■少女漫画の神さま~萩尾望都@漫勉
こないだ部長がトークショーで激ススメていた番組。
『マンガをはみだした男 赤塚不二夫』試写+トーク@池袋コミュニティ・カレッジ(2016.4.3)
なかなか知っているマンガ家さんが出てこないから通り過ぎてたけど、
萩尾望都さんのはだいぶ前に予録していた。
会社のコにススメられて、『ポーの一族』『11人いる!』など読んで引き込まれた。
浦沢直樹さんも派遣仲間のケイトにススメられて読んだ『20世紀少年』が面白かった。
【ブログ内関連記事】
・『11人いる!』
・『百億の昼と千億の夜』 萩尾望都 著
・『スター・レッド』萩尾望都
・『11月のギムナジウム』萩尾望都 著
・『トーマの心臓』
・『20世紀少年』(1~5巻/全22巻)
・『20世紀少年』(6~10巻)
・『20世紀少年』(11~21巻)
・『20世紀少年』全22巻、『21世紀少年』上・下巻
この番組はもう2ndシーズンなんだ。その第1回目が望都さん。
テーマの人はもちろん、浦沢さんの活動も紹介される。
浦沢さんは、漫画家なのに、喋りや進行も上手い。さすが関西人。
しかも、歌まで歌っちゃってるし/驚
*
「青二才が何を言っているんだろうなって思う」
望都さんは48年間描いている。
今回は新作の制作現場に4日間密着。邪魔にならないよう定点カメラで撮影した。
繊細なペン先、妥協のない姿勢が見えてきた。
対談場所は、望都さんがよく訪れる神保町の老舗の喫茶店
いい昭和喫茶ぽいけど、なんて店だろうなあ
浦沢:
神保町は新人の頃を思い出す。
望都先生は、神秘的な方なので、毎回会うたびにちょっと緊張するなw
望都:
あ、(浦沢さんの)ファンです。短篇の頃からちょこちょこ読んでいて、非常にデリケートな繊細な画面の印象。
ちゃんと染み出してくるのがすごく面白くて
浦沢:
そういうのを表現させたら、望都先生は右に出る人がいない人ですよ
猫が7匹いる!
(そういえば大島さんの拾った猫を引き取ったんだっけ
『グーグーだって猫である3』 大島弓子/著 角川書店
浦沢:
勝手な想像で、先生はロココな所でやられているイメージがあって
望都:
みなさんそうおっしゃるんです。私も努力したんですけどダメでした(w
浦沢:
いいですよね、この漫画家の机周り
望都:
私だけが、何がどこにあるか知っているっていうw
作業机の上になぜかダイアナ妃の写真があった。しかも正面は大ちゃん!!驚
それにしても、部屋中がモノだらけw
下描き開始
浦沢:
ちょっとこの番組、下描きをちゃんとしないような人が続いたので、安心しますよ、これはw
望都:
『ゴルゴ13』とかすごかったですね(観てるんだw
テーピングは腱鞘炎予防。
浦沢:
職人的な感じがしますよね
描いているのは『王妃マルゴ』(映画は観た『王妃マルゴ』(1994)
アンリのペン入れ
浦沢:
Gペン? すごく面白い持ち方をしていますね。ペン先に人差し指がかかっていますよね。
彫刻刀で彫ってるみたいに見えますよね。人差し指の爪でひっかいている。やはり猫系ですかねw
(髪のモフモフ感も?w 1枚1枚この丁寧さで描いてるのかあ! 芸術だ!
浦沢:
このチョン、チョン、て入れる線が、隠し味としてなんかあるんだろうなと
望都:
ペンでアタリ線を描いているみたいなもの。「ここかな?」とか言いながら
浦沢:
繊細な線の積み上げですよね。うわあイケメン。目が綺麗だ
望都:
だって、この表情で説得しなきゃいけない。「俺のことを愛して、そんな男は諦めろ」て
ペン入れ終了。
マルゴペン入れに猫マイちゃん乱入!w
望都:
この時はとくに猫がカメラに興奮して(なでて落ち着かせる
きっかけ
望都:
手に入る漫画の絵はいろいろ真似していた。一番真似したのは横山光輝先生。顔のバランスは真似しました。
目の描き方も真似してみました。まつ毛が上手く描けなくてね。どうしてこんな綺麗なカーヴが出るんだろう。
まつ毛がない人っていうと矢代まさこ先生。なのでそれにしようと思いました。
20歳でデビュー。23歳で『ポーの一族』を執筆し大ヒット
生原稿を見て「ほおおおおお」と浦沢さん。
「花を残して点描してる」「このレースもスゴイ」
(どれもこれも全部読みたくなった←また制覇欲
望都:
キュンキュンしてくれると嬉しいです。描いてるほうもキュンキュンしながら描いているので
「キュンキュン度合い」が高いと、描いてて面白い。
マルゴペン入れが終わり、仕上げ作業。
自分で作ったトーン表があり、人物の心理を表すスクリーントーンは自ら貼る
浦沢:
とくに少女漫画って世界は、イマジネーションをどのくらい広げるかって感じがしますね。
セクシーなシーン
「割とあっさり、フワっと描くんですか? 例えばメタファーにしてみたり」
望都:
そう、お花がクルクル回っていたり、星が落ちてきたり。
実際の肉体的パフォーマンスが面白いこともあるんだけど、広がった部分のほうが面白いと思っている
ようやく1シーンが完成(ふぅ・・・
午後1時~深夜3時までほぼ休まず執筆する。食事以外の休憩はほとんどなし。姿勢いいなあ
次は、フランス王朝を大きく揺るがした事件。
カトリックのギーズ公がプロテスタントの要人コリニーを暗殺した。
これをきっかけに「サン・バルテルミの虐殺」が起きた。
ギーズ公は、マルゴの初恋の相手。
浦沢:
いつも、そこまで追い込むかあという状況を作りますよね。追い込まれる人が好きなのか、追い込みたいのか
望都:
両方好きですよね、きっと。問題に直面している大人を描くのが面白い
浦沢:
天真爛漫な子どもはあまり面白くない?
望都:
あ、子どももやっぱり問題に直面してほしい(w
親にまったく理解されなかった漫画家になる夢
浦沢:
萩尾さんの子ども時代は、割と思い通りにならなかった?
望都:
とくに漫画が好きだったせいもあるけれど、一番大好きな漫画を禁止されるわけですから
「私は親の言うことを聞けない悪い子なんだ」と思考がいくけど、止められない。
浦沢:
漫画を描くこと=親に背いている
望都:
完全にそうですね
手塚先生の『新撰組』が最大の転機
浦沢:
以前、うかがってビックリしたんですが、高校生の時に、手塚先生の『新撰組』が最大の転機だったと
「教育第一」の両親と衝突して辛い学生時代だった心に寄り添ったのが『新撰組』。
親友の裏切りで自らの手で殺さねばならない葛藤に苦しむ話。
望都:
寝ながら、頭の中でずっと話がリピートする
“親友だったのに、どうしてこんなことをしなきゃいけないんだ”“お前は私を裏切っていたのか”とか
ずっとセリフが増えていく。それでハっと思って改めて読み返したら、「え、2行しかない?!」
妄想に次ぐ妄想が積み重なっていく
浦沢:
『地上最大のロボット』の巻で、同じようにノース2号が破壊されるシーンとか
それを思いながら『PLUTO』を描いたんですけど、いざ原作を見てみたら本当に描いてない
望都:
『新撰組』読んでから闇雲に「私もプロになりたい」て、プロ道が着火された“パン”て
親が認めたきっかけは・・・
浦沢:
先生がこの1コマにトキめいて、妄想を繰り広げたことが、後の日本漫画に及ぼした影響たるや凄い。
いつ親に認められたんですか?
望都:
『ゲゲゲの女房』のドラマを観てからです。
(吹き出してしまった! 水木さん! てか、単純な団塊世代の親って・・・娘の夢は砕いても、テレビの言うことは絶対的
「お母さんがね、テレビを見よったらね、水木しげるさんがね、一生懸命仕事しよんなったい」
私が“おちゃらけたこと”をしていると、母はずっと思っていたみたいです。
(そう、絶対認めないんだよ、権力とか常識的なもの以外は
目の表現
浦沢:
この驚愕したり、深い悲しみになったり、そういう時の萩尾先生の目というのは、
一種独特のものが宿っている感じがする。
見て欲しいのは、この目なんですよね、この画面で。爪描いちゃうとそれが主張しだしちゃう
望都:
指が邪魔なんですよ。でも描かないといけないから、なるべく抜けるところは抜こうと思って
だから、目のそばにある指はちゃんと描いてる(そんな細かい演出も!?
シャルル9世は、プロテスタントの弾圧により徐々に追い込まれる
望都:
演技をさせるのが面白い。彼はお母さんに屈しなきゃいけない
浦沢:
このなんつーか、我がままなダメ男の顔。目の下のクマがいいですよね
ミュージカルとかに近い少女漫画の演出
浦沢:
ある意味、少女漫画というのは、行き過ぎた部分もあるぐらい、デフォルメされた世界じゃないですか。
演出もお芝居も過多だし、ミュージカルとかに近い感じがします。
望都:
私も舞台のほう、映画より近い気がする
浦沢:
リアルな映像だと、全部、時系列もちゃんと見せなきゃいけないし、
でも、舞台はちょっとした転換で、照明がパッと変わっただけでまったく違うシーンができるのが似ている
シャルル国王は逆上し、大虐殺の命令を出す。
距離感の演出
浦沢:
感情が高ぶった時の演技をちゃんと反映しなきゃいけない
マルゴを描き終えると、トレペを乗せて、夫アンリの顔を描き、もう1枚重ねて、アンリの手のみ描き、2枚をズラして位置を探る。
位置決めしたものを下に置いて、アンリを下描きする
浦沢:
この距離感だけでずいぶんと演技変わりますからね
望都:
手の力の入れ具合が変わってきます。このやわい手で握っていたら、怒ってないんだなと(読者が)思っちゃう
手の掴み具合で悩み、下描きだけで2時間かかった!(無心になっちゃうんだろうなあ
細部に妥協しない~手へのこだわり
浦沢:
先生は手の表情にこだわりますね
望都:
手はずいぶんいろんなことを語ってくれますね。
指の表情で、最初にすごくショックを受けたのが
手の甲でキュッと汗を拭く、あの色っぽさ。ドッキューンてなっちゃう(よく違いが分からないw
浦沢:
あれはね、ちば先生の専売特許ですね
ペン入れの段階で、またもや手に修正を加える。
浦沢:
漫画家さんは大体こういうところで悩んでいますよね。
ここに重要な演出があるって思っていますからね
望都:
ここで押さえ込んでおかないと
こういう物語りの世界で私は救われたし、とても楽しいと思う。
そういった自分が感動したものを(読者に)伝えたい。
だけど、笑ったり、泣いたり、感動したりという感情を揺さぶるのは、実は非常に大変なことで、
やっぱりこっちも必死でやらないと伝わらない。
3時間半かけて1コマ描き終えて、ようやくこの笑み。
浦沢:
毎回、毎回、白紙から違う絵を描くから、毎回、初心者みたいな気持ちになりますよね
四十何年描かれているとは思えないぐらい楽しそう。
きっと少女時代に描かれた時と同じ様子で描かれているんだろうなって
望都:
やっぱり私は少女漫画が好きなんです。
いろんなことがその中に入っているし、可能性もあるし、
とにかく一日暇があったら、ずっと絵を描いているわけです。
歌手なんて、毎日歌っているような感じがしません?
お笑いの人は、毎日ネタを考えているとか。
なんかそういう人がいるんじゃないかな。
浦沢:
好きだからこそ、この執念があるという感じがします。
この道を守り通すぞ、みたいな執念。
僕も頑張ろうって感じがしますね
*
漫画への愛、そのものだなあ!
なかなかこうしてテレビに出ないし、ましてや描いているところを見せてくれる漫画家さんは希少。
でも、まだまだ現役の、大島弓子さん、美内すずえさん、いろんな少女漫画の巨匠にも取材して欲しい!
漫画業界もCGやらが入っている中、いろんな形があっていいと思うけど、
こうして腱鞘炎やら抱えながら手で描いて、ずぅーっと第一線で描き続けているってすげーや!
こういう、人から止めろと言われても、ついつい夢中でやっちゃうことが本当の仕事なんだと思う。
追。
この記事の画像作業していたら、また強制再起動。(4.10)
youtubueを流しながら、ブログの記事検索をしていたら、ブツブツ音が出て、しばらくして・・・て、こないだの状況と似てる(4.4)
今回はこまめに保存していたおかげで、少々の被害で済んだけど、やっぱり買い換えるべき?
こないだ部長がトークショーで激ススメていた番組。
『マンガをはみだした男 赤塚不二夫』試写+トーク@池袋コミュニティ・カレッジ(2016.4.3)
なかなか知っているマンガ家さんが出てこないから通り過ぎてたけど、
萩尾望都さんのはだいぶ前に予録していた。
会社のコにススメられて、『ポーの一族』『11人いる!』など読んで引き込まれた。
浦沢直樹さんも派遣仲間のケイトにススメられて読んだ『20世紀少年』が面白かった。
【ブログ内関連記事】
・『11人いる!』
・『百億の昼と千億の夜』 萩尾望都 著
・『スター・レッド』萩尾望都
・『11月のギムナジウム』萩尾望都 著
・『トーマの心臓』
・『20世紀少年』(1~5巻/全22巻)
・『20世紀少年』(6~10巻)
・『20世紀少年』(11~21巻)
・『20世紀少年』全22巻、『21世紀少年』上・下巻
この番組はもう2ndシーズンなんだ。その第1回目が望都さん。
テーマの人はもちろん、浦沢さんの活動も紹介される。
浦沢さんは、漫画家なのに、喋りや進行も上手い。さすが関西人。
しかも、歌まで歌っちゃってるし/驚
*
「青二才が何を言っているんだろうなって思う」
望都さんは48年間描いている。
今回は新作の制作現場に4日間密着。邪魔にならないよう定点カメラで撮影した。
繊細なペン先、妥協のない姿勢が見えてきた。
対談場所は、望都さんがよく訪れる神保町の老舗の喫茶店
いい昭和喫茶ぽいけど、なんて店だろうなあ
浦沢:
神保町は新人の頃を思い出す。
望都先生は、神秘的な方なので、毎回会うたびにちょっと緊張するなw
望都:
あ、(浦沢さんの)ファンです。短篇の頃からちょこちょこ読んでいて、非常にデリケートな繊細な画面の印象。
ちゃんと染み出してくるのがすごく面白くて
浦沢:
そういうのを表現させたら、望都先生は右に出る人がいない人ですよ
猫が7匹いる!
(そういえば大島さんの拾った猫を引き取ったんだっけ
『グーグーだって猫である3』 大島弓子/著 角川書店
浦沢:
勝手な想像で、先生はロココな所でやられているイメージがあって
望都:
みなさんそうおっしゃるんです。私も努力したんですけどダメでした(w
浦沢:
いいですよね、この漫画家の机周り
望都:
私だけが、何がどこにあるか知っているっていうw
作業机の上になぜかダイアナ妃の写真があった。しかも正面は大ちゃん!!驚
それにしても、部屋中がモノだらけw
下描き開始
浦沢:
ちょっとこの番組、下描きをちゃんとしないような人が続いたので、安心しますよ、これはw
望都:
『ゴルゴ13』とかすごかったですね(観てるんだw
テーピングは腱鞘炎予防。
浦沢:
職人的な感じがしますよね
描いているのは『王妃マルゴ』(映画は観た『王妃マルゴ』(1994)
アンリのペン入れ
浦沢:
Gペン? すごく面白い持ち方をしていますね。ペン先に人差し指がかかっていますよね。
彫刻刀で彫ってるみたいに見えますよね。人差し指の爪でひっかいている。やはり猫系ですかねw
(髪のモフモフ感も?w 1枚1枚この丁寧さで描いてるのかあ! 芸術だ!
浦沢:
このチョン、チョン、て入れる線が、隠し味としてなんかあるんだろうなと
望都:
ペンでアタリ線を描いているみたいなもの。「ここかな?」とか言いながら
浦沢:
繊細な線の積み上げですよね。うわあイケメン。目が綺麗だ
望都:
だって、この表情で説得しなきゃいけない。「俺のことを愛して、そんな男は諦めろ」て
ペン入れ終了。
マルゴペン入れに猫マイちゃん乱入!w
望都:
この時はとくに猫がカメラに興奮して(なでて落ち着かせる
きっかけ
望都:
手に入る漫画の絵はいろいろ真似していた。一番真似したのは横山光輝先生。顔のバランスは真似しました。
目の描き方も真似してみました。まつ毛が上手く描けなくてね。どうしてこんな綺麗なカーヴが出るんだろう。
まつ毛がない人っていうと矢代まさこ先生。なのでそれにしようと思いました。
20歳でデビュー。23歳で『ポーの一族』を執筆し大ヒット
生原稿を見て「ほおおおおお」と浦沢さん。
「花を残して点描してる」「このレースもスゴイ」
(どれもこれも全部読みたくなった←また制覇欲
望都:
キュンキュンしてくれると嬉しいです。描いてるほうもキュンキュンしながら描いているので
「キュンキュン度合い」が高いと、描いてて面白い。
マルゴペン入れが終わり、仕上げ作業。
自分で作ったトーン表があり、人物の心理を表すスクリーントーンは自ら貼る
浦沢:
とくに少女漫画って世界は、イマジネーションをどのくらい広げるかって感じがしますね。
セクシーなシーン
「割とあっさり、フワっと描くんですか? 例えばメタファーにしてみたり」
望都:
そう、お花がクルクル回っていたり、星が落ちてきたり。
実際の肉体的パフォーマンスが面白いこともあるんだけど、広がった部分のほうが面白いと思っている
ようやく1シーンが完成(ふぅ・・・
午後1時~深夜3時までほぼ休まず執筆する。食事以外の休憩はほとんどなし。姿勢いいなあ
次は、フランス王朝を大きく揺るがした事件。
カトリックのギーズ公がプロテスタントの要人コリニーを暗殺した。
これをきっかけに「サン・バルテルミの虐殺」が起きた。
ギーズ公は、マルゴの初恋の相手。
浦沢:
いつも、そこまで追い込むかあという状況を作りますよね。追い込まれる人が好きなのか、追い込みたいのか
望都:
両方好きですよね、きっと。問題に直面している大人を描くのが面白い
浦沢:
天真爛漫な子どもはあまり面白くない?
望都:
あ、子どももやっぱり問題に直面してほしい(w
親にまったく理解されなかった漫画家になる夢
浦沢:
萩尾さんの子ども時代は、割と思い通りにならなかった?
望都:
とくに漫画が好きだったせいもあるけれど、一番大好きな漫画を禁止されるわけですから
「私は親の言うことを聞けない悪い子なんだ」と思考がいくけど、止められない。
浦沢:
漫画を描くこと=親に背いている
望都:
完全にそうですね
手塚先生の『新撰組』が最大の転機
浦沢:
以前、うかがってビックリしたんですが、高校生の時に、手塚先生の『新撰組』が最大の転機だったと
「教育第一」の両親と衝突して辛い学生時代だった心に寄り添ったのが『新撰組』。
親友の裏切りで自らの手で殺さねばならない葛藤に苦しむ話。
望都:
寝ながら、頭の中でずっと話がリピートする
“親友だったのに、どうしてこんなことをしなきゃいけないんだ”“お前は私を裏切っていたのか”とか
ずっとセリフが増えていく。それでハっと思って改めて読み返したら、「え、2行しかない?!」
妄想に次ぐ妄想が積み重なっていく
浦沢:
『地上最大のロボット』の巻で、同じようにノース2号が破壊されるシーンとか
それを思いながら『PLUTO』を描いたんですけど、いざ原作を見てみたら本当に描いてない
望都:
『新撰組』読んでから闇雲に「私もプロになりたい」て、プロ道が着火された“パン”て
親が認めたきっかけは・・・
浦沢:
先生がこの1コマにトキめいて、妄想を繰り広げたことが、後の日本漫画に及ぼした影響たるや凄い。
いつ親に認められたんですか?
望都:
『ゲゲゲの女房』のドラマを観てからです。
(吹き出してしまった! 水木さん! てか、単純な団塊世代の親って・・・娘の夢は砕いても、テレビの言うことは絶対的
「お母さんがね、テレビを見よったらね、水木しげるさんがね、一生懸命仕事しよんなったい」
私が“おちゃらけたこと”をしていると、母はずっと思っていたみたいです。
(そう、絶対認めないんだよ、権力とか常識的なもの以外は
目の表現
浦沢:
この驚愕したり、深い悲しみになったり、そういう時の萩尾先生の目というのは、
一種独特のものが宿っている感じがする。
見て欲しいのは、この目なんですよね、この画面で。爪描いちゃうとそれが主張しだしちゃう
望都:
指が邪魔なんですよ。でも描かないといけないから、なるべく抜けるところは抜こうと思って
だから、目のそばにある指はちゃんと描いてる(そんな細かい演出も!?
シャルル9世は、プロテスタントの弾圧により徐々に追い込まれる
望都:
演技をさせるのが面白い。彼はお母さんに屈しなきゃいけない
浦沢:
このなんつーか、我がままなダメ男の顔。目の下のクマがいいですよね
ミュージカルとかに近い少女漫画の演出
浦沢:
ある意味、少女漫画というのは、行き過ぎた部分もあるぐらい、デフォルメされた世界じゃないですか。
演出もお芝居も過多だし、ミュージカルとかに近い感じがします。
望都:
私も舞台のほう、映画より近い気がする
浦沢:
リアルな映像だと、全部、時系列もちゃんと見せなきゃいけないし、
でも、舞台はちょっとした転換で、照明がパッと変わっただけでまったく違うシーンができるのが似ている
シャルル国王は逆上し、大虐殺の命令を出す。
距離感の演出
浦沢:
感情が高ぶった時の演技をちゃんと反映しなきゃいけない
マルゴを描き終えると、トレペを乗せて、夫アンリの顔を描き、もう1枚重ねて、アンリの手のみ描き、2枚をズラして位置を探る。
位置決めしたものを下に置いて、アンリを下描きする
浦沢:
この距離感だけでずいぶんと演技変わりますからね
望都:
手の力の入れ具合が変わってきます。このやわい手で握っていたら、怒ってないんだなと(読者が)思っちゃう
手の掴み具合で悩み、下描きだけで2時間かかった!(無心になっちゃうんだろうなあ
細部に妥協しない~手へのこだわり
浦沢:
先生は手の表情にこだわりますね
望都:
手はずいぶんいろんなことを語ってくれますね。
指の表情で、最初にすごくショックを受けたのが
手の甲でキュッと汗を拭く、あの色っぽさ。ドッキューンてなっちゃう(よく違いが分からないw
浦沢:
あれはね、ちば先生の専売特許ですね
ペン入れの段階で、またもや手に修正を加える。
浦沢:
漫画家さんは大体こういうところで悩んでいますよね。
ここに重要な演出があるって思っていますからね
望都:
ここで押さえ込んでおかないと
こういう物語りの世界で私は救われたし、とても楽しいと思う。
そういった自分が感動したものを(読者に)伝えたい。
だけど、笑ったり、泣いたり、感動したりという感情を揺さぶるのは、実は非常に大変なことで、
やっぱりこっちも必死でやらないと伝わらない。
3時間半かけて1コマ描き終えて、ようやくこの笑み。
浦沢:
毎回、毎回、白紙から違う絵を描くから、毎回、初心者みたいな気持ちになりますよね
四十何年描かれているとは思えないぐらい楽しそう。
きっと少女時代に描かれた時と同じ様子で描かれているんだろうなって
望都:
やっぱり私は少女漫画が好きなんです。
いろんなことがその中に入っているし、可能性もあるし、
とにかく一日暇があったら、ずっと絵を描いているわけです。
歌手なんて、毎日歌っているような感じがしません?
お笑いの人は、毎日ネタを考えているとか。
なんかそういう人がいるんじゃないかな。
浦沢:
好きだからこそ、この執念があるという感じがします。
この道を守り通すぞ、みたいな執念。
僕も頑張ろうって感じがしますね
*
漫画への愛、そのものだなあ!
なかなかこうしてテレビに出ないし、ましてや描いているところを見せてくれる漫画家さんは希少。
でも、まだまだ現役の、大島弓子さん、美内すずえさん、いろんな少女漫画の巨匠にも取材して欲しい!
漫画業界もCGやらが入っている中、いろんな形があっていいと思うけど、
こうして腱鞘炎やら抱えながら手で描いて、ずぅーっと第一線で描き続けているってすげーや!
こういう、人から止めろと言われても、ついつい夢中でやっちゃうことが本当の仕事なんだと思う。
追。
この記事の画像作業していたら、また強制再起動。(4.10)
youtubueを流しながら、ブログの記事検索をしていたら、ブツブツ音が出て、しばらくして・・・て、こないだの状況と似てる(4.4)
今回はこまめに保存していたおかげで、少々の被害で済んだけど、やっぱり買い換えるべき?