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少年探偵シリーズ36『影男』(ポプラ社)

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■少年探偵シリーズ36『影男』(ポプラ社)
江戸川乱歩/作 吉田郁也/カバー絵 中村猛男/挿し絵 1971年初版 1989年第27刷 618円

※notes and movies(1999.4~ part1)からの転記。
「作家別」カテゴリーに追加しました。

面白かった
3人の怪しいそれぞれの道のエキスパートが、様々なミステリーに入り組んで関連し、互いに隙を見せられない。
明智はラストに現れて、あっという間にこのクセ者共を一気に捕えてしまう。それも粋なやり方で。

そんなに身近にいくつも顔を持つような人間はいないと思うんだけど、
今作の主人公“影男”は、殺人も犯すが、どっちかというと悪い弱点を持つ
金持ちの預金を知恵でかすめとる義賊的なキャラクターなのがイイ。

こんな彼でも、あっさり降伏させた明智の知恵は、いつも意表をついて、小気味よく、一枚上手。
常套手段だけど、見事なタイミング。


▼あらすじ(ネタバレ注意

金持ち夫人の秘密クラブで行われた“闘人”で、黒と白に分かれて賞金を賭け、
死闘の末に黒が負けて死ぬ。

うろたえる皆の中に、秘密を嗅ぎ付けて美女に変装していた(!)影男が、
お金の代わりにアリバイ作り(身代わりをたて)をして、古井戸に死体を埋めた。

ある日、彼を調査した「殺人請会社」の須原が「殺人のアイデアが欲しい」と協力を求めた。

花やしき(!)の観覧車で話し合い、金持ち社長をさんざん騙した女を砂泥地獄で殺す計画を話し、実行された。

後悔する影男のもとに老人が現れ「50万円で天国と地獄を見せよう」と誘う。
池の中に出入口のある夢幻のパノラマ世界。

湯あみ後、連れて来られたのは、一面が海、人魚、海底には人花、巨大ヘビを見せられ、
人山、巨人・・・後に社長は種明かしをする。

明治にもあったらしい、文明開化はスゴイな・・・
でもなぜ満州の戦争を再現したのか?


影男は次の仕事へ。
金持ちの川波は、妻と浮気相手を庭に首だけ出して生き埋めにし、首を切ろうとしていた(!)ところを救い、
お金で解決したが、その後裏切られた須原がその2人+影男殺人を川波にもちかける。

2人は明智に相談するが密室でガス死させられる。

影男による殺人アイデアを須原が聞き、ピストルで顔面を撃たれた影男は、
自分の建てた密室に入れられるが、トリックで別人だった。

まんまと須原を出し抜いたと思ったら、腹心の斉木に捕われて、アジトを回るが、明智の手が伸びて帰れない。

最後の隠れ家の例のパノラマ館に入ると、すでに別の見世物に変わっていて、
人の森、全面鏡だと思っていたら、いつのまにか警官に囲まれていた。
明智が斉木と入れ替わっていたのだった。


次の部屋に逃げ込み、岩の深い割れ目“この世の果て”で天女を見ながら麻酔で眠らされ、
目が覚めたら護送車の中。これは夢ではないというオチ。

ガス室の2人は、新聞紙の人形で助かっていた。

この影男、文才もあるし、怪人二十面相よりずっと賢いぞ!w
もっとこの刺激的な2人の闘いと、妖しいパノラマワールドに酔っていたい。


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