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『華の乱』(1988)

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『華の乱』(1988)
原作:永畑道子著『華の乱』『夢のかけ橋』 監督:深作欣二
出演:吉永小百合、松田優作、緒形拳、松坂慶子、風間杜夫、成田三樹夫、内藤剛志、石田えり、石橋蓮司 ほか

trailer

松田優作さん出演作シリーズ。他にも、内藤さん、成田さんら、今観たい俳優さんが全員出ていると同時に、
与謝野夫妻、森雅之さんの父・有島武郎さん、長野出身の松井須磨子さんら、最近、伝記でも読もうかと思って
気になっていた文化人がたくさん出てきて、全部つながった。しかも、監督は深作さんv
これは、誰が観ても心揺さぶられる逸品。

どこまでが脚色か分からないけれども、激動の時代の実際の写真も交えつつ、
「帝国劇場」など大正時代が再現され、文化人、庶民の暮らしぶりも垣間見れる。
「大正ロマン」などと言われて、なんとなくのんびりした優雅なイメージがあったけど、
実際は、明治から昭和に移行するカオスな部分もあったんだな。

ウィキには晶子と有島の関係はどこにも書かれていない。やはり、愛人・秋子を愛しての心中と思われる。
しかし、今作では、晶子に想いを残しつつも、死にとりつかれた者同士で心中したように描かれている。
お金を持ち過ぎて、絶望する人もいるんだなあ。

晶子さんがすごい多筆家なことにビックリ/驚 関東大震災で大家族全員無事だったのも奇跡的。

 

優作さんは、キレキレのアクションスターより、こうした物静かなインテリ感を醸し出す役のほうが断然ステキだと思う
松坂慶子さんは、前回観た『人生劇場』同様、恋に狂う熱い演技をしている。
対照的に、小百合さんは、変わらずハッとする透明感を持ちながら、大家族を支える逞しい母ちゃんでもあり、
文豪2人との激しい恋愛に身を投じた、自立した女性像も見事に演じ分けている。


 
内藤さんは、風間さんらとともにエネルギッシュな役どころだった。


▼story(ネタバレ注意
明治34年。京都。与謝野寛に恋した晶子と、登美子はライバルとなったが、結ばれたのは晶子。
家族を捨てて、ヒロシを追いかけ、東京に着くと、愛想が尽きて別れた妻がいて、
夫は女がいないと生きていけない性分で、現に今も2人の弟子と恋仲にあるなど嫌味を言われる。

ヒロシ「詩人には何人も恋愛が必要なんだ」

来た日に「帰らせてもらいます!」と大ゲンカとなるが、ヒロシは生まれつき脈が弱く、興奮すると倒れてしまう。
周囲からは“先妻を追い出した淫らな悪女”と罵られる晶子。

明治37年の日露戦争中は、「君死にたまうことなかれ」と短歌を書いて焚書され、家に放火されるなど国賊扱いを受ける。
(ウィキをみると、反戦主義は一貫していたわけではなく、むしろ戦うべきと言ってた時もあったとか


大正12年東京。
12人もの子どもを抱え(大家族すぎ!ビッグダディ)、家計を支える晶子。
『明星』、処女歌集「みだれ髪」が売れて忙しい晶子に比べ、
仕事も、友も失い、妻に食べさせてもらっていることで、ヒロシはうつ病となる。

 

気晴らしに行った帝国劇場で、松井須磨子の芝居を観て(♪カチューシャ を歌っていたな)、
楽屋に寄って挨拶しようと思うが、舞台監督でもあり、愛人・島村抱月と大ゲンカを見てしまい帰ることにする。
そこへ、バイクに乗った有島武郎と、その愛人・波多野秋子と接触して倒れる。
無政府主義者の活動家・大杉栄と、その友・和田らとも出会う。


後日、有島からお詫びに高価な洋服と帽子が届き、迷惑だからと自宅に返しに行く晶子。
(すごい洋館! 森雅之さんは幼少の頃、こんな豪邸で育ったんだ/驚

 

大杉、和田らは『労働運動』という本を出版しては発禁本にされ、常に警察に追われる身。
有島は、父から譲り受けた大きな遺産で暮らしていることに罪悪感を感じ、彼らに資金を出し、かくまったりしている。

有島「大杉は、刑務所から出るたびに外国語を覚えてくる。本物のインテリで、本物の革命家なんです。
   私は、当分、仕事もやめた。親から大きな資産を受け継いで、生きる資格があるのか」

母と息子を紹介すると、皆驚いた顔をしている。それは、晶子が、2年前に亡くなった有島の妻に似ているからだという。
(妻を亡くしたのが原因で死の病にとり憑かれたのかなぁ?




事情を知った晶子は、自分の子どもと、有島の2人の息子たちとでピクニックに行く提案をする。
そこにもアキコが来る。彼女は女性誌『婦人公論』の記者で、有島に「心中」をテーマに書いてほしいと依頼しているのだという。

ヒロシは突然、トミコのつてで、衆議院総選挙に出馬すると言い出す。
「政治も私にとっては芸術なんだ。君におんぶに抱っこの生活にウンザリなんだよ」

仕方なく、周りの波に乗る晶子だったが、新聞記者のインタビューに「本音を言えば空しいと感じている」と話したことで口論となり、
トミコに「あとは、くれぐれもよろしくお願いします」と1人東京に帰る。


 

抱月が流感であっけなく亡くなり、有島はスマコを慰める会を開き、晶子も同席する。
有島「私は以前、彼女は身ぶりが大きいだけの大根女優だと酷評したが、今はあの人なしには日本の近代劇は考えられません」

アキコも夫・波多野春房と来て、波多野が人形好きで、自分もその1つだと言う。

波多野「芸者の娘を学校に行かせて、英語を教えたら、婦人誌をやりたいなどとバカなセリフを吐き始めた。
    所詮、私の金から離れられるワケがないんだ。せいぜい、ジタバタしながら醜く歳をとるがいい。
    黙って古びてゆく人形は哀れ深くて、これまたいいもんだがねえ!」
(ヒドイなぁ・・・ 愛情をうまく表現できない人なんだな

アキコ「醜くなるまで歳をとるかどうか決めるのは私です。どなたのお世話にもなりませんわ」

 

スマコはすっかり取り乱して、抱月が亡くなった晩の話をし出す。

「島村抱月は私が殺したの! 入院したほうがよかったのに、奥さんが来るかもしれない。私はそれが怖かった。
 抱月は最期に“スマコに電話してくれ。私が危篤だと”と言ったけど、バカな付き人は“キトク”の意味が分からなかったの!
 それなのに私は、『サロメ』のセリフを喋っていた!」

気絶したスマコを介抱して、アキコは「あの人、もうすぐ死ぬわ。私には分かるんです、よく」


ヒロシは選挙で惨敗するが、トミコが結核で喀血したため、東京に家を借りて、自分が看病するという。

大杉が訪ねてきて、「これから有島の金でフランスへ行く。警察に尾行されているから、妻の野枝に金を渡してくれないか?」と頼まれる。
行くと、とても貧しい家で、乳飲み子を抱え、和田らも潜伏していた。

尺八を吹く音を聞いて飛び出すノエ。「あれは元の旦那。横にいるのは最初に産んだ子なんです」
「分かってるんです。どうせ、私と大杉は畳の上では死ねないって」

 


スマコが首吊り自殺した。
遺書には、抱月と同じ墓に入れて欲しいと何度も何度も書かれていたという。それを憐れむ参列者に
有島「憐れなんでしょうか? あんなに潔い死に方をした人を哀れむなんておこがましい話です」

「北海道へ行ってくれませんか、一緒に。父の遺した農場を開放して小作人に渡して、素っ裸になれば、またものが書けるかもしれない」


子どもたちがリレー競争のように風邪をひいているところへ、有島から北海道行きの切符が届き、
子どもたちが止めるのもふりきって、そのまま汽車に乗る晶子。
「今、私はまた狂おうとしている」


 

「共生農場」と名付け、小作人に開放する有島。
「オオカミのごとき資本家たちは、みなさんの手にしたこの土地を黙って眺めてはいないでしょう。頑張ってください」

有島と晶子は、馬を走らせ、夕陽をバックにキスするシーンは、なんて美しい!
「いちばん好きな曲なんです」とシューベルトの♪水の上で歌う をかける。

「美しいものは、すべて寂しいものです」
「時を止めていただけませんか? 夢のつづきを見たいんです」


まもなく、小作農民たちを扇動した容疑で警察が来る。
「目的は私ではなく、共生農場の空中分解なんだ。農民はあんなに殴られて血を流したのに、私は何もされなかった!」


東京の家に戻ると、ヒロシも帰っていた。トミコは亡くなったという。子どもたちは、事情が分かっているように晶子に冷たくあたる。


 

葬式の後、波多野からアキコから晶子宛ての遺書を渡される。

「有島は、1年前から死の病にとりつかれていて『いっそ命懸けの恋人でも作って心中でもしてしまいたい』と言うので、
 『私も一緒に連れてってください』と言った。それは愛というより、死に魅入られた同士のいたわりの接吻でした。
 でも、この時から死への2人の蜜月が始まったのです」

抱き合う2人を帰ってきた波多野が見て「姦通罪でたたっこんで、慰謝料をふんだくってやるからね!」と怒り狂ったが、
アキコはそのまま行ってしまったという。

 


大正12年。関東大震災。

 

 

混乱の中で暴行を働いているという理由から、社会主義者と朝鮮人が約3000人虐殺された(これは本当なのか!? なんてことを・・・


ヒロシ「なにもかも狂っとる。船が沈んでも、国は滅んでも、私たちは生き続けなければね」


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