■どう防ぐ?若者の過労自殺 "会社と社員"のつきあい方@週刊ニュース深読み
専門家:
川人 博さん(弁護士)
渥美 由喜さん(東レ経営研究所 研究部長)
常見 陽平さん(千葉商科大学 専任講師)
村田 英明(NHK 解説委員)
ゲスト:
桂 文珍さん(落語家)
千秋さん(タレント)
夜遅くまで煌々と明かりがついているビルの夜景がもうおかしい
この電気消費で自然も壊しているという悪循環
●過労自殺した高橋まつりさん(24)さんは、去年、新入社員として入り、1ヶ月の残業は100時間以上
「いつ起きてもおかしくない状況で、起きるべくして起きているのです
経営者は、社員の命を預かっているのです
大切な人の命を預かっているという責任感を持って
本気で改革に取り組んでもらいたいです」
→電通は、深夜勤務を原則禁止にした
●根本の原因とされる「長時間労働」
<街頭インタビュー>
20代若手社員の男性:
(上司から)“若いうちは馬車馬のように働け”と言われました
(なぜみんなこんな深刻な事態を笑って済ませられるかが、まず理解できない
Q:上司が意識を変えることはできると思いますか?
罰則とか設けない限り難しい
20代若手社員の女性:
「残業カット」とか口では言っても、現実はかなり難しい
50代管理職の男性A:
仕事なので結果を出さないといけない
期限があると無理して夜遅くまでやらないといけない
(今は中間管理職も働きすぎで倒れる時代
50代管理職の男性B:
(仕事が)辛くてとか、今起きている事件って分かるんですよ
でも当たり前だと思うんですね、僕らは
お金を稼ぐって簡単なことじゃないと思うので
でもそれを(部下に)伝えるのはすごく難しい
小野アナ:ちょっと世代間ギャップも感じるニュースですね
●過労自殺として認定された高橋さんの経緯
ウェブを見るとよく出てくる広告部分を担当していた高橋さん
入社したばかりの頃は家族こう言っていた
見習い期間を経て、半年後、本採用後、残業時間が増加
この頃からツイッター上でのつぶやきに辛さを書き込むようになった
11月には残業時間が105時間に
※過労死の基準は、残業時間80時間/月というラインがある
上司からはこう言われていた
(「女子力」て・・・この上司に刑事責任は問われないんだろうか?
「過労死」て、会社になにか刑罰は下らないのか? これは殺人と同じだと思う
2015年12月25日 社員寮から投身自殺
2016年9月 遺族の訴えで労災認定
「残業時間の急増でうつ病を発症したための過労自殺」と認定された
母「過労死、過労自殺は、偶然起きるのではありません」
(「労災」も相当分かりやすい事例でない限りおりない 認定されるのは氷山の一角
私は、健康を扱う通販での入力で腱鞘炎になり、労災という言葉を出しただけで
会社中がモメまくり、クビになったことがある
●当時の社長が作った「鬼十則」 今も社員の手帳に書かれている
●後を絶たない事例の多さ
昨年度の若者だけの数字
●職場の環境は実際どうなっているのか? 多いケースを模型でプレゼン
例:正社員として採用されて3年目の読菜さん(25) 深夜2時まで働いている
<残業が増加する要因として考えられるポイント>
「グローバル化」
メーカー、商社は、国内だけではなく、海外企業もライバル関係となり
戦うためには、次々と他社より新しいことを先に仕掛けなければならない
「IT化」
猛スピードで変化している状況の中、次々と顧客ニーズに応えなければならない
「コスト削減のため人件費を減らす」
ここ10年で、非正規社員は約40%
25歳の読菜さんは、責任の重い仕事を任されている状況
昔ならまだ1つ1つ学び、経験を積む年齢だったが、大きな仕事を大量にこなさければならない
(昔から、女性がパートの低賃金で働いて下支えしてきた背景もあるしね
と、上司に相談すると・・・
「甘いこと言うな」と言われる
小野:会社を辞めたほうがいいのでは?
●会社を辞めようと思わない若い世代
今年の新入社員に聞いたアンケート結果で、「今の会社に一生勤めたい」約56%
15年前にとった同じアンケートでは、20%だった
文珍:会社にいたほうが安定するんじゃないかという「安定志向」があるのでは?
●今の若者のたどった時代
1990年 バブル崩壊 生まれた頃からずーーーっと景気が悪い 景気のいい日本を知らない
2010年 就職氷河期をなんとか乗り越えて、狭き門の正社員になれた世代
もし辞めて、今よりいい条件の会社に再就職できる保障はない、という考え方がほとんど
小野:でも命と引き換えにしなくても・・・
一方、上司が就職したのは「バブル時代真っ只中」
バリバリ働いて、ガッツリ稼ぐ、働いた分「ボーナス」「昇給」等で見返りのある成功体験を感じている世代
この上司を指導した先輩は、高度経済成長期の「モーレツ社員」
そのDNAを今の若い人にも求めがち
●この30年で激変した社会
昔はパソコン、スマホなどない時代
→今や24時間、「メール」「電話」がつながるため、家でも持ち帰って仕事して「スピード」「量」が求められている
千秋:
昔の人を擁護するわけじゃないけれども、昔のほうが貧しくて、モノがない時代だった
今の人たちは耐えられなくて、戦後の人たちは耐えられたということなんですか?
文珍:
目標が目の前に見えやすかった(海外に追いつけ追い越せでね
テレビを買いたいとかハッキリしていたから楽しみだった(今はもうモノがあふれてるしね むしろ断捨離
川人:
昔はご褒美、自分の未来のために働いた
今は「生き残る」ため 後ろ向きなモチベーションでしか働けない これは大きな違い
昔は人口がどんどん増えたから部下も増えた
今は少子化で1人あたりの仕事量がどんどん増えている 業務量がハンパじゃない 休むヒマがない
小野:電通だけじゃなく、一般的に起きている?
常見:
「鬼十則」は昭和の象徴みたいに批難しているが、今のベンチャー企業はこれをリスペクトしていた
似たようなビジョンやミッションが今も提示されている
「食べるための労働」から「社会的地位を確保するための労働」のリスク型になっている
文珍:
入った時に研修期間が必要なのに、周りに非正規でもバリバリできる人がいっぱいいるから
同じ扱いをされて、そのギャップでも圧力になっているのでは?
川人:
1年目から「即戦力」として目標を与えられて仕事をする
研修はせいぜい1ヶ月くらい その後すぐ「ノルマ」が課せられるプレッシャーはすごい
(幼稚園からすでに「お受験」で戦って、社会人になった時点でもうすでに相当疲弊してるもんね
村田:
高橋さんのケースでの要点は、背景に過労自殺の場合、うつ病を発症していることがほとんどだということ
10月以降にこの部署では、人が半分くらい減らされている
本採用になるやいなや、仕事量がいきなり増やされて倍以上になり、
上司からの叱責もあり、残業+睡眠不足+労働量+パワハラ、うつ病を発症するリスクが一気に襲いかかった
こういうケースは、どこでも起こりうる
アンケート1:
(ほら、通じてない この世代には、いくら論理で説明しても実感できないんだよね
アンケート2:
過労を実際に体験すると分かりますが、壊れてゆくのは肉体よりも
この状況がいつ終わるか分からない恐怖、つまり精神的に追い込まれていくことだった
小野:辞める選択肢も思いつけない状況になっていく
常見:
昔、会社員の時、私もうつ病になりました 友人も同時期、うつ病で自殺している
自分がうつ病だとまず思わない 忙しい、ストレスで酒の量が増えていく
朝起きられない タクシーに乗る つまり、電車に乗れない状況、時間管理も不可能
「あの時、なぜ辞めなかったんだろう?」と思った 結局、倒れて辞めた
自分の椅子を失いたくない いくら修羅場でも、やっと手に入れた居場所だから
転職しても給料が下がる 希望の職種につけるか分からない
同じような仕事しかない、と分かった時に僕は絶望しました
(そう、「ほかに探せばいい」と簡単にいわれるけれども、「残業○○時間 隔週土曜出勤」など同じ条件しかないんだ
川人:
あまりに疲れ過ぎると、もう合理的な判断ができなくなる
傍から見れば「退職すればいいじゃないか」と言うが、
本人にとっては、今の苦しさから逃れるためには、命を絶つしかしかないと追い詰められる
常見:
心療内科から診断書をもらい、担当医と面談すると
「死なないために、仕事を減らして、クスリを飲んで、24時より前に寝なさい」と言われて
「働かせてくれよ」と言っていた自分を今思い出す
でも、仕事がすごい好きかというと、好きではない
アンケート3:
逃げ道がない 辞めたら「経済難民」だからな、この国は
村田:
最近の学生は「奨学金」がないと勉強できない 大学では2人に1人以上
しかも、利息がついた奨学金 大学を出る時に多い人は500万円以上の「借金」を抱えて入社する
毎日、返済するために辞めるに辞められない
渥美:
今の会社の管理職はマネージメントをまったく教えてもらっていない
どう1人1人の人力を活かせるかより「オレに合わせろ」と精神論で鍛えようとする
本当は、1人1人の「やる気」を引き出して「チーム力」を最大化させるマネージメントを学ばなければいけない
川人:
30~40代の中間管理職でもすでにストレスで疲れきって参っている
「この人も危ないのでは」と思うことがよくある
メール:
「残業をなくす」っていう問題じゃない 「作業量」を減らさないと、「サービス残業」や仕事がキツクなるだけ
常見:
これがとても大事な論点
この短期間で仕事の絶対量は減るわけない
「働き方改革」などと言うけれども、仕事の範囲が限定されず、仕事の絶対量が多い状況を
「気合いと根性で時間を減らせ」と言われてもムリ
だから、「一生懸命働かない社会」を作るために、仕事量を制限するという発想を持たないかぎり直らない
千秋:会社側からすると、利益が減るとわかっていることを率先してやってくれるのか?
文珍:消灯して早く帰っても、朝早くから来てやっていれば同じことだよね
常見:
朝日新聞が電通社員に聞いたところ、「結局、家でノートパソコンで仕事することが増えただけだ」と言っています
川人:
業界全体で取り組まなければならない
「電通が時間を減らすなら、ほかの広告代理店に頼む」という雰囲気になってはいけない
1ついい例として、最近ある公共工事の下水道工事で過労死があり、労災認定された
ここでは、下水道関係の業界で発注業界に「あまりムリな発注をしないでくれ みなさん協力してください」と申し入れをした
企業を責めるだけでなく、もっと周囲の環境を変えるのが大事
常見:
「ブラック企業」で働いている人たちが、逆に「モンスター消費者」になっているという連鎖
働く人と取引先でイジメ合っている状況なんです
小野:
遅くまで働く人は、遅くまで開いている店に行く
すると、その店の人がまた長時間労働しなきゃならないってことですね
村田:
すべてが24時間化してしまっている
文珍:
仕事がコンビニ化してる
常見:
国は「テレワーク推進(在宅勤務)」なんて言っていますが、逆に労働時間は増えている
***********プレゼン2:命を守るために知っておこう「ワークルール」(川人さんの提案
1.仕事を選ぶ時~求人票にある「落とし穴」
初任給は高いが「役割手当含」=「残業代含む」の意味(いくら働いても25万円!
「ワークルール」
労働条件は書面でチェックできる
企業は、よい人材が欲しい、求人票はスペースも限られるため、キャッチーでいいことばかりを書き、詳細を省く
契約書には詳細があるため、紙でもらいチェックする
川人:
初任給が1つのポイント 「基本給」は12万円で、1ヶ月80~100時間の残業を前提としているところが実際にあって裁判になった
小野:
そんなの「見せてくれ」と言ったら落とされるのでは?
それを見せてくれない会社には入らないでという意味?
不利益があったら訴えたら勝てますよという意味?
川人:
中学・高校で教えないため、こういう基本的なことをみんな知らないことが問題
「○○企業は安定している」などしか言わない 「ワークルール」を知っていれば後で困ることがない
2.仕事を休む時
よく聞く話だが、「ワークルール」では、届け出れば「許可」は必要ない 労働者の権利だから
わざわざ上司にお願いしなくていい 「この日に取ります」でいい
(ここを理解してない人は、本当に多いと思う
労働者の権利はまだまだあるし、もっと言えば、生きる権利(人権)すらもう記憶から薄れてる
川人:
例外は、「業務に重大な支障をきたすような時は、日にちをズラしてくれないか」と会社が言うことは可能
単に「忙しい」ではダメ 大原則は届出を受けたら休むことができるのは法律で決められている
(条件に必ずこう言われる こういう曖昧さが、働きすぎにつながっていると思う
千秋:
実際は、自分は取れないのに「あのコ、なんだ」て会社の中で浮いちゃったりしない?
川人:
それも先ほどと同じ、みんなが権利を自覚して行使する、全体の努力が必要
千秋:
最初の勇気がいりますね
3.会社を辞める時
(よくあるケースすぎて、今さらな感じ 今のコなら嘲笑して済ませるレベル
「ワークルール」:申し出をしてから2週間で辞められる
小野:
よくドラマで退職届出したら「こんなものは!」てビリビリ破られる
→破ろうが、受け取りを拒否されようが、申し出れば辞められる
川人:
口頭で「私は辞めたい」と言えば、2週間後、自動的に辞めることができる
許可は一切必要ない これはとても重要
実際は「辞めたい」と言っていも、上司から「次の人が見つかるまで、あと半年は頑張ってくれ」などと言われるケースが多い
退職届けを突き返す、破る人もいる
でも、その半年、3ヶ月が本当に苦しくて亡くなる人が多いのでとても大事
(私は、正社員だった頃、電話で「辞めます」と言った後、「手続きがあるからとにかく一度来なさい」と言われて、
喫茶店でこってり数時間絞られましたが・・・
「あなたのために、どれだけお金がかかったと思ってるんですか」とかなんとか
その後、今度は、家族から延々と責められるのがさらに追い討ちをかける
村田:
上司がこのルールを知らないケースがトラブルを生んでいる
小野:
この逃げ道を知らない管理職が、逃げ道を知らない若者を追い込む悪循環
常見:
高校のアルバイトから「マスト」にするのが大事
「居酒屋で着替えをする時間を残業で申請しなければいけない」ということがまかり通っている
村田:
3年ほど前から労働法などで始めて、管理職ほどキチンと学ぶべき
そして、一般労働者も学ぶことで双方が共通認識を持たないかぎり
なにが問題か分かり、じゃ変えていこうとはならない
千秋:
そもそも仕事が忙しいから、会社が強制的にやらないと、自主的にやる人はいないのでは?
村田:
人事の担当者にこういうことを「受けてきてください」と言ったケースもある
渥美:
電通のニュースを見て、明日は我が身と思っている有名企業はいっぱいある
ムチ打って働かせるなど、人口減少の時代はもたないので、
部下からの評価が高い上司を評価する
同じ評価するにしても時間で割って大きいほうを評価するとか
離職率の高い部署の上司は評価しないとか
多面的な評価軸を取り入れて、ワークルールの最低限学ぶべきことを学ばないと
企業が利益を大きく損なうことになる
メール:
有給休暇を取れるのは、会社を辞める時か、病院で入院するかだな お葬式と同僚の結婚式はとりやすい
メール:
なぜ残業が多いかって、お客さんの求めるサービスが青天井だから
なにもかも便利な世の中に慣れている私たちの意識改革が必要では
村田:
「36協定」
労働組合と労使の間で協定を結ぶことで残業を減らす仕組み 国の取り組みの1つ
ただ例外があり、「忙しい」「客のクレーム対処」等の理由をつけて、繁忙期に届け出れば
いくらでも働かせることができるってことで(まさに、その理由で働き過ぎなんじゃん
残業時間そのものに上限をつけようという制度の見直しを検討中
EUですでに導入している「勤務間インターバル規制」は
過労死対策として有効、と言われている
しかし、日本はまだ法律で義務付けるところまでは考えていない 企業が自主性に任せている状況
常見:
注意点は「36協定は良くない」と政治家やメディアが論じている
これはそもそも労使間で結ぶもの
労働者がどうして不利な条件を受け入れてしまっているかにメスを入れないといけない
電通の「36協定」は75時間 過労死ラインから5時間少ないだけだった
「勤務間インターバル規制」も、仕事の絶対量を減らさないと単なる労働境界になってしまう
川人:
過労死対策には「勤務間インターバル規制」がもっとも大事 緊急対策
夜12時に帰ったら、11時間経ってから出勤すればいいとEUでは統一している
なんといっても睡眠時間が確保できる
ほとんどの過労死は、睡眠不足が原因
政府でも議論が始まっている
渥美:
企業に規制を課すのも大事だが、逃げ道を探す企業も出てくるので
そういうところはどんどん摘発して「過重労働撲滅特別対策班(通称 かとく)」をもっと増員して
かとくの人たちも過重労働にならないようにして
企業の社名公開すると、日本は「恥」の文化だから変わると思う
(その「かとく」とやらのドラマでも作ったらどうかね
当事者はもちろん、周囲の人も受け付けている
この特集、前にもやったような?
そして、ほかの番組でもやっている
しかし現状は変わらないし、まだまだ知らない人たちが働き過ぎを自覚していないばかりか
「なぜ同じように働けないの?」と責める日本
変われるか?
変わりたいと思った人から行動することか
まず正しい知識を知って、周りに伝えることからか
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『世界がもし100人の村だったら 2』(マガジンハウス)
どうなのヤナギー パート主婦迫られる選択@あさイチ
『「わたし」という人間がよくわからなくなったときに読む本』(KKベストセラーズ)
専門家:
川人 博さん(弁護士)
渥美 由喜さん(東レ経営研究所 研究部長)
常見 陽平さん(千葉商科大学 専任講師)
村田 英明(NHK 解説委員)
ゲスト:
桂 文珍さん(落語家)
千秋さん(タレント)
夜遅くまで煌々と明かりがついているビルの夜景がもうおかしい
この電気消費で自然も壊しているという悪循環
●過労自殺した高橋まつりさん(24)さんは、去年、新入社員として入り、1ヶ月の残業は100時間以上
「いつ起きてもおかしくない状況で、起きるべくして起きているのです
経営者は、社員の命を預かっているのです
大切な人の命を預かっているという責任感を持って
本気で改革に取り組んでもらいたいです」
→電通は、深夜勤務を原則禁止にした
●根本の原因とされる「長時間労働」
<街頭インタビュー>
20代若手社員の男性:
(上司から)“若いうちは馬車馬のように働け”と言われました
(なぜみんなこんな深刻な事態を笑って済ませられるかが、まず理解できない
Q:上司が意識を変えることはできると思いますか?
罰則とか設けない限り難しい
20代若手社員の女性:
「残業カット」とか口では言っても、現実はかなり難しい
50代管理職の男性A:
仕事なので結果を出さないといけない
期限があると無理して夜遅くまでやらないといけない
(今は中間管理職も働きすぎで倒れる時代
50代管理職の男性B:
(仕事が)辛くてとか、今起きている事件って分かるんですよ
でも当たり前だと思うんですね、僕らは
お金を稼ぐって簡単なことじゃないと思うので
でもそれを(部下に)伝えるのはすごく難しい
小野アナ:ちょっと世代間ギャップも感じるニュースですね
●過労自殺として認定された高橋さんの経緯
ウェブを見るとよく出てくる広告部分を担当していた高橋さん
入社したばかりの頃は家族こう言っていた
見習い期間を経て、半年後、本採用後、残業時間が増加
この頃からツイッター上でのつぶやきに辛さを書き込むようになった
11月には残業時間が105時間に
※過労死の基準は、残業時間80時間/月というラインがある
上司からはこう言われていた
(「女子力」て・・・この上司に刑事責任は問われないんだろうか?
「過労死」て、会社になにか刑罰は下らないのか? これは殺人と同じだと思う
2015年12月25日 社員寮から投身自殺
2016年9月 遺族の訴えで労災認定
「残業時間の急増でうつ病を発症したための過労自殺」と認定された
母「過労死、過労自殺は、偶然起きるのではありません」
(「労災」も相当分かりやすい事例でない限りおりない 認定されるのは氷山の一角
私は、健康を扱う通販での入力で腱鞘炎になり、労災という言葉を出しただけで
会社中がモメまくり、クビになったことがある
●当時の社長が作った「鬼十則」 今も社員の手帳に書かれている
●後を絶たない事例の多さ
昨年度の若者だけの数字
●職場の環境は実際どうなっているのか? 多いケースを模型でプレゼン
例:正社員として採用されて3年目の読菜さん(25) 深夜2時まで働いている
<残業が増加する要因として考えられるポイント>
「グローバル化」
メーカー、商社は、国内だけではなく、海外企業もライバル関係となり
戦うためには、次々と他社より新しいことを先に仕掛けなければならない
「IT化」
猛スピードで変化している状況の中、次々と顧客ニーズに応えなければならない
「コスト削減のため人件費を減らす」
ここ10年で、非正規社員は約40%
25歳の読菜さんは、責任の重い仕事を任されている状況
昔ならまだ1つ1つ学び、経験を積む年齢だったが、大きな仕事を大量にこなさければならない
(昔から、女性がパートの低賃金で働いて下支えしてきた背景もあるしね
と、上司に相談すると・・・
「甘いこと言うな」と言われる
小野:会社を辞めたほうがいいのでは?
●会社を辞めようと思わない若い世代
今年の新入社員に聞いたアンケート結果で、「今の会社に一生勤めたい」約56%
15年前にとった同じアンケートでは、20%だった
文珍:会社にいたほうが安定するんじゃないかという「安定志向」があるのでは?
●今の若者のたどった時代
1990年 バブル崩壊 生まれた頃からずーーーっと景気が悪い 景気のいい日本を知らない
2010年 就職氷河期をなんとか乗り越えて、狭き門の正社員になれた世代
もし辞めて、今よりいい条件の会社に再就職できる保障はない、という考え方がほとんど
小野:でも命と引き換えにしなくても・・・
一方、上司が就職したのは「バブル時代真っ只中」
バリバリ働いて、ガッツリ稼ぐ、働いた分「ボーナス」「昇給」等で見返りのある成功体験を感じている世代
この上司を指導した先輩は、高度経済成長期の「モーレツ社員」
そのDNAを今の若い人にも求めがち
●この30年で激変した社会
昔はパソコン、スマホなどない時代
→今や24時間、「メール」「電話」がつながるため、家でも持ち帰って仕事して「スピード」「量」が求められている
千秋:
昔の人を擁護するわけじゃないけれども、昔のほうが貧しくて、モノがない時代だった
今の人たちは耐えられなくて、戦後の人たちは耐えられたということなんですか?
文珍:
目標が目の前に見えやすかった(海外に追いつけ追い越せでね
テレビを買いたいとかハッキリしていたから楽しみだった(今はもうモノがあふれてるしね むしろ断捨離
川人:
昔はご褒美、自分の未来のために働いた
今は「生き残る」ため 後ろ向きなモチベーションでしか働けない これは大きな違い
昔は人口がどんどん増えたから部下も増えた
今は少子化で1人あたりの仕事量がどんどん増えている 業務量がハンパじゃない 休むヒマがない
小野:電通だけじゃなく、一般的に起きている?
常見:
「鬼十則」は昭和の象徴みたいに批難しているが、今のベンチャー企業はこれをリスペクトしていた
似たようなビジョンやミッションが今も提示されている
「食べるための労働」から「社会的地位を確保するための労働」のリスク型になっている
文珍:
入った時に研修期間が必要なのに、周りに非正規でもバリバリできる人がいっぱいいるから
同じ扱いをされて、そのギャップでも圧力になっているのでは?
川人:
1年目から「即戦力」として目標を与えられて仕事をする
研修はせいぜい1ヶ月くらい その後すぐ「ノルマ」が課せられるプレッシャーはすごい
(幼稚園からすでに「お受験」で戦って、社会人になった時点でもうすでに相当疲弊してるもんね
村田:
高橋さんのケースでの要点は、背景に過労自殺の場合、うつ病を発症していることがほとんどだということ
10月以降にこの部署では、人が半分くらい減らされている
本採用になるやいなや、仕事量がいきなり増やされて倍以上になり、
上司からの叱責もあり、残業+睡眠不足+労働量+パワハラ、うつ病を発症するリスクが一気に襲いかかった
こういうケースは、どこでも起こりうる
アンケート1:
(ほら、通じてない この世代には、いくら論理で説明しても実感できないんだよね
アンケート2:
過労を実際に体験すると分かりますが、壊れてゆくのは肉体よりも
この状況がいつ終わるか分からない恐怖、つまり精神的に追い込まれていくことだった
小野:辞める選択肢も思いつけない状況になっていく
常見:
昔、会社員の時、私もうつ病になりました 友人も同時期、うつ病で自殺している
自分がうつ病だとまず思わない 忙しい、ストレスで酒の量が増えていく
朝起きられない タクシーに乗る つまり、電車に乗れない状況、時間管理も不可能
「あの時、なぜ辞めなかったんだろう?」と思った 結局、倒れて辞めた
自分の椅子を失いたくない いくら修羅場でも、やっと手に入れた居場所だから
転職しても給料が下がる 希望の職種につけるか分からない
同じような仕事しかない、と分かった時に僕は絶望しました
(そう、「ほかに探せばいい」と簡単にいわれるけれども、「残業○○時間 隔週土曜出勤」など同じ条件しかないんだ
川人:
あまりに疲れ過ぎると、もう合理的な判断ができなくなる
傍から見れば「退職すればいいじゃないか」と言うが、
本人にとっては、今の苦しさから逃れるためには、命を絶つしかしかないと追い詰められる
常見:
心療内科から診断書をもらい、担当医と面談すると
「死なないために、仕事を減らして、クスリを飲んで、24時より前に寝なさい」と言われて
「働かせてくれよ」と言っていた自分を今思い出す
でも、仕事がすごい好きかというと、好きではない
アンケート3:
逃げ道がない 辞めたら「経済難民」だからな、この国は
村田:
最近の学生は「奨学金」がないと勉強できない 大学では2人に1人以上
しかも、利息がついた奨学金 大学を出る時に多い人は500万円以上の「借金」を抱えて入社する
毎日、返済するために辞めるに辞められない
渥美:
今の会社の管理職はマネージメントをまったく教えてもらっていない
どう1人1人の人力を活かせるかより「オレに合わせろ」と精神論で鍛えようとする
本当は、1人1人の「やる気」を引き出して「チーム力」を最大化させるマネージメントを学ばなければいけない
川人:
30~40代の中間管理職でもすでにストレスで疲れきって参っている
「この人も危ないのでは」と思うことがよくある
メール:
「残業をなくす」っていう問題じゃない 「作業量」を減らさないと、「サービス残業」や仕事がキツクなるだけ
常見:
これがとても大事な論点
この短期間で仕事の絶対量は減るわけない
「働き方改革」などと言うけれども、仕事の範囲が限定されず、仕事の絶対量が多い状況を
「気合いと根性で時間を減らせ」と言われてもムリ
だから、「一生懸命働かない社会」を作るために、仕事量を制限するという発想を持たないかぎり直らない
千秋:会社側からすると、利益が減るとわかっていることを率先してやってくれるのか?
文珍:消灯して早く帰っても、朝早くから来てやっていれば同じことだよね
常見:
朝日新聞が電通社員に聞いたところ、「結局、家でノートパソコンで仕事することが増えただけだ」と言っています
川人:
業界全体で取り組まなければならない
「電通が時間を減らすなら、ほかの広告代理店に頼む」という雰囲気になってはいけない
1ついい例として、最近ある公共工事の下水道工事で過労死があり、労災認定された
ここでは、下水道関係の業界で発注業界に「あまりムリな発注をしないでくれ みなさん協力してください」と申し入れをした
企業を責めるだけでなく、もっと周囲の環境を変えるのが大事
常見:
「ブラック企業」で働いている人たちが、逆に「モンスター消費者」になっているという連鎖
働く人と取引先でイジメ合っている状況なんです
小野:
遅くまで働く人は、遅くまで開いている店に行く
すると、その店の人がまた長時間労働しなきゃならないってことですね
村田:
すべてが24時間化してしまっている
文珍:
仕事がコンビニ化してる
常見:
国は「テレワーク推進(在宅勤務)」なんて言っていますが、逆に労働時間は増えている
***********プレゼン2:命を守るために知っておこう「ワークルール」(川人さんの提案
1.仕事を選ぶ時~求人票にある「落とし穴」
初任給は高いが「役割手当含」=「残業代含む」の意味(いくら働いても25万円!
「ワークルール」
労働条件は書面でチェックできる
企業は、よい人材が欲しい、求人票はスペースも限られるため、キャッチーでいいことばかりを書き、詳細を省く
契約書には詳細があるため、紙でもらいチェックする
川人:
初任給が1つのポイント 「基本給」は12万円で、1ヶ月80~100時間の残業を前提としているところが実際にあって裁判になった
小野:
そんなの「見せてくれ」と言ったら落とされるのでは?
それを見せてくれない会社には入らないでという意味?
不利益があったら訴えたら勝てますよという意味?
川人:
中学・高校で教えないため、こういう基本的なことをみんな知らないことが問題
「○○企業は安定している」などしか言わない 「ワークルール」を知っていれば後で困ることがない
2.仕事を休む時
よく聞く話だが、「ワークルール」では、届け出れば「許可」は必要ない 労働者の権利だから
わざわざ上司にお願いしなくていい 「この日に取ります」でいい
(ここを理解してない人は、本当に多いと思う
労働者の権利はまだまだあるし、もっと言えば、生きる権利(人権)すらもう記憶から薄れてる
川人:
例外は、「業務に重大な支障をきたすような時は、日にちをズラしてくれないか」と会社が言うことは可能
単に「忙しい」ではダメ 大原則は届出を受けたら休むことができるのは法律で決められている
(条件に必ずこう言われる こういう曖昧さが、働きすぎにつながっていると思う
千秋:
実際は、自分は取れないのに「あのコ、なんだ」て会社の中で浮いちゃったりしない?
川人:
それも先ほどと同じ、みんなが権利を自覚して行使する、全体の努力が必要
千秋:
最初の勇気がいりますね
3.会社を辞める時
(よくあるケースすぎて、今さらな感じ 今のコなら嘲笑して済ませるレベル
「ワークルール」:申し出をしてから2週間で辞められる
小野:
よくドラマで退職届出したら「こんなものは!」てビリビリ破られる
→破ろうが、受け取りを拒否されようが、申し出れば辞められる
川人:
口頭で「私は辞めたい」と言えば、2週間後、自動的に辞めることができる
許可は一切必要ない これはとても重要
実際は「辞めたい」と言っていも、上司から「次の人が見つかるまで、あと半年は頑張ってくれ」などと言われるケースが多い
退職届けを突き返す、破る人もいる
でも、その半年、3ヶ月が本当に苦しくて亡くなる人が多いのでとても大事
(私は、正社員だった頃、電話で「辞めます」と言った後、「手続きがあるからとにかく一度来なさい」と言われて、
喫茶店でこってり数時間絞られましたが・・・
「あなたのために、どれだけお金がかかったと思ってるんですか」とかなんとか
その後、今度は、家族から延々と責められるのがさらに追い討ちをかける
村田:
上司がこのルールを知らないケースがトラブルを生んでいる
小野:
この逃げ道を知らない管理職が、逃げ道を知らない若者を追い込む悪循環
常見:
高校のアルバイトから「マスト」にするのが大事
「居酒屋で着替えをする時間を残業で申請しなければいけない」ということがまかり通っている
村田:
3年ほど前から労働法などで始めて、管理職ほどキチンと学ぶべき
そして、一般労働者も学ぶことで双方が共通認識を持たないかぎり
なにが問題か分かり、じゃ変えていこうとはならない
千秋:
そもそも仕事が忙しいから、会社が強制的にやらないと、自主的にやる人はいないのでは?
村田:
人事の担当者にこういうことを「受けてきてください」と言ったケースもある
渥美:
電通のニュースを見て、明日は我が身と思っている有名企業はいっぱいある
ムチ打って働かせるなど、人口減少の時代はもたないので、
部下からの評価が高い上司を評価する
同じ評価するにしても時間で割って大きいほうを評価するとか
離職率の高い部署の上司は評価しないとか
多面的な評価軸を取り入れて、ワークルールの最低限学ぶべきことを学ばないと
企業が利益を大きく損なうことになる
メール:
有給休暇を取れるのは、会社を辞める時か、病院で入院するかだな お葬式と同僚の結婚式はとりやすい
メール:
なぜ残業が多いかって、お客さんの求めるサービスが青天井だから
なにもかも便利な世の中に慣れている私たちの意識改革が必要では
村田:
「36協定」
労働組合と労使の間で協定を結ぶことで残業を減らす仕組み 国の取り組みの1つ
ただ例外があり、「忙しい」「客のクレーム対処」等の理由をつけて、繁忙期に届け出れば
いくらでも働かせることができるってことで(まさに、その理由で働き過ぎなんじゃん
残業時間そのものに上限をつけようという制度の見直しを検討中
EUですでに導入している「勤務間インターバル規制」は
過労死対策として有効、と言われている
しかし、日本はまだ法律で義務付けるところまでは考えていない 企業が自主性に任せている状況
常見:
注意点は「36協定は良くない」と政治家やメディアが論じている
これはそもそも労使間で結ぶもの
労働者がどうして不利な条件を受け入れてしまっているかにメスを入れないといけない
電通の「36協定」は75時間 過労死ラインから5時間少ないだけだった
「勤務間インターバル規制」も、仕事の絶対量を減らさないと単なる労働境界になってしまう
川人:
過労死対策には「勤務間インターバル規制」がもっとも大事 緊急対策
夜12時に帰ったら、11時間経ってから出勤すればいいとEUでは統一している
なんといっても睡眠時間が確保できる
ほとんどの過労死は、睡眠不足が原因
政府でも議論が始まっている
渥美:
企業に規制を課すのも大事だが、逃げ道を探す企業も出てくるので
そういうところはどんどん摘発して「過重労働撲滅特別対策班(通称 かとく)」をもっと増員して
かとくの人たちも過重労働にならないようにして
企業の社名公開すると、日本は「恥」の文化だから変わると思う
(その「かとく」とやらのドラマでも作ったらどうかね
当事者はもちろん、周囲の人も受け付けている
この特集、前にもやったような?
そして、ほかの番組でもやっている
しかし現状は変わらないし、まだまだ知らない人たちが働き過ぎを自覚していないばかりか
「なぜ同じように働けないの?」と責める日本
変われるか?
変わりたいと思った人から行動することか
まず正しい知識を知って、周りに伝えることからか
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