い・うがいを徹底、アレルギーがある子どもは不参加とした。
犬の訪問は月に2回。
JAHAのセラピー犬認定を受けている犬たちは、基本的なしつけはもちろん、さまざまな項目で合格し、
なによりヒトが大好きで、訪問活動に喜んで参加している
アレルギーのある子どもが、どうしても犬に会いたいと食い下がり、ゴーグル&マスクを付けて参加を許可したら、
毎回参加して、一度もアレルギーは出なかった(ヒトのカラダってフシギ
「Resilience(回復する力)」
たとえ入院していても、子どもたちは日々成長と発達を続けている。
聖路加では、週1回「金曜会」を開いて子どもたちのケアに取り組んでいる。
医療スタッフ、ソーシャルワーカー、保育士、小児心理士、チャプレン、栄養士、訪問学級の先生らが参加し、
1人ひとりの「QOL(生活の質)」を高めるトータルな取り組み。
学校に行く、学ぶことも、子どもたちにとってとても大切なのだと、子どもたちの生き生きとした笑顔で実感させられた
私はフォトジャーナリストとして最初の6年間は、世界各地の紛争地を取材していた
その中で、「いのち」を考えるには「死」を避けて通ることはできないと思っている。
しかし、これまで子どもたちとの別れに向き合う勇気がなく、意識的に取材を避けてきた。
本書で、ようやく乗り越えられた気がした。
元気になった子どもも、亡くなってしまった子どもも、みんな懸命にいのちと向き合っていた。
どんな病気と闘っていても、日々の中で小さな喜びを見つけること。
私たちの生を豊かにしてくれるのは、そんなささやかなことの積み重ねだと思います。
JAHA(公益社団法人日本動物病院協会)