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『ヴァイオリニスト』ガブリエル・バンサン(BL出版)

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『ヴァイオリニスト』(BL出版)
ガブリエル・バンサン/作・絵 今江祥智/訳

ガブリエル・バンサン(ウィキ参照

勝手に男性だと思っていたら女性でビックリ! しかも、もう亡くなられてしまったのか
『アンジュール―ある犬の物語』で知って、てっきりブログに書いたと思っていたけど、ない ってことはまだ見てない???
スケッチだけの本で、強い印象が残ってたんだけど

あとがきにある通り、映画の絵コンテを観ているよう
ちょっとした目の表情など、誰かモデルがいるのだろうか?
一体、どんな曲を弾いているのか? いろんな想像をかきたてる

コンクールで賞をとって、華やかな舞台で拍手喝采を浴びるのはほんの一握り
でも、音楽にかぎらず、芸術は自分と周りを楽しませるためにある

親との気持ちのスレ違いに強く共感してしまった
「放っておいてほしい」
そうなんだ、ほんとそれだけ

だけど、本当は、どんなに長い手紙で、何度も、何度も、非難されても
自分が自分自身を認めて、ありのままの自身を受け入れることが救いであり、
本来の自然のあり方だと気づくことができた



少年がヴァイオリンの音に耳を澄ませて、真剣に聴いている顔もさまざまな動きがある
驚いたり、感動したり、音の世界に没頭して、その旋律のとおりに変わっていく様子が伝わる

この最初の1人の小さなファンによって、青年が絶望の淵から這い出て
弾く喜び、人を楽しませ、感情を揺り動かす喜びを知った

そして、その時初めて、彼の奏でる音にも大きな変化がおきて、より美しい旋律へと変わっていったことだろう


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▼あらすじ(ネタバレ注意

青年は父親に買ってもらったヴァイオリンを毎日部屋で弾いているが、
父親から再三来る「みかけだおしだ」などの非難の言葉に傷つき、絶望している




“ほうっておいてほしいんだ。好きにさせてよ”


彼の弾くヴァイオリンに惹かれて、毎日通う少年は、青年がなにか大きな心の痛みを抱えていることを知る



毎日通い、窓から覗く少年に気づき、なぜ通ってくるのか気にかかるようになる青年
そんな風に窓を挟んだ無言のやりとりが続く

また父から同じ繰り言の長い手紙が来る


“名もない音楽家-だってかい。それはそのとおり。
 しがない音楽家-だってかい。おっしゃるとおりですとも、さ。”


青年の窓には、いつしかいろんな人々が聴きに来るようになる
中には日参する者もでてきて、最初はひやかしかとも思うが、

 

“みんな、ちゃんと聴きにきてくれてるんだ、ん。”
“わしらのために弾いてくれとるんだよ。”

(よく見ると、この人たちは、高いチケットを買ってコンサートを観に行けないのかもしれない
 そういう人たちにこそ、心にやすらぎを与える音楽は必要だ




父も来て、“とうさんか。もう顔を見たくはなかったな。”
(父は身なりがいいから、成功した音楽家なんだろうか?




“ほっといてほしいんだ。たのむよ。”

“たのむから、ひとりにしてほしいんだ。なんにもいわれたくはないんだ。”





また少年がやって来て、青年の顔にも、少年の顔にも微笑みが浮かぶ
青年は彼のためだけに演奏する

 


“「みかけだおし」でいいんです。
 でも、うれしい「みかけだおし」なんだよ。
 そういうこと。
 そんなのもいるんだ。
 わたしもそうなんだから。”


青年はいつしか窓を開け、少年を部屋に呼び入れる
少年は自分も青年のように弾いてみたかったんだな
教えてあげると約束する

そして父に手紙を書く

“父上のご期待どおりとはいきませんでしたが、後悔はしておりません。
 コンクールだとか、賞だとか、世間の評判だとかとは、ご縁がなかったのです。
 出世だとか、成功だとかは、わたしには遠いことなのです。
 そんなことより、すぐそこの窓のむこうにあるものこそ、大切なのです。
 おわかりいただけないでしょうが。”




「いつからはじめるの?」
「いまからだよ」



【バンサンさんの想いをゆっくりと・・・今江祥智 内容抜粋メモ】

さきの『ナビル』と並んで、本書も、まず日本で出版されるオリジナルの1冊として描かれたことは嬉しかった
生きる喜びと死への想いの間を、大きく揺れ動く振子のような気持ちで、
絵本のストーリーを考え、描き続けてきたように思えるバンサンさん

この画家が、もっと自由に、もっと広く絵本の世界を探ろうとしているのに、
そうした作品の出版が少しずつ難しくなってきた、と聞いて、
私たちは、日本ならまだまだお好きなように描かれたものが出せます、と申し上げ
それに応えて描かれたこの2冊でした

この2冊の大作は、絵本のもつ力~「視覚言語」というのでしょうか~を改めて私たちに示してくれました




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