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『まんがで読破  柳田国男・作 遠野物語』(イースト・プレス)

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『まんがで読破  柳田国男・作 遠野物語』(イースト・プレス)

【ブログ内関連記事】
『まんがで読破 失われた時を求めて』(イースト・プレス)

この際、題名はよく聞くけど、原書を読む気力がない本はこのシリーズで読んじゃえばいいのでは?
とも思ったけど、実際の『遠野物語』は、たしか地域ごとのフシギ現象の記録だよね?

それを、どうしたわけか、現代の子どもたちが、教師に引率されて、舞台となった村に連れて行って、
取材させる設定になっちゃってるのが、なんだか残念。
しかも、最後は夢オチか?みたいなあやふやだし。
まあ、一応、名高い?妖怪はいくつか出てきたけど。


【内容抜粋メモ】

1890 花巻駅ができた
1909 柳田が遠野を訪れた。上野から電車13時間+人力車7~8時間の超長旅
1914 遠野駅ができた

ふつう民話は地域に定着した話が伝わっていることが多いが、遠野は交通の要所として栄えていたため、
村を通る人からいろんな噂話が入って、新旧ごっちゃになっている。



大学院で民俗学を学ぶ柳瀬は、クラスメイトとはぐれて「天狗」に遭遇。谷から落ちて、
十数キロ離れた山中に1人(+わんこのカイくん)で住む猟師・佐々木国士(くにお)に助けてもらう。
定期便が1週間に1度通るから、それまで山小屋に泊まって、自給自足の生活を体験する(大変そうだけど、楽しそう!

国士も「山男」を見たことがあるという。

「山男」

人里離れた山奥に住む大柄な男性の妖怪。「山女」もいて、合わせて「山人」とも呼ばれる。


国士「今も人の力の及ばない異界があるんじゃねえか。
   普段暮らしとるのは、ヒトが住みやすいように切り拓いた空間を整備した場所だ。
   だが、そもそもその人間社会自体も、この広い自然の中ではぐくまれたごく一部の世界に過ぎないだろ」

柳瀬は薪でお風呂を沸かして入り、山の夜空に感動する。



「こうして見える星のほとんどが太陽と同じなんだよな。けど距離が違うだけで、こんな小さな光になってしまう」

※肉眼で見える星のほとんどは、自ら発光している恒星


柳瀬は、全身のっぺらぼうの妖怪に会う。



以前もらった?ラジオが聞こえなくなったため、直してくれと頼まれ、電池を入れてあげると、
とても喜んで「ほんだら、こんど礼でもすっからなー」と言って消える。

佐々木は「そりゃ“猿の経立(ふったち)”かもな。猿に似た化け物とも言われているが、
この辺じゃ、よくわからん物の怪はだいたいそう呼んでる」

柳瀬「国士さんは、こんな所に一人で住んでて怖くないですか?」
国士「むしろ俺にゃ街のほうが怖いがね。
   ヒトの恐怖ってのは、たいていは知らねえもんに向くんだよ。
   今の街の人間はみんな自分のことを隠そうとするだろう。
   そんな得体の知れねえ人間に囲まれているより山のほうが俺にゃ勝手がいい」

柳瀬は、山の自給自足の生活に感動する。

柳瀬「炭火で煮炊きできるんですね」
国士「なにせ火は人間の知恵と力の象徴だからな」

囲炉裏の火は、薪を燃やして出た煙が、萱葺き屋根の天然の虫除け・撥水になる。
(それは以前、聞いたな→「新倉ふるさと民家園@和光市」

萱葺き屋根は、軽くて豊富な素材をふんだんに使うことによって、高い断熱性・遮音効果もあり、
もとが植物だから、雨・雪・凍結・嵐にも十分強い。

昔の田んぼは、稲だけじゃなくドジョウ、小魚、貝類も採れた/驚 今は農薬でいなくなった。

柳瀬「昔のやり方に戻せばいいのに」
国士「今これを普及させるにはヒトが多すぎる。年間で消費する薪や炭の量もバカにならねえし、
   何より住宅が密集してるから煙がすごいことになるだろう。
   だが50年後、100年後は分からんぞ。石油やガスだって無限じゃない。
   それらを使い切れば、今の技術は不便なものに逆転することもありえる」


柳瀬「煙管(キセル)ってここまで手入れが必要なんですね」
国士「手間がかかるからこそ愛せるってもんだろうが。
   手軽なもんばっかり選んでると、自分が本当に何を望んでいたのかも分からなくなっちまうぜ」


国士「雪女、座敷童の類も、もう遭遇する人が少ないから誰も信じてねだろう」
柳瀬「やっぱり、とくに伝承を守るといった風が強いわけではないんですね」

国士「守るだけの伝統を延々と続けるやつなんてそういねえよ。伝統ってのは必要だから伝え続けようってなるもんだろ」

(別の番組でも、国宝などの文化財は、保存+活用が肝心だってゆってたな。
 正倉院みたいに、造った時のまんま、現代にも残っている文化財があるのは、海外では信じられないことだという
 一方で、価値が分からず、売られたり、捨てられたりする文化財も多いとか


国士「そうやってお前さんみたいに周りに関心を持てなくなるってのは現状をまったく理解できてねえからなんじゃねえのか。
   どういう理由で今が成り立っているのか。自分の身の周りのことをじっくり順立てて考えれば、
   次に目の前でどんなことが起ころうがたいして動じることなんてねえはずなんだよ。

   目先のことに振り回されちまうやつってのは、今、世の中がどう動いているかを理解してねえから何が起こっているのかも分からない。
   人間ってのは根拠のねえことは理解できねえ。だが逆に根拠さえ分かれば多少の予測はたてられる。
   自分が置かれている状況がよく分かってねえのに、どう備えればいいのかなんて分かるはずがねえだろ?」


猿の経立さんが、ラジオのお礼にイノシシや山菜を置いていってくれた
それをさばく国士。手伝う柳瀬。

柳瀬「今まで食事って、お腹が空くから、それを満たすためにするものだって思ってたから、
   狩りまではしてませんけど、こうやって生きものを一から処理して、さらにそれを料理して、食べきって、
   お腹も満たされて、何かこう達成感も味わったようなのは初めてかもしれないです」

(ブロイラーみたいに、食べ物まで工業化したら、そりゃあ、残して、大量に食べ物を捨てることへの罪悪感も育たないよね
 ネイティヴ・アメリカンや、自然とともに暮らす民族は、生きものの命を頂いたら、感謝して、骨の一部を返したりする風習がある。それって大事。


柳瀬「変なの。人間は確実に労働に時間を使わなくなっているはずなのに、
   自分も周りも、いつも時間が過ぎることばかりを気にしている。
   その持て余した時間のために、さまざまな娯楽が生まれて、娯楽に入れ込むほど、時間ばかりが消費されていく・・・。

   布ひとつにしても、昔は全部手づくりだったんだよな。
   じっくり長い自分の人生をかけて、一人ひとりが、より豊かな生活のために工夫をしていたんだ」

 


柳瀬は、こんどは赤っぽい「河童」に会う。



国士「今の人間は自然を純粋だと思いたがるみてえだが、純粋ゆえに自然のほうが容赦がねえ。
   だからこそ、こっちも威厳を示さねえと、なめられちまうからな」


柳瀬「自分の子どもの頃を思い出すと、絵本とかは覚えてますけど、両親も祖父母にも、あまり話をしてもらった覚えがないなぁ」
国士「けど、完璧な教育なんてのはないだろ。正味な話、育つやつはどんな環境でも育つ。
   ただ時代によって、生きやすい性格、生きにくい性格はあるかもしれんがね」(私は生きにくいなぁ・・・

柳瀬「僕は今の社会が嫌いだから・・・」
国士「とにかくちゃんと身の回りのことこなしてりゃ大きく道を外れることはねえんだからよ。
   今そいつを投げ出しちまったら、どんどん周りに置いてかれちまうぜ」

国士は一度結婚して、子どももいたが、事故で亡くしたことを話す。

国士「仮に独りで死んだとしても、俺の体もいつかは土に還る。
   そのまま俺の体が養分になって、他の生きものの支えになるなら、それで充分だ」

(私も同感。賢治の世界だ



数日があっという間に経ち、柳瀬はクルマで送ってもらう。
道路に急に現れた獣を避けて、谷からクルマごと落ちる。運転手は消え、獣に襲われそうになる。



「悪運の強い人間だな。まあいい、久々に人間のごちそうだ」

逃げて、また谷に落ち、気がつくと友だちが心配そうにのぞいている。
病院のスタッフに「六角牛山の山小屋についてご存じですか?」と聞く柳瀬。

「私は見たことないが噂は聞くよ。迷い家(が)じゃないかと言われているが、人は住んでいないよ」

「迷い家(が)」
山中にあると伝わる幻の家。そこを訪れることができた者は福を授かるという。

帰り道、懐中電灯がつかずに、まさか電池を猿の経立をあげたからでは!?と思うが、電池はちゃんと入っていた(ここが謎


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