■『待っている犬 東日本大震災で被災した犬猫たち』(角川書店)
ドックウッド/著
図書館巡りで見つけた1冊シリーズ。
3.11。私は帰宅難民となって、5時間かけて家に帰った。
その後の停電、物資の不足等で不安になって帰省。
ニュースもパニック発作を誘発しそうで、長い間見れなかった。
ヒト同様、被災したペットたちも困っているという話も遠くから聞いたが、何も出来なかった。
本書を読んで、実際の様子がどれだけ過酷だったかを初めて具体的に知った。
こんな時、なにはともあれ、すぐ行動出きる人は強いなあ。
動物たちを助けたのも、地元や全国、海外からはるばる来たボランティアの方々だった。
“(動物が)好きだから、という言葉だけでは表しきれない『何か』。
皆それを感じているから、来てくれているのだと思う”
本書の発行日は2012年。
1年後、すでに「過去の記憶」とされてしまっている取り残された気持ちが書かれていて、
ボランティアの人手不足で困っていると書かれている。
まずは寄り添うこと。忘れないこと。自分で出来る小さなことを積み重ねること。
・ドックウッド
本書の印税、お寄せいただいた支援金は、すべて東日本大震災で被災した犬・猫の保護預かりのための費用(食事、予防接種、治療等)、に使用させていただいております。
【ブログ内関連記事】
・『いつか帰りたいぼくのふるさと 福島第一原発20キロ圏内から来たねこ』(小学館)
【内容抜粋メモ】
これは「ドックウッド」の東日本大震災における活動の記録です。
写真は、すべてスタッフ・ボランティアの手で撮影されたものです。
ほとんどの避難所で動物は同居できない。
配給の水も「犬に飲ませるなら渡せない」と言われる。
鳴き声などで迷惑をかけてしまうが、見捨てることなどできない葛藤と憔悴で飼い主たちの心労は果てがない。
避難所の公民館に入れず、2週間以上車中生活だった飼い主と愛犬もいた。
避難所の外につないだ秋田犬のテツは、大きいために怖がられ、置いておくことができなくなった。
「なんとか生き延びてほしい」一心で、家族は離れた山中にテツを放った。
しかし数日後テツは戻ってきた。被災した自宅ではなく、家族のいる避難所へ。
犬たちは自分が居心地の良い場所を『巣』と認識するという。
ケージやハウスがなく、少しでも暖をとれるようツールボックスの中で過ごす犬たち
寒風の中、はぐれた犬や猫たちはじっと飼い主を待ち続けている。少しの疑いもなく。
愛犬だけを抱きかかえ、そのまま津波に飲まれた少女。
震災後、焼けて白骨化した飼い主と犬たちが車中で発見された。
倒壊した家で、家を守るように佇んでいた「げん」。飼い主のご夫婦は亡くなられていた。
そのご夫婦の娘さんと連絡がとれ、面会を重ねるたび、変化していくげんの表情。
犬や猫にも「死」の概念はあるのだろうか。
ここにいる犬や猫たちを見ていると「いつもとは違う」「大変なことが起きている」と理解し、
この状況になんとか適応しようとして、甘えたい気持ちを堪えているようにも感じとれる。
************************できることから
避難所を回り、犬や猫をつれている人に声をかけ、大切な家族をお預かりした。
『犬や猫の無償お預かり、ペット用品の物資支援を行っています。連絡をください』というポスターもたくさん貼った。
テレビ番組で映し出された保護犬のポスターに、愛犬を確認し、再会できた「テト」。
ラジオ放送で「ドックウッド」のことを知り、預かりを依頼した飼い主もいた。
家までの道は埋もれ、車の乗り入れは不可能/寄せられた支援物資を人用とともに搬送車に積めるだけつみこむ
物流がストップしているのに、大型トラックで届けられた大量のペット用支援物資。
迂回路を探しながら連日被災地へ物資を届けに向かう。途中で出会った放浪犬たちも無事保護できた。
気がつけば、収容頭数をとうに超えていたが、保護の依頼は絶えない。
受け取りを断っていた支援金を募ることにした。
頭数増加に伴うプレハブハウス等の増加、掃除・洗濯・ご飯の準備も200頭以上!
自分の店が営業再開のめどが立たない中、協力してくれたペットショップのトリマーの方々が災害時の汚れ等を落とす。
災害1ヶ月後、野犬化が進み、保護するのも困難になっていった。
たくさんの「ありがとう」
休日は、面会に訪れる家族で大賑わい
飼い主不明で保護している犬や猫たち63頭中、38頭の犬がネットや各種メディアの報道等で飼い主と再会できた。
2011年12月末までに、預かり・保護頭数は、犬309頭、猫30頭。全体の半分にも満たない。
一体どう行動したら、誰に祈ったら取り戻せるのだろう。
『日常』という、あの大切な時間を。
「すぐにでも会いたいが、会ってしまったら離れられなくなりそうで・・・」
という飼い主に「ぜひ会いに来てください」ともう一度すすめた。
「ボクがここにいることを、家族は知っているんだ」と愛犬や愛猫に分かってもらえるように。
このコたちの笑顔は、明日も見えなくなりそうな中で、きっとあなたのココロの支えになる
4頭兄弟の猫の中で、再会できたのは「シーロ」だけだった/「クロ」は面会から家族が帰った後もずっと駐車場のほうを見つめ続けていた
連絡先は「ドックウッド」
いまだ飼い主さんと再会できていない保護犬・猫たち(2012.12現在)の写真とプロフィールも掲載されている。
【内関連本】
・『ロックとマック 東日本大震災で迷子になった犬』
************************飼うために最低限必要なこと
迷子札、鑑札、マイクロチップなど身元が分かるものを常に身につけさせる。
伝染病の予防(狂犬病予防接種、混合ワクチンの摂取、フィラリア症の検査と予防)やノミ、マダニの駆除等を確実に行う。
災害時の衛生環境の悪さは通常の比ではない。抵抗力が低下して病気になりやすい。
預かりや保護した犬たちには、フィラリア症の陽性反応が多かった。
予防の重要性を認識していない飼い主は多い。
ケージ(クレート、バリケンネル、ハウス等)を用意し、日ごろから慣れさせる。
預かりや保護の際、入るのを抵抗するコが予想以上に多かった。
震災後、必要性を感じる飼い主が増え、販売店では品薄状態が続出していた。
犬の場合:最低限のしつけをする(トイレ、待て、座れ、呼び戻し、付いて、ダメ等)
日ごろから他の犬やヒトとも接し、家族以外の苦手意識をなくしておく。
ヒトへの警戒心が強いと、保護しようとしても逃走してしまう。
集団生活においてケンカする問題が起きやすいのは、他の犬との接触経験がなかった犬が多い。
************************ここから、これから
震災から約1年後。テレビ放送の震災被害の報道時間は短くなり、普通に楽しげな番組が映し出される。
ニュースでクローズアップされるのは、主に原発関連、放射能への恐怖。
地震や津波で多大な被害を受けた地区の「現況」が取り上げられることがめっきり減った。
被災地の状況を知るたび感じるのは『支援の格差』
補償で衣食住の心配がない人もいれば、いまだライフラインも途絶した地域の避難所や仮設住宅で、寒さや暑さ、不便さに苦しむ人たちもいる。
義援金、支援物資が本当に必要としている人たちの手に届かない。
「2〜3日で帰れると言われて避難したが、次々と避難先が移動して戻れず、
置いて来たこのコが死んじゃうと思って、こっそり帰った人に、鎖だけ外してきてって頼んだの」
(原発からの強制避難で愛犬との別れを余儀なくされた飼い主さんの話
預かり時に渡された手紙には、持病、ゴハンの嗜好、性格などが細かく書かれて、「お願いします」と何度も書き連ねられていた
犬や猫を預かることで、飼い主の心労や負担を軽減させ、少しでも早く生活や気持ちを落ち着かせてほしい。
改めて今までを振り返り「やって良かった」と思った。
手探り状態で進む活動には、さまざまな問題や疑問が発生する。
問い合わせても、ルール・法律・制定がされていないため、自治体によって対応も千差万別。混乱して時間がかかる。
************************震災で強く感じたこと
情報・知識の周知不足
飼い主、動物関連業に携わる者の、情報・知識の周知不足、非常時の対応の遅れ、不備。
予防・不妊の管理体制、マイクロチップの義務化にも強く必要性を感じている。
中にはワクチンの存在すら知らない飼い主さんもいた。
動物を飼っていない人に理解してもらうための努力、衛生等の意識不足が、非常時にこそ表面化する。
ボランティア
地元はもとより、全国、海外からも駆けつけてくれたボランティアさんたち。
数百頭もの犬や猫たちの世話は、皆の協力なくしては到底成り立たない。
筋肉痛などを口にする方も多いハードな肉体労働。
こちらの態勢も整わず、不手際も多く、迷惑をかけてしまった。
ブログで人手不足を知り、気になってと、二度三度と駆けつけてくれた方もいた。
身体的にも、精神的にもけっして楽ではない活動だと分かっていても。
一方で、時間の経過とともに人数は減少し、現在はボランティア不足が深刻な問題になってきている。
ドックウッド/著
図書館巡りで見つけた1冊シリーズ。
3.11。私は帰宅難民となって、5時間かけて家に帰った。
その後の停電、物資の不足等で不安になって帰省。
ニュースもパニック発作を誘発しそうで、長い間見れなかった。
ヒト同様、被災したペットたちも困っているという話も遠くから聞いたが、何も出来なかった。
本書を読んで、実際の様子がどれだけ過酷だったかを初めて具体的に知った。
こんな時、なにはともあれ、すぐ行動出きる人は強いなあ。
動物たちを助けたのも、地元や全国、海外からはるばる来たボランティアの方々だった。
“(動物が)好きだから、という言葉だけでは表しきれない『何か』。
皆それを感じているから、来てくれているのだと思う”
本書の発行日は2012年。
1年後、すでに「過去の記憶」とされてしまっている取り残された気持ちが書かれていて、
ボランティアの人手不足で困っていると書かれている。
まずは寄り添うこと。忘れないこと。自分で出来る小さなことを積み重ねること。
・ドックウッド
本書の印税、お寄せいただいた支援金は、すべて東日本大震災で被災した犬・猫の保護預かりのための費用(食事、予防接種、治療等)、に使用させていただいております。
【ブログ内関連記事】
・『いつか帰りたいぼくのふるさと 福島第一原発20キロ圏内から来たねこ』(小学館)
【内容抜粋メモ】
これは「ドックウッド」の東日本大震災における活動の記録です。
写真は、すべてスタッフ・ボランティアの手で撮影されたものです。
ほとんどの避難所で動物は同居できない。
配給の水も「犬に飲ませるなら渡せない」と言われる。
鳴き声などで迷惑をかけてしまうが、見捨てることなどできない葛藤と憔悴で飼い主たちの心労は果てがない。
避難所の公民館に入れず、2週間以上車中生活だった飼い主と愛犬もいた。
避難所の外につないだ秋田犬のテツは、大きいために怖がられ、置いておくことができなくなった。
「なんとか生き延びてほしい」一心で、家族は離れた山中にテツを放った。
しかし数日後テツは戻ってきた。被災した自宅ではなく、家族のいる避難所へ。
犬たちは自分が居心地の良い場所を『巣』と認識するという。
ケージやハウスがなく、少しでも暖をとれるようツールボックスの中で過ごす犬たち
寒風の中、はぐれた犬や猫たちはじっと飼い主を待ち続けている。少しの疑いもなく。
愛犬だけを抱きかかえ、そのまま津波に飲まれた少女。
震災後、焼けて白骨化した飼い主と犬たちが車中で発見された。
倒壊した家で、家を守るように佇んでいた「げん」。飼い主のご夫婦は亡くなられていた。
そのご夫婦の娘さんと連絡がとれ、面会を重ねるたび、変化していくげんの表情。
犬や猫にも「死」の概念はあるのだろうか。
ここにいる犬や猫たちを見ていると「いつもとは違う」「大変なことが起きている」と理解し、
この状況になんとか適応しようとして、甘えたい気持ちを堪えているようにも感じとれる。
************************できることから
避難所を回り、犬や猫をつれている人に声をかけ、大切な家族をお預かりした。
『犬や猫の無償お預かり、ペット用品の物資支援を行っています。連絡をください』というポスターもたくさん貼った。
テレビ番組で映し出された保護犬のポスターに、愛犬を確認し、再会できた「テト」。
ラジオ放送で「ドックウッド」のことを知り、預かりを依頼した飼い主もいた。
家までの道は埋もれ、車の乗り入れは不可能/寄せられた支援物資を人用とともに搬送車に積めるだけつみこむ
物流がストップしているのに、大型トラックで届けられた大量のペット用支援物資。
迂回路を探しながら連日被災地へ物資を届けに向かう。途中で出会った放浪犬たちも無事保護できた。
気がつけば、収容頭数をとうに超えていたが、保護の依頼は絶えない。
受け取りを断っていた支援金を募ることにした。
頭数増加に伴うプレハブハウス等の増加、掃除・洗濯・ご飯の準備も200頭以上!
自分の店が営業再開のめどが立たない中、協力してくれたペットショップのトリマーの方々が災害時の汚れ等を落とす。
災害1ヶ月後、野犬化が進み、保護するのも困難になっていった。
たくさんの「ありがとう」
休日は、面会に訪れる家族で大賑わい
飼い主不明で保護している犬や猫たち63頭中、38頭の犬がネットや各種メディアの報道等で飼い主と再会できた。
2011年12月末までに、預かり・保護頭数は、犬309頭、猫30頭。全体の半分にも満たない。
一体どう行動したら、誰に祈ったら取り戻せるのだろう。
『日常』という、あの大切な時間を。
「すぐにでも会いたいが、会ってしまったら離れられなくなりそうで・・・」
という飼い主に「ぜひ会いに来てください」ともう一度すすめた。
「ボクがここにいることを、家族は知っているんだ」と愛犬や愛猫に分かってもらえるように。
このコたちの笑顔は、明日も見えなくなりそうな中で、きっとあなたのココロの支えになる
4頭兄弟の猫の中で、再会できたのは「シーロ」だけだった/「クロ」は面会から家族が帰った後もずっと駐車場のほうを見つめ続けていた
連絡先は「ドックウッド」
いまだ飼い主さんと再会できていない保護犬・猫たち(2012.12現在)の写真とプロフィールも掲載されている。
【内関連本】
・『ロックとマック 東日本大震災で迷子になった犬』
************************飼うために最低限必要なこと
迷子札、鑑札、マイクロチップなど身元が分かるものを常に身につけさせる。
伝染病の予防(狂犬病予防接種、混合ワクチンの摂取、フィラリア症の検査と予防)やノミ、マダニの駆除等を確実に行う。
災害時の衛生環境の悪さは通常の比ではない。抵抗力が低下して病気になりやすい。
預かりや保護した犬たちには、フィラリア症の陽性反応が多かった。
予防の重要性を認識していない飼い主は多い。
ケージ(クレート、バリケンネル、ハウス等)を用意し、日ごろから慣れさせる。
預かりや保護の際、入るのを抵抗するコが予想以上に多かった。
震災後、必要性を感じる飼い主が増え、販売店では品薄状態が続出していた。
犬の場合:最低限のしつけをする(トイレ、待て、座れ、呼び戻し、付いて、ダメ等)
日ごろから他の犬やヒトとも接し、家族以外の苦手意識をなくしておく。
ヒトへの警戒心が強いと、保護しようとしても逃走してしまう。
集団生活においてケンカする問題が起きやすいのは、他の犬との接触経験がなかった犬が多い。
************************ここから、これから
震災から約1年後。テレビ放送の震災被害の報道時間は短くなり、普通に楽しげな番組が映し出される。
ニュースでクローズアップされるのは、主に原発関連、放射能への恐怖。
地震や津波で多大な被害を受けた地区の「現況」が取り上げられることがめっきり減った。
被災地の状況を知るたび感じるのは『支援の格差』
補償で衣食住の心配がない人もいれば、いまだライフラインも途絶した地域の避難所や仮設住宅で、寒さや暑さ、不便さに苦しむ人たちもいる。
義援金、支援物資が本当に必要としている人たちの手に届かない。
「2〜3日で帰れると言われて避難したが、次々と避難先が移動して戻れず、
置いて来たこのコが死んじゃうと思って、こっそり帰った人に、鎖だけ外してきてって頼んだの」
(原発からの強制避難で愛犬との別れを余儀なくされた飼い主さんの話
預かり時に渡された手紙には、持病、ゴハンの嗜好、性格などが細かく書かれて、「お願いします」と何度も書き連ねられていた
犬や猫を預かることで、飼い主の心労や負担を軽減させ、少しでも早く生活や気持ちを落ち着かせてほしい。
改めて今までを振り返り「やって良かった」と思った。
手探り状態で進む活動には、さまざまな問題や疑問が発生する。
問い合わせても、ルール・法律・制定がされていないため、自治体によって対応も千差万別。混乱して時間がかかる。
************************震災で強く感じたこと
情報・知識の周知不足
飼い主、動物関連業に携わる者の、情報・知識の周知不足、非常時の対応の遅れ、不備。
予防・不妊の管理体制、マイクロチップの義務化にも強く必要性を感じている。
中にはワクチンの存在すら知らない飼い主さんもいた。
動物を飼っていない人に理解してもらうための努力、衛生等の意識不足が、非常時にこそ表面化する。
ボランティア
地元はもとより、全国、海外からも駆けつけてくれたボランティアさんたち。
数百頭もの犬や猫たちの世話は、皆の協力なくしては到底成り立たない。
筋肉痛などを口にする方も多いハードな肉体労働。
こちらの態勢も整わず、不手際も多く、迷惑をかけてしまった。
ブログで人手不足を知り、気になってと、二度三度と駆けつけてくれた方もいた。
身体的にも、精神的にもけっして楽ではない活動だと分かっていても。
一方で、時間の経過とともに人数は減少し、現在はボランティア不足が深刻な問題になってきている。