■『黄いろのトマト』(三起商行)
宮沢賢治/作 降矢なな/絵 初版2013年
図書館で検索しても見つからなかった今作を見つけることができて、早速借りてみたv
最後で分かるが、これは博物館の役人の子どもの頃の話。
ななさんのとても可愛いイラストと、幼い兄妹の純粋な心、初めて見たサーカスとの出会い、悲しい結末が心に届く。
▼あらすじ(ネタバレ注意
「町立博物館」にある蜂雀の剥製が大好きな少年は、学校の授業よりちょっと早く行って、真剣に見ていると、
その蜂雀がいきなり
「ペムペルという子はほんとうにいい子だったのにかあいそうなことをした。」
「妹のネリという子もほんとうにかあいらしいいい子だったのにかあいそうだなあ。」と話したのでビックリ。
その2人の子どもの話に夢中になる少年。
ペムペルとネリは2人きりで、キャベヂ(キャベツ)を育てたり、小麦を挽いたりして楽しく暮らしていた。
蜂雀は「あなたはむぐら(モグラ?)はすきですか」と時々からかったりして、2人を見ているのが好きだった。
話の途中で、番人のおじいさんが入ってきて、蜂雀は急に黙ってしまい、少年は号泣する。
「この蜂雀はよくその術をやって人をからかうんだ。
おい。蜂雀。今日で何度目だと思う。手帳へつけるよ。つけるよ。
あんまりいけなけあ仕方ないから館長様へ申し上げてアイスランドへ送っちまうよ。」
おじさんが行ってしまうと、蜂雀はつづきをやっと話してくれる。
兄妹は一緒に唱歌を歌ったりして楽しく過ごしていた。
2人はポンテローザとレッドチェリイのトマトも作っていた。
その中の1本が黄色く光っていて、驚くネリに兄は、
「黄金(きん)だよ。黄金だからあんなに光るんだ。」
と説明してあげる。
ところが、ある日、遠くからいい音がして、ヘリオトロープのいい香りさえしてくるので、
2人は「行ってみよう」と駆け出したが、思ったより離れていたせいで、いくつも丘を越えなければならなかった。
それは、町に来たサーカスだったが、初めて見た2人は分からなかった。
大人に混ざって馬に乗った少女は、ペムペルに投げキスまでした。
黒人が数人で引っ張っているのは、布をかぶせた象だったが、2人は最初、箱だと思ったりして、
面白そうなので、その一行についていった。
辺りは暗くなり、照明をつけた天幕(テント)はすっかり看板やらで賑わい、近くの町から大勢が見に来た。
「僕たちも入ってこうか。」
と言ったものの、中へ入るには、みんな受付でなにか黄金を出して銀のかけらを返してもらっている。
兄は妹をその場に待たせて、急いでまたあの丘を越えて、庭から黄色いトマトを4つもいで、必死になって戻ってきた。
そして、受付の番人にそれを渡すと、しばらくフシギそうに見てから、
「何だ。この餓鬼め。人をばかにしやがるな。
トマト二つで、この大入の中へおまえたちを押し込んでやってたまるか。失せやがれ、畜生。」
と怒鳴って、トマトを兄妹に投げつけ、それを見た他の客はみな笑った。
兄は妹をかばうようにその場を逃げ出し、真っ暗な夜の道を泣きながら家に帰った。
蜂雀はこれ以上はもう可哀想で話せないと口を閉じてしまう。
少年は、涙をこぼしながら、授業に戻っていく。
【本文中の表記について】
博物局十六等官:賢治の創作した官職名。『ポラーノの広場』にも出てくる。
グレン:grain。重さの単位。
宮沢賢治/作 降矢なな/絵 初版2013年
図書館で検索しても見つからなかった今作を見つけることができて、早速借りてみたv
最後で分かるが、これは博物館の役人の子どもの頃の話。
ななさんのとても可愛いイラストと、幼い兄妹の純粋な心、初めて見たサーカスとの出会い、悲しい結末が心に届く。
▼あらすじ(ネタバレ注意
「町立博物館」にある蜂雀の剥製が大好きな少年は、学校の授業よりちょっと早く行って、真剣に見ていると、
その蜂雀がいきなり
「ペムペルという子はほんとうにいい子だったのにかあいそうなことをした。」
「妹のネリという子もほんとうにかあいらしいいい子だったのにかあいそうだなあ。」と話したのでビックリ。
その2人の子どもの話に夢中になる少年。
ペムペルとネリは2人きりで、キャベヂ(キャベツ)を育てたり、小麦を挽いたりして楽しく暮らしていた。
蜂雀は「あなたはむぐら(モグラ?)はすきですか」と時々からかったりして、2人を見ているのが好きだった。
話の途中で、番人のおじいさんが入ってきて、蜂雀は急に黙ってしまい、少年は号泣する。
「この蜂雀はよくその術をやって人をからかうんだ。
おい。蜂雀。今日で何度目だと思う。手帳へつけるよ。つけるよ。
あんまりいけなけあ仕方ないから館長様へ申し上げてアイスランドへ送っちまうよ。」
おじさんが行ってしまうと、蜂雀はつづきをやっと話してくれる。
兄妹は一緒に唱歌を歌ったりして楽しく過ごしていた。
2人はポンテローザとレッドチェリイのトマトも作っていた。
その中の1本が黄色く光っていて、驚くネリに兄は、
「黄金(きん)だよ。黄金だからあんなに光るんだ。」
と説明してあげる。
ところが、ある日、遠くからいい音がして、ヘリオトロープのいい香りさえしてくるので、
2人は「行ってみよう」と駆け出したが、思ったより離れていたせいで、いくつも丘を越えなければならなかった。
それは、町に来たサーカスだったが、初めて見た2人は分からなかった。
大人に混ざって馬に乗った少女は、ペムペルに投げキスまでした。
黒人が数人で引っ張っているのは、布をかぶせた象だったが、2人は最初、箱だと思ったりして、
面白そうなので、その一行についていった。
辺りは暗くなり、照明をつけた天幕(テント)はすっかり看板やらで賑わい、近くの町から大勢が見に来た。
「僕たちも入ってこうか。」
と言ったものの、中へ入るには、みんな受付でなにか黄金を出して銀のかけらを返してもらっている。
兄は妹をその場に待たせて、急いでまたあの丘を越えて、庭から黄色いトマトを4つもいで、必死になって戻ってきた。
そして、受付の番人にそれを渡すと、しばらくフシギそうに見てから、
「何だ。この餓鬼め。人をばかにしやがるな。
トマト二つで、この大入の中へおまえたちを押し込んでやってたまるか。失せやがれ、畜生。」
と怒鳴って、トマトを兄妹に投げつけ、それを見た他の客はみな笑った。
兄は妹をかばうようにその場を逃げ出し、真っ暗な夜の道を泣きながら家に帰った。
蜂雀はこれ以上はもう可哀想で話せないと口を閉じてしまう。
少年は、涙をこぼしながら、授業に戻っていく。
【本文中の表記について】
博物局十六等官:賢治の創作した官職名。『ポラーノの広場』にも出てくる。
グレン:grain。重さの単位。