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『マンガ日本の古典25 奥の細道』(中央公論新社)

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『マンガ日本の古典25 奥の細道』(中央公論新社)
矢口高雄/著 初版1995年 1300円

※2001.5~のノートよりメモを抜粋しました。
「マンガ感想メモリスト2」カテゴリーに追加しました。

奥の細道:
松尾芭蕉が門人・曾良(そら)とともにみちのく行脚した紀行文
元禄2年(1689)江戸深川~美濃(岐阜)大垣 8~9月
芭蕉46歳、曾良41歳
歌枕(古歌詠まれた諸国の名所旧蹟)を訪ね、蕉風を確立した

今作は、1巻の都合から、主にクライマックスとなる部分を抜粋
旅の雑事一切をした曾良の『曾良日記』を参照にし、平泉から始まる


松尾芭蕉:
正保元年(1644)生まれ 12歳で俳諧に通じた良忠の小姓として学ぶ 俳号「宗房」
良忠は25歳で死去 芭蕉は29歳で俳諧師として江戸に下る
魚問屋杉風をパトロンに、俳号を「桃青」に改め、宗匠となり、深川の「芭蕉庵」に住んだことから命名
1684「野ざらし紀行」、1687「笈の小文(おいのこぶみ)」、1688「更科紀行」、1689「奥の細道」と紀行文も多い

俳諧:
和歌(連歌、57577を定形とする短詩、奈良時代『万葉集』、平安時代『古今和歌集』)が「あわれ」に対し、
「おかしさ」に主をおく余興として始まる
文化にしたのは松永貞徳の「貞門派」、それをくずしたのが西山宗因の「談林派」、
そして“不易流行”“素直に情景を詠む”「蕉風」がくる

連句:
数人の連衆(仲間)が575の長句+77の短句を詠み合い、1巻を完成させる「座の文芸」


▼あらすじ(ネタバレ注意

「夏草や兵どもが夢の跡」(義教堂にて)


「蚤虱 馬の尿する 枕もと」(尿前)


尾花沢に紅花問屋の俳人・鈴木清風を訪ね「涼しさを わが宿にして ねまるなり」(客発句芭蕉)


「つねの蚊遣りに 草の葉をたく」(亭主脇句)


山寺で「閑かさや 岩にしみ入る 蝉の声」


大石田「五月雨を あつめて涼し 最上川


「岸にほたるを繋ぐ舟杭


羽黒山から月山へ
「月日は百代の過客にして、行き交う年もまた旅人なり」


「風雅の誠」
風雅を愛する純粋無垢な心。人が根源的にもつ美に対する欲求

“俗世の利害、功名心が俳諧にもっとも邪魔なもの 句を作るより、作る前のまじりけない心が大切”


「雲の峰 幾つ崩れて 月の山」

今作はこれにて、以後、曾良が病に臥し、途中で帰国 日程記録がないため曖昧に



すべて徒歩で歩き抜いたのはスゴイ!

時間も、家族も、仕事も、金も気にせず、ひたすら芸の道を究めるために、
時には雨や寒さの中で野宿し、人情やもてなし、人とのつながりに導かれてほうぼうを旅をするなんて
人生最高の浪漫に尽きる!

風情を大切にした日本人

旅人を温かくもてなす田舎の人々の素朴な心、
自然と混ざって生きていた人たちが1句、1文の中にイメージとして広がり、
何百年も後世の私たちの心まで打つ素晴らしさ

言葉、文字ってやっぱりすごいな

それをまた正確に再現し、情景をよみがえらせ、
視覚から一瞬にして伝えることのできるマンガの文化も劣らない

まるで一緒に旅をし、しばしの間、昔の道を歩き、人々の情に触れ、
俳諧の情感を味わうことができた

日本文学は、今まで、なんとなしとっつきづらくて疎遠だったけれども、
時代、土地柄、風習、ひとつひとつに、世界の他国に見ない
文化、知恵、風流があると分かってきた

何につけても奥が深いんだなあ!



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