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『大島弓子選集 1 誕生』(朝日ソノラマ)

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『大島弓子選集 1 誕生』(朝日ソノラマ)

「大島弓子書籍リスト」さんも参照させていただきました/礼

大島弓子(作家別カテゴリー)

大島弓子さんの作品を網羅したくて、選集を借りてみた。
巻末の「大島弓子マンガ作品リスト」とウィキを見比べると、若干の違いがあるし、
選集だから、抜けている作品も多いが、今のところはよしとしよう。

2巻以降は、これまで読んだものもかぶってくるため、それらは「作家別カテゴリー」を参照のほど。


【収録作品】

●ポーラの涙 1968年週刊マーガレット春休み増刊4月10日号掲載


これが、大島さんの原点なんだなあ! しみじみ・・・
けっこう初期から、親の不在、対立、性倒錯などの特徴がにじみ出ているのが興味深い。
どうして、大島さんの登場人物はみんな親を亡くしているのかしら。
大島さんの母親は、巻末の「書き下ろしマンガエッセイ」を見るかぎりご健在のようだけど。

[あらすじ(ネタバレ注意)]


学生時代に付き合っていた男性を奪われ、その女性が去り、その娘ポーラを憎む養母。
ポーラは母親を強く求めるあまり、ドレスを引き裂いて、叱って欲しかったのに、
養母と父が「寄宿学校に入れないと、2人の仲までこじれてしまう・・・」と聞いて、
自分から「寄宿学校に入りたい」と言う。



養母は怪我をしたのもポーラの仕業だと決め付けるが、ポーラは雨の中、医師を呼びに行き、
そのまま雨の中で養母を見ていたため、高熱を出す。
ポーラの面倒をずっと見てきた使用人は、「あの子の涙のひと粒でもご覧になればよろしいわ」と泣く。
その様子を見て、養母も許してと泣く。


●ペールの涙 1968年8月週刊マーガレット夏休み増刊8月20日号掲載


[あらすじ(ネタバレ注意)]


盲目の弟のためにドレスを仕上げて、お金を工面しようとする姉。
それを知らずに、へそを曲げて困らせる弟ペール。2人は孤児院の出だった。

ペールは一晩だけ目が見えるようになり、姉が眠ってしまった間にドレスを仕上げようとして、血をつけてしまう。
翌日、裕福なお嬢さんがきて、ドレスを取りに来ると、真っ赤なドレスが仕上がっていた。


●デイトははじめて 1968年週刊マーガレット増刊11月20日号掲載


[あらすじ(ネタバレ注意)]
人気スター、ドーリィ・デイの娘ビアンカは、周囲に知られないよう隠れていなさいと言いつけられている。
そこに面白い男性がきて、一緒に遊ぶうちに仲良くなる。

ドーリィは、有名な監督ワイリーにプロポーズされたが迷っていると、同居の姉に伝える。
姉は、両親を亡くして苦労したことを考え、ビアンカは自分に任せてと言う。



週刊誌にドーリィに隠し子がいたことがバレ、自分から話したという。
しかし、ビアンカの友人となった男性こそが、ワイリーだった。


●フランツとレーニ 1969年週刊マーガレットお正月増刊1月10日号掲載


[あらすじ(ネタバレ注意)]
フランツは、体の弱いレーニ(腹違いの妹)が心配でならない。
母は、裕福で可憐ななアナスンと将来、結婚させようと躍起になっている。
レーニの母は結核でサナトリウムで亡くなったため、レーニも同じ病気だと思いこむ。



レーニの日記にフランツへの恋心が書かれているのを見て激怒する養母。
フランツもレーニが好きだと明かす。
しかし、フランツがアルバイトをしていると聞き、アナスンへのドレスを買うと勘違いするレーニ。
本当は、レーニのためにドレスに合う靴を買うためだったが、時は遅く、レーニは息を引き取る。
フランツはレーニを抱いて、雪の中、崖から投身する。


●詩子とよんでもういちど 1970年週刊マーガレット16号~22号掲載


[あらすじ(ネタバレ注意)]
体が弱いがおてんばな詩子を、祖父は心配でならない。
助手の寺内は、詩子が白血病で長くないと院長から聞いてショックを隠しきれない。
祖父は、白血病で長くないと詩子に知られるくらいなら、結核だと周囲に思われていたほうがいいと言いきかせる。



寺内は婚約が決まっていたが、当日になってドタキャン。
寺内はその日から詩子の病を治そうと、サナトリウムに閉じこもり、研究を続ける。
詩子は、そのサナトリウムを訪ねて、自ら入院。隣りのベッドのヒデ(同じく白血病)と仲良くなる。



ヒデは間もなく亡くなる。自分も同じ運命かと恐怖に脅える詩子。
「どうすればいいんです! 砒素剤とX線照射しか方法はないんですか?!」(砒素って毒物じゃ?
そこに院長が来て、ドイツでの研究なら治るかもしれないが、3年かかるという。
その間に詩子はもたないかもしれないが、将来同じ病で苦しむ患者は救えると説得する院長。



身を裂かれる思いでドイツに行った寺内。その後、詩子の容態が急変して、日本に急いで帰る。
やっとの思いで2人は再会するが、寺内の胸の中で詩子は亡くなる。


●男性失格 1970年週刊マーガレット27号掲載


[あらすじ(ネタバレ注意)]
胸毛が自慢(w)のシモンは、モテるのをいいことにやりたい放題。
ある日、ヨット遊びをしていて、核実験に巻き込まれる。
シモンは死亡と報道されるが、戻ってきていた。



その日から、自慢の胸毛は抜け、声も高くなり、胸がふくらみ、すっかり女性になってしまう。
親友のアーヴィは周囲を騙すために、シモンの妹のシモーヌだと誤魔化す。

教授「17Cにニューネーデルランドに同じ例があった。
   金を掘っていた男がウランに含まれる放射性物質のせいで性転換し、まもなく死んだ。学会では誰も信じなかった。
   もし、今そんなことがあれば、研究材料としてモルモットにされるだろう」と笑う。

すっかり女性になったシモンは、アーヴィが好きになる。
教授に知れて研究室で面会謝絶となる。「あと1週間も一緒にいたら、あの男は死んだでしょう」
アーヴィを巻き込みたくないシモンは姿を消す。


●誕生 1970年週刊マーガレット52号~’71年8号掲載


[あらすじ(ネタバレ注意)]
高校生のアサミがテスト中に気分が悪くなり、理由は妊娠だと知ってショックを受ける友人のレイ。
教員も、両親もどよめくが、「私、生みます」と言い張るアサミ。
相手は軽井沢の別荘で出会った人で、家庭が冷たいため、温かい家庭を作ってあげたいと真剣に懇願する。



一度は軽蔑するレイだが、帰宅して、両親がレイは捨て子だったということを知る。
新聞紙に包まれて学校の焼却炉の中に捨てられていた。母親はやはり10代で、今の両親が見つけて大事に育てた。
校長の娘としてなに不自由なく過ごして来た日々がウソのように思えるレイ。

「男性は突然人を愛すのかしら・・・ほんとうの愛もできあがらないうちに。子どもなんてのぞみもしないうちに!」

アサミは睡眠薬を飲まされ、一刻も早く堕胎手術を受けるよう両親がとりはからう。
アサミはレイに、父親は中原貴というからしらせてほしいと懇願する。
家に行くとタカシは、裕福な家の跡取り息子で、贅沢三昧、女友だちに囲まれてパーティの真っ最中。

レイから事情を聞くと雪の中を駆けつけるタカシ。
「僕はアサミさんを高校生だと知らずに愛しました。高校生とわかっていたら・・・やっぱり同じように愛しました」
アサミの父は、責任をとるなら許してもいいと言い、「明日までに両親を連れてこい」と約束させる。

しかし、タカシの両親は金でかたをつけろという。
「僕は期待していました。あなたが拳をあげて僕を勘当なさることを。それが最初で最後の父性愛だと信じて・・・」



アサミのもとに駆けつけようとするクルマにタカシの婚約者・サワコが乗っていた。
「誰にも渡したくない」クルマは崖から落ちる。
そのニュースを知ったレイは、アサミに知らせまいとする

レイ「アサミの中の子は私なのだ! 昔、私は苦しんだ。生まれるべきか。生まれぬべきか。
   悩んだまま、私は世に放り出された。あの夜、誰も通らなかったら、翌朝、ゴミと一緒に火をつけられていた」

1人助かったサワコは、タカシの死を知らせ、自殺する。
タカシの両親は手のひらを返したように「生んでください。タカシの子をください!」とアサミに泣きすがる。
アサミはがビルの屋上から身を投げようとするが、
レイ「あなたの中の子は私よ。その中の命が無意味だと言うなら、私の命も無意味。私も飛び降りて死ぬわ」



危機一髪でレイの手を掴む父。
「お前を拾ったのは、お前が泣いて私らを呼んだからだ。お前は今の幸せを自分の手で掴んだんだ。
 人はみんな考えるために生まれてくるんだ。なにが生か。なにが死か。なにが善か。なにが悪か」

アサミは疲労のため倒れ、肺炎で母子ともに危ないといわれる。
手術室に運ばれるアサミを信じて見送るレイ。


●夏子の一日 1971年週刊マーガレット28号掲載


[あらすじ(ネタバレ注意)]
ナツコは、父の再婚相手を母と呼べず、実母の写真をまだ持ち歩いていることを父に叱られる。
その死んだと聞かされていた母が、副担任・川田咲子としてやってきた。
ナツコを野坂さんと呼び、他人行儀なのにショックを受ける。



その上、森先生と結婚する噂を聞いてしまい、家に戻らず、心配する家族。

サキコ「パパは昔、1人の女性を愛してあなたが生まれたの。その人は体が弱くてすぐ入院してしまった。
    私はわが子として育てようとしたけど、彼女を迎え入れようと決めた。
    あの人は、母だと名乗れなかったのよ」

父の再婚相手だと思っていた女性が実母と知って驚く。




●あしたのともだち 1971年別冊マーガレット10月号


[あらすじ(ネタバレ注意)]
 

美人の転入生が来るのを楽しみに登校してきた森陽介。
転入生・尾崎咲子は、両親を失くし、妹と2人暮らしで、教科書も買えないため、森が貸してあげると、
休憩時間も惜しんで必死に書き写す。

実は、学校に遊びにきた妹ミィは娘。家賃も払えず、食べ物もない生活で、
学校で禁止されているゴーゴーガールのアルバイトをしていることを隠している。

 

クラスメイトの柳澤は、才色兼備で隙のないサキコを妬んで、教師に告げ口をし、
「今夜、後を尾ければ分かるわ」と友人たちと見張る日々が続く。

森は、なんとかサキコとミィを守るが、ミィが学校に来て、
「ママ、大変、家賃を払えないから全部トラックに乗せてもっていかれちゃう」と言い、バレてしまう。

サキコ「私は孤児で、13の時、結婚したの。温かい愛が欲しかった。
    あの人も学生で私のために働いて、働いて、血を吐いて死んでしまった」

翌日、ミィはサキコの代わりに学校の掃除をしに来る。
それを見たクラスメイトは掃除を手伝い、サキコのためにそれぞれ生活用品を持ち寄ろうと決める。




●みち子がきた日 1971年週刊マーガレット49号掲載


[あらすじ(ネタバレ注意)]
スポーツが大好きな大木は、クラスの人気者で、ミチコは憧れている気持ちを隠している。
しかし、大木の父が「息子は筋萎縮症で、生きているうちは病気を知らせまいと思う」と泣いているのを見てしまう。



その日から、まるで母親のように大木を心配して回るミチコ。
大木と付き合っているマリコは嫉妬する。
大木は、日に日に手足が動かなくなることと何か関係しているのではと気づく。
不安で雨の中走っていたため、病状が悪化し、亡くなる大木。
そうとは知らずに、大木のお嫁さんになるんだと走るミチコ。


【書き下ろしマンガエッセイ】
最初に自分のマンガが雑誌に載ったのは「ポーラの涙」。
この頃から、タイトルはことごとく変えられた。

 

「あしたの友達」は隣りの小学館の最初の仕事。
「ゆるされざる恋人」は今読み返すとどっぷり悪酔していました。しかたないのでお蔵にして寝かせました。
これより先は「地球征服」を除いて、自分のタイトルになるわけです。

映画の邦題も反対です。作り手はそこに向かって突進しているはずです。
つけるなら訳のようにサブタイトルにしてつけるべきです。


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