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『ロビンソン・クルーソー』(福音館書店)

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『ロビンソン・クルーソー』(福音館書店)
原題 The Life and Strange Surprising Adventures of Robinson Crusoe of York, Mariner by Daniel Defoe
ダニエル・デフォー/著 ベルナール・ピカール(フランス 1673~1733)/画 坂井晴彦/訳
初版1975年(1982年9刷)

※1996.10~のノートよりメモを抜粋しました。
「読書感想メモリスト1」カテゴリーに追加しました。

ダニエル・デフォー:
1666年 ロンドン生まれ
商人から32歳の時に破産 政治、宗教、新聞の編集、執筆等
今作は59歳の時の初の長編小説
(借金のため、大人向けに書いた物語が、世界中の子どもから大人まで今でも読まれるなんて!
1731年、71歳で孤独な死

南米チリの孤島で5年間も暮らしたアレクサンダー・セルカーク(スコットランド)の体験談などをモデルにした
イギリスで初めて出版されたのは1719年

今や彼は「イギリス近代小説の父」
宗教色が強いけど、時として少し散漫になるくらいにたくさんの冒険をするクルーソーは
3部作まで書かれて、ヒットしたは今作のみ

これは、文章を整えた児童書向けのもの

図書館で見つけたのは、今まで数知れない子どもたちの指でくくられて
夢を見せた歴史を感じさせる黄色いハードカバー
紙は変色しているけど、その具合がまたイイ

いつも夏から秋にかけて、夏休みの平凡さを補うように冒険ものを読むようになったが
今回もとびきりドキドキの経験をさせてもらった
ほかにも『ガリバー旅行記』『宝島』『海底二万海里』など、子どもの頃に読み損ねた名作をたくさん読みたい

今作には、作者が長く、波乱万丈な人生をかけて、人々に伝えようとした
生きることのエッセンス、心を動かすセンテンスがたくさん出てくる

1つ1つ思い出して書き留めることはできないけど、おおまかなあらましをメモることにする
ちなみにこのノートは、今日、有楽町そごうで買って、
見た目はいいけど、紙質が粗くて失敗 とっても書きにくいな

9月25日(水)
外は雨 少しずつ秋も深まって、うすら寒くなると、なぜか人寂しくなるのはなぜだろう



▼あらすじ(ネタバレ注意

三男で何の不自由もないクルーソーは、一度航海に出て、世界中を見て周りたいという夢があるが

「中産階級は、下流の人のように食べる物に困りもせず、上流の人のようにうぬぼれることもない
 あらゆる美徳、喜びは、中流の者に備わった侍女のようなものだ」

と父からなだめられたのに耳を貸さず、
タダで船に乗せてくれる友についていき、家出してしまう

後に改めて思えば、彼は20歳前後だったのよね
デフォーの考え方が滲み出て、設定よりも大人びて見える



1651年9月1日
その後、これらの日付は、神の奇跡か偶然か、ほかの主な記念日と一致してゆく

生まれて初めての航海で、嵐に遭い、死ぬほど怖い目にあったにも関わらず
懲りずに再び拾った命で航海に出発

こういう後先考えない「何でもやればできる」という向こう見ずな勇気や好奇心は、やはり若者の特権

そこで海賊に会い、ムーア人の奴隷となって2~3年主人に仕える


その後、釣りに出かけた大きめの船で脱走

ブラジルに渡って、農園をはじめて成功し、
3~4年で3000~4000ポンドの収入にもなり
そこで一生過ごせば中流の幸福が確保されたも同然なのに

また悪魔の囁きか、経営をほかの人に任せて航海に出て
とうとう嵐に遭って、ただ一人、無人島にうちあげられる

2~3日は、食人種や、猛獣を怖れて、木の上で眠り、生きた心地もしなかったが
船の残骸から、あらゆる運べるだけの荷物をいかだで運びこむと同時に
船は崩壊して流される

パンやワイン、道具類、マスケット銃、聖書、日記をつけることになる紙とインク
犬1匹、猫も2匹いたのが中後半で初めて分かる

増えてしまった猫を水で溺れさせて殺したり、ヤギを撃って皮を剥がして乾かして、
着物や傘にし、肉を食べ、脂はロウソクにして
とても残酷で野蛮だけど、これらの自給自足の独り暮らしの工夫にはただただ感心する


崖を掘ったところは貯蔵所になり、雨季のひどい時の避難場所にもなり
砂と木で囲まれたテントの中、少し離れたところには、
自然の美しいあずま家の別宅になる


そして長く住むうちに、ヤギは飼って育てたほうが火薬の節約にもなり
乳からチーズ、バターも作れて、牧場をもち、パンまで作る

鳥のエサを捨てたら大麦が生えてきた!

“おこり病”になった時は、さすがに気がくじけて
タバコと干しブドウで治したのはフシギ

次第に神に祈ることをはじめて、ついには敬虔な信者となる


島を把握しようと出かけて、西の海で危うく帰れなくなりそうになったり
霧で迷ったりして、その都度、命が救われ、家が重要になる

オウムを見つけてペットにして言葉を教える
彼とは一生共にしたようだ


ほかの船が漂流してきて、新たな品が手に入る
自分で丸木舟をつくってみるが、運ぶことが念頭になくて失敗

食人種の足跡を見つけ、やがて忘れた頃に、姿も見つけた時は、私も本当にギョっとした
戦でとった捕虜を食べてしまうなんて、文明が違うとはいえゾッとする

「ひどい境地に落とされたことで、かえって救われることがある」


捕虜の1人を助けてフライデーと名づけ、神の信仰を教えて、食人癖を改めさせ、心から尽くす家来にする
ここまで宗教的なのに、黒人を奴隷にすることにはなにも抵抗を感じない様子なのがフシギ
16Cそのものが、まだまだ未開で野蛮だったのね

フライデーとの暮らしも3年ほど経ち、英語も片言覚えて、
このままここに骨を埋めてもいいとも思うが
本土のほかの者にも良い教えを広めて欲しいと言われて
再び脱出計画が頭をもたげる

また野蛮人の宴の時、スペイン人と、フライデーの父親を救う
2人も家来にして、穀物を半年かけて増やしてから
本土で捕虜となり、ひもじく暮らすスペイン人たちを呼び
船を造って海を渡ろうと考えて、2人を送り出す


そこに驚きの連続 イギリス船がやってくる
水夫が反乱を起こして、船長らを捕えて殺すつもりが
クルーソーのアイデアが次々当たり、50人を超える兵がいると見せかけて
別々に捕虜とし、ついに本船もとりかえす

今作での“船乗り”は、粗暴ながらストレートな性格に描かれ
船長はみんな“恩は最期の血の一滴でも惜しまず尽くして返す”といった具合に
情が厚いのが印象的

悪党の命は助けて島に残し、暮らし方まですっかり教えて
その後、スペイン人らと合流して、仲良く住んでいるところへ
航海中立ち寄った後日談まで丁寧に描かれているらしいけど
児童書用は、帰途に着くまで(1686年)


なんと、28年間も暮らしていたってわけ

20過ぎの若者も、帰る時は50過ぎていたのが
結婚して子どもも3人もうけ、
また懲りずに航海に出たところをみると
この男はほんとにハンパじゃない放浪癖、安住できない性格だったのね

デフォー自身も結婚生活は不幸で、いろんなところで活躍していたみたいだから
似てるのかもしれない


「どれほど惨めな境遇の中にも、多かれ少なかれ、必ずそこには感謝すべきことがある」

今度落ち込んだ時は、クルーソーみたく簿記の借り方、貸し方表にまとめてみるといいかも


「人生は、なんと複雑な運命の織物だろう!
 そして私たちの心は、情勢によって、なんとめまぐるしく変わるものか!

 今日愛しているものを、明日には憎み、
 今日求めているものを、明日は避けたり

 今日なんとしても欲しいと思っているものが、
 明日には考えただけで身震いをして怖れてしまう」


もっともっと金言が詰まっているけれども、今回はこのへんで




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