■子どものためのバリアフリーブック 障害を知る本3『てんかんのある子どもたち』(大月書店)
稲沢潤子/文
先日読んだ『障害を知る本8 LD(学習障害)の子どもたち』(大月書店)と同シリーズ。
こうゆう本を読むと、病気の理解とともに、それよりもっと大切なことに気づかされる。
病も縁。病を克服したことで得られる学びもあるし、
病を持つ人との接し方で、自分の考え方の偏りに気づかされることもある。
すべては意味があるんだなぁ。
【内容抜粋メモ】
●「ひきつけ」と「てんかん」は違う
赤ちゃんは、よくひきつけを起こす。
急に発熱した時、激しく泣いた時
などに、全身がつっぱり、意識をなくし、白目になり、泡をふいてしまう。
多くは、命に関わることではなく、脳の細胞がまだしっかりできていないため。
ひきつけは病気ではない。
ひきつけは、子どもの全身けいれんの時にだけ使われる呼び方。10人に1人の割合で起こる。
3歳頃には少なくなり、小学校入学頃にはおさまる。
脳に障害があるためにひきつけを起こすのが「てんかん」。
100人に1人くらいの割合で、全国に子どもは30万人、大人も含めると100万人いる。
●昔からあった
紀元前2500年頃から記録にある。古代ギリシアの医者ヒポクラテスは「てんかんの原因は脳にある」と言った。
しかし、中世の封建制時代には「悪魔がついた」とか、「神聖病」などとも言われた。
シーザー、ソクラテス、ナポレオン、ドストエフスキーもてんかんだったという話がある。
研究が進み、クスリができたのは、ここ100年余りのこと。
●なぜ起こるのか?
ヒトの体には「神経系」が電話線のように張り巡らされている。
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体内の神経
五感の信号は、神経系を伝わって→脊髄→間脳→大脳皮質に伝わる。
大脳皮質は、すぐ分析して適切な指示を送り返す。
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横から見た右脳
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大脳皮質の役割分担
手の指
は、細かい運動をするので、細胞数も多く、専門も細かく分かれている。
例えば、手を動かす時、大脳の信号の速さは秒速50m(時速180km)![]()
●発作は電気信号の暴走
脳の神経細胞(ニューロン)には、興奮する細胞(アクセルの役割)+興奮を抑える細胞(ブレーキの役割)があり、両者がバランスをとっている。
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ニューロンからは、細い糸のようなもの(樹状突起)が何本も出ている。とくに長いものを「軸策突起」と呼ぶ。
てんかんの発作は、ブレーキのニューロンが故障して暴走しているようなもの![]()
●発作のタイプはいろいろ
「大発作」
よくイメージされる、急に意識がなくなり、倒れて体がつっぱってしまう姿。
しかし、どの脳神経細胞が故障しているかによっていろいろな種類がある。
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発作は長くても5〜10分ほどでおさまる。
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「点頭」とはうなずくという意味。
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「レンノックス症候群」は「矢立発作」「ドロップ発作」と呼ばれ、知的発達に遅れが出る。
●てんかんは遺伝する病気ではない
脳のある部分に、怪我や病気がもとで、組織の働きが壊され、信号がうまく伝わらず発作になる。
その傷をどこで受けたかというと、半数は原因が分からない。
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・産まれる時
髄膜炎、脳炎、脳症など高熱がつづく病気で脳組織が壊されることがある。
大人になってからの交通事故
、脳腫瘍などで起こることもある。
・胎児の時
胎内感染、胎盤機能不全などで、脳にちいさな傷ができるため。
●てんかんは脳波でわかる
・心電図/心臓に流れる電気のようすを調べる機械。
・筋電図/筋肉のようすを調べる機械。
・脳波/脳の細胞に流れる電気のようすを調べる機械。
頭の表面に電極をつけ、脳に流れている電流を外に取り出す。
微量の電流を大きくするためのアンプを使う。
この脳波によって「てんかんがあるかどうか」「あるならどの部分が原因か」が分かる。
ある部分の神経回路がショート(異常放電)した状態なので、発作中でなくても脳波に表れる。
つまり、時々ショートしていても、そのたび発作になるわけではないということ。
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てんかんの脳波
時々出ている発作(矢印部分)が起きないよう、安全装置がはたらいている模様。
●てんかんはクスリで治る
よい薬が20種類ほどある。薬は脳がやたらにショートしないように、故障している部分を強化していく。
故障した脳神経を修理するのではないため、長い時間がかかる。その間の規則正しい生活も重要。
発作が起きない訓練が習慣づけば、薬を止めても発作は起きなくなる。
●治療の進歩
現在、約80%以上は薬で治る。
薬を多く使えば発作はすぐ抑えられるが、元気な細胞まで弱って、だるかったり、無気力になってしまう。
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保護帽やヘルメットは、転倒した際、怪我を防ぐため
今、治りにくいとされているのは、「点頭てんかん」、「レンノックス・ガストー症候群」、
「脳性まひ」など合併症がある場合、故障部分が広い範囲にあるか、大切な部分に何箇所もある場合。
CT、MRIで詳細を調べ、手術による治療の研究も行われている。
●発作を起こさないために
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てんかんのあるコは、底が浅いダムに例えられる
睡眠不足、疲れすぎ、緊張のしすぎ、眠りすぎ、心配しすぎ、暗い気持ちなどがあふれると発作が起こる。
●制限しすぎは逆効果
発作が起きないよう心配しすぎて、運動しないのではなく、活発に何でもやってみようという気持ちが大切。
日中は発作が起きず、夜寝る時、うとうとしはじめた頃、寝起きでぼんやりしている時に起きやすいコも多い。
昔は「水を見ると発作を起こす」などと誤解されたが、水泳中に発作を起こした例はほとんどない。
熱中している時は出ないが、緊張がとけた時に出やすいため、一生懸命泳いだ後が要注意。
「心配だからやめたほうがいい」というのは間違い。
注意することは、クスリを忘れずにキチンと飲むこと、ムリをしないこと![]()
●発作が起きた時の対処
・けいれんで死ぬことは、ほとんどない。
・神経全体がけいれんしているので痛みはない。
・歯を食いしばっているが、呼吸はしている。
・長く感じても大体30秒〜1分ぐらいでおさまるのがふつう。
・周りから危険なものを取り除く。
・呼吸がラクになるよう、服の上のボタンをはずしたり、ベルトをゆるめる![]()
・体はなるべく動かなさない。日陰に運ぶのは大人に頼もう。
・たくさん唾が出たり、吐いたりしたら、気管に入らないよう顔を横に向ける。
・放心状態で歩いているような場合は、意識を取り戻そうとしてゆすったり、大声で名前を呼んだりせず、危なくないよう見ていてあげる。
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名前を呼んで、体をゆすったりするとかえって危険
●特別扱いしたり、差別が誤解をうむ
昔は「てんかんのコはワガママだ」「発作で性格が変わる」と言われていたが、それは誤解。
もし、そういう性格があるとすれば、環境やまわりのヒトの影響が大きい。
中学生くらいになると、他人の目を意識していることが煩わしくなる。
でも、いつも家族や周囲の心配そうな目が注がれていたり、
毎日欠かさずクスリを飲まなければならない、のんびりお風呂に浸かることなどもできない、などなど制限も多い。
どんな生きものも一人では生きられない。
仲間と交流することによって、ともに生きることを学んでいく。
まわりが理解し、こだわりのない付き合いをしていけば、友だちも自分も変わるはず。
**************************実例
●髄膜炎でてんかんになったT君
健康だったT君は、5歳で風邪と診断されたが、熱が下がらず、ひきつけを起こした。
髄膜炎と分かり、生死の境をさまよい、その後回復したが、言葉や字を忘れてしまった。
両親は専門病院を見つけて、ずっと投薬治療を行っている。
発作は軽く短くなり、養護学校に通って、ゆっくりと言葉や字を覚えるようになった。
●中学1年生のA子さん
友だちは、A子さんの体調のことをよく知っていて、発作が起きそうな時は周囲を片づけ、先生を呼んだりしている。
A子さんは、普段は元気で、わがままを言う時もある。
友だちは、「こんなに親切にしてやっているのに、生意気だ」と怒ったり、イジメたりすることもあります。
A子さんも負けずにやり返します。
先生は、みんながA子さんを特別扱いせず、対等に付き合っているのは良いことだと考えている。
クスリをキチンと飲めば、修学旅行にも参加することができた。
病気に対する理解が進んでいる学校では、教師、友だち、医師が協力しあって、
楽しい学校生活を送れるように努力している。
●Sさんの就職と結婚
中学の時、突然発作を起こし、通学途中にも発作を起こして、自転車で田んぼに転げ落ちたことが何度もあった。
てんかんと分かった時、友だちに打ち明けることはできなかった。
変な目で見られることが怖く、次第に一人ぼっちになっていった。
高校を卒業後、就職。打ち明けたらクビになるかもしれないと思い、隠していることも辛く、殻に閉じこもっていた。
そんな時、詩のサークルに入り、自分のこれまでの思いをぶつけて、聞いた人を感動させた。
詩を通じて理解してくれる女性と結婚し、2人の子どもも産まれた。
結婚後も発作はあったが、10年以上クスリを飲み続けたおかげで、今は元気に働いている。
**************************差別のない社会に
昔から「てんかんは遺伝だ」「治らない」などと差別を受け、陰口を言われ苦しんできた。
いまだに、間違った考え方は残っている。
日本では、就職を断られるケースも多い。
アメリカでは就職の際、個人の事情や病歴を聞くのは、法律で禁じられている。
日本の道路交通法では、てんかんの人は免許をとれないため、隠してとっている人もいる。
理由は、就職の際「なぜ車の免許をとらないのか?」と聞かれ、理由を言うと差別されるから。
海外では、発作が3年以上なく、意識を失わず、運転に差し支えないと判断された人は免許がとれる国が多い![]()
「日本てんかん協会」では、日本のルールを改めるよう要望している。
稲沢潤子/文
先日読んだ『障害を知る本8 LD(学習障害)の子どもたち』(大月書店)と同シリーズ。
こうゆう本を読むと、病気の理解とともに、それよりもっと大切なことに気づかされる。
病も縁。病を克服したことで得られる学びもあるし、
病を持つ人との接し方で、自分の考え方の偏りに気づかされることもある。
すべては意味があるんだなぁ。
【内容抜粋メモ】
●「ひきつけ」と「てんかん」は違う
赤ちゃんは、よくひきつけを起こす。
急に発熱した時、激しく泣いた時
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多くは、命に関わることではなく、脳の細胞がまだしっかりできていないため。
ひきつけは病気ではない。
ひきつけは、子どもの全身けいれんの時にだけ使われる呼び方。10人に1人の割合で起こる。
3歳頃には少なくなり、小学校入学頃にはおさまる。
脳に障害があるためにひきつけを起こすのが「てんかん」。
100人に1人くらいの割合で、全国に子どもは30万人、大人も含めると100万人いる。
●昔からあった
紀元前2500年頃から記録にある。古代ギリシアの医者ヒポクラテスは「てんかんの原因は脳にある」と言った。
しかし、中世の封建制時代には「悪魔がついた」とか、「神聖病」などとも言われた。
シーザー、ソクラテス、ナポレオン、ドストエフスキーもてんかんだったという話がある。
研究が進み、クスリができたのは、ここ100年余りのこと。
●なぜ起こるのか?
ヒトの体には「神経系」が電話線のように張り巡らされている。
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体内の神経
五感の信号は、神経系を伝わって→脊髄→間脳→大脳皮質に伝わる。
大脳皮質は、すぐ分析して適切な指示を送り返す。
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横から見た右脳
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大脳皮質の役割分担
手の指
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例えば、手を動かす時、大脳の信号の速さは秒速50m(時速180km)
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●発作は電気信号の暴走
脳の神経細胞(ニューロン)には、興奮する細胞(アクセルの役割)+興奮を抑える細胞(ブレーキの役割)があり、両者がバランスをとっている。
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ニューロンからは、細い糸のようなもの(樹状突起)が何本も出ている。とくに長いものを「軸策突起」と呼ぶ。
てんかんの発作は、ブレーキのニューロンが故障して暴走しているようなもの
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●発作のタイプはいろいろ
「大発作」
よくイメージされる、急に意識がなくなり、倒れて体がつっぱってしまう姿。
しかし、どの脳神経細胞が故障しているかによっていろいろな種類がある。
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発作は長くても5〜10分ほどでおさまる。
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「点頭」とはうなずくという意味。
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「レンノックス症候群」は「矢立発作」「ドロップ発作」と呼ばれ、知的発達に遅れが出る。
●てんかんは遺伝する病気ではない
脳のある部分に、怪我や病気がもとで、組織の働きが壊され、信号がうまく伝わらず発作になる。
その傷をどこで受けたかというと、半数は原因が分からない。
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・産まれる時
髄膜炎、脳炎、脳症など高熱がつづく病気で脳組織が壊されることがある。
大人になってからの交通事故
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・胎児の時
胎内感染、胎盤機能不全などで、脳にちいさな傷ができるため。
●てんかんは脳波でわかる
・心電図/心臓に流れる電気のようすを調べる機械。
・筋電図/筋肉のようすを調べる機械。
・脳波/脳の細胞に流れる電気のようすを調べる機械。
頭の表面に電極をつけ、脳に流れている電流を外に取り出す。
微量の電流を大きくするためのアンプを使う。
この脳波によって「てんかんがあるかどうか」「あるならどの部分が原因か」が分かる。
ある部分の神経回路がショート(異常放電)した状態なので、発作中でなくても脳波に表れる。
つまり、時々ショートしていても、そのたび発作になるわけではないということ。
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てんかんの脳波
時々出ている発作(矢印部分)が起きないよう、安全装置がはたらいている模様。
●てんかんはクスリで治る
よい薬が20種類ほどある。薬は脳がやたらにショートしないように、故障している部分を強化していく。
故障した脳神経を修理するのではないため、長い時間がかかる。その間の規則正しい生活も重要。
発作が起きない訓練が習慣づけば、薬を止めても発作は起きなくなる。
●治療の進歩
現在、約80%以上は薬で治る。
薬を多く使えば発作はすぐ抑えられるが、元気な細胞まで弱って、だるかったり、無気力になってしまう。
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保護帽やヘルメットは、転倒した際、怪我を防ぐため
今、治りにくいとされているのは、「点頭てんかん」、「レンノックス・ガストー症候群」、
「脳性まひ」など合併症がある場合、故障部分が広い範囲にあるか、大切な部分に何箇所もある場合。
CT、MRIで詳細を調べ、手術による治療の研究も行われている。
●発作を起こさないために
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てんかんのあるコは、底が浅いダムに例えられる
睡眠不足、疲れすぎ、緊張のしすぎ、眠りすぎ、心配しすぎ、暗い気持ちなどがあふれると発作が起こる。
●制限しすぎは逆効果
発作が起きないよう心配しすぎて、運動しないのではなく、活発に何でもやってみようという気持ちが大切。
日中は発作が起きず、夜寝る時、うとうとしはじめた頃、寝起きでぼんやりしている時に起きやすいコも多い。
昔は「水を見ると発作を起こす」などと誤解されたが、水泳中に発作を起こした例はほとんどない。
熱中している時は出ないが、緊張がとけた時に出やすいため、一生懸命泳いだ後が要注意。
「心配だからやめたほうがいい」というのは間違い。
注意することは、クスリを忘れずにキチンと飲むこと、ムリをしないこと
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●発作が起きた時の対処
・けいれんで死ぬことは、ほとんどない。
・神経全体がけいれんしているので痛みはない。
・歯を食いしばっているが、呼吸はしている。
・長く感じても大体30秒〜1分ぐらいでおさまるのがふつう。
・周りから危険なものを取り除く。
・呼吸がラクになるよう、服の上のボタンをはずしたり、ベルトをゆるめる
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・体はなるべく動かなさない。日陰に運ぶのは大人に頼もう。
・たくさん唾が出たり、吐いたりしたら、気管に入らないよう顔を横に向ける。
・放心状態で歩いているような場合は、意識を取り戻そうとしてゆすったり、大声で名前を呼んだりせず、危なくないよう見ていてあげる。
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名前を呼んで、体をゆすったりするとかえって危険
●特別扱いしたり、差別が誤解をうむ
昔は「てんかんのコはワガママだ」「発作で性格が変わる」と言われていたが、それは誤解。
もし、そういう性格があるとすれば、環境やまわりのヒトの影響が大きい。
中学生くらいになると、他人の目を意識していることが煩わしくなる。
でも、いつも家族や周囲の心配そうな目が注がれていたり、
毎日欠かさずクスリを飲まなければならない、のんびりお風呂に浸かることなどもできない、などなど制限も多い。
どんな生きものも一人では生きられない。
仲間と交流することによって、ともに生きることを学んでいく。
まわりが理解し、こだわりのない付き合いをしていけば、友だちも自分も変わるはず。
**************************実例
●髄膜炎でてんかんになったT君
健康だったT君は、5歳で風邪と診断されたが、熱が下がらず、ひきつけを起こした。
髄膜炎と分かり、生死の境をさまよい、その後回復したが、言葉や字を忘れてしまった。
両親は専門病院を見つけて、ずっと投薬治療を行っている。
発作は軽く短くなり、養護学校に通って、ゆっくりと言葉や字を覚えるようになった。
●中学1年生のA子さん
友だちは、A子さんの体調のことをよく知っていて、発作が起きそうな時は周囲を片づけ、先生を呼んだりしている。
A子さんは、普段は元気で、わがままを言う時もある。
友だちは、「こんなに親切にしてやっているのに、生意気だ」と怒ったり、イジメたりすることもあります。
A子さんも負けずにやり返します。
先生は、みんながA子さんを特別扱いせず、対等に付き合っているのは良いことだと考えている。
クスリをキチンと飲めば、修学旅行にも参加することができた。
病気に対する理解が進んでいる学校では、教師、友だち、医師が協力しあって、
楽しい学校生活を送れるように努力している。
●Sさんの就職と結婚
中学の時、突然発作を起こし、通学途中にも発作を起こして、自転車で田んぼに転げ落ちたことが何度もあった。
てんかんと分かった時、友だちに打ち明けることはできなかった。
変な目で見られることが怖く、次第に一人ぼっちになっていった。
高校を卒業後、就職。打ち明けたらクビになるかもしれないと思い、隠していることも辛く、殻に閉じこもっていた。
そんな時、詩のサークルに入り、自分のこれまでの思いをぶつけて、聞いた人を感動させた。
詩を通じて理解してくれる女性と結婚し、2人の子どもも産まれた。
結婚後も発作はあったが、10年以上クスリを飲み続けたおかげで、今は元気に働いている。
**************************差別のない社会に
昔から「てんかんは遺伝だ」「治らない」などと差別を受け、陰口を言われ苦しんできた。
いまだに、間違った考え方は残っている。
日本では、就職を断られるケースも多い。
アメリカでは就職の際、個人の事情や病歴を聞くのは、法律で禁じられている。
日本の道路交通法では、てんかんの人は免許をとれないため、隠してとっている人もいる。
理由は、就職の際「なぜ車の免許をとらないのか?」と聞かれ、理由を言うと差別されるから。
海外では、発作が3年以上なく、意識を失わず、運転に差し支えないと判断された人は免許がとれる国が多い
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「日本てんかん協会」では、日本のルールを改めるよう要望している。