■NHKスペシャル「終わらない人 宮崎駿」~長編映画に復帰へ?! 独占密着!知られざる700日
語りが『となりのトトロ』メイ役の坂本千夏さん
原稿を見ている間にカメラに気づき「あっこんもん置いてある」と気づいた宮さん
ストップウォッチで隠そうとして失敗「面倒臭い こんなことやってる暇はない」
2013年9月 引退会見(もう3年前かあ
数百人のスタッフを率いて長編映画を作る体力がないと悟ったから、というのが理由
2015年1月
製作部門を解散し、フロアは誰もいない アニメーターらは活動休止中
スタジオジブリから徒歩3分のアトリエを訪問 今は訪ねる人もほとんどいない
インターホン可愛い
「もうそんなもん(カメラ)持ってきてるの? もうリタイアしてる人間はいいんだよ
葬式とかさ そんなのが多くて嫌だね」
すぐにコーヒーを淹れてくれるって優しい しかも喫茶店みたいなカウンター!
「目分量でやってるから」
今はジブリ美術館の展示物を一人で作るのが日課
「今、オレはリタイアじじいですよ 年金受給者ですよ」
「遊び遊びやってるの」
コーヒーを飲んだばかりなのに「お茶を飲みますか?」
「なんかやるもんねえかな チョコレートじゃダメかな?」
2012年3月 以前のスタジオ
世界のアニメがCGに変わる中、こだわったのは手描き
わずか4秒のカットに1年以上をかける作業
「何も考えないで生きているのか? ダメなら降ろす すぐ辞めろ」
「終わったんだな、とほんとに思うんだよ 後継者を育てたよ
後継者を育ててやらせるよと、結局、食べちゃうことになるんですよ
その人たちの才能を食べちゃう
こいつにやらせてみたいっていう人間は一人もいなくなった
スタジオは人を食べていくんですよ
それでおしまいにしちゃったから、何の未練もないんだよ」
2015年3月
部屋でクラシック聴いてるのか 奥にあるのはスピーカー?
取材の2日前にCGスタッフと会ったそう
「CGをいくつか見せてもらったんだけど、
レンズがみんなスマホのレンズだって スタッフは面白かった ああ若いやって」
「こいつらならやってくれるかもしれない、というだけだよね」
2015年5月
見せてくれたのは『ボロ』という毛虫のスケッチ
20年前から映画化したくて実現できなかった幻の企画
鈴木さんが「時間があるんだから、CGで楽しみながら短編映画を作ってはどうか」と言った
CGアニメーターが『ボロ』のアニメを試しに作ってきた
CGアニメーター:
毛に関しては完全に計算で動いていますね
自然界にある毛の動きはこうだというのをコンピューターで計算して出している
空気抵抗とかを計算する処理が入っています 風を吹かせる数字を入れると吹く(思わず笑う宮さん
「この足だけは目玉と一緒に動いちゃつまんない」
CGアニメーター:
そういう風にしないといけないなと思っていたんで
宮:
なんかうまくいきそうな気がしてきた
今日は非常に刺激を受けました なんかいけるような気がしてきた
「挑戦するなんて言われるとムカムカするんだよね トボトボと行くんですよ」
♪前へ 前へ 進め~ となぜか歌いだすw
『アナと雪の女王』を作ったのは、宮さんの大親友ジョン・ラセター
CGの魅力は人の手で描けないような緻密で圧倒的な表現力
世界最大のCGアニメスタジオ「ピクサー」
『モンスターズインク』
サリーの230万本の毛は、コンピューターの自動計算で動く
宮:
ラセターがさ、宮崎が(CG)やったって言ったら、絶対覗きに来るでしょう?
まだこんなレヴェルかって思うに決まってるじゃない?
恥ずかしいものはやりたくないじゃない?
2015年6月
久々にスタジオに来た宮さん
「絵コンテ」
手描きもCGもこれがアニメのもとになる
今回の作品は、映画館ではなく、ジブリ美術館でのみ上映する 予算も自分たちでまかなえる範囲
「うちへ帰って、ビール飲んで1日が終わる」(いいねえ!
たくさんの観客に見せるためではなく、最後は自由にアニメの新たな表現を探ってみたいと考えていた
75歳の宮さんは、心臓にも持病を抱え、体が日ごとに衰えるのを感じていた
肩をマッサージしてもらう
宮:
ホームズだったら 見抜くんじゃないかと思うんですよね
“あなた、アニメーターでしょう?”って
こんな体力のなくなった、力を失っていく年寄りがね
もう1回青春が来るんじゃないかなんて錯覚を起こすのは、とんでもない間違いだから
マッサージ師:
だけど、残った時間をどう生きるかは難しいですね
2015年8月
本格的なアニメつくりがスタート
宮「なんかすごい精鋭が集まってドキドキしますね」てすごい嬉しそう!
絵コンテをCGでどう表現するか、細かい部分は櫻木さんたちに委ねられた
ボロが卵から生まれ、世界を初めて見る冒頭シーン
初めて食べて・・・
「ウンコをすると絶対見るんですよ 赤ん坊もそうですけど」
櫻木:
作り出したら早そうな気がする
そんなにキャラは多くないから、掴めだしたら早い気はする
早速CGで作る様子を見て「面白いね」 足がついてすごい喜ぶ
「新しいウイルスを作っている感じ」
「レイアウト」CGを作る時の設計図となる
貧乏ゆすりや、髪を掻きむしりながら「くそ 難しいねえ 情けない」
実際はここまで細かく描く必要はないが、少しでも正確に自分のイメージを伝えようとして
それを見たアニメーター「すごいですね これだけ描かれたら無視できないですよ」
スタッフ「宮崎さんは去年より100倍元気ですよ」
宮「元気じゃないですよ」
スタッフ「目力が違いますもん」
宮「生涯仕事やってなきゃいけないじゃない」
スタッフ「やっぱ仕事って大事ですね」
宮:
そういう言い方しないでw ううう、後期高齢者です
後期高齢者、末期高齢者、断末期
スタッフ「誰がつけたんですか?」「ボクです」
(女性には弱いのかなw やっぱり没頭するものがあると、脳や体も活性化するんだと思うなあ
2015年10月
宮:
昨日、免許書き換えじゃなくて、講習に行ってさ
自分の同年と並んでみて、あまりの高齢者にビックリしちゃった
ハッ!オレはこんなジジイだったんだって
こういう感じでした(スケッチしてるんだ/驚
「ジジイ ジジイに驚く」
動きをつけてみたので見てほしいと櫻木さんが見せる
宮:
振り向き方が大人になってる
サツキ(スタッフの子ども)を見れば分かりますけど、こんな“キッ”と向かないでしょ
まだそこまで機敏じゃない 生まれたばかりだから
基本的には鈍臭いというか、世界が初めてなんで(振り向くのも)全部文化ですから
(さすが、ずっと子どもたちのためにアニメを描いてきた巨匠
機械でなんでも出来ると簡単に済ませる若いクリエーターも大いに刺激になるね
観ているほうは、そこまで気づかないけれども、
宮さんの頭の中は宇宙なんだ
この頃、宮さんの周りでは悲しい知らせが相次いでいた
電話を受けて「亡くなりました」
日本のアニメをともに作り上げてきた仲間が亡くなった
口癖のように言うようになった/この方は奥さま?
「どうなってんだろうね?
ぼくより長生きするはずの連中が先に死んでって
なんでオレ、こんなことやってるんだろう?なんて思いながら」
(まだまだやるべき使命があるってことですよ
その後もCGはどれも納得できず、作り直しの連続
「難しいねCGっていうのは “魔法の小箱”じゃないんだね
ゴミみたいな作品になる可能性が十分あるんだぞと
今日、あの原画(CG)を見てて思った
あんなものやるならね、ぶっ潰したほうがいいw(厳しいな
だけど、まだ血の雨は降ってない(血の雨??? 争い事って意味?
2015年12月7日
鈴木さんと打ち合わせ
宮:
この間、アニメーターをやったことを見て こりゃ、このままいくとダメだな 面倒臭いね
(始終、悲観的な宮さんを、うまく調整してきたのが鈴木さんなんだな
鈴木:段取りがいかないってことですね
宮:
ええ これは終わりません やめるか、やるかですね
やめたほうがいいんじゃないかって気がしてきた
鈴木:もうそういう気分なんですね 宮さんとしては
宮:何度でもやり直せって こんなもん客に見せられるかってところでね
鈴木:それを徹底的にやってみていけるかどうかですよね
宮:寝らんないですよ、これじゃ
(クリエーターにはこういう、ちょこちょことしたはけ口も必要
鈴木さんは話を聞いてあげて、意見を押しつけるのではなく整理する、カウンセラー並み
宮「ちょっと話をしたいので集まって欲しい」とアニメーターに呼びかける
宮:
やっぱり、“それなりにやったな”ってやつを作らなきゃいけない
“どうやってやったの?!”て言われるものを作りたい ほんとに
これまで触ろうともしなかったコンピュータの前に座る!
「面白い動きをしてるんだけど見えねえ こういう風に出てくるのかな」(0.1mmの描き直しも機械だと難しい
宮:
とりあえず、共通したスタート位置に着くために、これやったほうがいい
冒頭のシーンにこだわる
「失敗しちゃいけないんですよ 始まり 冒頭だから」(つかみってこと?
「これはどうしていいか分からない ヤバイね
なんでこんなヤバいのか分かんないんだ」
(毎回、この産みの苦しみの連続だったんだなあ・・・
鈴木:
自分の神通力が通用しない、それに対するアレだろうね
本当の引退? そこでの七転八倒でしょ
(このコメントもさらに厳しい・・・
スタジオの空気も重くなり、櫻木さんも疲れで居眠り
2015年12月18日
櫻木さんは病院に行って休み! アニメーターも働き過ぎの象徴みたいな仕事だよね
宮:昨日もう体調不良の顔してたよね?
スタッフ:その前からずっとです
カメラマン:大丈夫ですか?
宮:大丈夫じゃないでしょ 気の病ですよ それぐらい大変なんですよ、櫻木さんは
櫻木さんは風邪で、翌日には復帰
(風邪は疲れやストレスで免疫力が落ちている証拠だな
他のスタッフは、最新CGで製作された『スターウォーズ』の試写会に行った
宮:
『スターウォーズ』と全然違う世界を彷徨っているからね、こっちは(あれは宇宙戦争の話だもんね
みんな『スターウォーズ』を観て打ちのめされて
『スターウォーズ』やりたい、毛虫じゃなくて
コーヒーの時間が憩いなのね あと鼻歌♪
宮:
30代、40代の沸き立つような気持ちなんて持ちようがないのよ
違うと思うよ全然 やっぱり違うものなの
カメラマン:
宮崎さんを動かすものは何になるんですか?
宮:
何もしないってつまんないからじゃない?w
結局そういうことだと思うよ
別にニヒリスティックに言ってるんじゃないんだよ
老監督と言われる人たちはみんなそうですよ
やっぱ映画作ってるのが一番面白いんだよ
だけど、ヘボは作りたくない 違うところへ行きたい
自分が好きだった映画は、ストーリーで好きになったんじゃない
ワンショット見た瞬間に「あ、これは素晴らしい」ってそれだよ
それが映画だと思ってるから
2015年12月24日
このヤギさんたち可愛い 日干し?
宮:(サングラスかける時もあるんだ/驚
やっと分かったんですよ 謎が
生き物の気配がなさすぎるんだよね それを足そう
“夜の魚”を置こうというね(スタッフから笑いがおこる
面白いことは人にやらせないっていう 早く突破しようよ呪われたカットをw
ずっと宿便のように よし頑張ろう!
映画のはじまりをこんなに大胆に変えるのは、長い映画人生でも初
宮:
映画できちゃった時に、情けない思いをしないことが一番大事だから
ああ、やっときゃよかったってことが絶対ないように
やったけどダメだったねってほうがマシなんだよ
ほんとにそうなの 本当にそうだからね、これは
(毎回、作った後に後悔する部分が必ずあるってbotにもあったな
宮:
魚って分かっちゃうとつまんないんだよね
よく分かんない格好してたほうがいい
「気がつかないだけで世界は美しいよって そういう目で見たいだけなんだよ」
(なんにでも、越えなきゃならない“山場”があるんだね
始終タバコをくわえてるけど、火がついてないから禁煙中なんだな、きっと
2016年5月
この頃から宮さんが机に向かう時間が長くなった
あるカットを手描きで細かく描いていた
宮:負けてたまるかってのもあるけど、ああよくやってると思って
カメラマン:(CGに)負けてたまるかっていうのもあるんですね
宮:当たり前だよ だけど、そういうのを前面に出している時期じゃないからね、オレはもうw
宮:
今作るんだったら、何を作るんだろう?って思うけどね
こういう時代は渇望するものがあるはずなんです 気がつかないけど、みんな 絶対
長編を作るっていうのは、生易しいものじゃないから
今から立ち上げて5年もかかったら、俺は80だよ(ん、長編?
この話、面白いからやってみようとか、こういうのやってみたかったからやるとかでやっちゃいけない
必ず巻き込んで酷い目に遭わせることになるから 迷惑をかけることになる
心臓が止まりましたとかさ、ほんとに
(今のコはとくに、モーレツ時代にはついていけないからね、ほんとに死んじゃうから・・・
自分の創りたいっていう限りない欲望より、周囲を気遣ってるんだな
「頑張ろう、おじいさん」て、毎日のように毛虫の大群を描く
「気持ち悪いねw」
「すごい」
●人工知能のプレゼン
IT企業でCGを開発している人たちが大勢集まって「人工知能 最近の展開」のプレゼンを始める
「人工知能で映像処理するのは、あちこちで発表されているんですけど
(CGの次はAIか
人工知能で動きを学習させたCG
川上:
頭を使っているが、基本は痛覚とかないし、頭が大事という概念がないので、頭を足のように使って移動している
この動きがとにかく気持ち悪いんで、ゾンビゲームの動きに使えるんじゃないかって
人工知能を使うと、人間が想像できない気持ち悪い動きができるんじゃないか
宮:
あのう うーんとね 毎朝会う、この頃会わないけど、身体障害の友人がいるんですよ
ハイタッチするだけでも大変なんです
彼の筋肉がこわばっている手と、ボクの手でハイタッチするの
その彼のことを思い出してね、僕はこれを面白いと思って観ることができないですよ
これを作る人たちは痛みとか、何も考えないでやっているでしょう 極めて不愉快ですよね
そんなに気持ち悪いものをやりたいなら、勝手にやっていればいいだけで
ボクはこれを自分たちの仕事とつなげたいとは全然思いません
極めてなにか生命に対する侮辱を感じます
(一度でも宮さんの映画を観たことがあるなら、宮さんの理想郷とはほど遠いと
同じ映像の世界の人間ならすぐに分かるはずだろうに
そこまで歪んでしまったのかな、日本人の心は
スタッフ:
これってほとんど実験なので、世の中に見せてどうこうというものじゃないんです
鈴木:
それはよく分かってるつもりなんですけど、どこへたどり着きたいんですか?
スタッフ:
人間が描くのと同じように絵を描く機械を作りたい
宮:
地球最後の日が近いって感じがするね
人間のほうが自信がなくなっているからだよ
宮さんも率先して、みんなでラジオ体操
メイ:いつの日かアニメーションは人の手を離れるのかもしれません
2016年8月 大きな決断
宮:
ちょっと書いたんだけど、今読んでもしょうがないから後で読んで
と、鈴木さんに笑ってさんに見せたのは、、、手描きの長編映画のスケジュール
「3年ていうのはこれしかないんですよ」
鈴木:
オリンピックの前だ(絶好のタイミングだね プロモーターとしては!
宮:
ぼくは鈴木さんがどんな錬金術使ってもいいですから
この映画作れるだけの金かき集めてください
鈴木:
ただし、こういうことが起きるかもしれないですよ
宮さんが絵コンテ描いて死んじゃうと、そうすりゃ映画は大ヒットですよ
宮:
オレが死ななきゃいけないじゃん
女房にもまだ言ってないですよ
だから言う時は、途中で死んでも
十分考えられるから
そういう覚悟でやるから、認めてくれって言うしかないですね
だけど、何もやってないで死ぬより、やってる最中に死んだほうがまだマシだね
死んではならないと思いながら死ぬほうが
(俳優が舞台で死ねたら本望だ、っていうのと同じ心境かな
死について、こうしてフランクに話せる間柄も素晴らしいと思う
あら、タバコ吸っちゃってる
2016年10月(ついこないだじゃん/驚
宮:
もう聞いたかもしれないけど、ヤッチン死んじゃった あっという間に死んじゃった
保田さん享年77歳
宮:
ヤッチンがやるならやるよってゆったら、返事しないんだよw
だけど、“もう出来ない”とは言わなかったんだ
新作の絵コンテに取りかかり始めた宮さん
宮:
100(カット)ほど切ったら、やっていいか悪いか分かるだろうと 難しいんですよ
(まずは動いてみないとね
メイ:
生きることは映画を作ること
そのことに宮崎さんは気づいたのです
どんな映画かなあ!
神さま、仏さま、宮さんの体を護って、
私たちに新作を1本と言わず、何本も観させてくださいませ/祈祈祈
語りが『となりのトトロ』メイ役の坂本千夏さん
原稿を見ている間にカメラに気づき「あっこんもん置いてある」と気づいた宮さん
ストップウォッチで隠そうとして失敗「面倒臭い こんなことやってる暇はない」
2013年9月 引退会見(もう3年前かあ
数百人のスタッフを率いて長編映画を作る体力がないと悟ったから、というのが理由
2015年1月
製作部門を解散し、フロアは誰もいない アニメーターらは活動休止中
スタジオジブリから徒歩3分のアトリエを訪問 今は訪ねる人もほとんどいない
インターホン可愛い
「もうそんなもん(カメラ)持ってきてるの? もうリタイアしてる人間はいいんだよ
葬式とかさ そんなのが多くて嫌だね」
すぐにコーヒーを淹れてくれるって優しい しかも喫茶店みたいなカウンター!
「目分量でやってるから」
今はジブリ美術館の展示物を一人で作るのが日課
「今、オレはリタイアじじいですよ 年金受給者ですよ」
「遊び遊びやってるの」
コーヒーを飲んだばかりなのに「お茶を飲みますか?」
「なんかやるもんねえかな チョコレートじゃダメかな?」
2012年3月 以前のスタジオ
世界のアニメがCGに変わる中、こだわったのは手描き
わずか4秒のカットに1年以上をかける作業
「何も考えないで生きているのか? ダメなら降ろす すぐ辞めろ」
「終わったんだな、とほんとに思うんだよ 後継者を育てたよ
後継者を育ててやらせるよと、結局、食べちゃうことになるんですよ
その人たちの才能を食べちゃう
こいつにやらせてみたいっていう人間は一人もいなくなった
スタジオは人を食べていくんですよ
それでおしまいにしちゃったから、何の未練もないんだよ」
2015年3月
部屋でクラシック聴いてるのか 奥にあるのはスピーカー?
取材の2日前にCGスタッフと会ったそう
「CGをいくつか見せてもらったんだけど、
レンズがみんなスマホのレンズだって スタッフは面白かった ああ若いやって」
「こいつらならやってくれるかもしれない、というだけだよね」
2015年5月
見せてくれたのは『ボロ』という毛虫のスケッチ
20年前から映画化したくて実現できなかった幻の企画
鈴木さんが「時間があるんだから、CGで楽しみながら短編映画を作ってはどうか」と言った
CGアニメーターが『ボロ』のアニメを試しに作ってきた
CGアニメーター:
毛に関しては完全に計算で動いていますね
自然界にある毛の動きはこうだというのをコンピューターで計算して出している
空気抵抗とかを計算する処理が入っています 風を吹かせる数字を入れると吹く(思わず笑う宮さん
「この足だけは目玉と一緒に動いちゃつまんない」
CGアニメーター:
そういう風にしないといけないなと思っていたんで
宮:
なんかうまくいきそうな気がしてきた
今日は非常に刺激を受けました なんかいけるような気がしてきた
「挑戦するなんて言われるとムカムカするんだよね トボトボと行くんですよ」
♪前へ 前へ 進め~ となぜか歌いだすw
『アナと雪の女王』を作ったのは、宮さんの大親友ジョン・ラセター
CGの魅力は人の手で描けないような緻密で圧倒的な表現力
世界最大のCGアニメスタジオ「ピクサー」
『モンスターズインク』
サリーの230万本の毛は、コンピューターの自動計算で動く
宮:
ラセターがさ、宮崎が(CG)やったって言ったら、絶対覗きに来るでしょう?
まだこんなレヴェルかって思うに決まってるじゃない?
恥ずかしいものはやりたくないじゃない?
2015年6月
久々にスタジオに来た宮さん
「絵コンテ」
手描きもCGもこれがアニメのもとになる
今回の作品は、映画館ではなく、ジブリ美術館でのみ上映する 予算も自分たちでまかなえる範囲
「うちへ帰って、ビール飲んで1日が終わる」(いいねえ!
たくさんの観客に見せるためではなく、最後は自由にアニメの新たな表現を探ってみたいと考えていた
75歳の宮さんは、心臓にも持病を抱え、体が日ごとに衰えるのを感じていた
肩をマッサージしてもらう
宮:
ホームズだったら 見抜くんじゃないかと思うんですよね
“あなた、アニメーターでしょう?”って
こんな体力のなくなった、力を失っていく年寄りがね
もう1回青春が来るんじゃないかなんて錯覚を起こすのは、とんでもない間違いだから
マッサージ師:
だけど、残った時間をどう生きるかは難しいですね
2015年8月
本格的なアニメつくりがスタート
宮「なんかすごい精鋭が集まってドキドキしますね」てすごい嬉しそう!
絵コンテをCGでどう表現するか、細かい部分は櫻木さんたちに委ねられた
ボロが卵から生まれ、世界を初めて見る冒頭シーン
初めて食べて・・・
「ウンコをすると絶対見るんですよ 赤ん坊もそうですけど」
櫻木:
作り出したら早そうな気がする
そんなにキャラは多くないから、掴めだしたら早い気はする
早速CGで作る様子を見て「面白いね」 足がついてすごい喜ぶ
「新しいウイルスを作っている感じ」
「レイアウト」CGを作る時の設計図となる
貧乏ゆすりや、髪を掻きむしりながら「くそ 難しいねえ 情けない」
実際はここまで細かく描く必要はないが、少しでも正確に自分のイメージを伝えようとして
それを見たアニメーター「すごいですね これだけ描かれたら無視できないですよ」
スタッフ「宮崎さんは去年より100倍元気ですよ」
宮「元気じゃないですよ」
スタッフ「目力が違いますもん」
宮「生涯仕事やってなきゃいけないじゃない」
スタッフ「やっぱ仕事って大事ですね」
宮:
そういう言い方しないでw ううう、後期高齢者です
後期高齢者、末期高齢者、断末期
スタッフ「誰がつけたんですか?」「ボクです」
(女性には弱いのかなw やっぱり没頭するものがあると、脳や体も活性化するんだと思うなあ
2015年10月
宮:
昨日、免許書き換えじゃなくて、講習に行ってさ
自分の同年と並んでみて、あまりの高齢者にビックリしちゃった
ハッ!オレはこんなジジイだったんだって
こういう感じでした(スケッチしてるんだ/驚
「ジジイ ジジイに驚く」
動きをつけてみたので見てほしいと櫻木さんが見せる
宮:
振り向き方が大人になってる
サツキ(スタッフの子ども)を見れば分かりますけど、こんな“キッ”と向かないでしょ
まだそこまで機敏じゃない 生まれたばかりだから
基本的には鈍臭いというか、世界が初めてなんで(振り向くのも)全部文化ですから
(さすが、ずっと子どもたちのためにアニメを描いてきた巨匠
機械でなんでも出来ると簡単に済ませる若いクリエーターも大いに刺激になるね
観ているほうは、そこまで気づかないけれども、
宮さんの頭の中は宇宙なんだ
この頃、宮さんの周りでは悲しい知らせが相次いでいた
電話を受けて「亡くなりました」
日本のアニメをともに作り上げてきた仲間が亡くなった
口癖のように言うようになった/この方は奥さま?
「どうなってんだろうね?
ぼくより長生きするはずの連中が先に死んでって
なんでオレ、こんなことやってるんだろう?なんて思いながら」
(まだまだやるべき使命があるってことですよ
その後もCGはどれも納得できず、作り直しの連続
「難しいねCGっていうのは “魔法の小箱”じゃないんだね
ゴミみたいな作品になる可能性が十分あるんだぞと
今日、あの原画(CG)を見てて思った
あんなものやるならね、ぶっ潰したほうがいいw(厳しいな
だけど、まだ血の雨は降ってない(血の雨??? 争い事って意味?
2015年12月7日
鈴木さんと打ち合わせ
宮:
この間、アニメーターをやったことを見て こりゃ、このままいくとダメだな 面倒臭いね
(始終、悲観的な宮さんを、うまく調整してきたのが鈴木さんなんだな
鈴木:段取りがいかないってことですね
宮:
ええ これは終わりません やめるか、やるかですね
やめたほうがいいんじゃないかって気がしてきた
鈴木:もうそういう気分なんですね 宮さんとしては
宮:何度でもやり直せって こんなもん客に見せられるかってところでね
鈴木:それを徹底的にやってみていけるかどうかですよね
宮:寝らんないですよ、これじゃ
(クリエーターにはこういう、ちょこちょことしたはけ口も必要
鈴木さんは話を聞いてあげて、意見を押しつけるのではなく整理する、カウンセラー並み
宮「ちょっと話をしたいので集まって欲しい」とアニメーターに呼びかける
宮:
やっぱり、“それなりにやったな”ってやつを作らなきゃいけない
“どうやってやったの?!”て言われるものを作りたい ほんとに
これまで触ろうともしなかったコンピュータの前に座る!
「面白い動きをしてるんだけど見えねえ こういう風に出てくるのかな」(0.1mmの描き直しも機械だと難しい
宮:
とりあえず、共通したスタート位置に着くために、これやったほうがいい
冒頭のシーンにこだわる
「失敗しちゃいけないんですよ 始まり 冒頭だから」(つかみってこと?
「これはどうしていいか分からない ヤバイね
なんでこんなヤバいのか分かんないんだ」
(毎回、この産みの苦しみの連続だったんだなあ・・・
鈴木:
自分の神通力が通用しない、それに対するアレだろうね
本当の引退? そこでの七転八倒でしょ
(このコメントもさらに厳しい・・・
スタジオの空気も重くなり、櫻木さんも疲れで居眠り
2015年12月18日
櫻木さんは病院に行って休み! アニメーターも働き過ぎの象徴みたいな仕事だよね
宮:昨日もう体調不良の顔してたよね?
スタッフ:その前からずっとです
カメラマン:大丈夫ですか?
宮:大丈夫じゃないでしょ 気の病ですよ それぐらい大変なんですよ、櫻木さんは
櫻木さんは風邪で、翌日には復帰
(風邪は疲れやストレスで免疫力が落ちている証拠だな
他のスタッフは、最新CGで製作された『スターウォーズ』の試写会に行った
宮:
『スターウォーズ』と全然違う世界を彷徨っているからね、こっちは(あれは宇宙戦争の話だもんね
みんな『スターウォーズ』を観て打ちのめされて
『スターウォーズ』やりたい、毛虫じゃなくて
コーヒーの時間が憩いなのね あと鼻歌♪
宮:
30代、40代の沸き立つような気持ちなんて持ちようがないのよ
違うと思うよ全然 やっぱり違うものなの
カメラマン:
宮崎さんを動かすものは何になるんですか?
宮:
何もしないってつまんないからじゃない?w
結局そういうことだと思うよ
別にニヒリスティックに言ってるんじゃないんだよ
老監督と言われる人たちはみんなそうですよ
やっぱ映画作ってるのが一番面白いんだよ
だけど、ヘボは作りたくない 違うところへ行きたい
自分が好きだった映画は、ストーリーで好きになったんじゃない
ワンショット見た瞬間に「あ、これは素晴らしい」ってそれだよ
それが映画だと思ってるから
2015年12月24日
このヤギさんたち可愛い 日干し?
宮:(サングラスかける時もあるんだ/驚
やっと分かったんですよ 謎が
生き物の気配がなさすぎるんだよね それを足そう
“夜の魚”を置こうというね(スタッフから笑いがおこる
面白いことは人にやらせないっていう 早く突破しようよ呪われたカットをw
ずっと宿便のように よし頑張ろう!
映画のはじまりをこんなに大胆に変えるのは、長い映画人生でも初
宮:
映画できちゃった時に、情けない思いをしないことが一番大事だから
ああ、やっときゃよかったってことが絶対ないように
やったけどダメだったねってほうがマシなんだよ
ほんとにそうなの 本当にそうだからね、これは
(毎回、作った後に後悔する部分が必ずあるってbotにもあったな
宮:
魚って分かっちゃうとつまんないんだよね
よく分かんない格好してたほうがいい
「気がつかないだけで世界は美しいよって そういう目で見たいだけなんだよ」
(なんにでも、越えなきゃならない“山場”があるんだね
始終タバコをくわえてるけど、火がついてないから禁煙中なんだな、きっと
2016年5月
この頃から宮さんが机に向かう時間が長くなった
あるカットを手描きで細かく描いていた
宮:負けてたまるかってのもあるけど、ああよくやってると思って
カメラマン:(CGに)負けてたまるかっていうのもあるんですね
宮:当たり前だよ だけど、そういうのを前面に出している時期じゃないからね、オレはもうw
宮:
今作るんだったら、何を作るんだろう?って思うけどね
こういう時代は渇望するものがあるはずなんです 気がつかないけど、みんな 絶対
長編を作るっていうのは、生易しいものじゃないから
今から立ち上げて5年もかかったら、俺は80だよ(ん、長編?
この話、面白いからやってみようとか、こういうのやってみたかったからやるとかでやっちゃいけない
必ず巻き込んで酷い目に遭わせることになるから 迷惑をかけることになる
心臓が止まりましたとかさ、ほんとに
(今のコはとくに、モーレツ時代にはついていけないからね、ほんとに死んじゃうから・・・
自分の創りたいっていう限りない欲望より、周囲を気遣ってるんだな
「頑張ろう、おじいさん」て、毎日のように毛虫の大群を描く
「気持ち悪いねw」
「すごい」
●人工知能のプレゼン
IT企業でCGを開発している人たちが大勢集まって「人工知能 最近の展開」のプレゼンを始める
「人工知能で映像処理するのは、あちこちで発表されているんですけど
(CGの次はAIか
人工知能で動きを学習させたCG
川上:
頭を使っているが、基本は痛覚とかないし、頭が大事という概念がないので、頭を足のように使って移動している
この動きがとにかく気持ち悪いんで、ゾンビゲームの動きに使えるんじゃないかって
人工知能を使うと、人間が想像できない気持ち悪い動きができるんじゃないか
宮:
あのう うーんとね 毎朝会う、この頃会わないけど、身体障害の友人がいるんですよ
ハイタッチするだけでも大変なんです
彼の筋肉がこわばっている手と、ボクの手でハイタッチするの
その彼のことを思い出してね、僕はこれを面白いと思って観ることができないですよ
これを作る人たちは痛みとか、何も考えないでやっているでしょう 極めて不愉快ですよね
そんなに気持ち悪いものをやりたいなら、勝手にやっていればいいだけで
ボクはこれを自分たちの仕事とつなげたいとは全然思いません
極めてなにか生命に対する侮辱を感じます
(一度でも宮さんの映画を観たことがあるなら、宮さんの理想郷とはほど遠いと
同じ映像の世界の人間ならすぐに分かるはずだろうに
そこまで歪んでしまったのかな、日本人の心は
スタッフ:
これってほとんど実験なので、世の中に見せてどうこうというものじゃないんです
鈴木:
それはよく分かってるつもりなんですけど、どこへたどり着きたいんですか?
スタッフ:
人間が描くのと同じように絵を描く機械を作りたい
宮:
地球最後の日が近いって感じがするね
人間のほうが自信がなくなっているからだよ
宮さんも率先して、みんなでラジオ体操
メイ:いつの日かアニメーションは人の手を離れるのかもしれません
2016年8月 大きな決断
宮:
ちょっと書いたんだけど、今読んでもしょうがないから後で読んで
と、鈴木さんに笑ってさんに見せたのは、、、手描きの長編映画のスケジュール
「3年ていうのはこれしかないんですよ」
鈴木:
オリンピックの前だ(絶好のタイミングだね プロモーターとしては!
宮:
ぼくは鈴木さんがどんな錬金術使ってもいいですから
この映画作れるだけの金かき集めてください
鈴木:
ただし、こういうことが起きるかもしれないですよ
宮さんが絵コンテ描いて死んじゃうと、そうすりゃ映画は大ヒットですよ
宮:
オレが死ななきゃいけないじゃん
女房にもまだ言ってないですよ
だから言う時は、途中で死んでも
十分考えられるから
そういう覚悟でやるから、認めてくれって言うしかないですね
だけど、何もやってないで死ぬより、やってる最中に死んだほうがまだマシだね
死んではならないと思いながら死ぬほうが
(俳優が舞台で死ねたら本望だ、っていうのと同じ心境かな
死について、こうしてフランクに話せる間柄も素晴らしいと思う
あら、タバコ吸っちゃってる
2016年10月(ついこないだじゃん/驚
宮:
もう聞いたかもしれないけど、ヤッチン死んじゃった あっという間に死んじゃった
保田さん享年77歳
宮:
ヤッチンがやるならやるよってゆったら、返事しないんだよw
だけど、“もう出来ない”とは言わなかったんだ
新作の絵コンテに取りかかり始めた宮さん
宮:
100(カット)ほど切ったら、やっていいか悪いか分かるだろうと 難しいんですよ
(まずは動いてみないとね
メイ:
生きることは映画を作ること
そのことに宮崎さんは気づいたのです
どんな映画かなあ!
神さま、仏さま、宮さんの体を護って、
私たちに新作を1本と言わず、何本も観させてくださいませ/祈祈祈