ボウイはスタジオアルバムのほうが好きだから、ライヴ盤は聴いてなかったので借りてみた。
まだ聴いていないアルバムも発見v
●Stage/David Bowie(1978)
【ライナー抜粋メモ~信貴朋子】
1976年の「Station To Stationツアー」で日本がフラレてしまった痛手はファンの心に大きな傷を残していた。
本アルバムも延期された後に発売され、日本公演チケットも発売された。
1973年以来の来日で、チケットの売れ行きは凄まじかった。
(昔はどう買ってたんだろう? 何日か前から店頭に並ぶとか?
1977年、『Heroes』のセッションを終え、あれほど忌み嫌っていた祖国イギリスの音楽界にボウイは自ら足を踏み入れた。
悪魔的ビジネスの餌食となって、消耗しきっていた彼は、ベルリンで回復していた。
『マーク』(ボランの番組)にゲスト出演した際は「素」に見えた。
サラっと「この間、B.クロスビーとクリスマス番組を撮り終えたんだ」という発言は、ファンを震え上がらせた。
その後、ボランの事故死のニュースが飛び込み、新聞に大きく掲載された葬儀の報道では、
抱え込まれるようにようやく立っている悲痛なボウイの姿があった。
彼はボランの遺族のために信託基金を設立し、経済的援助もした。
ようやく新たなビジネスに取り組もうとしていたところに、B.クロスビーの急死が伝えられた。
ボウイとの共演番組は皮肉にも追悼番組として放映され、このデュエット曲は、シングルとしてリリースされ、好成績を上げた。
息子のためにナレーションを引き受けた『ピーターと狼』など、「最近の彼は何がしたいんだ?」と言われても仕方ないほど
いろいろなプロジェクトに手を染めた。
アフリカでマサイ族と飛び跳ねたりして、エネルギーを探っていた。
このライヴアルバムは、実はコンサートを忠実に再現はしていない、かなり特殊なもの。
観客のリアクション等は極端に削除され、まるで臨場感が感じられない。曲順もまったく違う。
実際のライヴは、バランスよく曲が並べられ、徐々に興奮の頂点に誘う絶妙な構成だったのを
敢えて、年代順に組み替えたのは、実況録音盤でなく、作品の1つとしていることが分かる。
ライヴのOPがまさか♪Warszawa だとは・・・。静まり返った客席を一気に興奮の渦に巻き込む戦略。
しかし、ボウイはなんてにこやかで、優しい表情をしているのだろうか。
「困ったことに、もう演じるべきキャラクターがない」と自身が言ったように、あまりにまとも過ぎる。
『ローリング・ストーン』誌も「自分自身を演ずるボウイ」と謎めいたタイトルをつけた。
ボウイは、いつのまにか帰っていく場所を失っていたのである。
●The Best of David Bowie 1974-1979/David Bowie(1998)
♪Knock on Wood のカバーには驚いた!
【ライナー抜粋メモ~信貴朋子】
「変わらず」にいる継続の美学が賞賛されるのに対して、ボウイは「ずっと変わり続けてきた」
「次々と新しいことを創り出してきた」という「変容の美学」で喝采が与えられている。
20C末を目前にして、世の中はかつてないスピードで変化している。
技術革新による利便性の進化だけでなく、旧概念、不要なものがものすごい勢いで消滅、圧縮されている。
その転換期に私たちは遭遇している。
彼は過去を美化したり、固執することを一貫して嫌ってきた。
“ボウイらしい音”という表現では噛み合った会話ができない。
“ジギーの頃”“レッツダンスの頃”などの情報がないとイメージできない。
その意味で、この5年間は大変面白い時期だ。
彼の興味の対象はクルクル変わり、住む場所も転々としていた。
『ジギー・スターダスト』は、異星から来たロックスターが神格化され、やがて狂い、見捨てられ、自殺するという
ショッキングなストーリーで、初めて「コンセプトアルバム」という概念を打ち出した。
(あれ、ビートルズの『サージェント~』が最初じゃないのか?
「トータル・パッケージ」と呼ばれたイメージ戦略で、ボウイはジギーと同化され、信奉者を増やした。
その幻影に消耗し、突然休止を宣言。
さらに、アンテナは、ソウルに向かい「プラスティックソウル」を生み、グラムロックが終息した。
ヨーロッパ、ベルリン、日本、アフリカなどに興味は広がり移る。
<各曲の解説>
♪Sound + Vision
イーノやイギーとで作った手法「ニューミュージック」は、音、言葉、イメージ、色などを同列に置いたことから始まった。
♪Fame
ジョンとの共作のスマッシュヒット。
あれほど欲しがったスターダムを手に入れた途端、逃げ出したくなるという共通する矛盾を自嘲的に書いた。
♪John, I'm Only Dancing
'72発表された頃はバイセクシュアルな内容が過激すぎると敬遠された。
♪1984
J.オーウェルが描いた社会は、工業化の狂気、家族の呪縛と腐敗、性の崩壊など、
問題を先送りし、責任放棄の結果が我々の未来を歪めるというテーマ。
(ジョン・ハート主演の映画はこちら
♪DJ
「人気者」がいかに実体がないか。自分が踊っているのか、踊らされているのか。
♪Beauty and the Beast
相反する価値観が共存し、我々はどちらも否定できない。
毎日、演じる役は入れ替わるのだから。
♪Boys Keep Swinging
このPVで、ボウイはあっと驚く女装で自分をパロディ化して見せている。
(初めて見たけど、怖いよw ボウイの踊り方って特徴あるよね
●The Next Day/David Bowie(2013)
【ライナー抜粋メモ~吉村栄一(2013)】
(“これは、できればアルバムを最後まで聴き終えてから読んで欲しい”とあったけれども、先に読んでしまった/謝
2013.1.8、公式サイト(bowie.net)では重要なニュースがあると言われていたが、
サイトの閉鎖や、引退宣言なのではないかという不安と諦めしか持てなかった。
しかし、本当に意識が沸騰するようなニュースだった。
ボウイの復活! 二度と聴けないと思っていた新曲が聴ける! 世界は涙した。
♪Where Are We Now? は、119か国のiTunes Storeで配信されるや、UKシングルチャートで20年ぶりの初登場トップ10入り(6位)。
アルバムも予約受付開始後、24時間で27か国のiTunes Storeで1位(日本は最高位2位)となった。
ガガほか、たくさんのアーティスト、作家らがツイート、Facebookで喜びを表現した。
♪Where Are We Now? は、77年の「ベルリン時代」に題をとり、映像には、当時借りていたトルコ人街のアパートや、
三十数年前の風景が描写されている。
監督は、現代美術家のトニー・アウスラー。ボウイの横に映っているのはトニー夫人で、美術家のジャクリーン・ハンフリーズ。
ボウイが着ているのは“引退した”豪華客船のTシャツ。
あまりに内省的で、美しすぎ、郷愁を誘い、遺言になるのではないかという危惧を抱かせたのも事実。
1999年の『hours...』の時も同じだった。
♪Thursday's Child のPVでボウイが演じるのは、未来と可能性の喪失を悟った男。
♪Where Are We Now? では生=命そのものの喪失を悟った男。
ジョナサン・バーンブルックのアートワークもさまざまな憶測を呼んだ。
ボウイは2004年の『Reality』ツアー中に心臓発作を起こして緊急手術。
その後の活動は慈善などに限られた。他アーティストとの共演も途絶え、
パーティや近所の散歩の隠し撮り写真が掲載されるだけ。
しかし、ボウイは完全に状況をコントロールして、自らの復活劇をハラハラドキドキのロックンロールショーに仕立て上げた。
こんなに素晴らしいフェイクを、本当にありがとう!
約30曲がレコーディングされ、14曲にしぼられた。
多作家のボウイは、時の勢いでアルバムを作ることも多かった。
でも、今作は違う。10年ぶりの新作。考察・熟考が詰まっている。
メンバーは『heathen』『Reality』の気心の知れた仲間ばかり。
プロデューサーはトニー・ヴィスコンティ。
パティ・スミスとの共演で知られる日本人ヴァイオリニストの田口浩子さんも参加!
日本盤にのみボーナス・トラックとして♪God Bless The Girl が収録!
世界中から一斉に「えこひいき」だとの声が上がっている(w
ボウイは、東日本大震災に心を痛め、自らの復活後に大島渚監督が死去したことを受け、
真心のこもった弔辞を贈ってくれた。
<各曲の解説>
♪The Next Day
トニーによると、ボウイは、中世の英国の暴君を題材にして書いたそう(ヘンリー8世か?)。
♪Dirty Boys
冒頭の詩の「タバコロード」は、アメリカ南部の貧しい地域を描いたアースキン・コールドウェルの小説のタイトル。
ジョージ・フォード監督により映画化されている。
♪The Stars(Are Out Tonight)
「売りたいものではなく、言いたいことがあるからアルバムを作った」というボウイの発言通り。
歌詞の名前は、それぞれハリウッドスターの名前だろう。
サテュロスは、ギリシア神話の半獣神で、怠惰、音楽と酒、女性、美少年を好む種族。
♪Love Is Lost
ボウイのコーラスの多重録音が聴きもの。4人編成だが切迫感が凄い。
ボウイのシンセサイザーも懐かしい音を出している。
鋤田さんの写真集で73年のミニ・モーグ・シンセサイザーを弾く写真にとても感傷的なコメントをしている。
鋤田正義さんのボウイ写真集『Speed of Life~生命の速度』
♪Where Are We Now?
実は、原型はおそらく、ボウイが自身の役で出演したBBCのコメディ『エキストラ2』の♪Little Fat Man だろう。
DLオンリーのこの曲のカヴァーアートは『Diamond Dogs』ツアーのステージ写真の天地をひっくり返したもの。
そのライヴを収録したアルバム『DAVID LIVE』の写真に対するコメント
「ボウイは理論的には生きているだけという状態に見える」を思わせる。
この曲のタイトルは、映画監督ダンカン・ジョーンズの『月に囚われた男』の冒頭部分に出て来る。
♪Valentine's Day
聖ヴァレンタインを主人王にしている。
♪If You Can See Me
ボウイならではのドラムン・ベース(ジャングル)ナンバー。
♪I'd Rather Be High
戦地から戻った兵士のPTSDを描いた。
ボウイにとって、このような「狂気」は、70年代はじめから常に切り離せないテーマだった。
♪Boss of Me
愛娘に向けた純粋な人生賛歌のようにも聴こえる。
♪Dancing Out in Space
イギーとの共作『Lust for Life』のようなビートにまずビックリ。
それが作られた頃のベルリンでのイギーとの交流を描いた映画が準備中だそう(立ち消えたか?
♪How Does the Grass Grow?
インスト♪アパッチ で有名なジェリー・ローダンとの共作とクレジットされている。
ローダンはアンソニー・ニューリーに影響を受け、ボウイと同時期にデッカに所属していた。
曲名は、英国軍が銃剣で的の人形を刺す演習の時の掛け声のこと。
♪(You Will) Set the World on Fire
『Tonight』と同じアール・スリックがギター。60年代のアメリカを描いているのも興味深い。
♪You Feel So Lonely You Could Die
最後に♪Five Years のドラムパターンが出てきて驚愕。
♪Heat
歌詞の「三島の犬」とは三島由紀夫の「牝犬」、「雪の中の孔雀」も三島の「孔雀」を想起させる。
♪God Bless The Girl
ガールはアメリカという国そのもののメタファーに聴こえる。
[lylics]
♪You Feel So Lonely You Could Die
人々が詰め込まれたビルディング
憤怒に満ちた風景
灰色のコンクリートの都市
雨は街を濡らす
私は君をきちんと見(まみ)えたい
血塗られた歴史の部屋の扉を
君が閉じてしまう前に
友よ、君は鬱を抱え
人は君を好くことがない
音もなく君は去るだろう 行き先もなく
私は望む
君が死にたいほどの淋しさを
感じるだろうことを
♪God Bless The Girl
ジャッキーは自分の仕事が大好きだ
その仕事は愛される
かけがえがなかったから
彼女は、これが天職なのと言い
ジャッキーは仕事を愛していた
それしかなかったから
部屋の隅に座りこみ
恐れすぎて逃げられない
鎖を放たれた奴隷のように
神よ、その子にご加護を
そして
私は君を傷つけたいわけではない
ほんの少し楽しみたいだけ
(なぜ、ボウイが日本にだけ、この曲をプレゼントしてくれたのか?
解説者は、“ジャッキーとはケネディ夫人のことか?”と書いていたけれども、
訳者は“その子”と訳したように、girlとはいえ、私はみんなにボウイが“護りたまえ”と
祈りを捧げてくれたようで涙した。
どんどん、スピーディに、複雑怪奇に変貌する世の中で、生き抜いていかなければならない
私たちに祈りを残してくれたのではないだろうか?
まだ聴いていないアルバムも発見v
●Stage/David Bowie(1978)
【ライナー抜粋メモ~信貴朋子】
1976年の「Station To Stationツアー」で日本がフラレてしまった痛手はファンの心に大きな傷を残していた。
本アルバムも延期された後に発売され、日本公演チケットも発売された。
1973年以来の来日で、チケットの売れ行きは凄まじかった。
(昔はどう買ってたんだろう? 何日か前から店頭に並ぶとか?
1977年、『Heroes』のセッションを終え、あれほど忌み嫌っていた祖国イギリスの音楽界にボウイは自ら足を踏み入れた。
悪魔的ビジネスの餌食となって、消耗しきっていた彼は、ベルリンで回復していた。
『マーク』(ボランの番組)にゲスト出演した際は「素」に見えた。
サラっと「この間、B.クロスビーとクリスマス番組を撮り終えたんだ」という発言は、ファンを震え上がらせた。
その後、ボランの事故死のニュースが飛び込み、新聞に大きく掲載された葬儀の報道では、
抱え込まれるようにようやく立っている悲痛なボウイの姿があった。
彼はボランの遺族のために信託基金を設立し、経済的援助もした。
ようやく新たなビジネスに取り組もうとしていたところに、B.クロスビーの急死が伝えられた。
ボウイとの共演番組は皮肉にも追悼番組として放映され、このデュエット曲は、シングルとしてリリースされ、好成績を上げた。
息子のためにナレーションを引き受けた『ピーターと狼』など、「最近の彼は何がしたいんだ?」と言われても仕方ないほど
いろいろなプロジェクトに手を染めた。
アフリカでマサイ族と飛び跳ねたりして、エネルギーを探っていた。
このライヴアルバムは、実はコンサートを忠実に再現はしていない、かなり特殊なもの。
観客のリアクション等は極端に削除され、まるで臨場感が感じられない。曲順もまったく違う。
実際のライヴは、バランスよく曲が並べられ、徐々に興奮の頂点に誘う絶妙な構成だったのを
敢えて、年代順に組み替えたのは、実況録音盤でなく、作品の1つとしていることが分かる。
ライヴのOPがまさか♪Warszawa だとは・・・。静まり返った客席を一気に興奮の渦に巻き込む戦略。
しかし、ボウイはなんてにこやかで、優しい表情をしているのだろうか。
「困ったことに、もう演じるべきキャラクターがない」と自身が言ったように、あまりにまとも過ぎる。
『ローリング・ストーン』誌も「自分自身を演ずるボウイ」と謎めいたタイトルをつけた。
ボウイは、いつのまにか帰っていく場所を失っていたのである。
●The Best of David Bowie 1974-1979/David Bowie(1998)
♪Knock on Wood のカバーには驚いた!
【ライナー抜粋メモ~信貴朋子】
「変わらず」にいる継続の美学が賞賛されるのに対して、ボウイは「ずっと変わり続けてきた」
「次々と新しいことを創り出してきた」という「変容の美学」で喝采が与えられている。
20C末を目前にして、世の中はかつてないスピードで変化している。
技術革新による利便性の進化だけでなく、旧概念、不要なものがものすごい勢いで消滅、圧縮されている。
その転換期に私たちは遭遇している。
彼は過去を美化したり、固執することを一貫して嫌ってきた。
“ボウイらしい音”という表現では噛み合った会話ができない。
“ジギーの頃”“レッツダンスの頃”などの情報がないとイメージできない。
その意味で、この5年間は大変面白い時期だ。
彼の興味の対象はクルクル変わり、住む場所も転々としていた。
『ジギー・スターダスト』は、異星から来たロックスターが神格化され、やがて狂い、見捨てられ、自殺するという
ショッキングなストーリーで、初めて「コンセプトアルバム」という概念を打ち出した。
(あれ、ビートルズの『サージェント~』が最初じゃないのか?
「トータル・パッケージ」と呼ばれたイメージ戦略で、ボウイはジギーと同化され、信奉者を増やした。
その幻影に消耗し、突然休止を宣言。
さらに、アンテナは、ソウルに向かい「プラスティックソウル」を生み、グラムロックが終息した。
ヨーロッパ、ベルリン、日本、アフリカなどに興味は広がり移る。
<各曲の解説>
♪Sound + Vision
イーノやイギーとで作った手法「ニューミュージック」は、音、言葉、イメージ、色などを同列に置いたことから始まった。
♪Fame
ジョンとの共作のスマッシュヒット。
あれほど欲しがったスターダムを手に入れた途端、逃げ出したくなるという共通する矛盾を自嘲的に書いた。
♪John, I'm Only Dancing
'72発表された頃はバイセクシュアルな内容が過激すぎると敬遠された。
♪1984
J.オーウェルが描いた社会は、工業化の狂気、家族の呪縛と腐敗、性の崩壊など、
問題を先送りし、責任放棄の結果が我々の未来を歪めるというテーマ。
(ジョン・ハート主演の映画はこちら
♪DJ
「人気者」がいかに実体がないか。自分が踊っているのか、踊らされているのか。
♪Beauty and the Beast
相反する価値観が共存し、我々はどちらも否定できない。
毎日、演じる役は入れ替わるのだから。
♪Boys Keep Swinging
このPVで、ボウイはあっと驚く女装で自分をパロディ化して見せている。
(初めて見たけど、怖いよw ボウイの踊り方って特徴あるよね
●The Next Day/David Bowie(2013)
【ライナー抜粋メモ~吉村栄一(2013)】
(“これは、できればアルバムを最後まで聴き終えてから読んで欲しい”とあったけれども、先に読んでしまった/謝
2013.1.8、公式サイト(bowie.net)では重要なニュースがあると言われていたが、
サイトの閉鎖や、引退宣言なのではないかという不安と諦めしか持てなかった。
しかし、本当に意識が沸騰するようなニュースだった。
ボウイの復活! 二度と聴けないと思っていた新曲が聴ける! 世界は涙した。
♪Where Are We Now? は、119か国のiTunes Storeで配信されるや、UKシングルチャートで20年ぶりの初登場トップ10入り(6位)。
アルバムも予約受付開始後、24時間で27か国のiTunes Storeで1位(日本は最高位2位)となった。
ガガほか、たくさんのアーティスト、作家らがツイート、Facebookで喜びを表現した。
♪Where Are We Now? は、77年の「ベルリン時代」に題をとり、映像には、当時借りていたトルコ人街のアパートや、
三十数年前の風景が描写されている。
監督は、現代美術家のトニー・アウスラー。ボウイの横に映っているのはトニー夫人で、美術家のジャクリーン・ハンフリーズ。
ボウイが着ているのは“引退した”豪華客船のTシャツ。
あまりに内省的で、美しすぎ、郷愁を誘い、遺言になるのではないかという危惧を抱かせたのも事実。
1999年の『hours...』の時も同じだった。
♪Thursday's Child のPVでボウイが演じるのは、未来と可能性の喪失を悟った男。
♪Where Are We Now? では生=命そのものの喪失を悟った男。
ジョナサン・バーンブルックのアートワークもさまざまな憶測を呼んだ。
ボウイは2004年の『Reality』ツアー中に心臓発作を起こして緊急手術。
その後の活動は慈善などに限られた。他アーティストとの共演も途絶え、
パーティや近所の散歩の隠し撮り写真が掲載されるだけ。
しかし、ボウイは完全に状況をコントロールして、自らの復活劇をハラハラドキドキのロックンロールショーに仕立て上げた。
こんなに素晴らしいフェイクを、本当にありがとう!
約30曲がレコーディングされ、14曲にしぼられた。
多作家のボウイは、時の勢いでアルバムを作ることも多かった。
でも、今作は違う。10年ぶりの新作。考察・熟考が詰まっている。
メンバーは『heathen』『Reality』の気心の知れた仲間ばかり。
プロデューサーはトニー・ヴィスコンティ。
パティ・スミスとの共演で知られる日本人ヴァイオリニストの田口浩子さんも参加!
日本盤にのみボーナス・トラックとして♪God Bless The Girl が収録!
世界中から一斉に「えこひいき」だとの声が上がっている(w
ボウイは、東日本大震災に心を痛め、自らの復活後に大島渚監督が死去したことを受け、
真心のこもった弔辞を贈ってくれた。
<各曲の解説>
♪The Next Day
トニーによると、ボウイは、中世の英国の暴君を題材にして書いたそう(ヘンリー8世か?)。
♪Dirty Boys
冒頭の詩の「タバコロード」は、アメリカ南部の貧しい地域を描いたアースキン・コールドウェルの小説のタイトル。
ジョージ・フォード監督により映画化されている。
♪The Stars(Are Out Tonight)
「売りたいものではなく、言いたいことがあるからアルバムを作った」というボウイの発言通り。
歌詞の名前は、それぞれハリウッドスターの名前だろう。
サテュロスは、ギリシア神話の半獣神で、怠惰、音楽と酒、女性、美少年を好む種族。
♪Love Is Lost
ボウイのコーラスの多重録音が聴きもの。4人編成だが切迫感が凄い。
ボウイのシンセサイザーも懐かしい音を出している。
鋤田さんの写真集で73年のミニ・モーグ・シンセサイザーを弾く写真にとても感傷的なコメントをしている。
鋤田正義さんのボウイ写真集『Speed of Life~生命の速度』
♪Where Are We Now?
実は、原型はおそらく、ボウイが自身の役で出演したBBCのコメディ『エキストラ2』の♪Little Fat Man だろう。
DLオンリーのこの曲のカヴァーアートは『Diamond Dogs』ツアーのステージ写真の天地をひっくり返したもの。
そのライヴを収録したアルバム『DAVID LIVE』の写真に対するコメント
「ボウイは理論的には生きているだけという状態に見える」を思わせる。
この曲のタイトルは、映画監督ダンカン・ジョーンズの『月に囚われた男』の冒頭部分に出て来る。
♪Valentine's Day
聖ヴァレンタインを主人王にしている。
♪If You Can See Me
ボウイならではのドラムン・ベース(ジャングル)ナンバー。
♪I'd Rather Be High
戦地から戻った兵士のPTSDを描いた。
ボウイにとって、このような「狂気」は、70年代はじめから常に切り離せないテーマだった。
♪Boss of Me
愛娘に向けた純粋な人生賛歌のようにも聴こえる。
♪Dancing Out in Space
イギーとの共作『Lust for Life』のようなビートにまずビックリ。
それが作られた頃のベルリンでのイギーとの交流を描いた映画が準備中だそう(立ち消えたか?
♪How Does the Grass Grow?
インスト♪アパッチ で有名なジェリー・ローダンとの共作とクレジットされている。
ローダンはアンソニー・ニューリーに影響を受け、ボウイと同時期にデッカに所属していた。
曲名は、英国軍が銃剣で的の人形を刺す演習の時の掛け声のこと。
♪(You Will) Set the World on Fire
『Tonight』と同じアール・スリックがギター。60年代のアメリカを描いているのも興味深い。
♪You Feel So Lonely You Could Die
最後に♪Five Years のドラムパターンが出てきて驚愕。
♪Heat
歌詞の「三島の犬」とは三島由紀夫の「牝犬」、「雪の中の孔雀」も三島の「孔雀」を想起させる。
♪God Bless The Girl
ガールはアメリカという国そのもののメタファーに聴こえる。
[lylics]
♪You Feel So Lonely You Could Die
人々が詰め込まれたビルディング
憤怒に満ちた風景
灰色のコンクリートの都市
雨は街を濡らす
私は君をきちんと見(まみ)えたい
血塗られた歴史の部屋の扉を
君が閉じてしまう前に
友よ、君は鬱を抱え
人は君を好くことがない
音もなく君は去るだろう 行き先もなく
私は望む
君が死にたいほどの淋しさを
感じるだろうことを
♪God Bless The Girl
ジャッキーは自分の仕事が大好きだ
その仕事は愛される
かけがえがなかったから
彼女は、これが天職なのと言い
ジャッキーは仕事を愛していた
それしかなかったから
部屋の隅に座りこみ
恐れすぎて逃げられない
鎖を放たれた奴隷のように
神よ、その子にご加護を
そして
私は君を傷つけたいわけではない
ほんの少し楽しみたいだけ
(なぜ、ボウイが日本にだけ、この曲をプレゼントしてくれたのか?
解説者は、“ジャッキーとはケネディ夫人のことか?”と書いていたけれども、
訳者は“その子”と訳したように、girlとはいえ、私はみんなにボウイが“護りたまえ”と
祈りを捧げてくれたようで涙した。
どんどん、スピーディに、複雑怪奇に変貌する世の中で、生き抜いていかなければならない
私たちに祈りを残してくれたのではないだろうか?