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『アウシュヴィッツを生きのびた父親の物語 MAUSⅡ』(晶文社)

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『アウシュヴィッツを生きのびた父親の物語 MAUSⅡ』(晶文社)
原題:MAUSⅡ by Art Spiegelman
アート・スピーゲルマン/著 小野耕世/訳
初版1994年 1900円

※2000.9~のノートよりメモを抜粋しました。
「マンガ感想メモリスト2」カテゴリーに追加しました。


▼あらすじ(ネタバレ注意

マウス:ナチスに侵略された故郷ポーランドで必死に逃げ続ける父
ユダヤ人:ネズミ
ドイツ人:ネコ
ポーランド人:ブタ
フランス人:カエル

1992年、コミックスとして史上初ピューリッツァー賞特別賞受賞。17ヶ国語に翻訳された
妻フランソワーズと共同編集する雑誌『RAW』に1980年から連載していた



語るにはあまりにも重い話を、動物の姿と、マンガの形を借りて受け入れ易くした上、
改めて、現実とは思えないアウシュヴィッツ体験をリアルに伝えることに成功した。

そして本書は、同時に、悲劇を生き抜いた父と、戦争を知らない息子との
ぶつかり合いながらも接点を見出そうとするもう1つの大きなテーマがある。

「なぜ母は生き延び、夫と再会し、アートを育てた末に自殺したのか?」

という作者の大きな心の傷でもあり、謎を追う旅でもあり、それはまだ明かされないまま。
次回作を期待させる大きなミステリーとして残される。

戦争によって、人を動物以下に扱ったのもまた心ある人間。
どうしてここまで機械的に抹殺し、ここまで一つの人種を憎めたのだろう。
単なる時代の狂気とは片付けられない何かがあるはず。


▼あらすじ(ネタバレ注意

布地のセールスマンだったヴラデックは、裕福な靴下業の末娘アンジャと結婚。
長男リシュウは戦時中に死去。

ヒトラーの台頭でゲットーへ押し込まれ、隠れ家からハンガリーへ逃亡中に捕らえられ、1944年にアウシュヴィッツに入れられる。

戦後にアートが生まれ、1968年、アンジャは自殺。
ヴラデックは、同じ生存者のマーラと再婚。

彼女が家を出てうろたえ、アンジャと妻Fは、父を訪ねる間、テープに体験記を録音する。




男女に分けられ、サイズもごちゃごちゃな服と木靴で、
カポー(監視人)に英語を教え、ブリキ職人となる。

仲間は、飢えと、重労働、ガス室送り、銃殺で激減。

妻が、死を待つだけのビルケナウにいると知り、靴職人になったヴラデックは
マンシーを通じてタバコとウォッカの取引で、近くのバラックに来るよう手配する。

その後、重労働のブラックワークを含め、10ヶ月ほどアウシュヴィッツにいたヴラデック。

生きたまま墓穴で焼かれた者もいた

ロシア軍の侵攻で、囚人は移動させられ、ぎゅうぎゅうの列車に閉じ込められ、飢えとチフスで大勢死んだ。

終戦後も、何度もドイツ軍に捕らわれ、ようやく米軍に救われる。

妻の生存を知り、途切れた線路を歩いてポーランドに帰り、妻と感動の再会を果たす。

父は1982年、糖尿病から心臓発作で亡くなる。



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