■『風と木の詩』8巻(小学館叢書)
竹宮惠子/著
分かってはいたけれど、最後の2巻は、なにがなくても涙が出る。
そうだよ。
私たちに必要なのは「自由」なんだ。
他には何も要らない。
【内容抜粋メモ】
[第7章 アニュス・ディ(神の子羊)]
ジルベールは、人が変わったように勉学に励み、試験結果では11位に入った。
そんな2人をやっかむ同級生らを諌めるA棟監督ジュール。
ピアノを弾くセルジュに合わせてジルベールが歌い、「自分の曲を創って。光の曲がいい」と言われ、
初めての作曲に感動で震えるルーシュ教授とルネ。
一方、ボウは、ロスマリネに、ジルへの学費も、学院の援助も差し止めると脅し、なんとかマルセイユの家に連れ戻そうとする。
ロスマリネは残虐で有名なアダムにその役を言いつける。
アダムは、自分の言うことを聞かなければ、セルジュを痛めつける」とジルを脅す。
ジルはアダムの後ろにはロスマリネ、その後ろにはボウがいると分かる。
“人を愛するということは、自分が犠牲を払うのではない。相手に払わせるということだ。
そしてそれが自分にとても手痛いということなのだ”
セルジュは、ジルのキスマークを見て、裏切られたと罵り、友だちとムリに日常を過ごす。
そんな様子を見て、セバスチャンはセルジュのピアノを聴きたいと言い、
パスカルはカールに「弟がジルベールのライバルに立候補だ」とからかう。
パスカルはカールに「週末、お前の下宿に泊めて、酒を飲ませてでも眠らせろ」と助言。
酔ったセルジュは、カールにジルと寝たことを言う。
「懺悔はしない。罪だってことは十分知ってた。ボクが苦しいのはそんなことじゃない。
そうやっても、彼を捕まえておくことができなかったってことだ!」
“溶けあってしまえたら 一つに溶けあってしまえたら 悩むこともいらないのに”
カール「彼の行為は、背信ではなかったのだ」
セルジュは酔っていて、前の晩の発言を覚えていなかった。
カールは、アダムらが、セルジュをジルから遠ざけるために乱暴していることを知ってしまう。
ジルはセルジュに真相を話さない。“恋の告白は、負けを認めて相手の前にひれふすのと同じこと”
セルジュをからかったと言い、「もう振り回さないでくれ」と言って去る。
“怒りで胸が破裂しそうだ! それなのに・・・愛しているという事実は少しも変わらない!”
セルジュは、ジルを決して見まいと決心する。
パスカル「結局、あの2人は表裏一体なのさ。片肺ではもう満足に飛べなくなてる。
忘れたのか? セルジュが転入してきた時、ワッツ先生とお前(カール)とで、
なにもしならないセルジュをジルと同室にしちまったんだぞ。
セルジュは少しもその期待を裏切ってはいない。今も彼は状況をすべて引き受けているよ」
林の中でアダムらに暴行されて放心しているジルを見つけるジュール。
ジュールにも抱かれるジル。
“ぼくはジルベールをオーギュストのところへ帰れと説得するつもりでいた。
だがこうなってはもう遅い。ジルベールは恋の毒に染まってしまった。
今、彼の心の底には激しく熱いひとつの希求があるだけ。
彼とは正反対の人物。セルジュ・バトゥールへの。火と水の恋。救いようのない不幸だ”
ルネ“恋の熱情が彼(セルジュ)を成長させている。苦しい恋なのか?
音楽家たちも皆そうして育まれたのだ。そこから巣立っていきたまえ。
私に足りなかったのは、結局、そんな経験かもしれぬ”
「ワッツ先生に部屋替えを頼む」というセルジュに、カールは事情を話す。ショックで目がくらむセルジュ。
乱暴されているジルのもとに走り、数人に暴行を受けて、全身打撲、腕は骨折してしまうセルジュ。
パスカル「教授に話したら、2人の関係も全部打ち明けることになるぜ」
セルジュは暴行した連中の名前をワッツらに明かさない。
その日から、上級生から守るために、パスカルらは交代で2人を警護することにする。
“とにかくアダムは絶対に陽のあたる場所で悪事はしない。普段はことさら真面目な学生だ”
ルーシュ教授も心配で寝込んでしまった。
セルジュ「爵位も名ばかりになりつつあります。新しい時代ですよ。
後悔したくない。父のように堂々と死ねたらいい。いつもそう思ってました」
セルジュは、ロスマリネにこの計画を立てた張本人と知らずにかけあう。
セルジュの信用を失いかけてうろたえるロスマリネ。
ジュール「いくら保護者の依頼でも、これがいかに非人道的か君にはよく分かっているはずだ。
保身行為もそこまで行けば悪徳だよ。君が腰をあげないなら僕がやる」
以来、アダムの影はウソのように消える。
セバスチャン「絶対ジュールだよ。総監が彼と組んでるから。ここの総監制度は、昔、番長だった人がつくったんだ」
セバスチャンは兄カールに「兄さんも素直に認めればいいのに、セルジュに恋してるってさ」!!
“溶けてしまいたい。なぜいっそ相手の中へ溶けこんでしまえないのだ。
かくしてセルジュ ぼくをかくしてよ 君のなかに・・・”
ジルのもとにボウから手紙が届き、退学させるという。
セルジュのもとには、叔母から手紙がきて、ボウからすべてを聞いて、アンジェリンとの婚約も危ういから帰ってこいと書いてあった。
ジル「言ってやる。腐った学院の、腐った校長! 僕には今まで翼がなかったんだ。だから言いなりになってやった」
“でも今は生えてる! あとは飛んで逃げるだけ!”
ジルを退学させ、マルセイユに連れ帰るつもりで来て、「勝手は許さない。私はお前の父親だ」と明かす。
ボウは、約束通り、ロスマリネを今期を最後に総監を降り、代わりにジュールに任せると言う。
「私が君の学費をみてあげよう。その中から君が母上にいくら仕送りをしようと自由だ」
ジュールは申し出を受ける。
“ボウは僕を君のように扱うまい。彼は僕に似ている。乾杯だ、母さん”
ジュールは、セルジュとジルが駆け落ちするかもしれないから、セルジュを監禁させたほうがいいと提言する。
「院長室へ呼んで、詰問するだけです。彼はウソがつけない子だ」
「同性愛事件としてかね」
「ウイ、ムッシュ。セルジュと対決する気がおありなら」
狙い通り、セルジュはジルと同衾し、同性愛も認めた。
「ジルベールが罪を犯す価値のある相手だったからです。
それに彼は、肌と肌を触れ合う以外に他を信じる術を知らなかった!
そう教えられていたからです、ボウ、あなたに!」
ロスマリネは、セルジュに1週間の謹慎を言い渡す。
セルジュは、院長らの前でジルとボウが父子関係だと明かす。
セルジュ「もうジルベールはあなたのものじゃない。神をおそれぬ教育を施されようと、人間は成長するんです!」
謹慎中、レオや、ブロウまでが見舞いに来てくれる。
ロスマリネ「君も・・・オーギュストの汚れた手管の餌食になった一人か?」
セルジュは、ロスマリネもボウにレイプされたと悟る。
ロスマリネ「ありがとうセルジュ。これで気持ちが定まったよ」
ボウは1人になったジルを再び暴力的にレイプする。
ジルはセルジュに2本のナイフを渡して「もう死ぬんだ。やってられないよ」と言って去る。
ジュールがジルを見つける。
「もう始末してしまいたいんだ。僕の体。どんなにイヤでも抱かれてしまう。誰にでも。振り回されるのに飽き飽きした」
セルジュは駆け落ちすることを友人に話す。
セルジュ「ジルベールと僕の名誉のために、あくまでも自分の意志でここを出て行きたいんだ」
パスカル「成功する確率は一分しかない、それでも?」
B棟では大規模なカンパが集まる。
“支配するもの。学校というカゴ。
疲れを知らぬ少年たちの反発のエネルギー。
今、それをセルジュが吐き出そうとしている。だまって見ている者はいない。
自分の代弁者へ向かって、ひたすらに目に見えぬエネルギーを送る。
これは一つの、見果てぬ夢”
ロスマリネに2人の脱走の密告文が届き、嘲笑する。
セルジュは何も言わず、最後の演奏を教授たちに聴かせる。
“だれも問わなかった。なぜなのだと。問われれば言ってしまったろう。あの時、だれも問わなかった涙の意味”
ボウに睡眠薬を飲ませ、ジルは具合が悪いと言って外に出る。
セルジュの見張りはロスマリネで、これで失敗だと観念すると、なんとお金を渡して逃がす協力をする。
「予定の行動はとらないほうがいい」
父同様、アルルからチロルに行こうと思っていたセルジュだが、ロスマリネの言葉を思い出す。
ジル「パリへ行きたい。パリはきれいで、とてもやさしい街だった」
1週間が過ぎ、2人がどこに行ったか分からず捜索は打ち切られた
「パリはどっちなの?」「えーと・・・」
[第8章 ラ・ヴィ・アン・ローズ]
パリに来て1カ月。ホテルを転々としてお金が減っていくが、気にしないジルに、仕事を探さなければと苛立つセルジュ。
ケンカした後にあの切ないラヴソング♪ラ・ヴィ・アン・ローズ が流れるなんて、なんて刹那な!
♪ここには なにより素晴らしいものがある それは愛 そして自由
掃除の仕事を見つけたセルジュは、汚い路地裏に部屋を借り、娼館のカミイユと会う。
カミイユは、インテリの支配人がいる場末のビストロの職をセルジュに紹介する。
そこを仕切っているクアドロらに「トンビ」と呼ばれ、肌の色で差別を受けるセルジュ。
セルジュは父同様、3つも仕事を掛け持ちして、ジルを養うが、
仕事で疲れて帰るのを待つだけの生活に耐えられないジルは、ギャルソン(ウェイター)として同じ店で働きはじめる。
[巻頭のカラーページ・巻末イラスト集]
まさかのロスマリネ!
*************
エディット・ピアフの代表曲として有名な♪薔薇色の人生 だけど、
ネットに載ってる歌詞とは全然違った解釈で、本作のほうがよっぽどいい。なにかと混ざっているのだろうか?
♪La Vie en Rose
あのひとが
わたしを胸に
抱いてくれる瞬間(とき)
そっと
話しかけてくれる瞬間(とき)
すべての事が
忘れられる
あのひとさえ
わたしを満たしてくれるなら
あなたの愛のことばが
わたしの薔薇色の人生
あなたゆえに
わたしが在(い)て
わたしゆえに
あなたが在(あ)る
あのひとは
そう言って
やさしく誓ってくれた
だから
あの人の姿が見える
その瞬間(とき)に
いつも わたしは感じる
この胸がときめくのを
それだけで
すべての事が
忘れられる
ほかにもカミイユが歌う歌謡曲がある。
♪かもめ かもめよ
なぜ啼き騒ぐ
それでも心が重いのか
愛しているのに
心はふたつ
なぜにひとつに
溶けあわぬ
人生(ラ・ヴィー)さ
それが人生(ラ・ヴィー)
愛(ラムール)
それが愛(ラムール)
日々の不安を
不確実さを
愛の巣の中で消す
かもめたち
♪運命は人には
測り知れぬもの
たとえ死という極限のように
見えるものさえ
永遠からすれば
小さなさざなみ
悲しみの箱に閉じこめないで
さざなみは
永遠のなかへ還(かえ)して
竹宮惠子/著
分かってはいたけれど、最後の2巻は、なにがなくても涙が出る。
そうだよ。
私たちに必要なのは「自由」なんだ。
他には何も要らない。
【内容抜粋メモ】
[第7章 アニュス・ディ(神の子羊)]
ジルベールは、人が変わったように勉学に励み、試験結果では11位に入った。
そんな2人をやっかむ同級生らを諌めるA棟監督ジュール。
ピアノを弾くセルジュに合わせてジルベールが歌い、「自分の曲を創って。光の曲がいい」と言われ、
初めての作曲に感動で震えるルーシュ教授とルネ。
一方、ボウは、ロスマリネに、ジルへの学費も、学院の援助も差し止めると脅し、なんとかマルセイユの家に連れ戻そうとする。
ロスマリネは残虐で有名なアダムにその役を言いつける。
アダムは、自分の言うことを聞かなければ、セルジュを痛めつける」とジルを脅す。
ジルはアダムの後ろにはロスマリネ、その後ろにはボウがいると分かる。
“人を愛するということは、自分が犠牲を払うのではない。相手に払わせるということだ。
そしてそれが自分にとても手痛いということなのだ”
セルジュは、ジルのキスマークを見て、裏切られたと罵り、友だちとムリに日常を過ごす。
そんな様子を見て、セバスチャンはセルジュのピアノを聴きたいと言い、
パスカルはカールに「弟がジルベールのライバルに立候補だ」とからかう。
パスカルはカールに「週末、お前の下宿に泊めて、酒を飲ませてでも眠らせろ」と助言。
酔ったセルジュは、カールにジルと寝たことを言う。
「懺悔はしない。罪だってことは十分知ってた。ボクが苦しいのはそんなことじゃない。
そうやっても、彼を捕まえておくことができなかったってことだ!」
“溶けあってしまえたら 一つに溶けあってしまえたら 悩むこともいらないのに”
カール「彼の行為は、背信ではなかったのだ」
セルジュは酔っていて、前の晩の発言を覚えていなかった。
カールは、アダムらが、セルジュをジルから遠ざけるために乱暴していることを知ってしまう。
ジルはセルジュに真相を話さない。“恋の告白は、負けを認めて相手の前にひれふすのと同じこと”
セルジュをからかったと言い、「もう振り回さないでくれ」と言って去る。
“怒りで胸が破裂しそうだ! それなのに・・・愛しているという事実は少しも変わらない!”
セルジュは、ジルを決して見まいと決心する。
パスカル「結局、あの2人は表裏一体なのさ。片肺ではもう満足に飛べなくなてる。
忘れたのか? セルジュが転入してきた時、ワッツ先生とお前(カール)とで、
なにもしならないセルジュをジルと同室にしちまったんだぞ。
セルジュは少しもその期待を裏切ってはいない。今も彼は状況をすべて引き受けているよ」
林の中でアダムらに暴行されて放心しているジルを見つけるジュール。
ジュールにも抱かれるジル。
“ぼくはジルベールをオーギュストのところへ帰れと説得するつもりでいた。
だがこうなってはもう遅い。ジルベールは恋の毒に染まってしまった。
今、彼の心の底には激しく熱いひとつの希求があるだけ。
彼とは正反対の人物。セルジュ・バトゥールへの。火と水の恋。救いようのない不幸だ”
ルネ“恋の熱情が彼(セルジュ)を成長させている。苦しい恋なのか?
音楽家たちも皆そうして育まれたのだ。そこから巣立っていきたまえ。
私に足りなかったのは、結局、そんな経験かもしれぬ”
「ワッツ先生に部屋替えを頼む」というセルジュに、カールは事情を話す。ショックで目がくらむセルジュ。
乱暴されているジルのもとに走り、数人に暴行を受けて、全身打撲、腕は骨折してしまうセルジュ。
パスカル「教授に話したら、2人の関係も全部打ち明けることになるぜ」
セルジュは暴行した連中の名前をワッツらに明かさない。
その日から、上級生から守るために、パスカルらは交代で2人を警護することにする。
“とにかくアダムは絶対に陽のあたる場所で悪事はしない。普段はことさら真面目な学生だ”
ルーシュ教授も心配で寝込んでしまった。
セルジュ「爵位も名ばかりになりつつあります。新しい時代ですよ。
後悔したくない。父のように堂々と死ねたらいい。いつもそう思ってました」
セルジュは、ロスマリネにこの計画を立てた張本人と知らずにかけあう。
セルジュの信用を失いかけてうろたえるロスマリネ。
ジュール「いくら保護者の依頼でも、これがいかに非人道的か君にはよく分かっているはずだ。
保身行為もそこまで行けば悪徳だよ。君が腰をあげないなら僕がやる」
以来、アダムの影はウソのように消える。
セバスチャン「絶対ジュールだよ。総監が彼と組んでるから。ここの総監制度は、昔、番長だった人がつくったんだ」
セバスチャンは兄カールに「兄さんも素直に認めればいいのに、セルジュに恋してるってさ」!!
“溶けてしまいたい。なぜいっそ相手の中へ溶けこんでしまえないのだ。
かくしてセルジュ ぼくをかくしてよ 君のなかに・・・”
ジルのもとにボウから手紙が届き、退学させるという。
セルジュのもとには、叔母から手紙がきて、ボウからすべてを聞いて、アンジェリンとの婚約も危ういから帰ってこいと書いてあった。
ジル「言ってやる。腐った学院の、腐った校長! 僕には今まで翼がなかったんだ。だから言いなりになってやった」
“でも今は生えてる! あとは飛んで逃げるだけ!”
ジルを退学させ、マルセイユに連れ帰るつもりで来て、「勝手は許さない。私はお前の父親だ」と明かす。
ボウは、約束通り、ロスマリネを今期を最後に総監を降り、代わりにジュールに任せると言う。
「私が君の学費をみてあげよう。その中から君が母上にいくら仕送りをしようと自由だ」
ジュールは申し出を受ける。
“ボウは僕を君のように扱うまい。彼は僕に似ている。乾杯だ、母さん”
ジュールは、セルジュとジルが駆け落ちするかもしれないから、セルジュを監禁させたほうがいいと提言する。
「院長室へ呼んで、詰問するだけです。彼はウソがつけない子だ」
「同性愛事件としてかね」
「ウイ、ムッシュ。セルジュと対決する気がおありなら」
狙い通り、セルジュはジルと同衾し、同性愛も認めた。
「ジルベールが罪を犯す価値のある相手だったからです。
それに彼は、肌と肌を触れ合う以外に他を信じる術を知らなかった!
そう教えられていたからです、ボウ、あなたに!」
ロスマリネは、セルジュに1週間の謹慎を言い渡す。
セルジュは、院長らの前でジルとボウが父子関係だと明かす。
セルジュ「もうジルベールはあなたのものじゃない。神をおそれぬ教育を施されようと、人間は成長するんです!」
謹慎中、レオや、ブロウまでが見舞いに来てくれる。
ロスマリネ「君も・・・オーギュストの汚れた手管の餌食になった一人か?」
セルジュは、ロスマリネもボウにレイプされたと悟る。
ロスマリネ「ありがとうセルジュ。これで気持ちが定まったよ」
ボウは1人になったジルを再び暴力的にレイプする。
ジルはセルジュに2本のナイフを渡して「もう死ぬんだ。やってられないよ」と言って去る。
ジュールがジルを見つける。
「もう始末してしまいたいんだ。僕の体。どんなにイヤでも抱かれてしまう。誰にでも。振り回されるのに飽き飽きした」
セルジュは駆け落ちすることを友人に話す。
セルジュ「ジルベールと僕の名誉のために、あくまでも自分の意志でここを出て行きたいんだ」
パスカル「成功する確率は一分しかない、それでも?」
B棟では大規模なカンパが集まる。
“支配するもの。学校というカゴ。
疲れを知らぬ少年たちの反発のエネルギー。
今、それをセルジュが吐き出そうとしている。だまって見ている者はいない。
自分の代弁者へ向かって、ひたすらに目に見えぬエネルギーを送る。
これは一つの、見果てぬ夢”
ロスマリネに2人の脱走の密告文が届き、嘲笑する。
セルジュは何も言わず、最後の演奏を教授たちに聴かせる。
“だれも問わなかった。なぜなのだと。問われれば言ってしまったろう。あの時、だれも問わなかった涙の意味”
ボウに睡眠薬を飲ませ、ジルは具合が悪いと言って外に出る。
セルジュの見張りはロスマリネで、これで失敗だと観念すると、なんとお金を渡して逃がす協力をする。
「予定の行動はとらないほうがいい」
父同様、アルルからチロルに行こうと思っていたセルジュだが、ロスマリネの言葉を思い出す。
ジル「パリへ行きたい。パリはきれいで、とてもやさしい街だった」
1週間が過ぎ、2人がどこに行ったか分からず捜索は打ち切られた
「パリはどっちなの?」「えーと・・・」
[第8章 ラ・ヴィ・アン・ローズ]
パリに来て1カ月。ホテルを転々としてお金が減っていくが、気にしないジルに、仕事を探さなければと苛立つセルジュ。
ケンカした後にあの切ないラヴソング♪ラ・ヴィ・アン・ローズ が流れるなんて、なんて刹那な!
♪ここには なにより素晴らしいものがある それは愛 そして自由
掃除の仕事を見つけたセルジュは、汚い路地裏に部屋を借り、娼館のカミイユと会う。
カミイユは、インテリの支配人がいる場末のビストロの職をセルジュに紹介する。
そこを仕切っているクアドロらに「トンビ」と呼ばれ、肌の色で差別を受けるセルジュ。
セルジュは父同様、3つも仕事を掛け持ちして、ジルを養うが、
仕事で疲れて帰るのを待つだけの生活に耐えられないジルは、ギャルソン(ウェイター)として同じ店で働きはじめる。
[巻頭のカラーページ・巻末イラスト集]
まさかのロスマリネ!
*************
エディット・ピアフの代表曲として有名な♪薔薇色の人生 だけど、
ネットに載ってる歌詞とは全然違った解釈で、本作のほうがよっぽどいい。なにかと混ざっているのだろうか?
♪La Vie en Rose
あのひとが
わたしを胸に
抱いてくれる瞬間(とき)
そっと
話しかけてくれる瞬間(とき)
すべての事が
忘れられる
あのひとさえ
わたしを満たしてくれるなら
あなたの愛のことばが
わたしの薔薇色の人生
あなたゆえに
わたしが在(い)て
わたしゆえに
あなたが在(あ)る
あのひとは
そう言って
やさしく誓ってくれた
だから
あの人の姿が見える
その瞬間(とき)に
いつも わたしは感じる
この胸がときめくのを
それだけで
すべての事が
忘れられる
ほかにもカミイユが歌う歌謡曲がある。
♪かもめ かもめよ
なぜ啼き騒ぐ
それでも心が重いのか
愛しているのに
心はふたつ
なぜにひとつに
溶けあわぬ
人生(ラ・ヴィー)さ
それが人生(ラ・ヴィー)
愛(ラムール)
それが愛(ラムール)
日々の不安を
不確実さを
愛の巣の中で消す
かもめたち
♪運命は人には
測り知れぬもの
たとえ死という極限のように
見えるものさえ
永遠からすれば
小さなさざなみ
悲しみの箱に閉じこめないで
さざなみは
永遠のなかへ還(かえ)して