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『大島弓子選集 16巻 綿の国星3』(朝日ソノラマ)

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■『大島弓子選集 16巻 綿の国星3』(朝日ソノラマ)

「大島弓子書籍リスト」さんも参照させていただきました/礼

大島弓子(作家別カテゴリー)

綿の国星だけを3冊一気読み。

『大島弓子選集 9巻 綿の国星』(朝日ソノラマ)
『大島弓子選集 15巻 綿の国星2』(朝日ソノラマ)


【収録作品】

●お月様の糞 19 1984年LaLa2月号掲載


[あらすじ(ネタバレ注意)]
チビ猫は近所の男性・百済にゴハンをもらって「飼っていたフンという猫を知らないかね」と聞かれる。
家にも呼ばれるが、隣りに住む女子中学生の歌音に遊ばれる。

 

百済は、歌音を赤ちゃんの頃から知っているが、この頃の彼女は自分に恋をしていることに気付いていた。
再婚はしないのかと聞かれて「人はもうたくさんだ。猫のほうがずっと安らげるし、人間的だ」とさり気なく気持ちを伝える。

チビ猫は、百済からお酒をもらって酔っ払って、ヨーデル猫をラフィエルと間違え、
フンの居場所を聞くと、誰かにもらわれた後、姿を消したと聞く。

 

歌音は、自分も猫になれば、百済に好きになってもらえると、本気でなりきる。
そこにソロバン心霊占いのおじいさんが現れ、死んだ野良猫フンにとりつかれていると言うと、
歌音は激しく泣き出す。フンを殺して埋めたのは自分だという。

百済「歌音、観念する。君がもう少し大人になったらプロポーズしよう」

しかし、近所の野良猫の話だと、フンは自然死だったという。
“飼い猫になって、広い庭に埋められたのなら幸せだった。憑依現象も、そのフンのはからいかもしれない”



●ばら科 20 1984年LaLa4月号掲載


[あらすじ(ネタバレ注意)]
チビ猫は、近所の佐山シロ猫さんが、自分の産んだ子を食べてしまったという話を聞いて驚く。

 

当人に聞くと、本当だけど、夢中だったから全然覚えていないと、とても穏やかだった。
チビ猫は、近所中の母親猫を回って、他に食われた子猫はいないか調べるがいない。



そこに自分ソックリな子猫シャンと出くわす。
シャンのきょうだいは、他にもトン、チン、もう1匹いたが突然消えたと聞いて、
チビ猫は、もしや自分はここの子なのかもしれないと思う。
そこで、チビ猫はシャンと立場をとりかえっこすることにする。



母のドラムは怒りっぽいが、子どもの面倒見がよく、人間に近づこうとするチビ猫を強く叱る。
「人間を信用するな。私以外の動物すべて信用してはならない。すべて敵なんだ!」
チビ猫は時夫たちは優しいと反撃して泣く。

“ほしい ほしい あのいとしい わたしの玩具
 だけど あなたは否定する
 わたしの気持ちを邪険にする

 こんな悲しい こんなせつない こんなさみしいことはない
 だから わたしは大道で
 声のかぎりを泣くしかない”

(私が小さい頃、ヒステリックに泣いた理由がまさにコレなんだ

寝てしまったチビ猫を父猫が見張っている。
ほんとうは、もう1匹は車道で轢かれて死んでしまったのをドラムも見ていたのに、
気が狂って、チビ猫を自分の子だと信じてしまっていると説明する。

ドラムは餌を狩って帰ると、子どもの数をかぞえて
「なぜこうなる前に食ってしまわなかったんだろう! もう繰り返さない、こんな失敗」と嘆く。

 

一方、須和野家に行ったシャンは、人間を警戒するクセが抜けず、父母らに不審がられる。
ついに家を抜け出したシャンは、今のうちにすり替わって逃げてという。



●ギャザー 21 1985年LaLa2月号掲載


[あらすじ(ネタバレ注意)]


双子の猫、穏やかなモルドと、嫉妬心が強いグリン。
チビ猫は、近所の野良猫トラマルがモルドたちが好きだから話しかけ方を教えてくれと頼まれる。

グリンは、トラマルが両方同じくらい好きだという言葉を聞いて、さらに機嫌が悪くなる。
そのワケは、2人が世界中で一番大好きな飼い主のおばあさんが、両方等しく可愛がってくれたことに起因する。

 

グリンは、どっちか決めて欲しいと、柔軟性や音域などを披露するが、どちらも同じで悩むトラマル。
トラマルは、モルドが「最近、グリンはうつ気味だから、君を好きだと言えば元気になるだろう」と言ったから
優しいモルドを選んでしまう。

グリンが悩んで出かけている間に、おばあさんは倒れて昏睡状態となる。
それを隣りの家に知らせに行ったのがモルドだと知って、グリンはモルドを軽蔑したくなる。

そんな折、2人はそろって発情期を迎える。
おばあさんは、ペットショップから血統書付きのオス猫を連れてきて、2人の不穏な様子は収まる。

 

グリンのいない間に、おばあさんは急死。
遺書はあったが、肝心の2人の引き取り先は書いてなくて、困った親族は獣医に安楽死を頼むと相談するのを聞く。

 

先に逃げたのはモルドのほうだった。安楽死を選ぶことでモルドに勝ったと思うグリン。
トラマルはグリンを助け、獣医は2人をそれぞれ北海道、沖縄の里親に預けるという。

トラマル「やっぱりぼく、ふたり一緒が好きなんだ」

双子は野良猫になる決心をする。
グリン「よく知らないけどさあ・・・どんどん行くと、いつかしまいには元に戻るんだってさ」


●ねのくに 22 1986年LaLa2月号掲載


[あらすじ(ネタバレ注意)]
近所に猫ジステンパーにかかった野良猫がいると聞いて、仲間が止めるのも聞かずに見に行くチビ猫。
こんな時にかぎって、病院は休日、父母、時夫も留守。



野良猫は、夢を見ては起きてしまう。
自分を捨てた団地の模型、住民の人形があって、もぐらたたきに似ているという。

 

チビ猫は、その団地に行ってみると、野良猫がもぐらたたきをするたびに、
住民が怪我をして、最終的には団地がドミノ倒しになっていく!



この団地は犬猫禁止だが、みな猫ジステンパーで大量死したため、全棟で処分することが決まったのだと知る。



仲間たちはチビ猫を避けていたが、以前、足を手術した際、予防接種を受けていたから伝染しなかった。
(この辺は、大島さんの猫を飼うことに対する意見が全面に出ている感じがするなあ


●椿の木の下で 23 1987年LaLa3月号掲載


[あらすじ(ネタバレ注意)]
チビ猫が家に帰ると、病気の野良猫をみんなで看病していた。
名前を「点茶」にして家で飼おうという話を聞いて、チビ猫は自分よりいい名前だと嫉妬する。

ほんとは、点茶はすっかり元気に回復していたが、以前から家猫としてゆったり暮らすのが夢だったため、
チビ猫を追い出して、家族の愛情を独り占めしようと、ひっかいたりする。



家族は猫語が分からないため、家の中を荒したのもすべてチビ猫のせいにして、
病気が治るまで、猫を欲しがっていた時夫の友だち・相沢に預かってもらおうかと相談する。
チビ猫は深く傷つき、野良猫仲間に「あたしのこと好き?」と聞く。



点茶は、爪の殻を時夫にプレゼントしようととっておいたが、無視される(こんなのが出来るんだ/驚



チビ猫は、キレイな野良猫にしかゴハンをあげない近所のおばさんについていく。
「うちの猫にならない?」と言われ、食べきれないほどのゴハンを食べて、
お腹が痛くなり、トイレも見つからず、仕方なくそこらじゅうにフンをしてしまって、
おばさんは須和野家に苦情を言いに来る。

 

点茶はこれまであちこちに飼われては捨てられる生活だったから、
1つの家に住んで、太ったわがままな猫になりたいから、賭けをしたいと言う。

それには、チビ猫が相沢の家に行くか、じゃなきゃ眠ってるお母さんの顔を全部の爪でひっかいてやるというもの。
チビ猫は泣く泣く条件を飲む。

相沢は、点茶をもらってもいいと言って、わざわざとりにくる。
それを見て、点茶は相沢にピッタリくっついて離れなくなる。



点茶がすっかり元気なことは家族みんな知っていた。
時夫から「ごめんな」と言われて、すっかり安心して眠るチビ猫。



●ジィジィ 1993年ASUKA7月号掲載


[あらすじ(ネタバレ注意)]
高校1年生のイネは、父母は経営不振の自営業でほぼ家にいないため、
近所に住む、父の叔母(一人暮らし)の家に通っている。



霊能力者の大おばは「今から七日目の二十四時、この世は終わる」といきなり宣言するが、信じないイネ。

イネは友だちにそれを電話で話すと、翌日には田舎町中に広まっていた。
イネは、酒屋で鳴山線一が酒を万引きするのを目撃する。
鳴山は、1学年上で生徒会長もやったことのある、地域の有望株NO.1。



その彼が、畑で無断でスイカを盗んで食べたりしてるので、ワケを聞くと、
世界が終わるからやってみたかったことを全部やるとのこと。
責任を感じたイネは、自分は生の守護霊だと誤魔化して、鳴山をフォローしまくる。

大おばは、予言したのになぜ平然としているのかと聞くと、
「人生毎日が最後の日」と哲学的な答えが返ってくる。
「この生活が好きなんだよ」(それがいちばんだよねv



町の百貨店では世紀末バーゲンをやっていて、大おばは養老年金を解約したからといって
イネにパーティドレス、自分には300万円以上の絹の反物を買ってしまう。

鳴山は、自宅の金庫のお金を全部持ち出し、イネに返し、
自分は「自由でいいな」といつも思っていた「ルンペン」をやってみて、
通りすがりのサラリーマンにイネが返したお金全部をあげてしまう。
(ルンペンて言い方が江戸川乱歩の少年探偵シリーズっぽいw

夜の国道を2人で歩き、高級レストランに入って、疲れて眠ってしまったイネは
父母から置いていかれる夢を見て号泣する。

 

その後、イネをおぶっての帰り道に不良にからまれ、鳴山は怪我を負う。
2人は自分の生まれた田舎町を隅々まで歩いて、イネは父母に擬似最後の晩餐だと言ってご馳走を作る。

そこに鳴山の父が来て、イネのせいで息子の将来を壊さないで欲しいと言いに来る。
イネの父は、鳴山の父にパンチを食らわす。
母は「私、叔母にあなたを預けておきながら嫉妬していたのよ」と告白する。

鳴山家では、線一と父母とでケンカして、母は
「私たちがお前を笑わない子どもにしてしまったんだ。この先、どうか好きな人生を歩んでおくれ」と謝る。

安心したイネは、家に帰ると、なんと父母は会社を畳んで旅に出て、
大おばは、急にハネムーンで行った熱海に出かけるという置き手紙。



そこに鳴山が正装してきて、イネもパーティドレスを着て、外に出かけると、
スイカ畑ではスイカ食べ放題、レストランも食べ放題、みんなで歌って踊って、
カウントダウンで24時が過ぎると、それ以上に喜んで、大喝采(これが天国の姿だね。みんなで等しく分け合う世界

 

そこで目が覚めたイネ。スイカ畑で日射病で倒れていたという。
大おばの家に行くと、昼寝をした格好で亡くなっているのを見つけた。


(まさかの夢オチ!?と思ったら、さすがの大島さん。奥が深い。
 世紀末にでもならないかぎり、ヒトは富や不安を手放さないのか。
 すべてお金なしに分け合う世界って、いちばん理想じゃないか。
 映画『メランコリア』みたいに、悲観的になっちゃうヒトも多いかな。
 私は、大おばさんのように、日常生活のままで終わりたい気がした



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