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ウエアラブルセンサーが起こすスポーツ革命@サイエンスZERO

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出演:竹内薫、南沢奈央
ゲスト:武田修宏さん、寺田努さん

 


●ウエアラブル端末
ペットの気持ちを教えてくれる首輪!?
手術に必要な道具を教えてくれるメガネ
今は「ウエアラブル元年」と呼ばれている

 

 


すでにスポーツ界では取り入れられ、体に取り付けるウエアラブルセンサーが注目されている
故障を未然に防いだり、メンタルの状態まで分かるかもしれない!?

そんなウエアラブルセンサーの最先端に迫る


●werable=身につけることができるという意味

竹内さんが身につけていた「歩数計」もウエアラブル




●スポーツ界での成功例
ラグビー日本代表は、去年、国際大会で破竹の10連勝という快挙を成し遂げた
4年前までの20年間は、ワールドカップで一度も勝利がなかった

 

その打開策として取り入れたのが「ウエアラブルセンサー」

 

「GPS」「加速度計」(速度の変化を測る)が内蔵されている
「走行距離」「スピード」「衝撃の強さ」まで分かる

このセンサーを背中につけてプレー
本番の試合中も測定している


データを分析し、指導するのはジョン・プライヤーさん



ジョンさんは、「世界の強豪からトライを決めるには9.5m/秒(50mを5.3秒以内)で走るトップスピードが必要」と考える

J:
9.5~10/秒のトップスピードを出せない限り、国際的なレヴェルで闘うのは非常に難しい


山田章仁選手はチームでトップレヴェルの俊足



山田選手が代表入りした頃のトップスピードは、最高8.5m/秒内だった

山田:
ジョンから数値化されたことを具体的に言われて
その時はすごくショックで、まだまだ自分は世界のレヴェルでは通用しないと痛感した

そこでトップスピードを出せる爆発的な加速力をつける下半身の筋肉を徹底強化した



去年5月の国際試合で計測した山田選手のデータ/トレーニングで9.7m/秒まで高めることに成功した

 

ジョンさんは、「指導者と選手が目標や達成度を共有するには、具体的な数値を用いることだ」と確信している
そのためにウエアラブルセンサーが欠かせない

J:
今は、彼に求めていることも、コミュニケーションも明確です
練習後にいつも「今日は9.1m/秒で良かった」
「今日は8.6m/秒であまり良くなかった」などと伝えています

そうすることで、自分の成果を実感できる
それは彼にとってとても重要なこと

山田選手:
他国の代表と比較することが非常に簡単で、分かりやすく、自分も納得できるので
より高いレヴェルのプレイヤーに一歩でも近づこう、越していこうという向上心がすごく芽生えてくる


ナオ:武田さんが選手当時もこういうことをしていた?

武田:
昔はどちらかと言えば精神論 「頑張れ!」「走れ!」て感じ
今は数字を言われることによって、具体的に目標ができるから、選手はやる気になる

Jリーグの海外の監督と話した時に、日本人選手はしっかりと理論的に
「こうだから、こうなんだ」と言うとすごい一生懸命にやる国民性なんですって!


竹内:もっと複雑なデータをとることも可能?

寺田:
装着型のセンサーは、人間の体の動きを細かくとることができるので
“コツ”などの言語化しにくいものも、センサーの値で分かるんじゃないかと盛んに言われている

たとえば、大リーグだとバッターですごく変な形で打っている人もいるが
センサーで細かい動きをとると、実は「腰がこうなのが大事」とか
今まで明文化できなかったコツをセンサーで明らかにすることができる


アナ:どうデータをみるかも大事ですよね?

寺田:
本当にたくさんのデータがとれて、数字が並んでいるだけなので、
これが何を意味しているのか、どう分析して、どう練習に応用すればいいかが大事になる

一般にデータを解析する人はいるけれども、そのスポーツの知識がどれだけあるかが大事
両方がちゃんと出来る人を育てていかないと、データをうまくトレーニングに生かすのは難しいと思う


●故障を防ぐウエアラブルセンサー

 

ウエアラブルセンサーを使って故障を防ぐ取り組みも始まっている
スポーツドクターの橋本さんは、足首を傷めやすい歩き方を初めて論文にまとめた第一人者

 

橋本:本人は普通に歩いている、走っているつもりでも、異常歩行パターンであることがすごく多い


<どんな歩き方が足首を傷めやすい?>

橋本さんが注目したのは、1人の女子サッカー部員

橋本:
彼女は右足を怪我しやすいタイプの歩き方
床にかかとを着く直前に少し足首が内側に向く
外側からかかとが地面に着いて、直後に内側にいく
これは一番怪我をしやすい危険な歩き方

 


素人が見比べても分からないが、歩いている時のセンサーを見るとひと目で分かるそう



横軸は時間、縦軸は上下方向の加速度(力に対応する)
グラフで下にとがった部分は、足が地面に着いた瞬間

左足が着いた時はすごく尖っているが、右足をついた時はあまり尖っていない
つまり、左右がアンバランス

正常な歩き方だと左右に均等に力がかかっている



(ヨガでも歩き方、ただ立っている時、座っている時の力の均等なバランスのことをよく言われたな
 ただ立つ時も、足の裏の3点のバランスを意識すること
 本人は気づかなくても、客観的に見るとどちらかに傾いていて、肩こり、頭痛等々の原因になる
 バッグを同じ肩で持っていたり、姿勢が悪かったり、体の中心が分かっていなかったり


●このデータを測っていたのはメガネ(ウエアラブルセンサー)
秘密は耳あての部分 加速度計などが埋め込まれている

 

これをかけると、上下、前後、左右にかかる力と、
それぞれの軸での回転のデータがリアルタイムで分かる



さらに詳しくみてもらった



橋本:
正常な左足は内側にひねろうとしても、そんなに動かない
ところが、右足はがっくんと動く 全然違うでしょ左右が
このグラつきが足首などを故障する原因

昔、右足をねんざしたことない?

女性:あります

橋本:
過去のねんざで、このじん帯が緩んでいる人は、スポーツをする人に珍しくない
しかし、異常歩行で痛みが出るまでには何年もかかるため気づいていない人が大半

 

橋本:典型例です
女性:ビックリ 知らなかった


橋本さんは、こうした歩き方の異常を知らせるアプリケーションを開発中

橋本:
選手、あるいは一般のウィークエンドのプレイヤー(週末に運動する人)が
自分で分かる、障害を予防することにつながれば一番いい
スポーツ医が要らなくなる時代が一番いいと思う


武田:
僕らはプロでやっていたので、毎日トレーナーさんのチェックはあるが
メガネ1つで分かれば本当に画期的だと思う

竹内:センサーの着用はなぜ足ではなく頭なんですか?

寺田:
人間の腰は安定しているので、足を動かすと対角上の頭が動くので(データを)とることができる

最初に思いつくのは「靴につければいいのでは」と思うが
靴を履きかえるとダメ 靴を脱いでいる家の中でもとれない

日常生活のあらゆる場所でデータをとるのが大事なので
メガネはほとんど外さないのでよい

竹内:この前ぎっくり腰になったけど、メガネでもしかして防げる?

寺田:
毎日データをとれば、ぎっくり腰の1日前にはこうしている、ということがとれる
“重い荷物を持った翌日にぎっくり腰になる可能性があるからストレッチをしてください”とか
簡単なアドバイスで、医者にかからなくてもいいように生活することができる

(声で教えてくれたらイイなあ いろんな機械から命令されたらウルサイか

ナオ:最初からメガネを使って分かったんですか?


●「モーションキャプチャー」
これまでは、歩き方を客観的に測定するには「モーションキャプチャー」を使っていた



立体的に動きを解析するための8台のカメラ
たくさんの「赤外線マーカー」

 

精密機械なため、準備も苦労していた
機械を扱えるのも専門の医師や技師だけ
特別な場所で、特殊な機械を使わないと測定できなかった

 



寺田:
「モーションキャプチャー」は非常に細かい動きがとれる
一方、特定のスペースで、山程ものをつけて歩かなければならないといけないので
自然な動きができないこともある

日常生活のデータは、メガネのようにずっとかけているモノを使って、自然にとるほうが良い
使い道によって、どっちのデバイスを使うかをかえる必要がある



●ウエアラブルセンサーでメンタルまでわかる!?

武田:
どんなに技術があっても、6万2000人の大観衆の歓声であがっちゃったりとかw
メンタルがスポーツ選手に一番大切 僕はメンタルが強かったですから


大手電気通信会社の研究者・新島さん:
このシャツを着るだけで緊張状態やリラックス状態を推定することを検討しています

 

真ん中の白い部分で「心電位(心臓のドキドキ)」を測定する
シャツ裏の胸の部分の特殊な布が「心電位」をキャッチして緊張状態を推定する試み

 

専用のアプリを立ち上げると、心拍数、姿勢、リラックス度、振り返り(?)など書いてある



6年前の新島さんは、スポーツチャンバラ大会で優勝 世界チャンピオンになった
(初めて聞いたスポーツ/驚

 

しかし国内の大会では準優勝止まり
本来の実力が発揮できなかったのは、メンタルに一因があったのではと考えている



新島:
科学的なアプローチでメンタルを定量的に評価して、
いつも同じ状態で試合に臨めるようにできればいいなと思っています
(素晴らしいアイデア!


●「心電位」からどう緊張状態を推定する?

注目したのは単純な心拍の速さではなく「バラつき」
心拍の間隔の変化を表すために使うのは「ポアンカレプロット」という図
横軸が最初の間隔、縦軸は次の間隔

 

もし、心拍の間隔が一定だと赤い部分に点が打たれる



微妙に間隔が変化した場合は、点にバラつきが出る



比較




●英語の試験中の「心電位」を記録して実験した



リスニングの時のデータ:聞き逃さないよう心拍間隔はほぼ一定



自分のペースで臨める「リーディング」ではバラついた



試験終了5分前のチャイムが鳴るとまた一定に



試験が終わるとまたバラついた



こうして見ると緊張している時は一定で、リラックス時はバラつくことが分かった



一定の範囲からどれだけ外れているかで、リラックスと緊張を推定できると考えた
心拍100回中、黄色の帯からはみだした割合を指標にした




●これをスポーツにどう生かせるのか、シャツを着て検証してみた
使うのは開発中のアプリケーション
数字が低いほど緊張度が高い 今は緊張している状態

 

試合する相手は2014年度全日本チャンピオン・小山さん



頭の中で試合をシミュレーションして、敢えて緊張状態を作る新島さん



スポーツチャンバラは剣が相手の体に触れれば勝ち



見事に一本取った!

新島:
本当の大会ぐらいの集中状態でやりました
かなり緊張状態になると思うけれども
その時が自分は一番集中して試合に臨めるかなと思います
(ん?緊張状態のほうが勝てるってこと?

シャツのデータも試合前に急激に緊張状態になったことが表れている



新島:
緊張状態で臨んだほうがいい人もいますし
リラックス状態で臨んだほうがいい人もいると思う

自分がどういった行動、状態になると、どんな精神状態になるかということを
客観的に把握するのにも使えるかなと思います


武田:
僕もJリーグの試合の時、優勝戦の前日にメンバー発表があって
僕はベンチだったが、試合当日に先発メンバー選手が緊張から嘔吐して
いきなり僕が先発メンバーになったことがあった
その選手は緊張しすぎて、そういうこともあるんだなとビックリした

僕はいつも試合前は、ちっちゃいテニスボールでリフティングすることで
余計なことを考えずに集中とリラックスができるので、
そういう試合へのもっていき方をしていましたね

ナオ:
私は舞台や本番前は、体はリラックスさせて、精神的には緊張を高めて、
集中してこうと意識してるんですけど、意識するだけじゃ本当にそうなっているかが分からない
客観的に分かるなら私も検査してみたい


竹内:
一般的には心臓がドキドキするのは緊張していてよくないと思っていたけど
心拍のバラつきで、緊張度が分かる?

寺田:
人間の心臓が打つ「トク」というのは、実は一定がいいわけではなくて
(息を)吸っている時と吐いている時でいいタイミングが違う

うまくコントロールできている時が、心拍間隔が揺らぐ(不規則)のが当たり前
なので揺らいでいる時がリラックス状態

一定になっていない時は、コントロールができていない→心拍間隔は一定
先ほどはそれを「緊張」と呼んでいたが、体内のことはよく分かっていなくて
「緊張」でもなるし、「集中」でもなるし、「ストレスがかかっている状態」でもなったりする
なので、平常な状態ではないことは分かるが、どれなのかは正確には分からない

(やっぱり呼吸と深く関係していて、呼吸って大事
 パニ障にも使えないかなとふと思ったけど、自分でコントロールするのは難しい

アナ:新島さんの見解はあくまで研究段階で、今回のような実験を重ねて改良を加えたいという


●データの蓄積が重要

今回チャンピオンのほかに2人と2試合ずつ対戦してもらった



ナオ:あれ? 緊張状態なのに中級者の方に負けてますね

寺田:
たまたまなのか、何回やっても大体そうなってしまうのか、データが多いほど分かってくる
データの積み重ねが大事になる

竹内:
今回のデータって本当に緊張度を測っているのか分からない気もするけど、続けることは意味がある?

寺田:
はい これまではデータをとるのが大変だったので、
目的をもって→仮説をたてて→それを検証するというアプローチで
スポーツの分析も行っていたが、これからはどこにでもつけられるようになり
例えば練習データを全部ためておいて→分析して→なにかを見つけるというアプローチが有効になる

最近のキーワードでは「ビッグデータ」と言われている
我々は「ライフロギング」という生活のいろんなデータの蓄積で
いろんなことが分かるのではないかと思っている




武田:予防医学というか、故障する前がすごく大事だなと思いますね


ナオ:あまり知らないほうがいいデータもあるのでは?

寺田:
数字を見るというのは、ヒトに非常に大きな影響を与えると思われる
いい状態のデータを見せると上手くいくことがあり得るが
悪い状態を見せられてしまうと、見なかった時のほうが上手くいく可能性もある

情報を見せるかどうか、どう見せるかも大事
今後、スポーツなどの領域でどんどん応用されれば、いいデータの使い方が分かると思う

武田:
時代はどんどん進化するし、スポーツもトレーニングもどんどん新しいものがあるし
情報は大事だけれども、そればっかりじゃなく、どれが自分に合うのかを
しっかり分かることが大事かなと思う

寺田:
例えば、子どもの体育の時間にちょっとしたセンサーをつけて
走る速さが0.何秒全員上がったとすれば、これはあらゆるスポーツにとってすごくいいことだと思う

安くなって、小型化される技術が進むことによって、これまでトップアスリートだけが使っていたような
技術、アドバイス、トレーニング方法が、実は誰にでもできるようになる可能性がある
そういうところはスポーツに関しての技術革新の良いところだと思う



トップアスリートの躍進につながればと思って見ていたけれども
みんながトップアスリートになれちゃうってイメージはスゴイな

なんでもかんでもスピードアップしたりするのもどうかと思うが
ただただ「頑張れ!」だけじゃなく、科学によるスポーツ革命はすでに起きてる

テニスも、サーヴの速さ、球種、落ちた位置、
あらゆるパーセンテージがリアルタイムで出るようになって
選手もそれを見て切磋琢磨してるわけだから
スポーツも数値化されて、科学的に進化しつづけるのか




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