■カナダ・インディアンのおはなし『ムースの大だいこ』(架空社)
秋野和子/著 秋野亥左牟/画
秋野亥左牟さんシリーズ。
・『神々の母に捧げる詩-続 アメリカ・インディアンの詩』(福音館書店)
・チベットの民話による『石のししのものがたり』(福音館書店)
・ネパール民話『プンクマインチャ』(福音館書店)
タイトルもストーリーも星野道夫さんの世界が入っていて嬉しい。
上の3作の艶やかな色調もステキだけど、モノクロで表された広大な土地、民族の暮らしぶりも素晴らしい。
▼あらすじ(ネタバレ注意
アメリカ大陸の北のほうの大きな森と、川と、湖と、氷の平原に
インディアンの人々は、ムースや、トナカイ、ビーバー、ヤマアラシ、鳥、魚をとって暮らしていた。
いつもより寒い冬。
獲物が少なくなり、干し肉、干し魚も食べ尽くしてしまった。
とうとう、湖や、川の部落の首長たちが集まって、トナカイの皮で作ったテントの中で相談したが、
誰にもよい考えが浮かばなかった。
いちばん知恵のある首長が「森の中のメディシンマンに聞いてみるしかない」と言った。
メディシンマンは、一人で森に住み、森や、川などの秘密を知り、
クスリになる草や、獣などのこともよく知り、病気や災難を打ち負かす力を持っている。
メディシンマンは、いつまでたっても何も言わず、何日かが過ぎた
オーロラが踊る夜、メディシンマンが言った。
「わしにも、よい考えなどなにもない。どうなるか分からないが、ムースの大だいこに聞いてみよう」
それは雄のムースの皮を張った大だいこだった。
メディシンマンはゆっくりと大だいこを打ちはじめた。
ドン ドン ドーン
ドン ドン ドーン
太鼓の音に引き寄せられるように、あちこちの森から人々が集まってきた。
こうして2日目の夜も過ぎていった。
3日目の夜が明ける頃、大だいこの丸い面に影のようなものが見えてきた。
森と氷の平原が出会うところに、ムースの群れが固まっているのが見えてきた。
「あの森だ。あの平原だ」
男たちは、弓と矢を手に、ムースのいる平原に走り、1頭、また1頭と仕留めた。
人々は、自分たちのために死んでいったムースに感謝し、その魂のために祈った。
その猟で、ひと冬を越すのに充分なムースがとれた。
一番いい肉は、男がいなくて、猟に出られなかった家族に分け、
あとはみんなで平等に分けた。
その夜は、どの部落のテントにも、子どもたちの笑い声が聞かれ、
ムースの大だいこが、どんな風に不思議な力を表したのかを
夜がふけるまで話しあった。
***********
この物語りで惹かれるのは、どの場所に住む民族も皆で力と知恵を合わせれば、
どんな困難も乗り越えられるエネルギーとなるところ。
ドン ドン ドーン
と幾度となく鳴り響く擬音が使われるリズム感もイイ。
そして、自分たちの命を救うために亡くなったムースたちにも祈りを捧げるところ。
こうして、インディアンの信仰、暮らしの中には共生、共存が自然に行われているんだ。
言語も無数にあって、文字を持たない彼らは、こうした物語りを口承で伝えていった。
厳しい自然と向き合いながら、ヒトも他の生きものや、山、川、森、湖とともに生きているというのが素晴らしい。
秋野和子/著 秋野亥左牟/画
秋野亥左牟さんシリーズ。
・『神々の母に捧げる詩-続 アメリカ・インディアンの詩』(福音館書店)
・チベットの民話による『石のししのものがたり』(福音館書店)
・ネパール民話『プンクマインチャ』(福音館書店)
タイトルもストーリーも星野道夫さんの世界が入っていて嬉しい。
上の3作の艶やかな色調もステキだけど、モノクロで表された広大な土地、民族の暮らしぶりも素晴らしい。
▼あらすじ(ネタバレ注意
アメリカ大陸の北のほうの大きな森と、川と、湖と、氷の平原に
インディアンの人々は、ムースや、トナカイ、ビーバー、ヤマアラシ、鳥、魚をとって暮らしていた。
いつもより寒い冬。
獲物が少なくなり、干し肉、干し魚も食べ尽くしてしまった。
とうとう、湖や、川の部落の首長たちが集まって、トナカイの皮で作ったテントの中で相談したが、
誰にもよい考えが浮かばなかった。
いちばん知恵のある首長が「森の中のメディシンマンに聞いてみるしかない」と言った。
メディシンマンは、一人で森に住み、森や、川などの秘密を知り、
クスリになる草や、獣などのこともよく知り、病気や災難を打ち負かす力を持っている。
メディシンマンは、いつまでたっても何も言わず、何日かが過ぎた
オーロラが踊る夜、メディシンマンが言った。
「わしにも、よい考えなどなにもない。どうなるか分からないが、ムースの大だいこに聞いてみよう」
それは雄のムースの皮を張った大だいこだった。
メディシンマンはゆっくりと大だいこを打ちはじめた。
ドン ドン ドーン
ドン ドン ドーン
太鼓の音に引き寄せられるように、あちこちの森から人々が集まってきた。
こうして2日目の夜も過ぎていった。
3日目の夜が明ける頃、大だいこの丸い面に影のようなものが見えてきた。
森と氷の平原が出会うところに、ムースの群れが固まっているのが見えてきた。
「あの森だ。あの平原だ」
男たちは、弓と矢を手に、ムースのいる平原に走り、1頭、また1頭と仕留めた。
人々は、自分たちのために死んでいったムースに感謝し、その魂のために祈った。
その猟で、ひと冬を越すのに充分なムースがとれた。
一番いい肉は、男がいなくて、猟に出られなかった家族に分け、
あとはみんなで平等に分けた。
その夜は、どの部落のテントにも、子どもたちの笑い声が聞かれ、
ムースの大だいこが、どんな風に不思議な力を表したのかを
夜がふけるまで話しあった。
***********
この物語りで惹かれるのは、どの場所に住む民族も皆で力と知恵を合わせれば、
どんな困難も乗り越えられるエネルギーとなるところ。
ドン ドン ドーン
と幾度となく鳴り響く擬音が使われるリズム感もイイ。
そして、自分たちの命を救うために亡くなったムースたちにも祈りを捧げるところ。
こうして、インディアンの信仰、暮らしの中には共生、共存が自然に行われているんだ。
言語も無数にあって、文字を持たない彼らは、こうした物語りを口承で伝えていった。
厳しい自然と向き合いながら、ヒトも他の生きものや、山、川、森、湖とともに生きているというのが素晴らしい。