■『にぐるまひいて』(ほるぷ出版)
ドナルド・ホール/文 バーバラ・クーニー/絵 もきかずこ/訳
※「作家別」カテゴリーに追加しました。
「人びとの生活と 自然のために」
ドナルド・ホール:
自分の作品を朗読して国中を歩く詩人として知られる 本書について
「そもそも、この話は、近所に住んでいたいとこから聞いたものです
そのいとこは、幼い頃にある老人から聞き、
その老人は、子どもの頃に、大変なお年寄りから聞いたそうです
語り継がれた伝統の素晴らしさ!」
バーバラ・クーニー:
1980年、本書でカルデコット賞を受賞
病理学者の夫とマサチューセッツ州ペパラルに住んでいた
▼あらすじ(ネタバレ注意
<まえがき>
19C初頭のニューイングランド人とその家族の1年間の成果を積んだ旅
この優しい物語は、もう帰らない古き良き時代のアメリカの暮らしぶりを偲ばせます
10月
父さんは、荷車に牛をつなぎ、家族みんなで作り、育てたものをなにもかも積み込んだ
ヒツジの毛、それを母さんが紡いで織ったショール、娘が編んだ手袋
息子がナイフで削った白樺の箒、
みんなで作ったロウソク、ジャガイモ、リンゴ、蜂蜜、
3月に楓の樹液を煮詰めた楓砂糖の木箱、ガチョウの羽
父さんは、牛をひいて10日がかりで丘を越え、谷を抜け、村をいくつもすぎて
ようやくポーツマスの市場に着いた
父さんは、すべて売った 空き箱も、荷車も、最後に牛も
そして市場で、母さんには鉄鍋、娘には刺繍針、息子にはバーロウナイフ、
みんなのためにはっかキャンディを買った
また家族が待ちわびている家にやっと戻った
父さんは、冬中、新しい荷車の板をひいた
母さんは亜麻をリンネルに仕上げ
娘はそれに刺繍し
息子はインディアン風の箒を作り
みんなでロウソクを作った
4月
ヒツジの毛をかりとり、糸を紡ぎ、織物や編み物をした
5月
ジャガイモ、カブ、キャベツを植える
ミツバチは蜜をつくる
ガチョウはガアガア鳴きながら、雲のように軽い羽をまきちらす
*
バーバラ・クーニーの素晴らしい絵が存分に楽しめる1冊
自然から恵みを頂き、それを加工して手でモノを作り、ほかの必要なモノと交換する循環社会
四季の移り変わりを感じ、4人家族の温かな暮らしが、絵からにじみ出て伝わってくる
新しい荷車を作っている時のお父さんの微笑みがステキ
1つ気になるのは、売られた牛は、ゆくゆくはステーキにされてしまうこと
「元気でな」と言われて突然別れの時がきた牛の眼は、どうして自分は置いていかれてしまうのか、と問うている
家族のためなら、他の命を殺しても構わないというのは、まだまだ低い次元の愛情だ/哀
ガチョウやヒツジは、羽毛や羊毛をかられるだけだけど
トランプさんの言っている“Good Old America”とは、どの時代だろうか?
自分の幼い頃か、両親の幼い頃か、
それとも、アメリカ大陸にイギリス人が入植した本書の頃のことか
『大草原の小さな家』同様に、開拓時のアメリカ人の暮らしは
もっとずっと前からの先住民ネイティヴアメリカンの大虐殺の上に成り立っているという歴史を忘れてはならない
『ナショナルジオグラフィック世界の国 アメリカ』(ほるぷ出版)
ネイティヴアメリカンたちは、さらに自然に根ざした生活をして
自然に感謝し、祈りを捧げていた
『神々の母に捧げる詩-続 アメリカ・インディアンの詩』(福音館書店)
『魔法としての言葉 アメリカ・インディアンの口承詩』(思潮社)
『アークティック・オデッセイ 遙かなる極北の記憶』(新潮社)
『アメリカ・インディアンはうたう』(福音館書店)
産業革命後、一度ひとびとの暮らしは大きく変わった
今では、大量のヒヨコを急速に育て、成鳥になるとホースで吸い上げ
機械で殺して吊るし、各部位に手際よく分け、チキンナゲットや手羽先などになってスーパーに大量に並び
レストラン、家庭の食卓で毎日出る食べ残しは、大量に捨てられている
『ありあまるごちそう』(2005)
アメリカは、ベトナム戦争から、もう一度大きく変わってしまった
ムダがなく、のんびりと働いていた、この頃とどれほど違うか
この絵本の中で語り継がれたストーリーには、人々の祈りも込められているのかもしれない
失ってしまった「古き良き時代」という理想郷への祈り
ここまで謙虚な暮らしまで戻るのは難しくても、
知恵の使い方によって、科学と自然の共存は可能だと
私はまだかすかな祈りを持ち続けているんだ
ドナルド・ホール/文 バーバラ・クーニー/絵 もきかずこ/訳
※「作家別」カテゴリーに追加しました。
「人びとの生活と 自然のために」
ドナルド・ホール:
自分の作品を朗読して国中を歩く詩人として知られる 本書について
「そもそも、この話は、近所に住んでいたいとこから聞いたものです
そのいとこは、幼い頃にある老人から聞き、
その老人は、子どもの頃に、大変なお年寄りから聞いたそうです
語り継がれた伝統の素晴らしさ!」
バーバラ・クーニー:
1980年、本書でカルデコット賞を受賞
病理学者の夫とマサチューセッツ州ペパラルに住んでいた
▼あらすじ(ネタバレ注意
<まえがき>
19C初頭のニューイングランド人とその家族の1年間の成果を積んだ旅
この優しい物語は、もう帰らない古き良き時代のアメリカの暮らしぶりを偲ばせます
10月
父さんは、荷車に牛をつなぎ、家族みんなで作り、育てたものをなにもかも積み込んだ
ヒツジの毛、それを母さんが紡いで織ったショール、娘が編んだ手袋
息子がナイフで削った白樺の箒、
みんなで作ったロウソク、ジャガイモ、リンゴ、蜂蜜、
3月に楓の樹液を煮詰めた楓砂糖の木箱、ガチョウの羽
父さんは、牛をひいて10日がかりで丘を越え、谷を抜け、村をいくつもすぎて
ようやくポーツマスの市場に着いた
父さんは、すべて売った 空き箱も、荷車も、最後に牛も
そして市場で、母さんには鉄鍋、娘には刺繍針、息子にはバーロウナイフ、
みんなのためにはっかキャンディを買った
また家族が待ちわびている家にやっと戻った
父さんは、冬中、新しい荷車の板をひいた
母さんは亜麻をリンネルに仕上げ
娘はそれに刺繍し
息子はインディアン風の箒を作り
みんなでロウソクを作った
4月
ヒツジの毛をかりとり、糸を紡ぎ、織物や編み物をした
5月
ジャガイモ、カブ、キャベツを植える
ミツバチは蜜をつくる
ガチョウはガアガア鳴きながら、雲のように軽い羽をまきちらす
*
バーバラ・クーニーの素晴らしい絵が存分に楽しめる1冊
自然から恵みを頂き、それを加工して手でモノを作り、ほかの必要なモノと交換する循環社会
四季の移り変わりを感じ、4人家族の温かな暮らしが、絵からにじみ出て伝わってくる
新しい荷車を作っている時のお父さんの微笑みがステキ
1つ気になるのは、売られた牛は、ゆくゆくはステーキにされてしまうこと
「元気でな」と言われて突然別れの時がきた牛の眼は、どうして自分は置いていかれてしまうのか、と問うている
家族のためなら、他の命を殺しても構わないというのは、まだまだ低い次元の愛情だ/哀
ガチョウやヒツジは、羽毛や羊毛をかられるだけだけど
トランプさんの言っている“Good Old America”とは、どの時代だろうか?
自分の幼い頃か、両親の幼い頃か、
それとも、アメリカ大陸にイギリス人が入植した本書の頃のことか
『大草原の小さな家』同様に、開拓時のアメリカ人の暮らしは
もっとずっと前からの先住民ネイティヴアメリカンの大虐殺の上に成り立っているという歴史を忘れてはならない
『ナショナルジオグラフィック世界の国 アメリカ』(ほるぷ出版)
ネイティヴアメリカンたちは、さらに自然に根ざした生活をして
自然に感謝し、祈りを捧げていた
『神々の母に捧げる詩-続 アメリカ・インディアンの詩』(福音館書店)
『魔法としての言葉 アメリカ・インディアンの口承詩』(思潮社)
『アークティック・オデッセイ 遙かなる極北の記憶』(新潮社)
『アメリカ・インディアンはうたう』(福音館書店)
産業革命後、一度ひとびとの暮らしは大きく変わった
今では、大量のヒヨコを急速に育て、成鳥になるとホースで吸い上げ
機械で殺して吊るし、各部位に手際よく分け、チキンナゲットや手羽先などになってスーパーに大量に並び
レストラン、家庭の食卓で毎日出る食べ残しは、大量に捨てられている
『ありあまるごちそう』(2005)
アメリカは、ベトナム戦争から、もう一度大きく変わってしまった
ムダがなく、のんびりと働いていた、この頃とどれほど違うか
この絵本の中で語り継がれたストーリーには、人々の祈りも込められているのかもしれない
失ってしまった「古き良き時代」という理想郷への祈り
ここまで謙虚な暮らしまで戻るのは難しくても、
知恵の使い方によって、科学と自然の共存は可能だと
私はまだかすかな祈りを持ち続けているんだ