■『ゴーストアビー YA Dark』(あかね書房)
ロバート・ウェストール/著 金原瑞人/訳
年末年始にふさわしく、久々じっくりとウェストール作品に浸かろうと思って、
図書館から1冊家に連れてきたv
物語の舞台を想像するにふさわしい表紙絵と裏表紙絵のみで、ほかに挿絵はない。
マギーという少女の視点から書かれていて、ずうっと年上の男性が書いた物語とは思えない
とにかく、ウェストール作品は、どの1冊も間違いなく、最初の1ページ目からぐいぐい引きこまれ、
登場人物の言うジョークに笑い声をあげたり、次から次へと起こる不可解な出来事にドキドキビクビクして
目を見開いたりと忙しくしているうちに、どんどん先が知りたくなって、
数時間後には最後の頁になってしまっている。
【あらすじ】
母が急死してからというもの、父はすっかり生気をなくしてしまっていた。
そこに舞いこんだ1通の封筒には、マリーゴールド財団役員のミズ・マクファーレンが所有する
アビー(昔大修道院だった邸宅)修繕の依頼が書いてあった。
長女のマギーは、これ幸いと父に請け負うことをうながし、双子の弟とともに一家は郊外へと向かう。
そのとてつもなく古い洋館には、様々な噂があり、マギーには人には見えない幻影が見え、
誰とも分からない歌声、使用人を呼ぶベルの音が聴こえるようになる・・・
【内容抜粋メモ】
「信念さえあればどうにでもなるのよ。神秘的な力が働いて、望みどおりに物事は運ぶの」
p147
目をこらして見れば、大人って本当は迷い犬みたいなものなの?
もしそうでないのなら、どうして迷い犬みたいな大人ばかりがアビーに集まってくるの?
まるでアビーが磁石のように迷い犬を引き寄せているみたい。
p148
「なら、秘密をひとつ教えてやろう。実は世界には迷い犬がたくさんいるんだ。
ここの仕事みたいに一風変わった仕事につくだろ、そうすると、まわりは迷い犬だらけになる。
大きな建設現場だとか、高速道路、石油の掘削現場、そういうところはどこも迷い犬だらけだ。
離婚したやつやアル中、警察に追われているやつとかな。幸せな男は家で妻といるもんだ、そうだろ?」
p150
「男の人って、すべてわかっているわけじゃないの。たとえ自分たちはわかっているつもりでもね」
p191
マギーはパパといっしょでものをつくる側の人間なのだ。
パパは言っていた。ものをつくる側の人間と壊す側の人間は決してわかり合えることはないと。
p204
もちろん、パパはあたしをなぐったりしない。あたしが女の子だから?
ちがう。あたしのことを物としてしか見ていないからだ。
修理不能な壊れ物とでも思っているんだ。パパは何かを直そうとするときは時間をかけてじっくり修理する。
数日で終わるときもあるし、何週間もかかるときもある。
でも、どうしても直せないとわかると、目をそむけたくなるような暴力をふるって壊してしまう。
失敗なんて、最初からなかったみたいに消してしまう。
p213
そのとき、マギーは恐ろしいことに気がついた。囚われるのはアビーに限ったことじゃない。
ブラナン通り一七番の家だっていっしょだ。住むことになればどこに住んだっていっしょなんだ。
たしかにアビーは手に負えないくらい危険な怪物だった。
ブラナン通り一七番の家だって、あたしを退屈さで殺す怪物だ。
p278
ゴミ溜めのように澱んだ都市部から、時々止まってしまうクラシックな車で郊外に出ると、
たちまちガイドブックの中にある夢の世界。
古い洋館、バラ園、森などの自然豊かな風景に一変して、
夕暮れのひらけた素晴らしい景色が目の前に見え、そこに吹いている風すら感じるようだ。
複雑に入り組んで、決して解けない迷路のような部屋の数々、
どんなに古ぼけていても魔法のように直してしまう父親の腕。
少女マギーが毎日、用意する美味しそうな料理の数々や、
工場みたいなお風呂のシステムなんか実際どんなものなのか?と想像がふくらんでいく。
両親を早く亡くして、ずっと1人で洋館にいたミズ・マクファーレンと、妻を亡くした父、
その2人の変化を見つめる少女マギーの微妙な関係性は、他の作品(『かかし』か?)にもあったような?
すっかり年寄りのように枯れて無気力になってしまった父親が、時々見せる少年のように快活な表情が嬉しくなる。
細身の美人ミズ・マクファーレンは、私の好きな女優ケイト・ブランシェットをイメージしながら読んでみた。
小さい悪魔みたいな双子の弟たち、貧しい労働者階級の見習いたちなど、イギリスの様々な階級に属する人々の貧富の差も見えてくる。
欧米人のテディベア愛も、単なるぬいぐるみの域を越えていることが分かったし/驚
シュタイフ社って実在するんだね→here
和訳されてまだ読んでいない作品は、あと2冊のみ。機会を見つけて味わいたい。
その他、まだまだ翻訳されていないウェストール作品が早く全冊、書店に並びますように
追。
途中2ヶ所ばかり誤字を見つけた
バンシー:アイルランドおよびスコットランドに伝わる女の妖精であり、家人の死を予告すると言われている。
ロバート・ウェストール/著 金原瑞人/訳
年末年始にふさわしく、久々じっくりとウェストール作品に浸かろうと思って、
図書館から1冊家に連れてきたv
物語の舞台を想像するにふさわしい表紙絵と裏表紙絵のみで、ほかに挿絵はない。
マギーという少女の視点から書かれていて、ずうっと年上の男性が書いた物語とは思えない
とにかく、ウェストール作品は、どの1冊も間違いなく、最初の1ページ目からぐいぐい引きこまれ、
登場人物の言うジョークに笑い声をあげたり、次から次へと起こる不可解な出来事にドキドキビクビクして
目を見開いたりと忙しくしているうちに、どんどん先が知りたくなって、
数時間後には最後の頁になってしまっている。
【あらすじ】
母が急死してからというもの、父はすっかり生気をなくしてしまっていた。
そこに舞いこんだ1通の封筒には、マリーゴールド財団役員のミズ・マクファーレンが所有する
アビー(昔大修道院だった邸宅)修繕の依頼が書いてあった。
長女のマギーは、これ幸いと父に請け負うことをうながし、双子の弟とともに一家は郊外へと向かう。
そのとてつもなく古い洋館には、様々な噂があり、マギーには人には見えない幻影が見え、
誰とも分からない歌声、使用人を呼ぶベルの音が聴こえるようになる・・・
【内容抜粋メモ】
「信念さえあればどうにでもなるのよ。神秘的な力が働いて、望みどおりに物事は運ぶの」
p147
目をこらして見れば、大人って本当は迷い犬みたいなものなの?
もしそうでないのなら、どうして迷い犬みたいな大人ばかりがアビーに集まってくるの?
まるでアビーが磁石のように迷い犬を引き寄せているみたい。
p148
「なら、秘密をひとつ教えてやろう。実は世界には迷い犬がたくさんいるんだ。
ここの仕事みたいに一風変わった仕事につくだろ、そうすると、まわりは迷い犬だらけになる。
大きな建設現場だとか、高速道路、石油の掘削現場、そういうところはどこも迷い犬だらけだ。
離婚したやつやアル中、警察に追われているやつとかな。幸せな男は家で妻といるもんだ、そうだろ?」
p150
「男の人って、すべてわかっているわけじゃないの。たとえ自分たちはわかっているつもりでもね」
p191
マギーはパパといっしょでものをつくる側の人間なのだ。
パパは言っていた。ものをつくる側の人間と壊す側の人間は決してわかり合えることはないと。
p204
もちろん、パパはあたしをなぐったりしない。あたしが女の子だから?
ちがう。あたしのことを物としてしか見ていないからだ。
修理不能な壊れ物とでも思っているんだ。パパは何かを直そうとするときは時間をかけてじっくり修理する。
数日で終わるときもあるし、何週間もかかるときもある。
でも、どうしても直せないとわかると、目をそむけたくなるような暴力をふるって壊してしまう。
失敗なんて、最初からなかったみたいに消してしまう。
p213
そのとき、マギーは恐ろしいことに気がついた。囚われるのはアビーに限ったことじゃない。
ブラナン通り一七番の家だっていっしょだ。住むことになればどこに住んだっていっしょなんだ。
たしかにアビーは手に負えないくらい危険な怪物だった。
ブラナン通り一七番の家だって、あたしを退屈さで殺す怪物だ。
p278
ゴミ溜めのように澱んだ都市部から、時々止まってしまうクラシックな車で郊外に出ると、
たちまちガイドブックの中にある夢の世界。
古い洋館、バラ園、森などの自然豊かな風景に一変して、
夕暮れのひらけた素晴らしい景色が目の前に見え、そこに吹いている風すら感じるようだ。
複雑に入り組んで、決して解けない迷路のような部屋の数々、
どんなに古ぼけていても魔法のように直してしまう父親の腕。
少女マギーが毎日、用意する美味しそうな料理の数々や、
工場みたいなお風呂のシステムなんか実際どんなものなのか?と想像がふくらんでいく。
両親を早く亡くして、ずっと1人で洋館にいたミズ・マクファーレンと、妻を亡くした父、
その2人の変化を見つめる少女マギーの微妙な関係性は、他の作品(『かかし』か?)にもあったような?
すっかり年寄りのように枯れて無気力になってしまった父親が、時々見せる少年のように快活な表情が嬉しくなる。
細身の美人ミズ・マクファーレンは、私の好きな女優ケイト・ブランシェットをイメージしながら読んでみた。
小さい悪魔みたいな双子の弟たち、貧しい労働者階級の見習いたちなど、イギリスの様々な階級に属する人々の貧富の差も見えてくる。
欧米人のテディベア愛も、単なるぬいぐるみの域を越えていることが分かったし/驚
シュタイフ社って実在するんだね→here
和訳されてまだ読んでいない作品は、あと2冊のみ。機会を見つけて味わいたい。
その他、まだまだ翻訳されていないウェストール作品が早く全冊、書店に並びますように
追。
途中2ヶ所ばかり誤字を見つけた
バンシー:アイルランドおよびスコットランドに伝わる女の妖精であり、家人の死を予告すると言われている。