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谷川俊太郎『ぼくは ぼく』(童話屋)

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『ぼくは ぼく』(童話屋)
谷川俊太郎/詩

本書も『写真』、『つなひき』同様、2013年1月29日初版発行の新品ピカピカ。

巻末の田中和雄さんによる編者あとがきは、童話屋のリンク先にあるとおり。
“子どもとその未来について、また平和について、氏の近年の詩作を中心に編んだ、小社刊・第三の詞華集です。”とのこと。
「大人の事情」で歪んでゆく少年・少女のココロとカラダ。
学校で何か学ばなきゃいけないのなら、この詩集を使ったらいいんじゃないかなと思った。


【本編抜粋メモ】

「生まれたよ ぼく」
だから邪魔しないでください
ぼくが笑うのを 
ぼくが泣くのを
ぼくが誰かを好きになるのを
ぼくが幸せになるのを



「はな」
にんげんはなにかをしなくてはいけないのか
はなはたださいているだけなのに
それだけでいきているのに



「なくぞ」
なくぞ
ぼくなくぞ
いまはわらってたって
いやなことがあたらすぐなくぞ



「むし・ほし・ひと」
ひとつ ふたつ みっつ よっつ
よるの なかに ほしが いっぱい
でも ひとり たった ひとり
かずを かぞえる わたしは ひとり




「おに」
こどものころは
つのなんか はえてなかった
ふさふさの まきげだった
おにごっこして あそんでた

ひとに いじめられて
だんだん つのが はえてきた
だんだん つめが のびてきた
なくことも わすれてしまった



「子どもは笑う」
見たもの聞いたもの
嗅いだもの触ったもの
それらすべてにくすぐられて
子どもが笑っている

子どもには百千もの笑うわけがある

この世と戦うためにほほえむ子ども
この世と和解するためにほほえむ子ども
どんな貧しさも
どんな富も子どものほほえみを奪うことは出来ない



「あなたをしりたいんじゃない」
あなたをしりたいんじゃない
わたしをしってほしいんでもない
まじりあいたいの それだけ
うそもほんともいっしょくたに



「みえないあみ」
そらにかかるみえないあみ
そのあみのめのひとつがあなた
ひとつがわたし しってることを
あなたにおしえる しらないことを
あなたにおそわる いいきぶん

じめんのしたのからみあうねっこ
そこにもいるあなたとわたし
そらのうえでじめんのしたで
わたしとあなたはむすばれている
こどもとおとなも てきとみかたも
だれもひとりではいきていけない



「しんでくれた」



「そのこ」



「泣いているきみ」
泣いているきみが好きだ
笑っているきみと同じくらい
哀しみはいつもどこにでもあって
それはいつか必ず歓びへと溶けていく



「幸せ」
わたしは幸せです
でもわたしが幸せなだけでは
世界は良くならないと思うのです
違いますか?



「もどかしい自分」
生きているってこういうことなんだ
さびしい自分 不安な自分
でも何かを持っている自分
もどかしい自分
そういう自分を見つめている自分



「ありがとう」
でも誰だろう 何だろう
私に私をくれたのは?
限りない世界に向かって私は呟(つぶや)く
私 ありがとう


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