■『地底旅行』(1864) ジュール・ヴェルヌ著(偕成社)
石川湧/訳 エドゥアール・リウー/挿絵
原題『地球の中心への旅』1864年初版、1993年第1刷、1997年第11刷
またまた大スケール、ミステリアス、大興奮の驚異の旅
無限に駆け巡るヴェルヌの驚くべき想像力の豊かさ、思わず納得させられる豊富な知識、
そして怒涛の如く一挙に読み手を引き込んで放さない文章力。
今作は、空、海底、無人島の旅にも劣らぬ地底の世界。地球の中心への旅。
今でも地核とマグマ、高熱の世界という説が常識とされているけれども、
以前、極から偶然、地底の別世界を見たという人も現れて、まんざら虚構だとも決めつけられないところがヴェルヌの魅力。
ちなみに、その話では、本書と違って、地底世界には巨人がいて、地上よりも高度な文明社会を築いていたそうな。
まるで地質学者のパラダイス。どんどん世紀、地球の生命の歴史を遡っていく様子は『ジェラシックパーク』。
目前で恐竜たちの大迫力ある戦いを見たり、漆黒の闇に迷ってしまったり、
旅に疑問を抱き続け、戸惑う甥の心境も、ついに火山噴火から押し出される。
クライマックスまでハラハラドキドキの連続。一気に2日で読みきってしまった。
地底世界はあるか? ないか? 本気で考えたくなるロマンあふれる傑作。
▼あらすじ(ネタバレ注意
風変わりで、いつも生徒に口たらずを笑われているマッドドクターそのままのリデンブロック教授は、
幾何学的文字、ルーン文字で書かれた掘り出し物の本に大興奮する。
そこから暗号の記された古い羊皮紙が落ち、食事も忘れて解読にかかる。
両親を早くに亡くして教授の助手をしている甥アクセルは、偶然裏から読むと
「大胆な旅行者よ。7月1日以前にスカルタリスの影がかすめるスネフェルスのヨクルの噴火口に下りよ。
しからば汝は地球の中心に到達すべし。余はそれをなせり」アルネ・サクヌッセンム
甥の悪い予感通り、即、地底への大冒険旅行に出かけると言い出す教授。
元孤児の養女で、婚約者のグラウベン嬢までが勧める。
「学者の甥にふさわし旅行よ。男はなにか立派な仕事をして人に優れるのがいいんだわ」
悪夢にうなされながら、とうとう船でアイスランドに向かい、途中、尖塔にのぼって高所訓練まで受ける。
アイスランドで泊めてくれた主人にアルネのことを聞くと、異端者だと迫害され、著作をすべて焼かれたという
秘密厳守と言いつつ、興奮して自ら喋ってしまう教授が可笑しい。
後々、命の恩人にまでなる最高の案内人で、力強く、無口で、頼りになる男ハンスに連れられて、
馬でアイスランドを渡り、貧しい宿屋を転々として、とうとうスネッフェルス死火山に登る。
火口にはアルネの石刻み文字が
3人は火口の底へロープで下り、翌日から地底への旅を開始する。
水中でも引火しやすい気体中でも安全に光を放つルームコルフ装置で照らしながら行くと、二手に分かれていて、運を天に任せて右へ行く。
途中から登りとなり、水が欠乏。その道は行き止まり。朦朧とするアクセルに教授は最後の水を飲ませる。
「分かるかね? 最後の水だ。私はそれを飲みたい欲望に20回も100回も抵抗したのだ。
いや、お前のためにとっておいたのだよ、アクセル」
分かれ道まで戻り、左を行き、アクセルは歩けなくなり万事休すが、ハンスは岩の奥に流れる激流を探し当て、
岩を削って鉄分を含んだ熱湯を飲み、「ハンス川」と名付けて、道しるべとする。
1mごとに数度上昇する「地熱説」はくだかれ、32度で、もう3000mもの深淵。
大気は濃いため、酸素は十分、音伝導がよく、遠くの音もよく聞こえる。
気圧も地表が最大で、地球の中心は無重力だという。ゆっくり下るので体を徐々に慣れてゆく。
外界の刺激が少ないため、言葉少なくなり、アクセルは小川道を外れて迷ってしまう
ライトも壊れ、極限状態でパニックを起こす。
4日間もそんな状態で、とうとう教授の声が聞こえ、声の届く時間で距離を計算し、同じ広間にたどり着いて再会する。
着いたのは海!
「リデンブロック海」と名付け、植物の化石で筏を作り、翌日出発。
巨大化したキノコの森、堆積岩のつらなるだけの不気味な岸壁、
天井も岩だろうが白い光を帯びた空に雲がかかったニセモノの空。
港は「グラウベン港」と名付けて航海を開始。
地底の深さは計り知れない。しかも位置は大西洋の真下。
化石でしか見られない原始の魚が釣れたり、半分朦朧と熱くなった頭でどんどん進む。
恐竜時代から植物時代、海に包まれた時代から、地球になるまでのガス星雲にまで遡るアクセルの想像に飲みこまれていく。
魚竜と首長竜との戦い
巨大ワニとネッシーみたいな絵が互いに首を咬んでいる様子が凄い。
潮を吹く巨大クジラに見えたのは、実は間欠泉を上げる島で「アクセル島」と名付ける。
次は嵐。天地創造シーンに居合わせたような大波、大轟音、電気の放出、磁気を帯びた青い玉は何だったのか!?
暗礁に乗り上げ、北の岸に着いたと思って羅針盤を見たら南。絶望的にも出発点に戻っていた!
「自然は私に陰謀を企んでいる。負けんぞ。人間が勝つか、自然が勝つか、今に分かる!」
筏に乗る前あたりを探検したお陰で、300年前の人骨を発見!
白人で大きさも形も現代人と同じ。思わず架空の生徒に演説をうつ教授。
その奥では巨大象マストドンの群れと戦う巨人族を見て、逃げる2人。
ローマ神話の引用が印象的。
「恐ろしき獣の群れの番人にして、みずからはなお恐ろしき姿なり!」
その上、錆びた短剣と、トンネルの入り口にアルネのサインを発見!
が、その前は巨大岩でふさがれ、興奮したアクセルは、火薬で吹き飛ばす計画を思いつく
爆発が大きすぎて海水が流れ込み、筏ごと急降下!
食糧も1日分を残してすべて流されて絶体絶命。
唯一のチャンスは噴火口を通り、筏ごと登り、一緒に押し出されること。
どこでも、どんな状況でも、先を読み、冷静で学者根性を失わない教授の決心で、最後の食事をとり、炉の中のような暑さを抜け、
ついに出たのは、なんと地中海に浮かぶ諸島の活火山の火口だった。
****************************
早く、他の作品にも触れてみたい。
映画と原作がかなりかけ離れているケースも十分考えられるから、原作を読めば新たな発見と感動があるかも。
タイトルの中では、月旅行や、砂漠のが面白そう。
やっぱり旅シリーズが一番だと思うけど、それ以外のヴェルヌの小説も面白いのかな?
彼ほどミステリアスな旅を実現させてくれる人はいないからね。
石川湧/訳 エドゥアール・リウー/挿絵
原題『地球の中心への旅』1864年初版、1993年第1刷、1997年第11刷
またまた大スケール、ミステリアス、大興奮の驚異の旅
無限に駆け巡るヴェルヌの驚くべき想像力の豊かさ、思わず納得させられる豊富な知識、
そして怒涛の如く一挙に読み手を引き込んで放さない文章力。
今作は、空、海底、無人島の旅にも劣らぬ地底の世界。地球の中心への旅。
今でも地核とマグマ、高熱の世界という説が常識とされているけれども、
以前、極から偶然、地底の別世界を見たという人も現れて、まんざら虚構だとも決めつけられないところがヴェルヌの魅力。
ちなみに、その話では、本書と違って、地底世界には巨人がいて、地上よりも高度な文明社会を築いていたそうな。
まるで地質学者のパラダイス。どんどん世紀、地球の生命の歴史を遡っていく様子は『ジェラシックパーク』。
目前で恐竜たちの大迫力ある戦いを見たり、漆黒の闇に迷ってしまったり、
旅に疑問を抱き続け、戸惑う甥の心境も、ついに火山噴火から押し出される。
クライマックスまでハラハラドキドキの連続。一気に2日で読みきってしまった。
地底世界はあるか? ないか? 本気で考えたくなるロマンあふれる傑作。
▼あらすじ(ネタバレ注意
風変わりで、いつも生徒に口たらずを笑われているマッドドクターそのままのリデンブロック教授は、
幾何学的文字、ルーン文字で書かれた掘り出し物の本に大興奮する。
そこから暗号の記された古い羊皮紙が落ち、食事も忘れて解読にかかる。
両親を早くに亡くして教授の助手をしている甥アクセルは、偶然裏から読むと
「大胆な旅行者よ。7月1日以前にスカルタリスの影がかすめるスネフェルスのヨクルの噴火口に下りよ。
しからば汝は地球の中心に到達すべし。余はそれをなせり」アルネ・サクヌッセンム
甥の悪い予感通り、即、地底への大冒険旅行に出かけると言い出す教授。
元孤児の養女で、婚約者のグラウベン嬢までが勧める。
「学者の甥にふさわし旅行よ。男はなにか立派な仕事をして人に優れるのがいいんだわ」
悪夢にうなされながら、とうとう船でアイスランドに向かい、途中、尖塔にのぼって高所訓練まで受ける。
アイスランドで泊めてくれた主人にアルネのことを聞くと、異端者だと迫害され、著作をすべて焼かれたという
秘密厳守と言いつつ、興奮して自ら喋ってしまう教授が可笑しい。
後々、命の恩人にまでなる最高の案内人で、力強く、無口で、頼りになる男ハンスに連れられて、
馬でアイスランドを渡り、貧しい宿屋を転々として、とうとうスネッフェルス死火山に登る。
火口にはアルネの石刻み文字が
3人は火口の底へロープで下り、翌日から地底への旅を開始する。
水中でも引火しやすい気体中でも安全に光を放つルームコルフ装置で照らしながら行くと、二手に分かれていて、運を天に任せて右へ行く。
途中から登りとなり、水が欠乏。その道は行き止まり。朦朧とするアクセルに教授は最後の水を飲ませる。
「分かるかね? 最後の水だ。私はそれを飲みたい欲望に20回も100回も抵抗したのだ。
いや、お前のためにとっておいたのだよ、アクセル」
分かれ道まで戻り、左を行き、アクセルは歩けなくなり万事休すが、ハンスは岩の奥に流れる激流を探し当て、
岩を削って鉄分を含んだ熱湯を飲み、「ハンス川」と名付けて、道しるべとする。
1mごとに数度上昇する「地熱説」はくだかれ、32度で、もう3000mもの深淵。
大気は濃いため、酸素は十分、音伝導がよく、遠くの音もよく聞こえる。
気圧も地表が最大で、地球の中心は無重力だという。ゆっくり下るので体を徐々に慣れてゆく。
外界の刺激が少ないため、言葉少なくなり、アクセルは小川道を外れて迷ってしまう
ライトも壊れ、極限状態でパニックを起こす。
4日間もそんな状態で、とうとう教授の声が聞こえ、声の届く時間で距離を計算し、同じ広間にたどり着いて再会する。
着いたのは海!
「リデンブロック海」と名付け、植物の化石で筏を作り、翌日出発。
巨大化したキノコの森、堆積岩のつらなるだけの不気味な岸壁、
天井も岩だろうが白い光を帯びた空に雲がかかったニセモノの空。
港は「グラウベン港」と名付けて航海を開始。
地底の深さは計り知れない。しかも位置は大西洋の真下。
化石でしか見られない原始の魚が釣れたり、半分朦朧と熱くなった頭でどんどん進む。
恐竜時代から植物時代、海に包まれた時代から、地球になるまでのガス星雲にまで遡るアクセルの想像に飲みこまれていく。
魚竜と首長竜との戦い
巨大ワニとネッシーみたいな絵が互いに首を咬んでいる様子が凄い。
潮を吹く巨大クジラに見えたのは、実は間欠泉を上げる島で「アクセル島」と名付ける。
次は嵐。天地創造シーンに居合わせたような大波、大轟音、電気の放出、磁気を帯びた青い玉は何だったのか!?
暗礁に乗り上げ、北の岸に着いたと思って羅針盤を見たら南。絶望的にも出発点に戻っていた!
「自然は私に陰謀を企んでいる。負けんぞ。人間が勝つか、自然が勝つか、今に分かる!」
筏に乗る前あたりを探検したお陰で、300年前の人骨を発見!
白人で大きさも形も現代人と同じ。思わず架空の生徒に演説をうつ教授。
その奥では巨大象マストドンの群れと戦う巨人族を見て、逃げる2人。
ローマ神話の引用が印象的。
「恐ろしき獣の群れの番人にして、みずからはなお恐ろしき姿なり!」
その上、錆びた短剣と、トンネルの入り口にアルネのサインを発見!
が、その前は巨大岩でふさがれ、興奮したアクセルは、火薬で吹き飛ばす計画を思いつく
爆発が大きすぎて海水が流れ込み、筏ごと急降下!
食糧も1日分を残してすべて流されて絶体絶命。
唯一のチャンスは噴火口を通り、筏ごと登り、一緒に押し出されること。
どこでも、どんな状況でも、先を読み、冷静で学者根性を失わない教授の決心で、最後の食事をとり、炉の中のような暑さを抜け、
ついに出たのは、なんと地中海に浮かぶ諸島の活火山の火口だった。
****************************
早く、他の作品にも触れてみたい。
映画と原作がかなりかけ離れているケースも十分考えられるから、原作を読めば新たな発見と感動があるかも。
タイトルの中では、月旅行や、砂漠のが面白そう。
やっぱり旅シリーズが一番だと思うけど、それ以外のヴェルヌの小説も面白いのかな?
彼ほどミステリアスな旅を実現させてくれる人はいないからね。