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ベッリーニ歌劇『清教徒(全3幕)』@リセウ大歌劇場(2001)

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ベッリーニ歌劇『清教徒(全3幕)』@リセウ大歌劇場(2001)

台本:カルロ・ペーポリ
演出:アンドレイ・セルバン
指揮:フリードリッヒ・ハイダー(今回エルヴィーラ役のエディタの夫で、エディタは1946年生、彼は1960年生だから14歳の歳の差婚/驚

出演:
グァルティエーロ・ヴァルトン卿:城主、清教徒(バス): コンスタンティン・ゴルニー
エルヴィーラ:ヴァルトンの娘:(ソプラノ):エディタ・グルベローヴァ
アルトゥーロ・タルボ:エルヴィーラの婚約者、スチュアート王家支持派の騎士(テノール):ホセ・ブロス
リッカルド:隊長、アルトゥーロの恋敵(バリトン):カルロス・アルバレス
ブルーノ:士官、リッカルドの親友(テノール):ビセンス・エステベ・マドリッド
ジョルジオ:城主の弟、エルヴィーラの伯父、退役隊長(バス):シモン・オルフィラ
エンリケッタ王妃:チャールズⅠ世の未亡人:ラクエル・ピエロッティ

とても有名なオペラというのは知ってたけど、タイトルの堅苦しさから、
なんだか宗教絡みの政治的な話かと思って避けてきたけど、中身はロマンス
人々から長く愛されるのは、やっぱり肩の凝らないエンターテイメントだね。


【ライナー抜粋メモ~岸純信(オペラ研究家)】
34歳で早世したベッリーニの完成作は10に留まるが、その抒情的な旋律は無類の美しさを湛えるもので、端正なその響きに魅せられる人は多い。
ロンドンを離れたベッリーニは、1833年、パリに到着。
当時のパリは、林立する歌劇場群の隆盛で欧州全土から注目を集めていた。

新作『清教徒』の初演1835年は、文字通りの大成功。
ロッシーニが知人に出した手紙にも「作曲家も歌手もステージに二度呼び出された。パリでは本当に珍しいと言わねばなるまい。
真にそれに値する時だけ、そのようなことが行われるのだ」と綴っている。

ベッリーニがこの僅か8ヶ月後に病で急逝したので、本作が彼の「白鳥の歌」となってしまった。
ワーグナーは「清らかなメロディと飾り気のない崇高さ、それに歌の美しさ」と後年記した。
この分かり易い一行こそ、ベッリーニの個性を端的に伝えるものであろう。

歴史
18C末の革命で我先にと国外へ脱出したフランスの貴族層には、海を越えてイングランドに逃れた人々が多かった。
彼らは後に英国文学を母国に持ち帰る。その後、大ブリテン島の巨星が、欧州全土を照らす。
スコットランド生まれのサー・ウォルター・スコットだ。
「歴史小説の魔術師」と謳われた彼は、故郷の幻想的な自然描写と、ロマンチックな物語作りを得意とした。

『清教徒』の原作『円頂派と騎士たち』は、スコットの影響下のパリで評判を得た一作。
「円頂派」とは、清教徒革命時の「議会派」を指すフランス語で、長髪の王党派に対して、
議会派は剃髪していたという史実による(ザビエル的な?w

ベッリーニがこの芝居に惹かれた理由は、ヒロインが狂乱状態に陥るシーンに魅せられたからだという。
乱れる心象風景を表現するというシチュエーションは、プリマドンナにとっては、喉の技巧をこれでもかと発揮できる貴重な場だった。

ベッリーニは、意外にもフランス語は不得手で、パリの社交の席に積極的に加わることが難しかったらしい。
フランス語で曲を作るオペラ座やオペラ・コミック座より先に、テアトル・イタリアンでの新作発表を選んだ気持ちも想像しやすい。
イタリア・オペラの旋律美の極致『清教徒』は、ロンドンやパリで音楽の新しい息吹に触れたベッリーニが母国語でオペラを書き得たことが幸いした。

音楽性
『清教徒』は、リコルディ社のヴォーカル・スコアの他、作曲当時の手書きのフルスコアもガーランド社から復刻出版されている。

映像
1994年の大火災を経て、1999年に再開場したこの劇場の、以前にも増して豪華になった内装が目を惹く。

 

イングランドで清教徒たちが王政を倒した革命(1642-1649)時の情勢を反映させ、戦で傷ついた人々を頻繁に登場させ、
衣装は当時のスタイルを尊重し、暗い色彩で統一されている。

リッカルド役のカルロスは、第一幕の最後で舞台を去る直前、
錯乱状態のエルヴィーラを見つめる一瞬の逡巡(決断できないで、ぐずぐずすること)ぶりは見応えがある。

初演当時の難役アルトゥーロを歌ったルビーニは、エスキュディエ兄弟に「胸声から頭声へのチェンジが全く分からない」と言わしめたが、
ルビーニの発声法は、現代のテノールとは異なるものと想像され、
ベッリーニが彼のために書いた「High F音」を現代の発声で出せる歌い手は、マッテウッツィのようなごく一部の例外的な存在になる。

ジョルジョ役のシモンは、収録時はまだ20代半ば(!)だったので、今後の声の成長にも期待したい。
(外国人ってほんと年齢が上に見える・・・メイクのせいもあるだろうけど



▼あらすじ(ネタバレ注意
 
開演直前まで練習して、演奏のイメージングをしているオケの面々

[第1幕]

白い服を着たエルヴィーラは落ち着きない様子でうろつく

 
長い剣を振り回す戦士たち。ブルーノ「警戒せよ。夜が明けた」

スチュアート王政を倒すための準備をする戦士の中で、一人苦悩するリッカルド。ブルーノがワケを聞くと、
「戦地に行く前、エルヴィーラの父に彼女との結婚を承諾させたが、帰郷すると、彼女の心は騎士タルボにあると分かった」
(銃が1丁落ちて、ブルーノは自然と戻してた

 

皆は結婚式の準備に大わらわ。しかし、エルヴィーラは悲しそう。父代わりの叔父に胸の内を打ち明けると、
兄に彼女が好きなのはアルトゥーロだと伝えたから、今日の式の相手はアルトゥーロなのだと伝える。
一気に喜びで興奮するエルヴィーラ。そこに「アルトゥーロが到着した!」としらせが入る。

 

 
跳ね橋からおりてきたのは、アルトゥーロと、父ヴァルトン卿、そして、黒衣の女性


アルトゥーロはエルヴィーラに愛の歌を捧げ、花嫁衣裳のための白いヴェールを贈る
(ソプラノの細かい音、長くのばす音ものびやかで素晴らしい!

黒衣の女性がヴァルトン卿に「後で議会にかける」と言われたのを聞き、
王党派でまだ忠誠心を引きずるアルトゥーロは「可哀想に。彼女は死刑にされる。なんとか救えないものか」と気にかける。
その様子を見て、「あの顔には憐れみがある」と期待する女性。

 

皆がはけてから黒いヴェールをとると、彼女はなんと幽閉されていた王妃エンリケッタ(フランス王家から英国に嫁いだ)と分かる。
「私は夫チャールズと同じ運命が待っているのです」
「逃げるのです。あなたをお救いします。命を賭けても!」

 

そこに幸せ絶頂のエルヴィーラが来て、「このヴェールを試させて」とエンリケッタにかける。
「あとであなたが私にヴェールをかけてくださる?」と無邪気に頼み去る。
「その姿なら逃げられます」とアルトゥーロ。

 

今度はリッカルドが来て決闘を申し込む。しかし、事情を知って「その女と行くがいい。愚か者め!」
アルトゥーロ「さらばエルヴィーラ!」
リッカルド「裏切り者を追いかけるのだ!」

 

2人が逃げていく様子を見て、ワケも分からず絶望したエルヴィーラは、
「エルヴィーラはもういない」と正気を失う。「私は愛に死ぬでしょう」とウェディングドレスを裂く勢い。
(演技も素晴らしく大拍手が鳴り止まず、一礼して応える



[第2幕]
(最初に上がっていく柵みたいのは何だろう???

 

ジョルジュは愛する姪の様子に苦しみ、皆も「悩み事を分けてください」と頼む。周囲は戦争で傷ついた者ばかり。
「ときどき正気を取り戻すが、祭壇にいるつもりで誓いますと言ったり、時には他人をアルトゥーロと思い込み、
 我に返るという繰り返しだ。そして死を望むのだ」

リッカルド「議会の名においてアルトゥーロを処刑する!」

♪私に希望を返して下さい。さもなくば死を と歌うエルヴィーラの声が聴こえてくる。
叔父やリッカルドを見ても誰か分からないし、戦士をアルトゥーロと間違えて誘惑したり。

 

その様子を見ていたリッカルドに「この人泣いてるわ。誰かを愛したことがあるのね」と同情する。
時々、正気に戻り「この命を絶ってください。さもなくば、あの人を返して!」
(悲しんだり、喜んだりする難しい役だなあ! “ブラボー!”と再び大歓声が鳴り止まず、一度壁から出てきて一礼

 

ジョルジュ「君は恋敵を救うことができる。彼を救うのだ」
リッカルド「NO! 議会の意志です。私は彼を憎んではいない」

ジョルジュ「罪深い嫉妬心を後悔するがいい。君の人生を破滅させるだろう。
      1つの魂を殺した時、もう1つの魂が彼とともに去るだろう」
リッカルド「誰の?」

ジョルジュ「“私はあなたのせいで死んだ”というだろう。2人の亡霊が君を脅かすのだ!」
リッカルド「私の涙で許しを得てみせます。あなたの涙が勝ちました。私も泣いています。
      明け方に敵が来る。その中にもし彼がいたら・・・」

ジョルジュ「祖国! 勝利! 名誉! ラッパを吹き鳴らせ!」

(ここでカーテンコールに出てくるジョルジュとリッカルド


[第3幕]

戦争は続き、死者を引きずって歩く兵士。外は雪

アルトゥーロ「やっと逃げ切った。長いこと異郷を彷徨って、やっと愛する人に会える。私は故国を失った流離い(さすらい)の男」



エルヴィーラが歌う声が聴こえる。

アルトゥーロ「あなたはどこにいるのだ? あなたは昔、私の歌に木霊を返してくれた(詩的な表現だなあ
       誰か来る! まだ私を追っているのか? 彼女にも危険が及ぶかもしれない。そうだ、あの愛の歌をうたおう」
(手にはあの結婚式の時の花の冠を持っている


エルヴィーラが歌に誘われて現れる。アルトゥーロが脱いだ上着を愛おしそうに抱きしめる

「消えてしまった。あの声は夢。空しいこと。アルトゥーロ、どこにいるの?」
「足元に! 許してくれ!」

まだ完全に正気ではないエルヴィーラ。
「3ヶ月も放っておいて・・・」
「3世紀ですわ。嘆きと苦しみに満ちた恐ろしい3世紀でした」

「可哀想に、彼女は事情(相手が王妃だったこと)を知らずにいたのだ!」
事情を話し、浮気ではないことを弁明し、エルヴィーラへの熱い愛がまだ全然変わっていないことを訴える。

 


ようやく納得したのに、そこに戦士らが現れ、リッカルドは処刑の準備をさせる

エルヴィーラ「私はいつでもあなたの側にいたい」
アルトゥーロ「私はあなただけを求めていた。この胸に来てください」
エルヴィーラ「魂が天上に昇る思いです。でもまたお逃げになるの?」

リッカルド「邪悪な男が! 苦悶のうちに死ぬがいい!」
エルヴィーラ「あの方が死に赴く時は、私も一緒に参りましょう」

ようやく正気に戻るエルヴィーラ。
アルトゥーロ「永遠にさらば!」



そこに伝令が届く。「私が軍の勝利だ! 罪人には恩赦が与えられる。イギリスは自由を得たのだ!」
しつこくもアルトゥーロを襲おうとするリッカルドをジョルジュが押さえる。
王家の敗北の知らせに、一同は彼をついに許す。


最後まで二転三転して、どうなるか分からない感じで、ようやく結ばれる2人にひと安心。

 

 

 



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