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本橋成一『バオバブの記憶』(平凡社)

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『バオバブの記憶』(平凡社)
本橋成一/写真

「作家別」カテゴリーに追加しました。

ポレポレショップ

“セネガルの大地にバオバブの大木と生きる人びとがいる。
 数千年にわたってバオバブに刻まれてきた彼らの暮らしと、
 変貌を迫る文明の「傷跡」を映し出す。3月から同名の映画も公開! ”

写真集とともに、けっこうドキュメンタリー映画も撮っているんだな。いつか観てみたい

バオバブというと、好きな『星の王子さま』で知って、好きな巨樹。
いろんな形があって観ていて飽きない。

5000年も生きているものもあることにも驚いたけど、
それだけ長生きできたのは、中が空洞になっていて、
材木として人間によって伐採されなかったからかもしれないな

これだけ大きいのに、中は空洞っていうのも初めて知って面白い!
中は涼しいんだろうか?


バオバブを通して、そこで共生する村人の暮らしも丁寧に撮っている。
昔から変わらない部分と、Tシャツを着る少年、神木のバオバブを観光スポットにしたりと
変わっていかざるをえない状況も見えてくる。

Tシャツは支給されたものだろうか?
私もリサイクルに出すが、“その国の繊維業の発展を妨げる”ということを読んでから、複雑な気持ちになった


女性は美人さんが多くて、みんなカラフルな布でオシャレをしているのがステキ
少女たちの夢は、「フランスでメイドになりたい」のだそう
実際にフランスに行ける子はどれほどいるのか
そして、異文化を見て、どう思うのか


巨大な木の根に座る10人ほどの子どもたちを見ていたら、
シェル・シルヴァスタイン作の絵本『おおきな木』を思い出してほのぼのした

私も木に触れたり、抱きついたりするのが好きだから、
写真のバオバブからのエネルギーを感じるよう想像しながら鑑賞してみた



【内容抜粋メモ】

<バオバブ>


アフリカの大地に根付くバオバブは、樹齢5000年とも言われている。
年とともに中は空洞になり、樹齢の測定は難しい

村の人たちはバオバブをよく道しるべに使う

根は幹と同様に肥大化し、大量の水分を蓄えている
バオバブに含まれる水分は、全体の65%といわれる

ミネラルと鉄分が含まれている樹皮は、乾季には動物たちの大事な栄養源になる


伝統的な薬を扱う店には、バオバブが欠かせない
葉も実も樹皮も根も、どの部分にも薬効成分があるという



バオバブの木陰は絶好の涼み場所。幹に体を寄せると気持ちがいい


バオバブの容姿は千差万別。とくに人との関わりが強い樹はまるで大きな盆栽のようだ


村はずれにある柵で囲われたご神木は、霊力が強いと畏れられている
バオバブの魂が活動する昼から午後にかけての時間に、ここに近寄る人はいない
彼らはバオバブに宿る精霊を信じている



堅い樹皮の中はスポンジのように軟らかい。だから材木にはならない
この地方では、人間の都合でバオバブを切り倒さない

倒れてしまったバオバブは、ほとんど利用価値がない。ただ大地に還るだけだ

(それが一番幸せだ
 倒れた木から幹がのびているのもあってビックリ/驚×5000
 あとまた何百年も経てば、1本のように見えるのかもしれないな



夕陽に映るバオバブのシルエットは影絵のようで美しい




<村人の暮らし>

この地の人たちは、どんなに邪魔であろうと、バオバブを切り倒すことはしない
バオバブは、雨季がくる前に葉を出す。村人はその若葉を見て、雨が近いことを知る

樹に登って葉を採るのは男の仕事。葉は天日に干して粉にする
「ラロ」と呼ばれる粉には鉄分、カルシウムが多く含まれ、毎日の食卓に欠かせない

魚や野菜を煮込む大鍋にトウジンビエを入れた器を載せて蒸すと「チェブジェン」の出来上がり
男性、女性、子どもが別々に、1つの大きな食器を囲んで食事をする



村長のアリウンは、婚姻、出産、死亡の届け出、渡航手続き、穀物取引などの仕事で毎日とても忙しい


盲目のチェコドゥ師は92歳。バオバブの魂と交信し、そのメッセージを患者に伝える


タムタムを叩けるのはグリオの一族だけ。語り継がれた伝統的なリズムを奏でる


昔、グリオ(吟遊詩人)が亡くなると、いつでも歌えるように洞のあるバオバブに葬っていた
グリオの墓となったバオバブは、歌が響き渡るよう、幹に穴が開けられていた



雨季になって最初に蒔くのは落花生。村人たちの大事な現金収入にもなる

村人の文化に文字はなかったので、今でも植民地時代のフランス語が公用語として使われている

キヨスクって書いてある/驚

ラマダンが近づくと、土曜市には、犠牲祭の儀式のための羊が運ばれてくる


収穫祭ではご神木に感謝の祈りを捧げる。
広場ではグリオが太鼓やサバールを叩く

女たちは踊りを競い合いながら、1年の収穫を祝う。




<女性と子ども>

どこの家も昼間の中庭は託児所のよう。誰がどの家の子か分からなくなる

(このほうが、お母さんが働くのには手間がかからないし、安全だね

女性は樹に登ることを禁じられている

女の子たちは将来、メイドとして海外に行きたい。だから公立のフランス学校に行く
フランス学校の授業は、すべてフランス語で行われる。フランス語の習得は、将来の進路の幅を広げる
コーラン学校はイスラム寺院が開いている。女の子たちはモスクと同じように布で頭を被う



村の女性たちが好む生地はみな鮮やか。布を選べば、その場でミシンを踏んでくれる





<変化>

素焼きの器も、もう売れなくなってしまった


都市のゴミ捨て場は広がっていく。人々はずっとゴミはみな腐るものだと思っていた


造成団地の看板のある地は、5年前まではバオバブの林だった


現在、セネガルでもバオバブの若木がほとんど育っていない。
樹齢4000年といわれるフィセル村のバオバブは、5年前に突然枯れてしまった
(若木が育たないのは、環境汚染のせいだろうか?



【著者によるあとがき 内容抜粋メモ】

私が初めてバオバブに出会ったのは35年前のことだった。

当時ぼくは1年間の約束でテレビの動物番組の仕事を引き受けて、東アフリカの国立公園を中心に撮影をしていた。

乾季が終わろうとしていたある日、象の群れが1本のバオバブの樹皮を牙で剥いで口に入れていた。
象はバオバブの幹にたっぷり水分が蓄えられていることを知っていた

「昔、象は1日何十kmも移動して補食、補水できたからあんなことはしなかった」

ガイド役のマサイ族の長老の言葉で、ぼくは、国立公園という所は、動物たちはもちろんのこと、
バオバブまで目に見えない檻で囲われた動物園だったことを知った。
アフリカの国立公園での野生動物の番組づくりなんて無理だったのだ

今や地球上の人口は、300年前の10倍にもなっているという
頭脳だけが発達し、原子力に手を出し、宇宙まで探り出している人間たち。
いつからだろう、人間だけが走り出してしまったのは・・・

今もバオバブと暮らしている人たちがトゥーバ・トゥール村にいた。
彼らならバオバブの記憶を紐解くことができるかもしれない。



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