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『小公女』(1905)

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原題:A LITTLE PRINCESS
フランセス・バーネット/著 レジナルド.B.バーチ/挿絵

※1993.9~のノートよりメモを抜粋しました。
「読書感想メモリスト1」カテゴリーに追加しました。


今作は、はるか昔に一度読んだような気がする
すごく湿っぽいイメージしかなかったけれども、
こうしてバーネットシリーズとして改めて読んでみたら、そうじゃなかった


インドから来た高貴な家の子ども
母は亡く、イギリスへと渡る設定は、彼女の作品に通じている
それでも、どの作品も少年少女に愛されて、名作として読み継がれている


主人公セーラは、イギリスの寄宿学校に「特別優待生」として10年間学ぶことになる
親とこんなに長い期間離れて教育させることになにかメリットはあるのかしら?


金持ちの娘として皆から羨ましがられたり、妬まれたり、注目の的でありながら
持ち前の優しい心と、一風変わったお話好きな性格から、
ちっとも驕ったところのない賢い子どもだったが、

ダイヤモンド鉱山を持つ親友のために全財産を投資した挙句に失敗して、友人は行方不明となり、
重い病気にかかったまま娘セーラの名を呼びながら父は亡くなってしまい、

セーラは、プリンセスセーラから、一気に一文無しの乞食同然となり
ミンチン先生ほか、皆から年齢に不相応な雑用でこき使われる女中になる


冬の寒い中、ろくに食べるものもない中でも、何人かの友だちと
暖かく、楽しい“空想”をふくらませ、
ネズミのメルキセデクらを支えにしていた


ある日、インドからの紳士が隣りに引っ越してきて、
おつきの黒人ラム・ダスの思いやりで、セーラや同じ女中のベッキーに
数々の贈り物が届き、2年経って、初めて、その紳士こそ
父の友であり、彼が探し続けてきた少女だと分かり
2人は理解し合って、幸せに暮らすというハッピーエンディング


それぞれの段落ごとに、新たなセーラの友だちを紹介していき
(アーメンガード、ロッティ、ネズミのメルキセデク、ラム・ダス)
ストーリーが進んでいくという読みやすい構成はさすが


それに話の途中何度も“まったく不思議な偶然”が出てくる

例えば、セーラが「乞食だったら・・・」という話をしている時、父の訃報が届き、
「もしお金を拾ったら・・・」と考えていると4ペンス硬貨を拾ったり
サルが迷いこんできたことでラム・ダスと出会い、父の友に出会える

もちろん作り話だから、いくらでも偶然は起こせるけれども
その組み入れ方が自然なところがイイ

いつでも幸運のあとには、同じだけの不運もあるという考えは現実的で
話の中のキャラクターの善悪がハッキリしているのも分かりやすい


少し前まで、ちょうど『小公女セーラ』ってタイトルでアニメをやっていたはずだけど、
これを読み始めた時にはもう終わっていたのが残念

きっと、学校の様子や、イジメっ子のラヴィニアなんかは描きやすいし、
子どもたちにも身近で、親しみやすいストーリーだ

私も含めて、少女の頃は一度は「王女さまになったつもり」になったこともあるだろう
実際の王女さまが、これほど道徳的で、心の広い人かどうかは分からないが


今作のメインテーマは
「もし自分が余計にモノも持っていたなら、それを持っていない人たちに分け与える心」

セーラの持ち物や、きらびやかなドレスにへつらって、
乞食同然の身なりになったら蔑む周囲の人々の心
人は外見だけでは推し量れないものだ、という重要なメッセージもある

前は、同じ乞食で、死ぬほど飢えていた少女は、親切なパン屋の女主人に養われ、
以前、ろくに挨拶もできなかった子は、すっかり健康で、セーラが他の困っている子にも
温かい甘パン(どんなパンだろう 焼きたての甘いパン)を分けてあげよう
というところで物語は終わっている

もっと続きを読んでいたいという気持ちになる



『小公女』も『小公子』も同じ挿し絵画家バーチのものだが、
こじんまりとした絵で、主人公も可愛くて、とても上品

イラスト数はあまり多くはないけど、『不思議の国のアリス』になくてはならない挿絵のように
オリジナルにあるセンスの良さが感じられて、今作にピッタリ



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