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『つくられた明日』眉村卓/著(角川文庫)

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■『つくられた明日』眉村卓/著(角川文庫)
眉村卓/著 カバー/木村光佑 本文挿絵/谷俊彦 (昭和55年初版 昭和56年6版)

「作家別」カテゴリーに追加しました。


[カバー裏のあらすじ]

“そんな馬鹿なことが……”手にした『未来予告』と題された本をめくるうちに、永山誠一は思わず声を出してしまった。
 そこには“あなたは10月31日に重大な危機にさらされます”とあり、
 11月1日以降は空白になっていたのだ。誠一は死を予告されたのだろうか?

 奇怪な出来事は次々と起こりはじめていた。先生の交通事故――これは予告どおりだった。
 そして、続いて起きた友人の失踪に、サファリを着た怪盗団の暗躍。
 11月1日は、日一日と迫りつつあった!

 眉村卓の描く、読み出したらやめられない、学園SFサスペンス!


***

夜10時頃から読み始めて、2、3時間で一気に読み終えてしまった!
これもパラレルワールド、タイムトリップ絡みで、
他の作品同様、読み始めたら、先が気になって止まらなくなってしまう

ちなみに本書のもとの値段は260円w
物価ってどんどん上がるんだねえ!



▼あらすじ(ネタバレ注意

中学3年生の新聞部部長・永山誠一が引き継ぎのため、部室に行くと杉森あかねがいるだけだった
熱心に読んでいるのは『未来予告』という占い本

「なんじ、知らずや。すべて人の運命は決まっておるのじゃ」などと書かれていて
複雑な計算をして数百ものタイプ別に分けられ、それぞれの別本があるという

顧問の中井先生が来て、無事、引き継ぎが終わると、あかねは唐突に
「先生・・・気をつけて帰ってください」と言う

誠一はあかねに無理やり自分の数字の占い本を買われて、何気なく読むと、
明日は「近い目上の人の交通事故を知ります」とある

しかも、10月31日には「あなたは重大な危険にさらされます」と書かれた後
その先は白紙 自分は死ぬのか? 「ばかな!」





翌朝、あかねから中井先生がクルマにはねられたと聞く

同じ組の島吾郎が、様子のおかしい誠一に尋ね、事情を話すと
疑いながらも、自分も買ってみると言う

その夜、あかねから電話があり

「さっき、知らない男の人から“占いの本を買いましたか”と電話があったの
 それをすぐに焼き捨ててくれ、持っていると厄介なことに巻き込まれるからって」

吾郎と本を買った書店に行くと、サファリルックの男女が占いの本をすべてトラックに積み込もうとしているのを見て
吾郎は果敢に立ち向かい、そのままトラックに連れ去られてしまう

誠一は、父母と、大学生で合気道の腕に自信がある姉・昭子にも話す
誠一の家にも謎の男からの電話がくる


その日の午前3時
サファリルックの男女が誠一の部屋のガラス窓を高熱で焼き切って侵入しようとして
家族が駆けつけると逃げていく


翌日、学校に警官が来ていて、吾郎が学校に放火したらしいという噂が広まる
見た者はいないが、吾郎の生徒手帳が落ちていた

誠一、あかねらが事情聴取を受けていると
記者だと名乗るサファリルックの男女らが現れた

2人が校門に連れていかれそうになり、黒塗りの乗用車から紳士が降りてきて
広口の銃口を男女に向けて撃つと、姿が消えてなくなった

「安心したまえ これは自分の時間流の外にいる者に対してだけ有効なのだ
 私はタイムパトロールとでもいうところかね」

その男もまた突然姿を消す





吾郎が消えてもう1ヶ月経つ

新聞に「不思議に当たる占いの本がブーム」という見出しを見つけて読むと
発行しているのは未来予告社という出版社で、書店への訪問販売しかしていない
的中率の高さが口コミで広まり、買う人が増えているという

だが、この本を置いている書店が、サファリルックの男女に襲われる事件が起きている
原因を調べようと、未来予告社に行くと、古い小さなビルに事務所があり、
時々社員らしいのが来て、すぐに帰っていくそう


その後、誠一の家に吾郎が来る

「ゆっくりしてはいられない 危険だからな
 警告しに来た 占いの本をまだ持っているなら焼くか、破り捨てろ
 あかねにも、他の人にもそう言ってほしい 1冊でも少なくすることがみんなを救う」


吾郎の家に行くと、電話があり
「元気だから心配しないで 僕にはやらなければならないことがあるんだ」と言っただけで切り
家には戻っていない


そこにあの紳士が来て、大高と名乗り、事情を話す

「吾郎くんは、歴史の転覆を企む一味にさらわれたのです
 あらゆる時間は、つねに併存しています
 あなた方には、過去や未来は、なくなったもの、起こっていないものとしか映らないが
 四次元からはすべてが見えるのです」

大高は「吾郎らの言うことを聞くな」という

一緒に来ると約束したあかねが来ないのを心配して探すと、占いの本の残骸があるだけで姿を消していた


何を信じていいのか迷う誠一に、姉は

「おかしな武器で人を消すなんて、正しい側のやることかしら
 正義の使者だと思っても、見方を変えると逆ということもあるんじゃないかしら」


あかねが消えて3日目に、吾郎とともに誠一の前に現れ、「自分たちと一緒に来てくれ」という
そこに「敵」だという、あの武器をもったスーツの連中が来る

誠一は友人を信じることにして、用意されたジープに乗る

30代の男がいて
「これは戦争なんだ この戦いに敗れれば、君はあの本の通り、11月1日にはこの世の者ではなくなる」


クルマは基地に着く
男は川島と名乗り、あかねらは任務に行ってしまい、その間、事情を話す





「時間の無数の流れは、つねに安定して存在しているのではない
 一応共存しつつ、お互いに影響を及ぼし合っている

 実は、それぞれの流れが、自分のところを主流にしようと努力している
 タイムパトロールなどと名乗ってね

 正しい歴史とはなんだろう?
 それぞれにとっては歴史はただ1つだろうが、それは無数にある
 そのどれが正しい歴史か、誰に決めることができる?

 お互い攻めたり、攻められたり、これが無数のタイムパトロールが生まれる理由だ」

「消滅した流れの人々はどうなるんです?」

「はじめから存在しなかっただけのことになる
 彼らは、君たちの現在を自分たちのほうへ誘導するために占いを利用した
 これがこのまま浸透すると、君たちの世界の人々は、占いによる1通りの未来しかないと信じ、
 ますます暗示に落ち込む やがて、彼らの時間流に突っ込んでいく
 だから、別の時間流にいる我々は、彼らを妨害するほかなかった
 彼らを“誘導派”と呼んでいる

 我々は君たちの世界とは直接にはつながっていないが、誘導派の世界が力を持つと
 他の時間流にも影響が及ぶ 消えてしまうかもしれない細い流れの1つが、
 我々の時間流の成立の基盤になっている

 だから君がどちら側につこうと自由だ
 ただ、君たちの未来は、君たち自身の選択で作られるべきだ

 誘導派は“時間流補正機”という武器を持っていて、他の時間流から来た者を分解することが出来るが
 もともとの人間には何の作用もない もし、協力してくれるなら、我々は君を訓練する」


まだ決めかねている誠一に「投影」を見せる川島

「未来は近いものほど確定度が高い
 そこに予言者が出現すれば、みな信じ込み、誘導派の世界となる
 これは未確定記録と可能性を混ぜたようなものだ」

見せられた映像には、町中のポスター、看板、テレビに大高が出ていた
それに反対するデモもいて、胸に“予言者ばんざい”と記したゼッケンをつけた
誠一が金属棒で片っ端からデモ隊の人々を殴りつけている映像だった

川島「信じられないならすぐに送り返そう だが、君の記憶のうち
   今、見聞きした部分は消去させてもらう」

あかねにも「協力するのよ それが私たちの使命だと思うわ」と言われ、協力を決意する誠一



川島の時間流の訓練所に転送され、鍛錬室の担当は女性エスラ

どの窓にも覆いがあり
「あなた方にこの世界の風景を見せないためです あなた方には、ひどく異様に映るでしょうから」

日本人以外にも志願者がいて、一定のコースが終われば、元の世界に帰り、戦列に加えられる



誠一が訓練を受けて10日目に緊急集合令がかかる

エスラ
「誘導派の連中が、私たちの基地を襲う計画を進めているそうです
 こちらとあなた方の世界との行き来が出来なくなる前に帰ってもらわないと」

自分たちの世界に戻ると川島がいて
「この基地は放棄する 未来予告社そのものを潰し、捕虜を手に入れて情報を聞き出さなければならない」





3ヶ月間の訓練をマスターした吾郎、実戦にも参加したあかねらと一緒に
10日間しか訓練していない自分が参加して大丈夫だろうかと誠一は不安になる

誘導派は、ちょっとした失敗に乗じて、あらゆる手段で利用するという
吾郎が放火したというのも彼らの工作だった


ボロボロのビルに午前2時に着き、最初に味方が事務所に入り
設備を壊し、占いの本を廃棄、逃げてきた敵を、誠一、川島らが裏口で待ち受け
捕虜をとって脱出するという計画 急がないと警察が来てややこしいことになる

上では混乱し、事務所に火がつけられた
おりてきたのは大高で、時間流補正機と、1mほどの電撃棒を持っている
大高「抵抗はムダだ」





誘導派らは、瞬間的に遠くに移動する技術があるらしい
誠一「あいつらはかたまって、どこかへ移動する気だ!」

大高は補正機で撃つと、味方も消えたが、誘導派の男も消えてしまい
大高は愕然として、そのまま古い倉庫に逃げる
中は本の山があり、床に上げぶたがあった

誠一と川島は大高を追うが、すでに大高は自分の時間流に消えた後


川島
「・・・これもひとつの結末だな 我々は勝ったということになるのだろうな
 補正機が彼らにも効いたということは、この世界が未来とつながらなくなったのを意味する
 だから、ここは誘導派が到来したことのない過去なんだ
 彼らはどこか別の世界に手を出すか、細々と自立するコースを選ぶだろう

 我々はこの倉庫の扉の前にいたから、過去に戻りながらも記憶は失わなかったのだよ
 しかし、つくられた明日はもう存在しない
 君たちは自主性で歴史を作ることになる
 今度の戦いの思い出を語る相手はこの世界にはいないが・・・耐えてもらうことだ」

「川島さんはどうなるんです?」

「この世界に私たちの基地はない だが、自力でできるだけ早く、自分の世界へ戻るつもりだ」

「あなたもまだ向うにいるのでしょう? そのあなたが向うに戻ったら?」

「それぞれの歴史はみな関連しあいながら独立している
 だが、私たちも時間の流れの複雑な作用を完全には把握していない
 それでいて、時間流には奇妙な修復作用があり、矛盾はひとりでに消える
 君の場合も、もう1人の過去の君が出現する心配はいらない 自動的に同化してしまうからだ」



誠一は川島と分かれて自宅に戻ると、母が
「学校から帰ってする本を買いに行くって出て行くのはいいけど、今じぶんまでどこへ行ってたの?」

自分はまだ中学2年なのだ




新聞部の引き継ぎの日、あかねが1人本を読んでいる

「何の本?」
「世界の七不思議 面白いのよ 貸してあげてもいいわよ」

あの時の出来事について、あかねや吾郎、家族と喋れないことが痛切に寂しかった


誠一は気をとり直した
この現実を守らなければならないのだ
つくられた明日ではない、自分たちの時間を大切にしなれば・・・

あの時の訓練を自信にして、自分たちの明日を、自分たちで作っていけばいいではないか




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