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『吉祥天女 上』(小学館)

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『吉祥天女 上』(小学館)
吉田秋生/著

てっきり大島弓子さんのなんらかのつながりで借りたと思っていたけど、違った。
じゃ、一体、なにをキッカケに見つけたのかな??? 図書館か? 謎。

なにかオカルトのようなイメージを勝手に持って読み始めたけれども、学園ミステリーだった。
悪を成敗して、おとがめなし。勧善懲悪じゃない。
なぜ、これほどまでに家系を憎むのかも、ちょっと薄く感じるのは、『風と木の詩』の後に読んだせいか?

最初から「オバン」とか「スケバン」とか、当時の言葉が今読むと可笑しい。
女性蔑視を深いところから描いているのがポイント。
こればっかりは生まれ変わってみないと、なかなかお互い分かりにくいものなんだなぁ・・・

あまりに人間関係が複雑だから、家系図を書いてしまった

【飯干恵子(タレント)コメント抜粋メモ】
吉田さんは、なぜか学生服が大変好きな方のようです。
しかし、この学生服は、外国人の目には、ニッポン7不思議にされるくらい、奇妙キテレツに映るらしい。
「だって、皆同じ顔に見えるじゃないですか、あれ、おかしいよ。ニッポン変、個性とか認めてない」

私の好きな秋生さんの作品に『桜の園』があるけど、その色合いがホントに嬉しい作品だった。
どこにでもいそうな女子高生たちが醸し出す、色に例えるとピンクとグレイの中間のような空気。

だけど、いかんせん秋生さんは気が多い、というよりは飽きっぽい。

皆さんにも覚えがあると思う。
「男」という存在を変に恐れたり、憎んだりした日。
いつまでも少女のままでいたいのに、いつまでも少女のままでいなくてはいけないのに、
だんだんと変わってゆく(かもしれない)自分自身をなぜか許せない、あの感じ。

変化し続ける吉田秋生、そしてその底に流れる日本人的なやわらかな輪郭。
それが一番の魅力だ、と私は思います。制服を着てなくてもね。


▼あらすじ(ネタバレ注意
浅井由似子は、小学生の頃チカンにあったことから男性恐怖症になった高校生。
親友は大野真理。クラスの不良でプレイボーイの遠野涼が好きだが、涼はスケバンの今井久子と付き合っている。

 

ユイコのクラスに編入生としてやって来た叶小夜子は、才色兼備で、あっという間に人気者となる。
5歳まではこの街に住んでいたが、事情があって叶家の分家にあたる片平家に10年間預けられていた。



遠野涼の従兄弟・遠野暁は、叶家の亡き長男の妻・浮子の兄を父に持つ。
父は遠野建設社長で、市長と浮子と組んで、土地開発計画を名目に、叶家の山林資産数億を乗っ取ろうと企んでいるが、
叶家を仕切る祖父・叶泰三は断り続けている。

  

叶家は代々、女系家族で、長女に婿養子をとって家を継がせている。
亡き長男には、2人の娘がいて、小夜子の存在は、これまで伏せられていたが、呼び戻される。
サヨコは、片平家の養子・小川雪政といっしょならという条件で叶家に来た。
浮子は、サヨコの父と浮気をしているが、母はドロドロしたことはなにも知らずにいる。

  


久子の仲間が、目立つサヨコを集団リンチしようとして失敗。
腹いせに、今度は男子生徒に集団暴行させようとすると、大野は腕を折られる。



「人間の体には、いくつか急所と呼ばれるところがあって、
 男の人にとって、のどボトケはその1つ。そこをつぶされると命がない・・・そうよ」(ほんと!?

リョウの両親は交通事故死。妹・水絵が病気がちなため、遠野家に世話になっている。



アキラは自分より出来のいいリョウを気に食わず、佐原美子(リョウが好きだった)を利用してレイプ事件と見せかけ脅しているため、
リョウは遠野家から出られないばかりか、アキラの言いなりにならざるを得ない。

以前、自殺者が出たという屋上は出入禁止で、そこで話していたリョウとサヨコを見かけて、
粘着気質の教師・根津は、サヨコを呼びつける。

 

そこで、サヨコは肌もあらわに逃げ出してきて、根津に乱暴されそうになったという。
理事長の娘婿として新婚ホヤホヤの根津は謹慎処分になった上、その後、自殺してしまう。


サヨコはしばらく学校を休み、お見舞いに来てくれたユイコやリョウらをお花見会に誘う。
それは、実質、サヨコをアキラと結婚させる浮子らのお膳立ての会だと知りながら。

アキラはサヨコに興味を持ち、別に互いに嫌い合っていても構わないといって襲おうとして、リョウの機転で失敗する。

「男のディフェンス(防御)と、女のディフェンスは違うのよ。それからオフェンス(攻撃)もね」

腕を折られた大沢は頭に血がのぼり、どうしてもサヨコに仕返しをしないと気が済まないと言う。
アキラはそれを利用して、大沢にサヨコをレイプさせようと目論む。

リョウ「学校は“密室”だからな。なにかことが起きても、学校は必ずそれを隠そうとするだろう。とくにウチみたいな私立校は。
    一見逆に見えるけど、学校はいくらでも密室がつくれる。ちょっとした聖域だね」


ヒサコは、サヨコを化学教室に呼んで、大沢らが集団で襲うが、逆に大沢は片耳をナイフでサヨコに切り落とされる。
「女はね、血なんかこわくないのよ」

「奸計」(かんけい)=悪いはかりごと。悪だくみ。

リョウは叔父の息のかかった病院に大沢を運ぶ。
「まるで手術の跡みたいにスッパリと鮮やかなな切り口で、大沢の耳は二度とくっつかねえそうだ」
とアキラに話すと黙る。


ユイコの兄・浅井鷹志は、美術系の学校出で、叶家の古美術に興味があるから、土蔵を見せてほしいとサヨコに頼む。
タカシは「サヨコをモデルに絵を描きたい」と頼む。

サヨコは大沢を見舞いに行き、屋上に追い詰め、大沢が落ちるのをリョウとアキラは目撃する。
アキラ「ユリの花か。死者に送る花だな」





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