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『新版 環境とリサイクル6 紙』(小峰書店)

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『新版 環境とリサイクル6 紙』(小峰書店)
半谷高久/監修 江尻京子/指導 本間正樹、大角修/文 菊池東太/写真

以前読んだ『環境とリサイクル10 うめたて処分場』と同シリーズ。
新版とはいえ、2003年初版なので、また状況は変わっているだろう。いい方向に変わっていてほしいなあ。

紙や文具など「読み書き」に関することには普段から興味があるので、この本に書いてあることを全部吸収したい
ゴミ問題は、個人はもちろん、大量に作る工場から変えないと意味がない。

すべての紙が、また紙として生まれ変わって欲しいけど、紙としての寿命があることも分かったし、
「再生紙」と書かれていても、品質を保つために、ある程度のバージンパルプを混ぜてあることも知った。

紙が森の木から作られていることを、まずたくさんの人たちに改めて知ってもらいたい。
個人的な願いとしては、今後、紙の原料には、どうか杉を使ってもらえまいか?/祈×∞


【内容抜粋メモ】
紙は、610年に朝鮮半島から来た曇徴(どんちょう)という僧が作り方を伝え、和紙に受け継がれている。

******************************生産量と消費量

2001年、日本国内でつくった紙は3073万トン。これはアメリカに次いで2位。
国民1人あたり、1年間に約250kgの紙を使用した。
1960年、産業が発達、暮らしが豊かになるにつれ消費量が増えた
紙袋、紙パックなど、簡単に捨てられる紙製品が増え、紙ゴミも増えた。

統計上、紙は2種類に分かれる。「薄いシート状」と「厚い板紙」。
生産量は増えたが、この2種類の割合は40年間ほぼ変わっていない。

  
国内の紙の生産量の変化/世界の紙の消費量


使い道


******************************紙の原料はパルプという木のセルロース繊維

 
パルプ/電子顕微鏡でみたパルプ

木を分けると2種類~「針葉樹」と「広葉樹」
どちらもパルプの原木となる。繊維の性質が違うので使い分ける。
「針葉樹」繊維の長さ3ミリ前後。破れにくい。
「広葉樹」1ミリ前後。

パルプにする2つの方法
1.「チップ」=「化学パルプ」


2.木材をすり砕く=「機械パルプ」変質・変色しやすい。大量につくれるので新聞紙・週刊誌になる。

「バージンパルプ」木材から新しくつくったパルプ
「再生パルプ」古紙を再生したパルプ

日本は、アメリカに次いで世界第2位の生産国だが、国内では原料が足りないため輸入している。


輸入したチップの山

 


******************************紙をつくる工程

「上質紙(化学パルプ100%。本に使う)」の場合
1.「パルパー」水でパルプの繊維をほぐす
2.「レファイナー」繊維をもむ(紙を強くする)
3.「混合箱」すべりを良くするため、粘土、染料等を混ぜる
4.「抄紙機(ショウシキ)」水を漉す
5.「プレス」薄くする
6.「ドライヤー」乾かす
7.「カレンダー」アイロンをかけて艶を出す
8.「ワインダー」巻き取る


******************************汚水処理

1トンの紙をつくるのに、100トンの水が必要


製紙工場の廃液で汚れた海@静岡県富士市田子ノ浦港(1973)悪臭、有害ガスが発生し、生物が住めなくなった
(なぜ、こんなになるまで放っておけたのか、ヒトの鈍感さ、貪欲さにゾッとする

とくに問題なのは、木材からパルプをつくる際の廃水
再生紙をつくる際も、繊維くず、薬品が混ざる。
これまで、再生パルプの漂白剤に塩素系薬品を使っていたため、「ダイオキシン」発生の危険があった。
そのまま川、海に流さないために「浄化装置」を設けている。

汚れを沈殿させて、脱水し、焼却炉で燃やす→灰をレンガの材料にする
有害物質を規定量以下にしてから川に放流する


凝集沈殿装置


******************************本のつくりかた


印刷工場

大量印刷のはじまり
1450年、グーテンベルグが印刷機を発明。
新聞の発行が盛んになり、18C、蒸気機関を利用した機械印刷が発明された。(ケーニヒ&バウアー)
「輪転印刷機」が発明された。


製紙工場でつくった紙は、用途別に工場に送り、加工する。
本は、カバー、表紙、本文等によって別の種類の紙を使っている。
カバーは傷みやすいため、プラスチックフィルムを貼る。

 
本の部分名称/とじ方

「製本」
製本で余った紙は質がいいので、ほぼ再資源化している。
しかし、針金、ボンド、布、プラスチックフィルム、インクを取り除く手間がかかる。


******************************紙パックのつくりかた


紙パックの製造工場

紙パックは昭和30年、牛乳びんの代わりにアメリカから伝わった
用紙は、ヒバ、エゾマツ等の丈夫な紙に、プラスチックフィルムを何層も貼り合わせてある。

1.商品名などを印刷
2.原紙にポリエチレンフィルムを貼る
3.切る
4.組み立てる
5.中身を入れる
6.口を貼り合わせる


******************************古紙のゆくえ


古紙回収業者のトラック

2000年、古紙は58%回収されたが、残り48%は?
東京都で「燃やすゴミ」の半分は紙類。資源ゴミも混ざっている。
トイレットペーパー、ティッシュ等、回収できないものもあるので、65%が古紙回収の限界と言われる。

 
燃やすゴミの内訳/世界の古紙回収率


オフィスの紙ゴミ
FAX、コピー等の「OA機器」で使う紙、封筒など、会社では大量の紙を使う。
専門の回収会社と契約してリサイクルしている。


古紙は「回収古紙」と「産業古紙」の2種類
「回収古紙」家庭と町から出る古紙
「産業古紙」新聞社、印刷会社、製本屋上、大きなデパート(!)、市場等から出る古紙


「製紙会社」が買い取る古紙の値段(2000年)
上質:1kgあたり50円
雑誌:1kgあたり5~6円

「回収古紙」は質がバラバラで、回収の手間がかかり、値段も安い。
昔は「ちり紙交換」という業者が地域を回っていたが、値段が下がって消え、今は市町村が税金で回収、ボランティアが回収して業者がひきとっている。


古紙問屋に積み上げられた紙


「回収古紙」のゆくえ
家庭→集団回収→直納問屋(古紙問屋)→製紙会社
家庭→一般買出人(ちり紙交換)→直納問屋→製紙会社
商店街・市場→専門買出人→直納問屋→製紙会社


******************************紙のリサイクル方法


古紙から「パルパー」で取り除いたゴミ

紙や紙製品をつくる時つかった粘土、針金、ボンド、布、プラスチックフィルム、インク(漂白剤を使う)を取り除かなければならない。

1.「パルパー」古紙を水でほぐす。1本のロープにひっかかったゴミをとりのぞく。


2.「クリーナー」ゴミを除く。


3.「スクリーン」まじりものを漉しとる。

4.「フローテーター」インクをとる。


5.「洗浄機」
6.「抄紙機」再生パルプで紙をすく
7.「カッター」
8.「白水回収装置」カスを回収して、板紙の芯に利用。

板紙、ダンボールには、バージンパルプを貼って見栄えよく仕上げるものもある。


再生処理するほど質が落ちる
「再生パルプ」:板紙、ダンボール、トイレットペーパーの材料に。
「再生紙」:再生パルプ+バージンパルプと混ぜる。

繊維の短いものは弱い紙になる。手間をかけると値段が高くなるのが問題。


******************************古紙の資源化をすすめるには

紙の再生は3回ほどが限度
ダンボール用の板紙の原料は90%が古紙だが、10%はバージンパルプを使用している。
OA用紙、本は、バージンパルプを多く使う。

※回収段階から、質ごとに分別することが重要。

「ブライト70」
破れにくい、見た目がよくないと、多くの人に使ってもらえない。
少し白さをおさえることで、不純物をのぞく手間がラクになる。


紙の種類→再生品(色紙が再生率が悪いのが意外/驚 「茶模造紙」て何だろう・・・?


「容器包装リサイクル法」が1997年に適用
パック、ペットボトルなどの再商品化をすすめることを目的につくられた。
牛乳パック、ダンボールは、すでに再商品化されているから対象外。




紙は燃料にもなる/驚
質が落ちた古紙は、燃料にすれば、石油、天然ガスなどが節約できる


古紙の固形燃料


******************************ダンボールの作り方



再生紙の中で、もっとも消費量が多いのはダンボール原紙。その90%は古紙。
古紙の利用法としては、すぐれた製品。80%以上回収し、繰り返し利用する。

1.中芯用の紙に波形をつける
 

2.でんぷんのりをつける(再生を考えて
3.外側の紙(ライナー)を両面に貼る。
4.「プリンター・ダイカッター」で印刷し、折り曲げ線、溝をつくる
5.はりあわせる


******************************トイレットペーパーの作り方

1.古紙をほぐす。バージンパルプを混ぜてやわらかい質を出す。
2.大きなロールに巻く。


3.決まった長さに巻きなおす。
4.カットする。

※買う人には「バージンパルプ100%」のほうが喜ばれるので、製本工場から出るはしきれを混ぜている。


******************************森を守る


パルプ用材として植林された森林(岩手)

紙の原料は木材
紙を使うほど、森から木をきっている。「環境破壊」
きった分は植林することが大切。パルプ用には生長の早い「アカシア」「ユーカリ」が多い。

トウモロコシ、ケナフなど、草の繊維を代わりに利用する方法もある。
しかし、植物から上質のパルプをつくるには、まざりものを除く大量の水が必要なので、大量生産には向かない。

砂漠など荒れた土地に植林して森を育てれば、緑豊かな自然にでき、森林破壊しなくて済む

※古紙の多い都市こそ、森林資源の宝庫だと言われる。


【本書まとめ】
「再生紙」といっても、古紙だけを原料にしているわけではない。
「古紙再生促進センター」では、「グリーンマーク」をつけられるのは、古紙パルプを40%以上つかったものだけと指定している。
トイレットペーパーは古紙100%、新聞紙、コピー用紙は50%以上。




古紙の値段の下落(1983年→1993年→2002年)
「新聞紙」27円→6~8円→9円
「雑誌」20円→2~3円→5.5円
「ダンボール」25円→8~10円→7円

2002年では、新聞紙を1000kg集めて、製紙工場に運んでも9000円にしかならない。輸送費のほうが高い


外国からパルプなどを安く輸入
古紙の値段が下がったのは、古紙が余ってきたから。新しいパルプのほうが安く紙がつくれる。


古紙リサイクルの利点
1.「焼却灰」が少なくなり、ゴミの量を減らせる埋め立て処分場を長持ちさせる
2.水、エネルギーの節約
3.森林を守る

市町村で、古紙を集団回収する団体に補助金を出すなどしてきた。


古紙利用が広まっている
1.製紙時の古紙利用率が高まった
2.中国などへの古紙輸出量が増えた
3.燃料化など利用法が広まった ※卵・電気製品などの包装材、断熱材、防音材、畜舎や畑のしき具など


紙の新しい原料は?
2000年、世界の森林からパルプ用にきりだされる木は3772万m3。
製紙にもっとも適しているのは「カラマツ」など。

※必要なものを作るのは、社会の進歩だが、無駄なものを作るのは、社会の寿命を縮めるだけ。


【関連するHP】
クリーン・ジャパン・センター
全国清涼飲料工業会
古紙再生促進センター など


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